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感慨深い上場 

先月に東証プライム市場に上場した東京地下鉄だが、先週から有楽町線および南北線の延伸プロジェクトの工事に着手している。また先週末には上場後初めての発表となる同社の2024年の9月中間連結決算も出ているが、コロナ禍後の経済活動回復を背景に旅客運輸収入が増加し純利益は前年同期比26.6%増の306億9900万円となっていた。

この東京メトロ、18年のソフトバンク以来の大型上場となったが抜群の知名度を背景に上場初日は公開価格を35.8%上回る1630円の初値を付けた後1739円で取引を終え、大引ベースでその時価総額は1兆103億円と1兆円の大台を超えて来た。上場直後の熱狂も落ち着き先週末終値はほぼ初値まで降りてきたが、他の私鉄を約2倍近く上回る営業収益率を背景に依然PERはプライム市場平均を上回っている。

ところで政府売出株といえば同じ鉄道系で2016年のJR九州があるが、同社は上場後に同じ政府系売り出し株の日本郵政と共に一時低迷したものの、鉄道事業以外の成長戦略が奏功し先月には上場来高値を更新してきている。そういった点からすると東京メトロは営業収益の約9割が鉄道事業に依存しているのが課題に映るがこの辺は今後の成長戦略に注目というところか。

しかしかつての営団地下鉄もようやくはれて上場かとなんとも感慨深いものがあるが、これで冒頭の通り約1兆円規模の時価総額企業が新たに東証に加わった。これまで日本株式のネックは時価総額一つ取っても米などと比較すればその規模が見劣りするのが課題であったが、今年はまだキオクシアホールディングスや非鉄大手JX金属の大型上場も見込まれているだけこうした部分の拡大に寄与する点では期待したいところ。


東証の取引時間延長

周知のように今週から東京証券取引所は現物株取引の終了時間を午後3時から午後3時30分に伸ばしている。きっかけとなったのは2020年10月に発生した大規模システム障害で、この日は全銘柄の売買が終日出来ず投資家の取引機会が奪われた反省から障害時に少しでも取引時間を確保出来るようにしたものだが、この延長は実に1954年以来70年ぶりのこととなる。

これに伴いこれまで延長反対の背景の一つでもあった証券など関係各社の業務負担も増加しようが、企業側もまた決算発表などの対応が変わって来る。東証側は延長に合せて発表時刻も30分遅らせることなく前倒しを要請しているが、これに従い発表時刻を早める企業あれば、これとは逆に発表時刻を30分遅らせる企業ありとその対応は企業ごとで異なっており各社で賛否両論喧しい。

そうした意味で今後はその開示姿勢の変化も問われそうだが、投資家側もまたこの変更ではクロージング・オークションなるものが導入された。引け5分前にザラバ取引が終了、以降売買注文を受け付け引けの板寄せで大引けが決定する。初日で幾つか銘柄を見てみたが15時を過ぎてなお刻々と約定してゆく様は何か不思議な感も覚えた。

しかしこの延長論、叶ってみれば30分という小幅な延長に落ち着いたが、延長といえばNY証取もつい最近6時間の取引時間延長計画を発表している。此処はこれまでも時間外を除く取引可能時間が6.5時間で、他の主要取引所をみてもロンドンは8.5時間、アジアではシンガポールが7時間、お隣韓国は6.5時間と海外と比べるに見劣り感は否めない。まだ走り出したばかりでその効果は未知数だが、海外勢の呼び込みにはもう一段の延長見直しも迫られそうだ。


返り咲き?

さて世界が注目している米大統領選だが、既に各社メディアが報じているように共和党候補のドナルド・トランプ前大統領が結果を左右するペンシルベニア州含む激戦7州のうち4週を制し当選が確実視されている。仮にこのまま勝利した場合、米大統領選の失敗後に返り咲くのは132年ぶりの事となるが、この開票状況を睨みながら本日の金融市場もトランプ・トレードが加速している。

開票直後から接戦州でのトランプ氏の優勢が伝えられると、ドル円は早速151円台から約3か月ぶりの円安水準の154円台へ。それに伴い日経平均も寄り付き近辺を安値としスルスルと上昇し前日比1000円以上の大幅続伸を演じたが、夜間の先物取引でもその流れを継いで一時4万円の大台を超えてきている。

個別では日本に防衛費増額を迫るとの見方で三菱重、川崎重、IHIといった防衛関連の重工各社が買われる展開となったほか、三菱UFJFGや三井住友FGにみずほFGなどのメガバンク勢から地銀勢にも買いが入り、TOPIX銀行業指数は業種別指数の中で上昇率トップとなった。財政支出を伴う同氏の政策によるインフレ圧力の高まりから金利上昇への期待を背景に一斉に物色の矛先が向った格好だ。

また同氏が暗号資産に好意的なことで仮想通貨関連も物色されたが、代表格のビットコインは史上最高値を更新、トランプ氏が要職起用を検討するとしたイーロン・マスク氏が支持するドージコインもまた昨日から約20%の急騰を見せた。斯様にトランプ・トレードに賭けていた向きにはニンマリの一日になったワケだが、米国債利回りの急上昇はじめ各所の市場変動は或る意味警鐘と警戒する向きも多く、今後も各所の動向から目が離せない。


値下げ合戦&デフレ脱却

11月入りとなったが、月初め恒例の今月の値上げ状況は帝国データバンクによる主な食品メーカー195社における今月の飲食品値上げは、先月からは大幅減少となったものの前年同月比では倍増の282品目となっている。加工食品や“ビーンショック”が長く影響して菓子では引き続き定番人気のチョコレート関連商品の値上げなどが目立つ。

この手ではロッテがチョコレート関連71品目を値上げや内容量を減らすステルス値上げを実施、「コアラのマーチ」や「パイの実」などの定番モノは8月に続く再値上げとなり、他社も明治やカヤバ食品などこれらチョコ菓子の一部を値上げする。しかしこのチョコも定番のハイカカオ商品はじめとした値上がり加速には辟易するが、体感ではオリーブオイル並みになって来た。

斯様に容赦なく上げ続けるモノあれば、先月の今年最多の値上げから価格転嫁に対する企業の慎重な姿勢も一部見られる。イオンはPBなど実質値下げを敢行し、外食も吉野家をきっかけに大手各社が挙って値引き合戦に突入、またIKEAも昨年11月から今年に入って4度の値下げを敢行し5度目の先月は家具・雑貨など70点値下げを始めているなど各所で値下げの動きが顕著になってきた。

たしか自民党の公約ではデフレからの完全脱却を謳っていたが、こうなるとデフレに逆戻りするのではという感覚にもなってくる。先月末の日銀金融政策決定会合では現在0.25%としている政策金利を据え置くことを全員一致で決定しているが、果たしてこうした環境下で日銀が何処まで利上げを敢行出来るのか?その辺も今後は気になるところだ。


アップサイクル新ステージ

当欄では今月アタマに日経平均構成銘柄の入れ替えを取り上げていたが、日経平均同様に日本経済新聞社が算出する指数に「日経平均気候変動1.5度目標指数」がある。同指数のこの秋の定期見直しではコマツとダイキン工業が外れる一方で、日経平均構成銘柄でも新規採用された野村総合研究所と良品計画に加え、環境面で評価が改善した高島屋も採用されて本日より反映されている。

環境面で評価が改善したとある高島屋だが特に近年アパレル系でサステナに力を入れており、今月9日からスタートしたサステナブルウィークスでは「RETURN TO SENDER」と称し、先進国からアフリカに寄付・輸出され飽和状態となっている古着をデザイナーが再デザインしアップサイクルしリメイクウェアのうち1点を一般商品として販売、もう1点を提供した顧客分として渡すユニークな取り組みを行っていた。

今回の試みは服をデザインするプロセスに、古着素材の提供として客を巻き込みながら循環の輪を回すアップサイクルの提案になっているところがポイントか。そういえばこれまで当欄で取り上げた東京オリンピックのメダル作成において一般から携帯など都市鉱山を募ったり、年末の風物詩イルミネーションの一部でも家庭内で出た廃油を原料にした燃料を使用するなどの巻き込みと同様のものといえるか。

以前にも書いたが、世界で排出される二酸化炭素の約1割はアパレル産業によるものとされ、石油産業に次いで地球にやさしくない環境汚染産業ともいわれている。昨年は経産省でもアパレルの再生や再利用に関する課題と改善策を纏めた報告書を公表しているが、斯様な顧客巻き込み型等の形態が何処まで広がり、またサステナで先行している欧州勢に何処まで近づけるかも注目しておきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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