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鋭角化する上げ幅

さて5月入り、恒例の今月の値上げだが帝国データバンクによれば今月の飲食料値上げは417品目と、前年同月比で420品目、50.2%減と5か月連続で前年同月を下回ることとなった。前月比では約7分のほどに減少したものの、再び着目すべきは値上げの幅で平均31%と2022年以降、初めて30%台となっている。

個別で群を抜いて改定幅が大きいのはやはりオリーブオイル、日清オイリオGやJオイルミルズなど大手が家庭用を最大66%の引き上げ、業務用では80%の上昇幅のモノも。当欄で「アメリカンブレックファーストの憂鬱」と題しオリーブオイルの価格が前年比で2倍近くに急騰し史上最高値を付けた旨が日経夕刊の一面を飾っていたのを書いたのがちょうど1年前であったが、状況の深刻化は1年経てなお改善されるどころか酷くなっている。

とにかく生産、供給に消費の需給バランスが最悪の状態で、オリーブオイルが栽培されるのは地中海性気候の土地に限られているものの、この主要生産地の熱波や干ばつで不作が続き世界的な在庫不足が継続、輸出制限の国も出てきている一方で世界的な健康志向の高まりで消費の方は増加の一途を辿っているから、まさに無いもの強請りの争奪戦になっている。

似たような構図ではカカオ豆の急騰でチョコレート価格の動向も今後は懸念されるところだがそれに加えてこの円安、何処まで小手先介入で耐えられるか分からぬがこの水準の円安が続いた場合は数か月のタイムラグを経て秋口頃には輸入食品やガソリンまでさまざまなモノの価格に跳ね返ってくる可能性が高く、昨年後半にかけて沈静化していた「原材料高」値上げが再燃する可能性に身構える動きも出て来そうだ。


GWとオーバーツーリズム

ゴールデンウィーク真っただ中だが、160円を舐めるサンドバッグ状態のこの円安下で今年は海外旅行を諦めた向きも多かったのではないか?そうした向きの国内回帰に折からのインバウンドのダブルパンチで世界遺産含め有名な観光地もいつにも増して混雑を極めていると思うが、そうなるといつも問題に挙げられるのがオーバーツーリズムでこの連休中にもTVのニュースで多くの局がこの問題を取り上げているのを見掛けた。

近年はSNSの普及によりあっという間に世界規模で情報が拡散され一点集中でそのスポットに人が集まる現象が頻発しているが、こうした場所での撮影等に伴う危険な人出やゴミ捨て問題もあるが、なかでも問題視されているのがやはり交通系インフラで、京都駅前では数百人のバス待ち行列が出来たり、箱根でもバス待ちが一時間に及んだり、鎌倉でも江ノ電になかなか乗車出来ない等がニュースで報じられていた。

こうした問題に対応し撮影スポットに黒幕を設置するなどの奇策?や新型ゴミ箱の設置、レンタサイクルや観光特急バスなどの設定を講じているようだが、京都ではGW前にライドシェアの運行が開始されている。このライドシェア、東京でも先駆けてインバウンド増加などによるタクシー不足という問題に対して期待が高まっているが、首都圏と観光地ではまた事情も違ってくるだろうか。

上記の通り先月に東京など4地域で解禁となったライドシェアだが、来月からは福岡交通圏でも開始される見通しだ。この先全国規模で交通難民対策としてライドシェアが普及し、諸々の課題などが解決出来たとするとその経済効果は約5000億円ともいわれているだけにその期待度も大きいが、制度設計と併せ地域や利用者のニーズに何処まで答える事が出来るのかその辺が今後はキーとなって来ようか。


投資以前のリテラシー

今週アタマの日経紙社説では「SNSを使った投資詐欺への対策を急げ」と題し、最近問題になっているSNSなどのインターネットサービスを悪用した投資詐欺が昨年でも総額で約277億円にのぼるなどその被害が広がっている旨が書いてあった。この辺に絡んでは直近でもSNSの詐欺広告で画像を悪用されている著名実業家らが、自民党本部で開かれた詐欺広告に関する会合に出席し問題提議している。

確かに今日もTVで著名経済アナリストを語った輩により約7億円という巨額の投資詐欺に遭った女性の話が報じられていたが、先週も兵庫県でこの手の被害者続出がニュースになっていた。15日には西宮市の男性が、16日には神戸市の女性2名が、18日にも同じ神戸市の男性が、また同じ日には神崎郡の男性が、それぞれ誰もが知る著名実業家、著名経済アナリスト、著名ジャーナリストを語る人物により約200~4500万円の詐欺被害が報じられている。まさにオレオレ詐欺が流行った時並みの被害ラッシュだが、失礼ながら毎度こうした報道を見るに何故にこんな稚拙なモノに引っかかってしまうのか理解に苦しむ。

そもそもこの手の著名人がマンツーマンで投資指南などやるはずもなく、他にも断定的判断の提供しかり、仮に入り口に入ってしまってもいざ振り込みの段階で個人口座とか有り得ない話でいくらでも我に返り引き返せるというものだが。しかし以前は無かったインスタにF・Bからマッチングアプリまでフル活用されている点に時代を感じる。これにより幅広い年齢層が狙え、はたしてインスタやF・Bは40~60代、マッチングアプリは20~30代がホイホイ餌食になっている。

そういえばちょうど先週には警視庁生活経済課がキャノンマーケティング本社で新入社員ら向けに投資詐欺被害対策の講座を開いていたが、幅広くこの手の啓蒙が急務ではないかのような気もする。おりしも今月は国民の金融リテラシーを高める活動を行う組織として「金融経済教育推進機構」が発足しているが、貯蓄から投資への流れに水を差したくないならHOW TOよりもっと以前の段階こそ重要ではないかと思う。ゴールデンウィーク中に投資の検討などする向きも居ると思うが,くれぐれもこの手の投資詐欺には注意されたし。


社会変化への柔軟性

久し振りにセブンイレブンに行ったが、冷食コーナーの品揃え拡充に少し驚いた。このセブンだが、単身や共働き世帯の増加で中期的に高まる冷凍食品の需要に対応すべくコンビニの店頭に置く新型の冷凍庫を本格導入する旨が日経MJ紙などで報じられている。PBモノはじめ、スペース問題が改善されることでグループのファミレス「デニーズ」ブランドの冷食もおけるようになるという。

世相を反映した今年の一皿にも選ばれた冷食だが、快進撃が止まらない。日本冷凍食品協会が発表した2023年の冷凍食品の生産・消費統計では家庭用と業務用を合わせた全体で、値上げにより数量は減少したものの出荷額は過去最高となった。以前書いたイオンの日本最大級の冷食専門店@FROZENは首都圏で6店舗を展開、先日銀座の三越や松屋の地下を一寸見てみたがフローズンコーナーの充実ぶりはセブンよろしく数年前とは様変わりになっていた。

保存性もありフードロス削減など旬?なSDGsの観点に加え、所謂タイパの部分までをもカバー出来るこの冷食は社会変化に対応出来るモノの中でも断トツで上位に位置するのではないか。まさに商機だが本日は円相場が1990年6月以来の1ドル=155円台に突入、加えて中東情勢など地政学リスクは予断を許さない状況なだけに今後の物価上昇圧力が販売に影響してくるか否かこの辺の動向には注視しておきたいところ。


レセプト分析調査研究

本日の日経紙経済政策面では「保湿薬の自己負担増」と題し、乳幼児やアトピー性皮膚炎の患者に処方される保湿塗り薬の「ヒルドイド」について10月から患者の窓口負担を引き上げる旨の記事が出ていた。この塗り薬といえば、今から7年くらい前だったか一部の女優やモデルが挙って美容効果を謳ったということで美容クリーム代わりに処方してもらう動きが問題視されたことがあったなと。

もうこの件は忘れかけていたころに目にした今日の記事だったが、確かに当時は健保組合連合会が公表したレセプトの分析調査でこの美容目的の保湿剤を巡っては年間93億円の薬剤費が無駄に支出されていたことが明らかになっていた。ヒルドイド一つ取ってもこの規模であるから、これら以外の似たケースを集計すると自ずと可也の額になるのは想像に難くない。

斯様に処方箋が要る薬の部類では今でもこのヒルドイド以外でも美容に限らずその費用対効果の高さが謳われているモノが幾つもある。第2第3のヒルドイド予備軍は数多あるだけに今後も折に触れこうした問題が浮上する可能性が高いが、本来は自由診療の領域が不正に利用され医療保険財政を圧迫してゆく要因になるものは必要に応じ是正されるべきか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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