パリ五輪2024
17日間にわたり熱戦が繰り広げられたパリ五輪が閉幕した。持続可能性と男女平等をコンセプトに史上最もサステナブルな大会を謳ったこのパリ五輪は今までの大会とは一線を画す要素が多かったが、環境問題が終始付き纏ったセーヌ川や選手村、それになりよりも多くの競技において続出した誤審疑惑の数々などモヤモヤが多く残る大会だったのは否めなかった。
そんな誤審疑惑喧しかった中でも一経験者として終始注目していた体操競技は、日本企業が開発したAIを活用した最先端の採点システムが導入されており安心して観ることが出来た。特に初出場で五輪3冠を達成し男子体操の主役級になった岡選手がやはり素晴らしく、団体・個人を合せた1大会3冠は72年ミュンヘン五輪以来52年ぶり、メダル数も84年ロス五輪以来40年ぶりという記録であるから快挙である。
その内容だがいかにも日本らしい。例えば鉄棒などD+Eで14.533とコロンビアの17歳A・バラハス選手と岡選手は同得点であったものの、メダルの色を分けたのは“Eスコア”が勝った点であった。まだ若干20歳の岡選手だが、この辺りがお家芸と言われた上記のメダル量産時代からの他国とは一線を画す“魅せる綺麗な体操”という日本体操界の精神が今も脈々と受け継がれている事の証左だろうか。
とはいうものの個人的に戯言を言わせていただくと鉄棒など見応えという点で、例えば岡選手はアドラー1回ひねり単発だったが、台湾の唐嘉鴻選手はアドラー1回ひねりからコスミック一回ひねりの大技ウェルストロムの組み合わせを披露、途中のトカチェフにしても岡選手はこれまた単発だったが、同唐選手はこのトカチェフをそれぞれ伸身・開脚・屈伸の3連続でやってのけたあたりが満足度で大きく両者の明暗を分けるものであった。
ただそういった点では惜しくもメダルこそ逃したものの、同じく今回初出場した杉野選手など鉄棒でなかなか目にする機会の無いF難度クラスのペガンを果敢に取り入れるなどしており“Dスコア”の底上げなど今後も挑戦を続けて欲しい。いずれにせよ幅広い種目で若い世代の大躍進が目立った今大会、各選手共に4年後の次なる熱戦の舞台での活躍に期待が大きく膨らむ。