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指標としての資金調達動向

本日の日経平均は円の下落が好感されて3日続伸となったが、値上がりベストテンの中でも昨日新規上場のモバイルコンテンツ配信が主力のエムアップがストップ高と気を吐いていたのが目立った。注目の初値も昨日は朝方から買い気配値を切り上げ、公開価格を約76%上回る好スタートとなっていたが、直近組ではちょうど一週間前に上場したアイスタイルの初値もまた公開価格を約94%上回る好スタートとなっていたのが記憶に新しい。

これら含めた株による資金調達といえば調査会社のトムソン・ロイターの纏めでは、株式市場の環境改善から先月の上場企業による新株発行を伴う資金調達件数が先月は16社と昨年3月以来の水準で、今月の調達額は既に先月を上回っているという。

ところで当欄で昨年12月に「大手運用会社よりゲーム会社」として日興アセットがIPOを延期した旨を書いたがその時の末尾には、「各社思惑はさまざまだが、こうした取り止め・延期の傾向もまた市場のバロメーターともいえそうした動向は全般を測る上で指標にもなろうか。」とコメントしておいた。

さてどうだろう、ちょうどその頃に1兆円を割り込んでいた東証一部の売買代金はいまや1兆5,000億円を超え、日経平均もほぼ8ヶ月ぶりに引けで10,000円の大台回復となっている。公募増資組のツガミの堅調さやマツダの大商いも今後興味深いところだが、今回もまたこうした部分から見る指標が上手く機能したといえるだろうか。


混合解禁へ一歩

昨日一寸医師と混合診療の話に及んだのだがちょうど昨日の日経紙一面には、厚生省が重い病気にかかっている患者に対し国内で未承認の医薬品を使いやすくする制度を創設、これは新薬の審査・承認を待てない患者に投薬治療の機会を提供する狙いで、治療を受ける患者の経済的な負担を和らげるため保険診療と保険外診療を併用する「混合診療」を新制度に一部適用することも検討と載っていた。

この混合診療について当欄では2009年12月に、「無知な机上論の危うさ」として漢方薬の保険外適用議論について書いた際に、「この混合診療とて現状は曖昧な一部解禁、医療分野の技術革新は日進月歩、一刻も早い混合診療の解禁も願うところである。」とコメントしたことがあった。

今後もこの混合診療に関してはいろいろと議論されようがそもそも何故原則禁止なのだろうか?貧富の差による医療格差の広がりというのが一般的だが、衣食住同様に患者や経営側は選択の余地が出て患者負担も軽減されるし、ある意味経営安定という側面もまたあるだろう。まあ、逆の見方をすれば自由診療の受け皿となる医療機関が圧倒的に少ないという構図もまた浮き彫りになってくるが、いずれにせよこれが混合診療拡大への一歩となるのかどうか今後の厚生省の動向を見守りたいところ。


形骸化

本日の日経紙、一目均衡には「ありえるはずのない好成績」として2008年に発覚した米マドフ事件に絡めて、直近で問題になっているAIJ投資顧問事件が語られていた。何れも危険信号が多数出ていたものの、マドフ事件は最初の告発から8年後になるなど当局が動く頃には手遅れなのがこうした事件の常と書いてあった。

告発といえばこのAIJ投資顧問も海外証券監視当局等から以前より疑問視され、金融庁や証券取引等監視委員会など日本の関係当局にも情報提供がなされていた旨も明らかになっているが、それでもこうした事態になるということは結局のところ対応していなかったということなのは明らか。

これ自体問題だが、信託銀行も外国籍を使った運用に対し正確な時価自体を取得出来ていなくてそうしたことから年金基金に正しい運用実績が伝わっていなかったというのもまた問題か。外務員試験にも出てくるが、信託銀行業務は運用会社が指図した投資内容を記録管理し運用資産内容は信託銀行から年金基金に対して定期的に報告されることになっている筈。

まあハイリスクな金融商品でこうした性質の資金運用を認めている制度自体にも疑問があるが、当局然り金融機関然りまた形骸化が浮き彫りにされた事例だろうか。


あれから一年

昨日で東日本大震災から一年が経過した。一年経ったのがうそのように今でも当日の様子は鮮明に脳裏によみがえるが、先週末には東京タワーや東京スカイツリーに特別仕様のイルミネーションが灯り、銀座の和光では「その」時間に鐘が鳴らされる等、全国各地はじめ海外まで追悼行事が行われる哀悼の祈りに包まれた一日となっていた。

この日各紙にはこれまでの震災被害状況が出ていたが、人は勿論のこと企業も上場企業が震災損失4兆円を計上、関連倒産も阪神の4.2倍に上る等あらためて本当に酷い数字である。企業といえば7日には文部科学省のプロジェクトチームからは従来の想定を上回る震度7規模の首都直下型の可能性ありとの分析結果を公表していたが、これに先駆けて財閥系の錚々たる大企業が揃って大阪に本社移転という噂もまことしやかに流れたりもした。

「安全神話の崩壊」によって物の考え方が厳しく問い直されている。想定の範囲を何処に置くかだが原発然りまた東電の株然りで生半可なパラダイムシフトでは何時でもまた阿鼻叫喚な光景が何処でも訪れるということだろうか。加えてこの一連の災いはまた官の杜撰さと責任転嫁の狡猾さを如実に露呈、斯様にいろいろ課題が在り過ぎていまだ何処からとう感じだが、一番大切なのはやはりこの災いを風化させてはならないということだろうか。
あらためて被災された方々に深く哀悼の意を表すると共に再生に向けての進展を祈りたい。


裏上場レンキン

さて、本日の株式市場は後場に入って一段高し4営業日ぶりに急反発していたが、そんな地合いのなかでも昨日に引き続きセラーテムテクノロジーは比例配分でストップ安に張り付き、明日はいよいよストップ安下限が2倍に拡大される。今週もいろいろニュースがあったなかで、周知の通り同社は自社株の吊り上げを狙い、虚偽の情報を公表したとして東京地検特捜部が同社社長及び役員を逮捕したことを受けたものに因る暴落だ。

やはりなといった感じだが、同社に関しては既に一昨年の10月に「実際に株式市場でも数年前から中国ビジネスへの進出をネタにしてインチキ相場を作った銘柄があり〜〜現在も背後に中国資本介入やら裏上場の噂やらでどう見ても不自然な化け方をした銘柄は依然多い」とコメントしている。まさにココがそれだったワケだが、当時はまだ裏上場疑惑といっても単なる噂に過ぎないと一笑されることが多かったものだ。

今回問題にされているのは「北京誠信能環科技」なる中国のソフトウェア会社であったが、中国企業といえば昨年は不正会計疑惑で海外市場にて上場する中国企業の会計不信が拡大し、数十もの中国企業株の売買が停止処分、架空投資を継続させていた中国企業の株で著名投資家がかなりヤラレたという経緯もあった。コトの発端は北米市場に上場している企業であったが同所の新興国企業の大半は中国が本拠地で逆さ合併による上場が半数を占めているという。

当然こうしたIPOの背景には投資銀行の影がチラつくワケだが、当の本拠地の上場基準厳格化で炙れた向きがこうしたところへ活路を見出し?進出したパターンもあるという。利害一致でこんな波が大証にまでうまく流れ込んだということなのか、真っ当なところ以外で中国ビジネス色を売りにしている怪しいところは今後包囲網が狭まってくるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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