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業界初の上場

さて、今週目に留まったイベントのひとつに海外市場でのIPOがあったが、日本のパチンコホール大手のダイナムジャパンホールディングスの香港証券取引所への上場がそれである。注目の初値は公募価格仮条件の下限で決まっていたこともあって公募価格と同値の14香港ドルとなったが、注目はパチンコホール運営会社の上場自体が国内外で初めてというところだろう。

これで思い出すのが、かつて上場を目論んだ同じパチンコホール運営大手のピーアークである。今から数年前にたしか日興が主幹事でジャスダックに上場する準備が整っていたものの、三店方式換金システムの合法性の部分が引っ掛かって投資家保護が見出せないとして上場が叶わなかった経緯がある。

それが今回の香港証券取引所に上場が叶いしかもGEMでなくメインボードへの上場というから、関係者としてはさながら取引員が初の株式公開を果たした時のような興奮を覚えたに違いない。グレーゾーンという色の濃淡が大きく変わることは無いと思うが、おりしも規制強化の流れの中で同時に参加人口減もいわれる業界、いずれにしてもこの香港証券取引所への上場が、こうしたグレーゾーンが絡む業界を巡る制度論に一石を投じるのかどうか今後注目されよう。


システムの脆弱性

昨晩は遅くまで東証には明かりが点いていたが、周知の通りこの東証でTOPIX先物や日本国債先物等のデリバティブ取引が約1時間半全面停止するというシステム障害が発生した。ルーター故障が原因といい、一応取引自体はその後に再開されたものの国債の先物が手掛けられなかった為に現物債を売った投資家も居た模様である。

さて東証のシステムトラブルといえば、最近では東証上場200銘柄以上もが売買停止になったあの2月のトラブルを思い出す。前回これを取り上げた当欄では「〜こんな茶番を言っている間に数百億円も注ぎ込んだ自慢の高速取引とやらを少しは危惧したほうがいいだろう。」とも書いたが、果たしてというかあれから半年で今年2度目の不祥事である。

東証の1日のデリバティブ取引売買代金は約5兆円で、最近は1兆円割れも珍しくなくなった薄商い現物株を上回る規模、最近ではTOPIX先物主導で相場も振れる場合もあり、先の現物トラッキングエラーから先物裁定にも影響が及ぶ恐れが生じた事態など鑑みるにやはり立て続けのトラブルは由々しき事態だろう。

銀行等もこの手では起こっているがバックアップ体制の見直しを経てもなおこの手の障害は避けられないものなのだろうか?おりしも大和証券グループ本社等と組んで5月にはミャンマーで証券取引所の設立支援に関する覚書を締結するなど証券システム受注を固めた矢先の出来事、また足元でも大証との合併を控える身でもあり双方共にこれらが足を引っ張ることにならなければよいが何れにせよ金融インフラだけに猛省を促したい。


サヤ寄せ中

本日も株式市場は続伸となっていたが、なかでも東証値上がり率ベスト10ではソントン食品が昨日に続いての連日のストップ高で一際目立つ。昨日触れたFXプライムはTOBであったがこのソントンの場合は先週末に経営陣によるMBOで非上場化すると発表、買い付け総額は約156億円でその1株1,000円の買い付け価格に本日も鞘寄せする動きとなっている。

ところでこのMBOといえばかつて上場していたCCCがMBOを実施してほぼ1年が経過した。あれから同社は業務提携していたカカクコム株の大半を3年足らずで売却したが、この辺もMBOに伴う借入金返済を前倒しで目指すという同社の資金捻出の一環だろうか。

市場から名が消えるのと引き換えにMBOすることによって税金面やら配当やらの部分の負担は大きく減少するが、上場時とはまた違う舵取りの難しさが求められる。業界でもMBO実施の前例があるが、上場廃止後もその手腕が問われるのには変わりがないだろう。


再編化け

先週8/2からジャスダック市場で連日ストップ高の暴騰を演じていたFXプライムが週明けの本日漸く大幅続伸で値が付いた。つい最近付けた先月末の年初来安値190円から実に9営業日で株価2倍以上となったわけだが、これは周知の通りGMOインターネット傘下のGMOクリックホールディングスが同社を一株410円でTOBするとの発表を受けてそれに鞘寄せして来ていたもの。

しかしこのFXプライムに限らず最近は業界モノの株価倍増の急騰が目に付く。以前から自社株買いやらで突飛高する単発モノはあったが、先月などこの手のTOBとは違うものの、アストマックスが6月下旬にマネックスグループとの業務提携から同グループ傘下の投資顧問買収を発表して以降動きが急変、提携発表前の11,900円から7/19には43,400円までこちら株価は約3.6倍化の大化けを演じている。

以前は業界モノでも、某投資顧問が介入とかストックオプション等内部事情が絡んだ噂的な話が一人歩きし株価急騰でもその裏に具体的な政策が見えないものが多かったが、近年は合従連衡というか再編絡みの具体的な動きで一気に化ける可能性のある素地が作られつつあったという事だろう。ところで今回のTOBは上場廃止を企図していないとはいえ、上限株数を設定していない状況では事の成り行きによっては上場廃止基準に抵触しないとは限らないわけで今後の行方もまた注目される。


投資家保護と規制緩和

さて、今週目に留まった報としては日経紙金融面などでも載っていたが、東証など全国の証券取引所が「証拠金規制 年内にも緩和」として、信用取引売買当日の再利用解禁の旨がある。周知の通りマル信では受け渡し日迄は次の売買を同一証拠金内で出来なかったが、9月をメドにこの部分の契約規約を変更する規制緩和によって再利用を可能にするという。

ところでこのマル信の規制緩和で先ず思い浮かぶのが、やはり松井証券の「即時決済取引」か。これは当欄でも約一年前に触れたもので店内発注を立会外のJ-NET当日取引として取次ぎというものだったが、そのエッセンスをパクって早くも何処の証券会社でもこれが可能になる。

しかし、斯様にこの手の古くからの街金の即金サービスが堂々と一般の証券会社でやれるようになり、そこから一年で取引所側も契約規約変更の規制緩和でこれが可能になるとは時代の変化を感じる。ただ本来であれば街金や一企業が先駆けて手掛けたものを模倣するのでなく、当初より取引所側が率先してこの手のものを投資家に提供すべきであると思う。

ただもうひとつ一方で、他人の模倣でもやらないよりマシとはいえ売買の薄さに悩む各取引所や証券会社の最近の傾向はなにかこうリスク選好を煽っている感も強い。腕に覚えのある向きにはより機動的で便利な市場にまた進化したと思うが、初心者マークのなかにはこれらに則したテクが追いつく前に中毒性に嵌りヤラレてしまう向きもあろう。「投資家保護」とある部分で対の「規制緩和」、金融庁はこの辺の舵取りの按配が今後問われよう。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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