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MBOでも地盤沈下

さて、忘れた頃にポツリポツリと挙げられるが、先週には去る8月に上場廃止となったワインのエノテカのMBOを舞台にして、SMBC日興証券の執行役員がインサイダー取引の疑いで証券取引等監視委員会から強制捜査を受けた旨が報道されていた。

まあ、やはりこのMBOやらTOBというのは会社破綻と同様にインサイダー取引の中でもとりわけリスクが殆ど無い情報だけに甘い匂いに集まり易い。ところでこのMBO、先に日経紙に出ていたところによると今年1-9月のMBOは15社と昨年実績を上回り2011年暦年では3年ぶりに過去最高を更新する公算が大きいという。

前にも一度触れたがこうした動きには上場維持に必要なコスト負担も大きく絡んでいるし、長年株価の不当評価に嫌気がさしている企業も出てきた。同じ上場するならと、MBOで現在買い付け期間に入っているあの「フランフラン」のバルスなどは東証から脱退して他のアジア圏での上場を予定しているし、他の含みを持つ企業などもこれを追う動きがないとも限らない。

また近年の株安で長いこと東証はPBR1倍割れ云々と彼方此方から割安がいわれてきたが、所謂二番手、三番手の銘柄などの中には保有資産との絡みでどう見ても説明が付かない低水準のまま放置されている銘柄も少なくない。こうしたモノにもまた防衛策の一環でMBO案も出てこようが、そんな動きが次々と活発化すればそれはそれでまた投資家の株離れを助長させそうである。この辺は当の企業、また上記の通り取引所も人事で片付けないで双方の課題と考えるべきであろうか。


今年の日本伝統工芸展

さて、東京では今週初めに終了となったが毎年恒例の「日本伝統工芸展」を過日観てきた。今年で58回目になるこの展も、毎回作者が得意の技巧で少しずつ変化を持たせながらもシリーズで出してくるからお気に入りが居る向きには次の作品が待ち遠しいというものだ。

さて今回の展では個人的に惹かれたのが、漆芸の世界で有名な鳥毛清氏の沈金飾箱「緑風」。氏といえば確か知人にある絵本を見せてもらった際にその原画が氏の沈金作品だった覚えがあるが、これら全て動物のモチーフだっただけに今回の作品で「イトトンボ」が描かれ静謐な和の空間が展開されていたのは新鮮であった。特徴的であったのは通常は沈金加工するのが文様の部分なのをこれは背景部分に沈金を施すという反転というか逆転のデザインに仕上げておりこれが実に溜息が出るほど美しい。

象嵌なども逸品揃いであったが、この他にも原清氏の鉄釉草花文扇壺は上記の「緑風」と併せてエミール・ガレの世界を彷彿させ、また薮内江美氏の乾漆蒟醤箱「樹雨」はこれまたドーム兄弟の木立文を連想させるが、おそらくは西洋の彼らもこうしたジャポニズムへの熱い情景で幾多もの後世に残る名作を手掛けたに違いない。

昨年見た柴田是真の漆の数々も感動的であったが、今やこの蒔絵など世界に君臨するトップブランドが挙って取り入れ始めており、急速にライフスタイルが変化する中でもこうした世界に誇れる技術が絶えることなく伝承され続けているのは本当に素晴らしいことである。


割安しかし逡巡

さて、ここ最近ではメタル系暴落騒動の次は穀物も暴落商状となり商品は相変わらずボラタイルなマーケットとなっている。昨日は「証券投資の日」であったが、株式市場でもさすがにこれらを反映してダラダラと弱地合いであった関連銘柄も今週は安値から下っ放れ、底割れの商状が続出となっている。

ざっと挙げれば先ずは今週年初来安値更新が続出している商社株。三菱商事、三井物産、住友商事等主力中心に何れも3月安値をアッサリと割り込み続急落、非鉄系もかなり酷いが別子こと住友鉱なども今週から下げが加速しリーマンショック以来久しく見なかった4桁の大台割れと崩落している。

しかしこれら、投資尺度から見ればいずれもPERで4倍から5倍前後まで低下してきており思わず食指が動きそうなものだが、過剰流動性が作り上げた昨今のコモディティ相場を前にして見えないリスクの存在にまた逡巡してしまうといった感か。

まあ上記のPERもそうだが、同時にPBRで見てもメッタ売りにされている日本を代表するコア系銘柄並みの水準にまで低下している物も少なくない。コモディティといえばあのジムロジャーズは直近で現在最も適した投資対象は農産物としており、また現実味には欠けるだろうが既にM&Aするには可也魅力的なゾーンに入ってきた銘柄もある。何れ落ち着けば何処かで注目しなくてはならない局面がまた来るだろう。


証券投資の日

本日は10月4日ということで「証券投資の日」である。というワケで本日の日経紙にも「株式投資の意味を問う」などと全面広告で謳ってあったが、昨年を思い返してみると主力の金融株が揃ってこの時期年初来安値更新していたのを思い出す。奇しくも今年もまたメガバンクは、ギリシャ早期デフォルト懸念からの欧米金融株暴落の影響で昨年同様安値低迷となっている。

まあ本日も日経平均は大幅続落となり今年はこのポストに限らず主力のコア系中心にして年初来安値更新組が続出だが、中には数十年ぶりの安値更新に沈んでいるものも一つや二つではない惨状。大手証券投資情報部などが出すコメントは判で押したように「日本株は割安」としているが、既にこうしたコメントが出始めてから個別銘柄は軒並み2割3割急落、中には半値以下にまで暴落した銘柄もある。

上記のメガバンク群は往って来いで昨年の証券投資の日の水準を割り込み、昨年の当欄で投資の日に触れた際に挙げた東電などはファイナンスをやった上に今や株価は約十分の一である。今の環境を見ればやれる時にやってしまったファイナンス敢行組はしてやったりだろうがこんな政策一つ取っても投資離れを起こさせているのは明白、因果応報で何れ竹箆返しに遭うのは想像に難くない。


消えた時価総額

さて、10月入りということで世間では衣替えの季節だがもう早くも期末から半年が経過した。ところで欧州の財政危機やら中国等の新興国インフレ懸念などもあって周知の通り株安が世界的に進行、この半年で実に時価総額が約776兆円(約10兆1,309億ドル)も減少したことが明らかにされている。

これだけの額が消滅するとなれば当然企業を直撃し様々な影響をもたらすが、週末の日経紙にも出ていたように国内でも業績を圧迫している。先に書いたソフトバンクのような例で時価総額が急減したケースもあるが、先週末には住金が持ち合い株の新日鉄株下落で一転しての赤字転落予想を出し、本日も世界経済減速の影響で新安値更新に沈んでいる商船三井も保有株下落と泣きっ面にハチで赤字転落は避けられそうもない。

月替りとなった本日の日経平均は毎週の如く大幅安からの週明けで、特にコア系が再度の急落と依然として冴えない。再編や統合やらで本日からの新会社始動という企業も目立つが、従来予想の利益も評価損の度合いによっては一転して大幅下方修正となるケースもあり、厳しい経済情勢のみならず市場からの虐めとも相俟って更なる経営努力を迫られる場面も今後出てきそうか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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