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サブの台頭

さて今年に入ってからは2月に触れたPTS取引だが、先月の主力7社(カブッドットコム証券、インスティネット証券、マネックス証券、SBIジャパンネクスト証券、松井証券、大和証券、チャイエックス・ジャパン証券)合計の月間売買代金が初の1兆円超となった旨が過日報道されている。

これをヒストリカルで見ると、10年2月の1,450億9700万円を底に順調に拡大、11年1月には5,000億円を超え、3月には9,800億円台にまで急増した。4月は前月比で減少となったものの、5月は再度増加。先にも触れたが、シェアが2%を超えると市場として無視できないという投資家が多く、利用に一段と弾みがつく可能性も出ている。

売買代金の増加傾向については一部外資が指摘するように、昨年10月に空売りが出来るようになり高速売買をする海外投資家が注文を増やしているという事や、国内ネット系では呼値が取引所売買よりも細かく設定されていることが顧客に浸透してきている事、一部では注文方法の多様化により取引所やPTS市場など複数市場の価格や成立し易さなどを判別し、最良と判断される市場へ自動で注文執行を行うシステムが稼動している事も大きな要因となっているようだ。

最近ではスマホアプリなど情報面の充実も後押しとなっており、欧米で見られたようにPTSの台頭が取引所再編を促進したような動きが日本で起きるか注目される。


バランス

本日の日本時間午前に行われたオバマ大統領の債務上限問題を巡る演説にてデフォルト懸念がまた台頭し、東京外国為替市場では円を買ってドルを売る動きが活発化した結果、円相場は一時1ドル77円台に突入した。

昨日ももう何度目だろうか野田財務相が円高に関し「必要なときは断固たる措置を取る」と述べ急激な相場変動を阻止する為に円売り介入も辞さない姿勢を示しているが、実際に政府が為替介入に踏み切れば戦後最高値を受け3/18に行った欧米各国との協調介入以来になる筈なものの、今のところは口先介入にとどまっている。

しかし毎度の事ながら、無秩序な動き、断固たる措置、市場動向を注視等々こと言葉尻を捉えればおかしな表現満載なのだが、その辺は兎も角もある面口先でも表現の優劣が出るなとつくづく。まあ為替とて相場、先の当欄で「現実味を帯びる日本脱出」としたような動きや、最近また出てきたM&A熱もまた然りでこれも平準化の基本形の上にあるのは同じだろう。


素地持つ銀行

さて、このところ地銀でも突如として急落する物が散見される。先週20日には七十七銀行が中期計画説明会で優先株検討の思惑が出たことで後場から急落、その前の週にはあおぞら銀行が、寄り前にトストネットで約3,800万株の大量売買が成立したことから大株主の売り決め観測が台頭し急落していた。

国内ではそんな一件があったが、銀行株株主の一抜けたという穏やかでない話は他のアジアでは7/18付け日経紙一面でも少しだけ触れていたのを見たが、シンガポールのSWFテマセクHDが中国四台銀行のうち、中国銀行、中国建設銀行の株式をLGFVに対する懸念から処分したとの発表も一寸した話題になっていた。

ところで銀行といえば新BIS規制の適用まであと1年半、国内大手銀行の数行も通常業務でで新基準は満たすのはなかなか厳しい。上記の地銀じゃないが劣後債や優先株の変則技でフィイナンスしても自己資本には算入されなくなることから、メガバンク3行のうちいずれかがやむを得ず最後の巨額増資に動くとの観測も絶えない。

このうち増資できるように定款を書き換えた銀行といえば、やはりというかなんともど真ん中なあの銀行であったが、株主総会が終ったのをいいことに増資発表してくる企業も出て来た昨今、銀行勢も今後の動向が注目されようか。


大山鳴動して鼠一匹

さて、今週は周知の通り欧州や米国の債務問題への警戒感などから、金が10日続伸の末に史上初めて1,600ドル台に乗せた。大台クリヤの度に当欄でも何度か取り上げているが、押し目らしい押し目も入れずに急ピッチな上昇が依然続いている。

そういえば今月の七夕の日には先の4月にCCCP(商品バスケット)の買い推奨打切リポートで話題になったゴールドマン・サックスが、コモディティに対する投資比率を引続き「オーバーウェイト」とするように推奨、投資期間は3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月で今年後半から2012年に掛けてコモディティのリターンがさらに高まると予想していた。このうち金価格に関しては、米国の低い実質金利を背景に2011年は上昇が続くとの見通しを示している。

今回より一層ナーバスになっているのは欧州というより期限のある米連邦債務の上限引き上げ問題か。これが合意出来ない場合リーマン・ショック以上のパニックが想定されるというが米国債は極めて安定、現実問題として東電じゃないがデフォルトしたらその影響は計り知れず国債増発のプロセスである程度の緊張を持たせたというところか。

危機を煽れば其れなりにマーケットは動きそこでまた商機も出て来るというものだが、そういえば上記のゴ−ルドマン・サックスは直近で第2・四半期の債券・通貨・コモディティ部門のトレーディング収入は53%減少して16億ドルにとどまり、2008年以来の低水準と大幅に落ち込んだことを発表している。同社アナリストが事前にコモディティ価格の下落を警告していた筈だが、トレーディングデスクにはそれが生かされていなかったという事になるか。


現実味を帯びる日本脱出

昨日の日経紙経済面には「エネルギーを問う」として、IEA(国際エネルギー機関)によると、産業用電気料金の日米の差は2.3倍、日韓では更に2.7倍に広がっているなど国際的に見て日本の電気料金は高い旨が載っていた。

目下のところ電力不足がいわれる今夏、この電気料金に関しては値上げやらペナルティー論も出ているが冷静に外から見てみればこれも酷い話で、先ずはまだまだ関係者の私腹が肥えるシステム中心に無駄の削減ありきが筋だろう。しかし今年は直近の円高も相俟って、数年前にもいわれた日本の企業群の脱出論がいよいよ現実のものとなるとも喧伝されている。

こうも試練が重なると今迄何とか目を瞑っていた物まで耐え難くなってくるものだが税金もその一つ。当欄でも何度か触れたが法人税は先進国中で最高、これだけの足枷がありながら逆にいえば今迄海外勢と競争してこれたものだと感心するもの。

斯様に電気料金、為替、法人税と企業を取り巻く環境は非常に厳しい。既に諸外国では人材含め企業誘致等に躍起になっており、こんな素地が用意されている中で政府の場当たり的な対応如何では更なる環境悪化も考えられる。そうなれば恰好の口実を得た企業群の海外移転が思った以上に加速する可能性は現実問題として有り得るケースであるのも認識しておかねばならないか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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