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単純代替論

昨日の日経紙経済面には「法人税率下げ 財源で応報」とあり、2011年度税制改正の目玉である法人実効税率の引き下げのための財源探しが熱を帯びてきたと出ている。政府税制調査会は法人の税負担の付け替えによる財源確保の検討に着手し、これに対し産業界は純粋な減税を求めている。

日本の法人実効税率は各国と比べて高いとの認識は何処でも共通で、例えばデフレ下の悪環境とも相俟ってここ近年ではそこそこ高級なブランドなど外資系がオフィスや店舗を続々と閉鎖し、日本拠点を他の国に移している一因もここに一部あるともいわれている。

しかしながら費用対効果が特に重視される外資系においては経済成長率著しい新興国などに投資をシフトしてゆくというのは自然な流れで、こうした国内空洞化を鑑みての論に対して消費税引き上げ等含めた新税創設論などあるが、欧州などを見てみるに基本的な生活費等殆ど消費税がかけられていない部分もあり、この辺を一括りにしてしまうような構想は危うさも残る。

首相は、週明けの集中審議で実効税率については「近隣国との比較でまた高いと指摘されている」としていたが、上記の件や低いとされる欧州などとでは社会保険料などが可也違うという部分も把握しているのだろうか?景気で左右される法人税より確実に取れる路線に傾斜というところなのだろうが、最低この辺の事情は把握しておいてもらいたいもの。


世界8位の時価総額

昨日は、シンガポール取引所がオーストラリア証券取引所の買収に向けてTOBを実施すると各紙で報じられている。高成長が続くアジア太平洋地域に城外から資金流入が加速する中、この増大する取引に対応し競争力を高めるのが狙いという。

オーストラリア証券取引所といえば、ちょうど一週間前に取り上げた資源大手の豪英BHPビリトンや英豪リオ・ティントなどが上場しており、この買収が実現すれば両証取で上場企業の時価総額は約一兆9,159ドルとなる。これでカナダのTSXグループを抜いて世界の株式市場ランキングで8位に躍り出ることになるという構図だ。

しかし、同じアジアでこうして証券、デリバティブ取引所の国際的合併が進展しようかという動きがある一方で、日本ではいまだ株主の理解が得られない懸念などとして「総合取引所」に慎重な向きも一部あり遅々として進まずといった光景はなんとも歯痒い感がないわけではない。


買収ファンドも順次撤退

さて、先週末の日経紙財務面の「法務が支える企業戦略」文中では、米スティール・パートナーズなどの「物言う株主」の名も出ていたが、このスティール・パートナーズといえば今月は保有するサッポロホールディングスの株式を一部売却していたことが判明している。

中旬までの立会い外クロスにおいて600万口が三発、計1,800万株入ったことが話題になりその株数から同ファンドの名が囁かれていたが、果たして金融庁へ提出の大量保有報告書において17.55%の保有比率から12.98%へと、この売却株数分に見合う約4.6%を売却していたことを明らかにしている。

当欄でも同ファンドについては4年くらい前から度々触れてきたが、中でもソトーやユシロ化学をターゲットにし、その内部留保をあぶり出した一件は記憶に新しい。ただ、ブルドックソースとの戦い?で「濫用的買収者」として認定されてしまった事件や、リーマン・ショックもありそれ以降はターゲット企業の外しが目立つようになっていた。

ところで近年は日本で活躍する外資系の企業買収ファンドの撤退が目立つ。先に米系のサン・キャピタル・パートナーズの撤退、香港本部のユニタス・キャピタルも日本拠点を閉鎖、証券ではメリルリンチ日本証券も日本の買収投資事業から撤退。もともと上記の判決後日本への投資はリスキーというコンセンサスがあったところへこの市況低迷、リスクマネーは時に必要悪とも言われるが、こうしたものが更に細ってゆくのは閉鎖性の加速など懸念されるところ。


交渉における温度差

さて【FUTURES PRESS】でも既報の通り、今週は東京穀物商品取引所が東京工業品取引所に経営統合を申し入れた事が明らかになった。このシナリオ自体はもう既に関係者の間ではコンセンサスとなっていたが、今週19日の定例記者会見でも両取引所社長がこの件に言及し経営統合の交渉を進めていることを認めている。

既に消え、または消えゆく商品取引所がしてきたように、東穀もまたJCCH株式を全て手放し矢継ぎ早にその次は自社ビルの本館まで売りに出すなどの動きが著しかったが、近年は業界団体からの突き上げも厳しくこれと並行して屈辱の統合申し入れに至ったという感じか。

ココは崩落の過程でも以前から一貫して自主独立路線を謳っていた経緯があり、この辺の悔しさは記者会見における社長コメントにも見て取れる。この期に及んでも引き継ぐ対象商品については「売買高にかかわらずすべての商品を前提に考えている」とし、また従業員の受け入れに関してもできるだけ多く引き継ぐよう求めるなどとあたかも立場が対等かのように錯覚している。

しかし、農水系のこうした一連の言動しかり、また業界で見れば仮にこの救済?統合となった場合にはTOCOMと関西商品との二拠点となるが、売買シェアが全国4商品取引所で1%にも満たない長年最低であった関西証取が最後に残るあたり、まさに各所の体質を色濃く表している感は否定出来ない。


デフレ下のインフレ資産人気

さて小麦急騰劇がまだ記憶に新しい中、本日の日経紙商品面ではトウモロコシの国際価格が6月末に比べ7割高と高騰している旨が載っていたが、コモディティー系の話題ではここ直近で綿花も140年の歴史で市場最高値を付けた旨もよく見かける。

また何十年ぶりという話題では通貨でも、15日のニューヨーク外国為替市場で豪ドルが物色され、同通貨が1983年12月に変動相場制に移行後では初めて、1豪ドル=1.0005米ドル前後と等価水準に達した。

斯様に国際商品、資源国通貨から新興国等の様々な投資対象が順次煽られているが、この辺は周知の通り何れも新興国からの旺盛な需要に加えて、FRBの金融緩和観測で余った流動性資金がコモディティー群に流れ込んでいるのが原因。

しかし上記の綿花の高騰では、ただでさえ需要が低迷しているアパレル業界などまた厄介な問題の出現だ。こんなデフレが進行する中を過剰流動性だけはインフレ資産の争奪戦となっているが、昨日は中国が2007年12月以来、2年10ヶ月ぶりに0.25%の利上げを発表している。これを受け既にNY金が2週間ぶりの安値に急落、NY原油も80ドル割れと4%以上急落しているが、一旦はリスクマネーの収縮から一服となるのかどうか各銘柄に注目である。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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