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JPX150算出開始

JPX(日本取引所グループ)は先週から「JPXプライム150指数」の算出を開始している。この構成銘柄は東証プライム市場に上場する企業からROE(自己資本利益率)から資本コストを引いたエクイティスプレッドの上位75社を選び、これを除いた企業の中から当期PBR及び当期と1期前のPBR平均値が共に1倍を超える時価総額上位75社を選出したもの。

ザッとその面子を見てみると組み入れ比率上位にはソニーGはじめ先に大幅分割を実施したNTT、キーエンス等のほか日経平均には採用されていないニトリHDやZOZOなどが並んだが、一方で時間総額日本一のトヨタ自動車はじめパナソニック、ホンダやソフトバンクなどの日経平均高寄与度銘柄は除外されるなど忖度?しない作りに仕上がっている。

とはいえ選りすぐられた優等生勢のパフォーマンスに他指数をアウトパフォームする伸びしろが期待出来るのか?個人的にはPBRが0.6倍台から様々な株主還元を打ち出しPBR1倍に向ける過程で大化けした大日本印刷のような銘柄に大いなる魅力を感じたものだったが、JPX400の憶えもあるだけにこの辺は今後も注視してゆきたい。

しかしこれだけ篩にかけると銘柄もそれなりに絞り込まれるというワケだが、米のS&P500など絞ろうが無造作に切り取ろうがこのJPX150の条件を満たしているあたりが根本的に違う。JPXのCEOは記者会見で「構成銘柄に選ばれたいという指数にしてゆきたい」と述べていたが、いずれにせよエクイティスプレッドは企業価値創造の源泉でありこの新指数登場で幅広い企業がこの指標を意識してゆくようになるかどうかが鍵になるか。


5年ぶりの歓喜

さて、一昨日の日経紙夕刊・明日への話題は作家の林真理子氏の執筆で、「コロナが終焉を迎えるにつれ、海外のオペラ劇場が次々と来日し始めた。」という書き出しであったが、この手では先月に大盛況のうちに東京公演が終了した世界的エンタメ集団のシルク・ドゥ・ソレイユの5年ぶりの日本上陸が個人的に感慨ひとしおであった。

前回の「キュリオス」以来の日本公演になるが、思えばちょうど3年前の今頃に飛び込んできたシルク・ドゥ・ソレイユ・エンターテインメント・グループが会社更生手続きに入るとの報は本当に衝撃であった。そんなシルク・ドゥ・ソレイユがパンデミックの嵐のなか再建復活を果たし、その最初の日本上陸の演目が「アレグリア」=歓喜になったのは1996年のこの演目の第1回目からのファンにとって嬉しい限りであった。

今回はノベルティグッズのラゲージタグに旧ビッグトップテントの生地を使用するなどSDGs喧しい今ならではという感じであったがやはり各演技が圧巻、定番のパワートラックなど体操競技経験者だけについその目線で観てしまうのは毎度のことだが、エアリアル・ストラップなど初回公演及びアレグリア2とは異なる情趣に富む艶が非常に新鮮であった。そして生の歌や演奏もまさに歓喜、東京公演では来場者が50万人超となった模様だが新生シルク・ドゥ・ソレイユの今後の活動が楽しみで仕方ない。


節税包囲網

一昨日は相続税などの基準となる土地の価格「路線価」が公表されたが、全国の調査地点の平均は2年連続で上昇しその上げ幅も大きくなるなどコロナ禍からの回復傾向が鮮明になっている。ところでこの路線価などを基に計算しているマンション等の評価額に絡み国税庁はその評価額を見直し新たな相続税の算定ルールを先月末に発表している。

この所謂タワマン節税を巡っては当欄では2016年に「美味しいタワマン」と題し、富裕層を中心とした相続対策として高層階との値鞘を利用した評価額のトリックについて触れていたがあれから7年、漸く国税も重い腰を上げたという格好になっている。現在の評価額は全国平均で実勢価格の約4割に抑えられているが、最低でも実勢価格の6割とする方針となる。

しかし節税を巡ってはこのタワマンより前に会社経営者などに大ヒット?したモノに逓増定期保険もあったのを思い出す。保険特有の課税ルールの穴を利用したモノであったが、法人から個人への名義変更で自らの実質の支払い額に対して実に約4倍近くのものを受け取れるなんとも美味しい保険であった。相続税の裾野は富裕層に限らず広がってきており市場変化に対応する柔軟な運用が求められるものの、今後も抜け穴をつくいたちごっこは続くだろう。


22年通年超え

今年も早くも折り返して後半戦に入るが今月も値上げラッシュが止まらない。帝国データバンクによれば3500品目以上が値上げ予定だが、今年は現時点で記録的な値上げラッシュとなった22年通年を超えたという。とりわけ今月は輸入小麦の政府売り渡し価格が4月に引き上げられた事で、パン製品だけで1500品目以上と全食品分野で約44%を占め最多となるのが特徴的だ。

これらザッと挙げても日清製粉ウェルナが家庭用小麦粉・ミックス等で約2~4%、ニップンが同約3~15%、昭和産業が同約2~6%、パン類では山崎製パンが食パン・菓子パンなどの出荷価格を平均7.6%値上げ、フジパンも同約7.7%値上げ、敷島製パンも同約5~7%値上げする。こう書いてみるとちょうど1年前にも小麦値上げで同じ品目を当欄で書き綴っていたなと思い出される。

また外食系ではちゃんぽんのリンガーハットが5日から値上げ、マクドナルドでは19日から都心部の約180店舗で一部商品を値上げするが、1年も経たずに3度目の値上げとなる。そういえば電力会社からは料金値上げの知らせが過日届いたが、今月の値上げ品目のうち電気代を理由にするモノは2割超となっており今後こうした部分の負担も徐々に増してゆくのは想像に難くないか。


株主総会2023

国内の3月期決算企業の株主総会は先週に集中日を迎えたが、先に挙げたアクティビスト絡みの企業に続き注目されていた東芝株主総会では会社側提案の取締役が可決され投資ファンドによるTOBの受け入れ決定が一定の理解を得られた形となった。今後TOBが順調に進行するかどうか注目されるが、TOB絡みではもう一つ、TOBを目指す株主提案が一部可決されたマリコン大手の東洋建設の株主総会もなかなか注目度が高いものであった。

同社の大株主となり1株1000円でのTOBを提案していたのが任天堂創業家の資産管理会社YFOであったが、これが1年以上を経て決裂した結果この度の取締役候補を掲げた経営陣の刷新であった。これを迎え撃つ形で会社側も現在の経営陣を軸とした取締役候補を提案していたが、はたして接戦の末に選ばれた取締役候補のうち過半数をYFOが占め実質的な勝利を勝ち取ることとなった。

今後同社は新たな経営陣によってTOBを検討してゆく事になろうが、先週取り上げた日本証券金融もアクティビストファンドの提案こそ否決されたものの、同ファンドが日銀の天下りと批判をしていた社長人事に関して次期社長については同社上場以来続いてきた日銀などの公的部門出身からは選ばない方針を明らかにしている。まだ提案の否決が大勢のなかにあっても株主主導の経営改革が少しずつ具現化してきている胎動を感じた今年の総会であった。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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