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金庫株消却

本日の日経紙投資情報面には「自社株消却、過去最多に」と題し昨年度の自社株消却件数が前年比で18%増加し302件と2年連続で過去最多となった旨が出ていた。自社株買いで積み上がった株式を消却する事で株主資本は減額されROE(自己資本利益率)が上向く事となり、市場への再放出懸念も払拭され株価の底上げが狙える事などが背景にある。

予てより東証が低PBR企業などに対し資本効率の改善を求めるなか企業側も1株利益等を高めるべく余剰資金などで自社買いを加速させており、東証が今月に発表した投資部門別売買動向では昨年の事業法人の買越額は5.5兆円と前年度から約2倍に増加し1983年度以降で過去最高を更新している。

新しいところでは先々週にホームセンターのDCMホールディングスが総額50億円の自社株買いと発行済み株式総数の4.78%に相当する750万株の消却を発表しており、先月には双日が過去最大の300億円上限の自社株買いと同社としては初めてとなる約1500万株の自己株式の消却を発表している。

これらいずれもPBRは本日段階でDCMが0.82倍、双日は0.78倍と1倍割れだが、株価の方は水準訂正し今月に入って共に年初来高値を更新してきている。昨年の市場再編で上場維持基準として流通株式比率が導入されこの達成を狙った自社株消却の動きも見られるが、上記の通り株価も含め株主還元としては良いネタになるだけに今後も各社の動きが注目される。


楽天銀行上場

先週末に楽天銀行が東証プライム市場に新規上場となった。同日の日経紙にも上場を謳う全面広告があったが、注目の初値は前場に公開価格の1400円を約33%上回る1856円で初値形成しその後も堅調に推移し1930円で引けた。同行のIPOは今年最大の案件とも言われたが、本日も一時2000円の大台超えでセカンダリーでも一寸した回転が効いた堅調相場が続いている。

ところでこの案件、東証から先月に上場承認を受けた当初には想定仮条件の上限が1960円であったが、今月上旬には株式市場の市場環境を踏まえて仮条件を想定より約3割安い1300~1400円に引き下げその後公開価格が1株1400円に決まった経緯がある。これで楽天Gの売却額は当初想定の最大額より約300億円減ったことになる。

今回の値決めには背景に米銀の破綻や欧州銀の経営危機などの金融不安があったワケだが、今月はみずほ証券が公正取引委員会よりIPOの公開価格設定プロセスにおいて企業側が主張した価格を下回る想定発行価格や仮条件を設定し受け入れるよう要請するなど、独禁法違反につながる恐れのある行為があったと注意をしたとの発表が為されている。

予てより個人寄りの売買主体の相違や、ロードショーの形骸化など構造的な問題で初値平均は欧米の1.1~1.2倍と比べるに日本では約1.5倍と乖離しているのは否めないところ。こうした点を重く見て公取も今回初の注意に動いたとみられるが、今後もプロ投資家の呼び込みなど含め公開に臨む企業が適切に資金を調達出来る環境整備が課題となろうか。


夢の国40年の軌跡

昨日は統合型リゾートを取り上げたが、リゾートといえば「東京ディズニーリゾート」が先週開業40周年を迎えている。40周年のイベント「ドリーム・ゴー・ラウンド」は来年まで続くが、お昼のパレードは5年ぶりに新しく生まれ変わりこのパレードでは休止していたダンサー達がおよそ3年ぶりに復活、ディズニーシーでも40周年限定の水上グリーティングが開催されている。

しかし30周年がついこの間の事のようにも思えるほど時が経つのは早いもので、40年前のたしか雨天だった開業当日に当時の高橋社長が挨拶していた姿が今更ながら思い出される。いまのZ世代が当時のパークを体験したとしたらアトラクションの少なさに驚くであろうが、それでもその当時は異空間の夢の国に誰もが酔いしれたものだった。

それから2年後にはエレクトリカルパレードがスタート、更に2年後にはビッグサンダーマウンテンが登場しこの年にはマイケルジャクソンも同園を訪れている。そして90年代に入ってもスプラッシュマウンテン、ミートミッキーの登場など進化を続け、2000年にはシンデレラ城前をダンスフロアにしてキャラクター達とパラパラを踊ったイベントも懐かしい思い出だ。

ところでよく緊急時の対応含めホスピタリティーが賞賛されるディズニーリゾートだが、確かに落とし物など見つかれば綺麗に梱包されたものが自宅に届けられたほか、園外でもオフィシャルホテルに宿泊した際にはチェックインでフロントスタッフから「もしよろしければいかがですか?」とコーナースイートにアップグレードサービスを行ってくれた事も感動した思い出として残っている。

そういった感動体験の憶えから東日本大震災の時はリゾートの復活に期待し急落していた株に恐る恐る買い注文を出したが、その後株価が倍になるのにさほど時間はかからなかった。今も保有していればの話と悔やみながら言うが、分割等を経てその株価は買い値から10倍以上を示現しこちらも夢の国らしい。リゾートの拡張戦略はキャパの都合で一区切りの段階といわれているものの、今後も様々な戦略で人々に感動を与え続ける夢の国であるのは不変だろう。


IR認定

さて、先週政府はカジノを含む統合型リゾート(IR)誘致に関するIR推進本部で大阪府と大阪市の整備計画を認定すると決定している。統一地方選の結果を受けてのタイミングという感だが、これが実現するとなると日本では初めてのカジノ併設施設となるわけで大阪府などは早ければ2029年秋から冬の開業を目指すことになる。

いつもながら気になるのはその経済効果だが、報じられているところの予想では年間来訪者数は約2000万人、近畿圏だけでその経済効果は年間1兆1,400億円が見込まれるという。とはいえあのUSJの最高来場者でさえ年間1500万人弱ということで、この見積もりにやや無理があるとの一部指摘もあるがこの辺は蓋を開けてみなければというところか。

いずれにせよこうした胸算用にいち早く反応するのは株式市場、米ベガスにカジノ関連の子会社があるテックファームHDや貨幣識別機械製造の日本金銭機械など関連銘柄の本命は政府認定と前後し揃って年初来高値を更新してきている。インバウンド需要の活性化にも期待がかかり、折に触れ二番煎じの物色対象も広がりを見せるか。

カジノだけにギャンブル依存症への対策が先ず立ちはだかり収益構造もそのカジノに依存する構図など当然ながら課題も多いが、大阪万博と並びその経済活性化の起爆剤として期待は大きい。今回いち早く政府認定された大阪だが、先行事例の成功が後を左右するため文字通りIR政策の試金石となるか。


弁済順位逆転の衝撃

先週末の日経紙一面では「AT1債、国内富裕層に」と題し、先の経営危機に陥ったスイス金融大手クレディ・スイス・グループの無価値となったAT1債(永久劣後債)を三菱UFJモルガン・スタンレー証券が約950億円分、国内富裕層の個人投資家などに販売していた旨の記事があった。

近年の低金利下で引き合いが多かった劣後債のリスキーな面が改めて露呈してしまった格好だが、国内ではこの三菱UFJモルガン・スタンレー証券以外でもまだ数社がこのAT1債を販売していたとみられる。余談ながら胡散臭い外資に買収された後に経営破綻の道を辿った某取引員も最後の頃は高利率の劣後債を一部顧客に勧めていたのを思い出した。

ところで教科書的な弁済優先順位を無視した処理の副産物が後々マーケットに影響してくるか否かとCSの破綻時に書いていたように、クレディスイスブランドのファンドからは既に約7500億円が流出したほかAT1債の発行コストが上昇し欧州では一部銀行も早期償還の見送りを決めるなどの影響が広がっている。

とはいえ斯様な逆風下で三井住友FGは明日起債予定のAT1債の発行に向け先週から本格的な需要調査に入っているほか、三菱UFJFGも5月下旬以降にAT1債の起債を予定しているなど果敢に新規発行を目指す動きも出ている。はたして日本の大手行によるこれらの発行が世界のAT1債市場回復のトリガーとなるかどうか注目しておきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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