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お墨付き

本日の日経紙ビジネス面では「買収宣告は突然 低迷企業の脱皮」と題し、2021年のニデックによる工作機械メーカー、TAKISAWAへの同意なき買収提案の軌跡をたどる記事があった。8月にはクシュタールによるセブン&アイHDへの買収提案を書いたが、日本企業への「同意なき買収」の事例は14年からの約10年で計29件あり、24年は9月末時点で2件起きている。

“同意なき”なる言葉は今年改正された性犯罪に関する刑法でも使われるなど、これまで日本では相手の同意が無いケースは企業買収においても非常にネガティブなイメージで受け止められてきたものだが、こういった風潮を背景に生産性を向上させるような買収でさえ円滑に進まず企業買収の活発な欧米などに比べて日本企業の時価総額など現状総じて低いのが課題であった。

こうした事態を重く見た経産省は昨年の8月に企業が買収提案を受けた際、企業価値向上につながる真摯な提案を理由なく拒んではならない旨の「企業買収における行動指針」を策定、いわばこれがお墨付きを与える格好になり以降件数は右肩上がりに増えている。東証の資本コストな株価を意識した経営の実現に向けての改善要請と歩調を合わせた経産省の行動指針策定で日本の企業文化も変わりつつあり、そうした意味でも今後の買収事例に注目しておきたい。


またもアノマリー崩れ

注目された今回の衆院選であったが、はたしてというか自民連立政権は過半数割れの大敗となった。今回の振るわない結果においては週末から週明けのマーケットへの影響が懸念され市場関係者は戦々恐々であったものの、蓋を開けてみれば日経平均は小安く寄ったもの灰汁抜けからそこが寄り切りの格好になってあと切り返し、691.61円高と急反発で引けた。

とはいえ今回の衆院選では以前にも書いた、実に1969年からの解散・総選挙で選挙期間中に17回連続の株高実績という所謂「総選挙は買い」というアノマリーが初めて崩れることとなった。期間中も1992年以来の11日連続陰線を引いており何とも心もとない動きであったが、結局解散前日の引け8日の38937.54円から週末の引けは1000円以上も下落した。

それにしても今年は相場に絡むアノマリー崩れが続く。先のオリンピックでも1968年以降のオリンピックで金メダルを10個以上取った夏の大会期間中の日経平均は上昇するというアノマリーがあったものの、周知のように今年は史上最大の暴落の前にこれが脆くも崩れた。それはともかくも自民党内での石破総裁体制は今後どう動いてゆくのか?

選挙後の記者会見で石破氏は国民の厳しい審判だとしながらも続投に意欲を示したうえで野党との連立は現段階で検討していないと述べ、一部の野党も連立を組む気はないと明言している。というわけで今後は政策ごとにそれぞれの野党と連携を模索するという形になるかどうかが焦点となろうが、いずれにせよ来年の参院選まで相場は視界不良の場面が多くなりそうだ。


エネルギーとヘッジ需要

昨日の日経紙グローバル市場面では「電力先物取引が急拡大」と題し、地政学リスクの高まりや異常気象などで世界的に電力価格が変動し易くなり、価格変動をヘッジする需要が高まっていることなどを背景に電力先緒の取引が拡大している旨の記事があった。日本でも19年から電力先物取引が開始されているが取引量としては欧米勢には及ばないのが現状。

電力先物の取引高としてはエネルギー関連の不安定な環境を背景にドイツが突出しており、日本の電力先物にも参入しているEEX(欧州エネルギー取引所)での取引高は前年比の伸び率は52%にも上っているが、エネルギーといえば米でも例えばICE(インターコンチネンタル取引所)なども近年は天然ガスや原油などの取引の割合が急増してきているのが現状だ。

上記のドイツなどウクライナ戦争や中東情勢の悪化が天然ガスなど燃料価格の変動を大きくするが、ICEでは特にこの天然ガス先物の引き合いが増加し足元ではその建玉が過去最高を更新していること事もありエネルギー関連の売り上げは32.1%増と大幅な伸びを演じている。エネルギー・トランジション時代も見据え米大統領選でもエネルギー政策は大きなテーマでもあるだけに今後もこのマーケットには注目しておきたい。


倫理観の希薄化

さて、東京証券取引所の職員がインサイダー取引に関与したとして証券取引等監視委員会から金融商品取引法違反容疑で強制調査を受けていた旨が各紙で報じられている。インサイダー取引の疑いといえばつい先週末にも金融庁に出向中の裁判官もまたインサイダー取引容疑で強制調査を受け、同委員会が東京地検特捜部への告発を視野に取引状況等を調べている旨も報じられている。

上記の東証職員の場合、上場部開示業務室に勤め企業の公開前の適宜開示情報を基に親族に株の売買を推奨した疑い。また裁判官の方は上場企業情報開示制度の企画立案他、企業の上場時やTOB、M&Aなどを行う際に提出する開示資料の審査も所管する企業開示課が出向先であった。こちらは堂々と本人名義で取引していたというから素人丸出しだが、双方共に取引を行った輩がこれまでとは毛色が異なるところが異例だ。

数あるインサイダー取引ネタの中でも特にTOBは企業破綻と共に確実性が高くその旨味も大きいだけに、その甘い香りに魅せられ情報を掴んだ多くの向きがインサイダー取引に手を染めてしまう例が多いが、曲がりなりにも市場改革の旗振り役である取引所の内部でインサイダー取引が行われていたのでは洒落にもならない。今後東証へ行政処分が及ぶか否かだが、いずれにせよ早急な信頼回復が求められる。


インバウンド回復と共に

高まる地政学リスクや金利情勢など複合的な要因を背景に依然として金(ゴールド)の上昇は衰えることはなく2,700ドルの大台を超えて来たが、そうしたなか本日の日経紙商品面では先月に中部国際空港で重さ6キロの金塊密輸を摘発した旨が出ていた。東では成田空港でも今年上半期に摘発された金密輸の押収量は前年同期比6.3倍に上っている旨も先に報じられている。

上記の例など国際線から国内線に切り替わり税関検査が行われないところに目を付けたケースで、摘発されたのが6キロであるから先月の相場でも5200万円超えと消費税分で520万円超の報酬?を目論んでいたか。金密輸といえば報じられる機会が多くなったのは消費税が5%から8%に引き上げられた頃からで、この中部国際空港もこれまで金密輸の舞台として度々報じられてきた経緯があった。

ただその後は新型コロナを背景とした渡航制限で急減していた。それがコロナ禍明けでインバウンドと共に全国の税関が摘発した金密輸は今年上半期では件数で前年同期比の1.8倍に、その押収量は8倍以上にも上っているなど一気にこちらも回復?してきたということか。水際対策強化等もありコロナ禍前に9割超ともいわれた成功率は下がってきていると考えたいが、銅よろしく相場高騰で犯罪の素地もまた高まっていることで一層の取り締まりが求められるか。


代替品逆転

新米の流通が始まったことで各所店頭ではコメのラインナップも以前の光景に戻った感があるが、先週末の日経紙総合面には「コメ高騰、代替品に特需」と題し、コメに代わり乾パスタなどの製品に食品各社が力を入れている旨の記事があった。先の消費者物価指数でもコメの価格が49年ぶりの上げ幅と報じられている通り、これによりコメの販売量が前年同期比で大きく減少するなど消費者の購入控えが目立っているのが背景という。

しかしこんな現象を見るに、つい2年前は国内消費の約9割を海外から輸入する小麦がウクライナ危機に因る国際相場上昇や円安で高騰が止まらないなか、ドミノピザやピザハットなどピザ業界が相次いでピザライスボウルやごはんMYBOXなどコメを使った新商品を投入し高騰する小麦の代替を模索していた光景が記憶に新しい。

国内需給率がほぼ100%を誇り価格の変動も少ないとされていた国産穀物の代表格もすっかり需給の構図が変わり、上記の代替品の構図も再度逆転してしまっているあたりいろいろ考えさせられる。思えばにわかおにぎり専門炭等も小麦代替がいわれていたあたりから増殖していた気もするがこの原材料高騰で試練の時だろう。今後日本の食のスタイルは何処へ向かうかだが、この構図が続けばまたコメ離れに拍車がかかるのが懸念されるところでもある。


東京ゲームショウとIP株

さて、先週にサウジ政府系ファンドのPIFが任天堂の保有比率を低下させたことが明らかになっているが、PIFといえばこの任天堂はじめ日本のゲーム株保有が有名なところ。ところでゲームといえば先月末まで「東京ゲームショウ」が幕張メッセで開催されていたが、今年の出展社数は985社と過去最高となった模様で、この幕張メッセでもサウジが大型ブースを構え今後も日本への投資を進める考えを示していた。

ところでこの東京ゲームショウの期間中に歩調を合わせるべく株式市場では年初来高値を更新するゲーム株が多数出たのがひときわ印象的だったが、上記のサウジ政府系ファンドが大量保有してきた経緯があるカプコンはこの初日に年初来高値を更新、ちなみに同じく同ファンドが買い増しを続けて来た東宝もまたこの期間中に年初来高値を更新してきている。

他にもこの日に同じく年初来高値を更新していた銘柄にコナミグループや先週に年初来高値を更新してきたバンダイナムコHDもあったが、こうしたエンタメ関連株は先に経団連によるコンテンツ予算増提言も報じられていた通り、政府からのサポート期待も支えにこの期間に限らずともここ数か月の混乱相場やその出直りにおいてもTOPIXを大きくアウトパフォームするなどその堅調さが目立っている。

また上記所銘柄はそれぞれ例えばバンナムはドラゴンボールやワンピース、コナミも桃鉄など有力IPを保有しているが、前にも書いた“ゴジラ”や親子世代にわたるゲームなどと同様に登場して既に数十年経ってもなお多くのファンを抱え、同時にマネタイズが進んでいる点などからもIP関連株には今後も引き続き注目しておきたい。


総選挙と相場彼是

衆院選が公示され27日の投開票に向けての選挙戦がスタートした。総選挙と株価については投開票までは選挙公約に示される経済政策への期待等から買いというアノマリーを既に当欄で書いていたが、昨日の日経紙夕刊・十字路ではそれ以降の投票日直後から投票日1か月後の期間では下落回数の方が多く、どちらかといえば株価は軟調となる旨が載っていた。

ちなみにドル円相場も解散日から投開票日までを見てみると2000年~2021年まで8回のうち5回が円安方向へと動きやすい傾向が見られるが、本日の日経紙投資面でもこの為替に関しては衆院選の円相場への影響が与党で過半数を獲得した場合には「影響は限定的」との業界関係者の回答が68%で最多であった旨も出ていた。

冒頭の件でもこのスパンを3か月で見た場合では、与党第一党の議席数が大きく増えた時、もしくは微減にとどまった時は株高が続いたものの、大きく減った時は下落したデータがある。今回も与党で過半数を確保できるかが攻防ラインとなるが、序盤情勢分析では自民は大幅に議席数を減らし15年ぶりに単独過半数を割り込む可能性も報じられている。いずれにせよ選挙後の内閣の安定性はこれら相場を展望する上でも一つの重要な要素になると思われるだけに今後も注視しておきたい。


睡眠市場の伸びしろ

昨日の日経紙ビジネス面では、「起こせ!睡眠2000億円市場」と題し、ここ数年拡大する睡眠市場において旺盛な需要を取り込もうと各社が挙ってこの関連の提案を競っている旨の記事があった。この睡眠市場だが、富士経済によれば2023年は前年比17%増の1750億円となり、今年も9%増の1904億円に達する見込みという。

睡眠関連マーケットへの関心の高まりは数年前に「ヤクルト1000」が話題となり、コンビニやスーパーから駅の自販機に至るまでその姿を消したあたりから拡大が加速したような感があるが、前回も取り上げた際に書いたようにOECD30か国中の中でも日本人の平均睡眠時間は最短といわれているだけに伸びしろのあるマーケットとして商機は既に十分にあったといえようか。

睡眠関連といえば今年のノーベル賞ウィークでは生理学・医学賞で京大の森和特別教授や、阪大の坂口特別教授らと共に受賞期待がかかっていた人物に、睡眠・覚醒を抑制する神経伝達物質のオレキシンを発見した筑波大国際統合睡眠医科学研究機構の柳沢雅史機構長の名も挙がっていたなと。睡眠不足等による経済損失は25年には18兆円規模と試算されており、生産性の低さが課題と言われて久しい日本だけに今後も数多の企業がこの市場に参入してくるのは想像に難くないか。


社内昇格の壁

さて、先週末の日経紙ビジネス面には「女性取締役、社内昇格は1割」と題し、現状の女性取締役の属性では社内からの昇格が1割にとどまり社外の人材に頼る構図が鮮明になっている旨の記事があった。ちなみに日経クロスウーマンによれば現在東証プライム市場時価総額上位500社の取締役男女比は男性が80.8%、女性が19.2%となっている。

この比率だがコロナ禍の一桁台から見れば大幅な伸びとなっており、起用が加速した半面中身に課題といったところか。またプライム市場全社対象で女性取締役0人の企業は2024年7月時点で94社と記事にあったが、上記の調査対象500社で見てみると女性取締役が0人の企業は2022年に44社あったが、2023年には16社に、更に今年は4社とこちらは激減している。

社内昇格の壁が課題という事だが、現在女性取締役比率では50%とトップを走る大和証券など6人のうち2人が生え抜き人材、以前より着実な人材育成をしてきた感がうかがえるが他の上位企業も従前は女性取締役の存在など想像出来なかったような重厚長大企業が生え抜きの女性取締役を擁して上位に入って来るなど業界・業種も多彩な広がりを見せている点では今後が期待出来るか。

いずれにせよ政府の目標として2030年まで女性取締役を30%に引き上げてゆくというのがあり、もう一つの中間目標として2025年に19%にするというのがある。そうしたなかで上記のように生え抜き人材を登用する動きも徐々に目立ってきている模様だが、来年はこの中間目標の年になるだけに引き続きこの辺の動向には注目しておきたいところ。


マーケットと政治

本日午後に石破内閣は衆議院を解散した。15日公示、27日投開票の日程となるが、この選挙に向け政治資金収支報告書に不記載があった議員など合わせて12人を公認しないと発表している。衆院選は2021年以来3年ぶりのことだが、ちなみに今回の衆院解散は石破総理が今月就任して1週間そこそこの解散となり、総理就任から解散までの期間は戦後最短となった。

一方本日の日経平均は340円高と反発となったが、日経平均といえば先週は石破氏の「個人的には現在追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」とのコメントで約1000円の上昇を演じた経緯がある。併せて「株価の日々の動向について私からコメントすることはしない。株価の動向というのは冷静に見て行きたいと考えている」ともコメントしているが、衆院選を前にして株式市場を冷やしたくないという思いも垣間見えた。

この辺は思えば「バイ・マイ・アベノミクス」と訴えた安倍政権時から特に株式市場への配慮の重要度が増してきた感もあるが、利上げ方針など政治優先の踏み込み過ぎたこの一連の光景は日銀の独立性を損なう恐れもあるという市場関係者は多かった。金融政策に踏み込むといえばそういえば米でもトランプ前政権時にFRBに利下げを求めFRB議長を罵倒した一件が思い出されるもの。

斯様に米の場合、資産に占める株式保有比率は半分以上にもなるだけにいまだ10%台の日本とは違い、マーケットに配慮した発言や政策を取らざるを得ない構図になっているのは解るが日米共に金融政策の独立性は確保されるべきだろう。今後日本もこの比率が上がるにつれ、市場が発する警鐘含めマーケットとの対話が重要になってゆく構図に変貌してゆくか。


来年の太陽フレア

本日は北海道各地で「低緯度オーロラ」が観測された模様。これは太陽フレアに伴う磁気嵐に因るものだが、太陽フレアといえば今月1日夜と3日に相次いで大規模な太陽フレアが発生し地球の方向へのコロナガス放出も観測されている。特に3日のそれは7年ぶりの規模でこの影響から長距離通信などに障害が発生する可能性も指摘されていたが、先週末の日経紙社会面でも「太陽フレア 通信障害恐れ」と題した記事が載っていた。

太陽フレアの規模は5段階あって(A、B、C、M、X)で表されるが今回発生したのはその中でも最も大きい規模の分類となっている。国立天文台・太陽観測プロジェクトのXアカウントによればXに分類された今回の規模は史上15番目の大きさだったという。Xばかり出てくるがもう一つのX絡みでは、年明けの能登半島地震でも活躍したスペースX社のスターリンクも太陽フレアの被害に遭った経緯がある。

スペースXは2019年以降、スターリンク向けに多数の衛星を打ち上げてきたが、2年前に新たに打ち上げた小型衛星49基のうち太陽フレアが原因で40基以上が機能停止に陥ったことがあった。試算では太陽フレア等による経済損失は最悪の場合世界で650億ドル、日本円で10兆円以上とされている。太陽の活動は11年周期で活発になったり弱まったりするが、来年くらいに次の活発なピークが来ると予測されているだけに関係各所はこれらに向けた備えが求められるか。