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未知のマーケット

先週は米ニューヨークで日本アニメの祭典としては最大のイベントといわれる「アニメNYC」が開催され各地からの多くのアニメファンで会場がにぎわった。折しも来月から「鬼滅の刃」の新作が公開予定で既に大手チケット販売サイトでは前売り券の初日の売り上げがアニメ映画の最高記録を塗り替えるなどその期待が高まっているという。

斯様に世界的にアニメ市場が拡大するなか、コンテンツビジネスを軸に連携して成長に繋げたいとする動きは先にバンダイナムコHDの株式を取得表明したソニーGなど顕著だ。同社は今年1月にもKADOKAWAに約500億円を追加出資し筆頭株主になっているが、企業が保有するIPを配信基盤等を使って展開したりアニメの共同制作に力を入れるが、この株式取得で日本のコンテンツ大手による3社連合が誕生する。

またアニメ絡みではもう一つ、このアニメNYCが開催されていた時を同じくして横浜では首脳級国際会議の一つ「TICAD」(アフリカ開発会議)が開催されていたが、今回のTICADでは漫画・アニメの分野で日本企業が管理するIPをアフリカ企業がデジタル上で管理、全土に届けるなどの協業を目指す初めての覚書も交わされている。グローバルサウスマーケットは日本にとって伸びしろのあるマーケットだが、日本の基幹産業になってきたIPモノを内外共にどう展開してゆくのか今後も注目される。


トークン化戦略

さて、先週末にSBIホールディングスが金融資産をブロックチェーン上でデジタル資産の「トークン」として売買する新たな取引市場を作る旨が報じられている。シンガポール企業と共同開発して、これにより株式や債券から仮想通貨などあらゆる資産を一元的に取り扱い、SBIグループの6700万件の顧客基盤などに向けこれら現物資産を暗号資産として24時間、365日売買出来る取引所を提供するという。

ブロックチェーン技術は既にリーマンショックの頃に開発されているが、これまでの規制も整備されてきており米金融は先行している。こうしたことを背景に大手JPモルガンがドル預金トークンの試験運用を発表しており、オンライン証券大手のロビンフッドは欧州で株式トークンのサービスを開始している他、暗号資産取扱い大手コインベースもトークン化した株式の提供に向けSECに認可を申請している。

上記のロビンフッドの株価は既に年初から倍以上となっているが、このトークン化戦略が囃され今月に入ってからは更に一段高し上場来高値を更新してきている。いずれ上記のコインベースとも競合する事になろうが、今年の時点でトークン化される資産は6000億ドルといわれるが、ここから年間で5割のペースで増加し2033年には19兆ドルと30倍以上になるとの一部指摘もある。

SBIも米ロビンフッドのように多彩な新しいサービスを次々と打ち出してくれるかどうかだが、ロビンフッドは既に未上場株までラインナップしているのが凄い。本当は斯様な飛躍したサービスが個人受けするのだが、日本では規制面等でここまでの提供は難しいか。とはいえ国際間決済も瞬時に完了し国境や時間にとらわれない取引が叶うなど期待が出来るだけに今後の展開には注目しておきたい。


ナイトタイムエコノミー

お盆が明けても厳しい猛暑が続いているわけだが、こうした猛暑下で出掛ける時間を変更するなど行動にも変化が見られアソビュー調べではこうした向きが全体の7割以上を占めていることが分かっている。“朝活”に加え“夜間消費”に活路を見出す向きもここ増加し、富士サファリパークでは今月いっぱい「ナイトサファリ」が開催され、アコーディアゴルフでは暗闇で快適にプレー出来るようライトアップされたコースで楽しめる「ナイトゴルフ」の営業が行われている。

サファリといえばもう一つ、上記のナイトサファリはリアルだが、高輪ゲートウェイシティではMRゴーグルを用い街中でもナイトサファリが体験出来る「TAKANAWA NIGHT SAFARI」が今週からスタートしている。東京都心では屈指のオフィス街である丸の内でも、過日丸ビルで“夜遊び”をコンセプトにしたパーティーなどの企画が設けられるなど丸の内の夜を活性化しようという試みも出てきている。

そういえば景気に赤信号が灯る中国ではこの“夜間消費”が景気回復の一手として注目を集めているようで、四川省などでは露店出店の緩和や遊覧船の区域拡大など従前より定番のパンダ消費等と併せ夜間消費の拠点づくりを政策に掲げているという。そんな中国事情は兎も角も、国内では夜の飲食店来店客などはコロナ前から4割近くも減少しているなど完全復活していないのは否めない。

こうした部分ではインバウンドなども使えそうだが、昨日に日本政府観光局が発表した先月の訪日客の推計値は10ヵ月連続で300万人を超えるなど増勢が続いている。日本政策投資銀行によれば観光客のナイトタイムエコノミーの国内市場規模は約8兆7000億円といい、まだまだ伸び代のあるナイトタイム消費に大手企業などもどうかかわって行けるかも鍵にもなってこよう。


割安感で復権?

本日の日経紙グロース市場面では「金より割安、資産性注目」と題し、これまで産業用途としての需要鈍化から相場が低迷していた貴金属のプラチナが金(ゴールド)と比べて割安感が強いことなどを背景に、資産としての側面が注目されるなどで相場水準を切り上げている旨の記事があった。地金など大手の田中貴金属工業店頭では個人への地金販売量が7倍にも膨らんでいるという。

このプラチナとゴールド、その産出量の違いなどからかつてはプラチナの上鞘が常識的であったがその鞘も逆転してはや約10年、もう一昔前といった水準である。それまでは途中途中で金が上鞘に浮上する場面では“珍現象”などと各所で取り上げられ、先物でもリーマンショックなど挟んでこうした場面では「ストラドル取引」などを仕掛ける向きがあったが、鞘滑りで時間切れと軒並み思惑外れとなった光景など既に懐かしい。

今から4年ほど前にもPGM系が挙って上昇し長い眠りから覚めたと話題になったことがあったが、金のほうもまた複合的リスクを囃し環境問題で囃されたPGM系との鞘は劇的に変わることは無かった。今回はどうかというところだが、貴金属といえば先に銀も同じような金に対する割安感から13年ぶりの高値を付けている。これまた産業用需要回復期待がかかっているが、“割安感”で何処までその比価を縮小出来るのか今回も其々注視しておこう。


赤字を買う

本日の株式市場は3日ぶりに反落となったが、先週の新規上場組では公開価格375円に対して約2倍の初値でロケットスタートとなった東証グロース市場のアクセルスペースも週明けのストップ高の地合いを継いで前場に上場後高値を更新した後に反落となっていた。既に5営業日で株価は3倍近くに化けているが、資産運用大手のブラックロックも同社への投資意向を示していることもあり投資家の成長期待が大きい案件となっている。

とはいえ宇宙事業は先のアイスペースの2度にわたる月面着陸失敗も記憶に新しいように技術的な難易度から失敗リスクが付き纏い、同じグロース市場に上場する同社の株価はこのアクセルスペースの上場日には皮肉にも年初来安値を更新し5月高値からは約3分の1水準に下落している。ただそういったなかでもアイスペースは宇宙開発強化のために新たな企業と協業の覚書を締結するなど次のミッションに向けた動きが進んでいる。

宇宙事業の経済規模は80兆円を超えているともいわれているが、日本の宇宙ビジネス市場は2020年時点で約1.2兆円とまだ伸びしろが大きい。とりわけ日本では公的投資が市場の約9割を占めているという試算もあるだけに、公的ではない民間ありきの持続可能な進行がどれだけ拡大するか、今でこそまだ宇宙事業各社は赤字を買ってゆく構図だが今後の展開に期待したい。


ステーブルコイン解禁

さて先月は米でステーブルコインの普及を目指すところの「GENIUS法」が成立した旨を書いていたが、日本でも金融庁が今秋にも法定通貨に価値が連動する円建てステーブルコインの発行を国内で初めて認める旨を本日の日経紙が1面で報じている。名称は「JPYC」となり、1JPYC=1円に価値が保たれるように預金や国債といった流動性の高い資産を価値の裏付けとして保有し、

ステーブルコインで先行しているドル建てモノはテザーが発行するUSDTとサークルインターネットGが発行するUSDCが2強となっているが、将来性を買ってこうした暗号資産関連株はトランプ大統領当選後に大化けしてきており、上記のサークルインターネットG株価の6倍超をはじめ、ロビンフッド・マーケッツの株価は4倍超、コインベースのそれも2倍超とどれもその恩恵が期待され物色対象にされている。

関連株の方はそれとして現在は上記のドル建て中心にその市場規模は2500億ドルに拡大中、大手外銀の一部ではこの市場が2030年までに最大で4兆ドル近くと足元の10倍以上の規模になるとの予測がある。上記のコインベースはECサイト運営者向けに同コイン対応の決済サービスを立ち上げておりカード系の独占市場に風穴を開ける格好になる。

このJPYCも今後3年間で1兆円分の発行を目標とするようだが、斯様にステーブルコインは決済手段として伝統的な金融システムに取って代わる可能性をも秘めている他、送金や資産運用サービスへの活用など今後決済業者以外でも銀行から小売りまで各々で動きが出てくるかどうかこの辺にも注目しておきたいところだ。


建設業界にも再編波

さて、先週末にはまた大型再編の報がゼネコン界であった。売上高ランキングで業界4位に位置する大成建設が、TOBなどを通じて東洋建設の全株式を取得するなどで総額約1600億円を投じて買収を図るとのこと。これが実現した暁には先にインフロニアHDによる三井住友建設の買収額を上回り建設企業同士のM&Aとしては過去最大となり、売上高ランキングでは2位の大林組に次ぐ位置になるか。

建設業界では今年5月にもインフロニアHDが三井住友建設を買収すると表明しているが、このインフロニアHDもかつてこの東洋建設を1株770円でTOBすると試みた経緯がある。これが安過ぎると1株1000円でここへ割って入って来たのが任天堂創業家の資産運用会社YFOであったが、取締役候補のうち過半数をYFOが占めるまで攻めたものの紆余曲折の末志半ばでYFOはTOB提案を取り下げる結末となっていた。

とはいえ今回の再編劇を導いた立役者こそこのYFOともいえ、この構図で思い出したのがかつて石油業界で出光興産と昭和シェルの経営統合の際に泥沼化していた出光経営陣と創業家側の間に入り対立緩和に一役買った村上ファンドの村上氏か。石油業界で同氏は他にも自らが大株主であったコスモエネルギーHDを岩谷産業にバトンタッチし脱炭素に打って出る体制を作り自らのイグジットも十分な利を得ている。

今回の買収劇も1株1750円ということで既にそれに近い現在の東洋建設株価としては派手な鞘寄せこそ起こるべくも無いが、冒頭の通り1株770円でのTOBが出た当時からすれば現在の株価は言わずもがなでYFOのイグジットとしては申し分ない水準だろう。いずれにせよこの買収劇により工事領域で存在したすみ分けもその壁が取り払われることになったが、昨今では建設従事者の不足がいわれるなか他の大手ゼネコンにも動きが出てくるかどうかこの辺が今後注目だ。


アンハッピー?セット

本日の日経紙ビジネス面にも「ハッピーセット転売問題」と題し記事が載っていたが、毎度この企画をやるたびに物議を醸しだしているマクドナルドの子ども向けメニュー「ハッピーセット」。今回9日からスタートした人気トレーディングカードゲーム・ポケモンカードが2枚付くハッピーセットもやはりというか炎上騒ぎとなっている。

今年でいえば2月の「星のカービィ」、5月の「ちいかわ」の時も転売ヤーの暗躍でこの企画は早期終了となりフリマサイトでは大量の品が法外な値段でズラリと並んだ経緯があったが、それらの対策を踏まえ共同対策を謳っていたはずの今回も全くと言っていいほど効果なしで、店や道端のいたる所にカードだけ抜きとられ誰も食べてくれないハンバーガーの放置や廃棄が多数見受けられる毎度おなじみの事態を引き起こしている。

同社はこれを受け早速公式サイトで謝罪し再発防止策を謡っているが、2月と5月の騒動を経て個数や年齢などいくらでも調整が出来たはずだが、3度目もこんな有り様なだけにやはり性善説頼りの策も限界だろう。いくらマックが社会貢献を謳っていても、この企画をやるたびに転売やフードロスが話題になっているさまはそのブランドイメージにもネガティブに作用する。

そういえばフリマサイトに並ぶマクドナルド関連モノといえば最近では偽造された株主優待券の流通もまた問題になっている。転売ヤーや偽造集団が元凶なのは間違いないところでもあるが、上記にも書いた通り企業のブランディング維持という側面からもマックやフリマサイト運営会社はじめ各所は早急に実効性のある対策が求められるというもの。


FOMO相場

連休明け本日の日経平均は、米と各国の関税協議が進展し米関税政策を巡る不透明感の更なる後退や米早期利下げ観測を背景に5日大幅続伸となり、大引けは前週末比897.69円高の42718.17円とこれで昨年の7月11日に付けた42224.02円を抜いて約1年1か月ぶりに過去最高値を更新してきた。先にTOPIXが史上最高値を更新していたが、日経平均もこれに遅れ史上最高値更新が叶った格好。

個別ではNAV(時価純資産)比で大幅ディスカウントが指摘されていたソフトバンクGが続急騰、IPのサンリオもストップ高とこれら値嵩の寄与も高いが、踏みが原動力になっている部分も否めないか。昨年の過去最大の下げ幅を記録した後の軌道パターンや関税発動時期などからここ数か月目先の下げに賭けた向きも多かっただろうが、信用買い残も整理が進んでおり低信用倍率銘柄では担がれているものも少なくない。

まさにお盆に入る直前での最高値更新劇となったが、早速これを受け大手証券勢の鼻息は荒く揃って今年の高値予想を上方修正してきているあたり一旦は利を入れたくなる衝動にも駆られるものだ。昨年は米CPIが市場予想を下振れしたのを機に過去最大の下落を呼んだが、さて目先のCPIは如何に。その辺は兎も角もいずれにせよ彼方此方インフレの波をひしひしと感じる今日この頃である。


エルメス一強

先週末の日経紙ビジネス面には「勝ち組はエルメス・プラダ」と題し、ラグジュアリー業界の2025年1~6月期決算では仏エルメス・インターナショナルが増収増益となった一方で仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンと仏ケリングなどは減収減益と明暗が分かれた旨の記事があった。消費者が財布のひもを締める逆境下で高級ブランドとしての“底力”の差が出たとの見方があるという。

これを如実に表すかのように今年の春先にはエルメス・インターナショナルの時価総額はLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンを抜き去り、今や日本企業の時価総額トップに君臨するトヨタ自動車のそれをも抜いてきている。エルメスといえば“バーキン”がもう代名詞のような存在となっているが、先に行われたサザビーズのオークションではこのバーキン第一号がハンドバッグとして過去最高額の800万ユーロで落札されたのが記憶に新しいところ。

エルメスのブランディングで直ぐに頭に思い浮かぶのはやはり伊フェラーリだろうか。共に需要に対してある一定割合の少なさで生産調整しており、バーキンクラスになるとオファーがかかるのも購入履歴等の積み上げ如何にかかってくるというのが暗黙の了解となっているとか。厳格に管理された販売手法とその希少性により、これまたフェラーリの各種モデルと共にリセールバリューもラグジュアリー界では常にトップクラスを誇る。

当欄では今から14年前の2011年にも自動車業界が減産体制を強いられていた件を書いた際にフェラーリとBMWで明暗が分かれたのを取り上げていたが、そこでは「~要は或る程度手が届く領域のある部分はそれだけ分布も多いので不況の影響はやはり避けられないと~」と書いていたが、冒頭のエルメスとルイヴィトンはまさにこの構図だろう。一部大手外銀では高級ブランド業界の低迷が26年後半まで続くとの予測が出ているが、優勝劣敗が更に鮮明になってくるかどうか注目される。


産業化への道筋

本日の日経紙総合面には、住友ファーマがパーキンソン病を対象としたiPS細胞由来の医薬品候補について厚労省に製造販売承認を申請した旨の記事があった。iPS細胞といえば皮膚や血液の細胞に特定の遺伝子を導入して培養する事であらゆる組織や臓器の細胞に分化出来るようにした細胞だが、2007年には京都大の山中教授がヒトからの作成に成功し臓器や組織の機能を再生できると今後に期待が高まっていたもの。

これを囃して昨日の東証プライム市場に上場している住友ファーマの株価は年初来高値を更新していたが、4月の関税ショックの時に付けた安値からはや約2.8倍近くに化けている。iPS系では他に東証グロース市場に慶応大学発ベンチャー企業でiPS細胞を用いた心筋再生用心筋球のHeartseedも上場しているが、こちらもまた4月の安値から6月の年初来高値まで同じく約2.8倍に高騰しており期待の高さがうかがえる。

しかしiPS細胞といえばつい先日も内閣府の生命倫理専門調査会がヒトのiPS細胞から受精卵を作成する研究を認める事で大筋合意した旨が報じられていたが、現在のところこの分野では日本が世界を主導している。冒頭の山中教授がノーベル賞を受賞した翌月には当時の安倍首相が巨額の研究費を約束した経緯があったが、世界中でこの手の技術開発が激化してきているなかここから産業化まで日本が主導出来るかどうか国の後方支援も今後要になってくるか。


金融課税扱いの是非

さて、金融審議会の作業部会では先週から暗号資産に関する法制度を見直すための議論が始まっている。仮想通貨が主に投資目的で取引されているのを受け、金融商品取引法に位置付けて利用者保護を図るが、インサイダー取引の規制の新設などが論点になるという。今年末に向けて議論を取りまとめて、来年の通常国会での金商法など関連法の改正を目指す意向だ。

米連邦議会では仮想通貨関連法案が成立し次なる法案整備にも期待が集まっているが、今や暗号資産全体の時価総額は直近1ヶ月で約7500億ドル増加し4兆ドルの大台を突破してきている。米企業では先行して仮想通貨備蓄の動きが出ていたが、最近では当欄でも取り上げた通り国内もグロース市場の上場企業一部にもそうした戦略的備蓄の動きが活発化してきている。

そうしたなか冒頭の議論開始の前日に、暗号資産の業界団体である日本暗号資産等取引業協会と日本暗号資産ビジネス協会が金融庁に対し税制改正要望書を提出している。個人投資家にとってはこれが一番関心のあるところだろうが、現在主要国ではスイスやドイツ(1年以上保有)、シンガポール等は非課税、米(1年以上保有)や英では約20%となっているなか、日本はいまだ雑所得扱いとなっているだけに申告分離課税に向けての進展があるか引き続き注目される。