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“売り”から“買い”傾向に

さて、先週は東証プライム市場に上場している化粧品サイト運営会社「アイスタイル」の業務資本提携を巡るインサイダー取引をしたとして、コンサルタント業の男が東京地検特捜部に金融商品取引法違反容疑で逮捕された報があった。この手の事件といえば昨年は胴元の東証社員や、金融庁に出向中の裁判官まで同容疑で挙げられるという前代未聞の事件が記憶に新しいところ。

ところでこのインサイダー取引といえば、金融庁はTOBを巡るインサイダー取引事件の増加を受け違反した場合の課徴金に関し不正に得た利益に一定の係数を掛け合わせるなどで欧米の水準に近づけるなどこれを17年ぶりに見直す旨が先週の日経紙一面でも報じられている。この辺に関しては2007年ごろの当欄では課徴金を払ってなお利益が手元に残る“やり得”状態と書いていたがあれから20年近く、漸く“やり損”の構図となるか。

しかしインサイダーといえばひと昔前は証券取引等監視委員会も手薄で、その手の情報伝播も今よりはるかに緩かったものだ。それこそ兜町界隈の一部OLクラスでも何故か筒抜けだったこともあったし、夜に舞台を移せば同伴やアフターの場でその手の情報が飛び交っていた光景を思い出す。そう考えると今は末端より川上に近い向きが手を染め摘発されてしまうケースが多くなったと感じる。

もう一つ、日経紙では昨今の東証による資本効率改善要求などを背景にTOB案件に乗る“買い”の事例が多く挙げられるが、ひと昔前のインサイダー取引といえば買いよりも巨額増資や企業破綻などに乗る“売り”目線のインサイダー取引が横行していた感がある。なので確信犯のカラ売りが嵩み逆日歩も超高額になり後半に乗った連中は破綻しても持ち出しになってしまう笑えない事例もあったものだ。まあそう考えるとこうした禁断の“買い”案件の増加も時代を感じざるを得ない。


初の70万人割れ

週明けには団塊の世代が後期高齢者になると共に想定されるであろう現役世代の負担への懸念を取り上げたが、高齢化と合せて深刻なのが少子化か。先に発表された「人口動態統計」によれば、昨年の出生数は前年比5.7%減となり統計のある1899年以来初めて70万人割れとなった旨が報じられていたが、加えて自然減も減少幅が拡大し過去最多となるなど想定を上回る人口減少となっている。

コロナ禍で出会いの機会が減ったとかそもそも若年層の結婚観が変化し意欲低下がいわれているとか所説あるが、一部婚活会社の調査では結婚したくない又は関心が無い割合が適齢期の男女共に4割を超えてきているのを見るに少なくとも一昔前とは隔世の感がある。また、そもそも適齢期となる人口の層そのものが失われつつある人口縮小フェーズに日本は既に入ってしまっている構図もある。

斯様な少子化でインフラに歪も表れつつあり、先のTVのバラエティー番組で学校を舞台にした企画モノをたまたま見たが、番組中にテロップで「少子化等の理由で統廃合する学校は全国で300校を超える・・」と出ていたのが印象的だった。こうした足元の生活インフラへの影響はもとより更に長期で見れば生産性への影響や年金の問題にもつながって来るが、今後の社会的配分を考えるに国全体での広範な支援など喫緊の課題となるか。


コモディティ明暗

懸念された中東情勢だが、朝方にトランプ米大統領が「イスラエルとイランが停戦で合意した」とSNSに投稿したことでマーケットも各々反応している。148円台まで軟化していたドル円は一転して144円台まで急伸、日経平均も一時600円を超える上げ幅を演じ39000円台まで指呼の間となる場面もあった。またコモディティは原油が停戦合意に先駆け約14%も下落していたが、金もNYで2週間ぶりの安値を付け国内先物も2%以上の下落を演じた。

ところでこの金といえば3000ドル大台突破後にいち早く3500ドルシナリオを出していたのはマッコーリーであったがドンピシャの予測であった。先週にはシティグループも金価格に関するリポートを出していたが、2025年第3四半期は3100~3500ドルで推移するものの、米中間選挙を控えるタイミングで経済政策強化がなされ米と世界全体の成長見通しから市場はリスクオンに傾き、26年下半期までに2500~2700ドル台まで下落するとしている。

足元で金は目先のポジション巻き戻しから一服したとはいえ年初からまだ2割以上高い水準にある点で原油との違いは鮮明だが、この辺はやはりドル離れなどを背景にした各国中銀の旺盛な買いによるところが大きいだろうか。WGCによれば各国中銀は昨年まで3年連続で年間合計1000トンを上回る金を購入しており、今年も歴史的な高値圏で推移した1-3月期でも過去5年間の四半期平均を24%上回る規模の買いがあったという。

とりわけ近年は更に米国とバチバチ?な関係でその依存度を引き下げてきている中国の買いが安定しており先月は約1.9トン購入しているが、これで金の買い越しは7か月連続となっている。外貨準備に占める金の比率は既に3年で2倍にもなってきているが、他の新興国も其々余力はあるとみられこの辺は今後も相場にとってのサポートとなり続けるか。


“お薬”受診

過日久し振りに整形外科で湿布薬の類を処方してもらったのだが、この手の市販薬と効果が似る所謂「OTC類似薬」に関して政府は保険適用の見直しを進める旨の記事が先週末の日経紙経済・政策面に載っていた。現行の自己負担額の1~3割を10割にすることで、医療費を数千億円削減出来るということから現役世代の負担を軽減する狙いという。

例えば上記の湿布薬でいえば市販薬では数枚入って2000円前後だが、OTC類似薬では診料や処方箋料に調剤技術料こそかかるものの40~50円程度の負担で済んでしまうし、インフルエンサーが美容効果を謳った事で美容クリームの代替需要が殺到するなどいろいろと問題になった保湿剤のヒルドイドは市販薬であれば1本1500円前後だが、OTC類似薬では1本当り負担が100円未満といずれも市販薬の数十分の一で済んでしまう。

病院ではしばしば待合室が例えば高齢者が他の高齢者と日々の交流の場と化している光景も目にするが、一部医療ジャーナリストによれば後期高齢者が医療機関にかかる回数は30回以上と諸外国の5~6回と比較して日本は突出しているという。こうした背景にはそもそもが日本の医療の特長として安価でかつ手厚い医療が自由に受けられるというのがある。

なるほどそういった事から政府の見直し論も出て然るべしとも思う一方で、これが適用になったら一部受診控えなど出て来ないだろうか?医師の診断で判明するケースが素人判断で見つかるものが見落とされるリスクも孕む。なんとも難しいところだが、いずれにせよ団塊の世代がこれから後期高齢者になり医療費も今後更に膨らむ事を考えるに保険範囲を再考すべき分岐点にあるか。


ビットコインに賭ける企業

さて、2024年11月の米大統領選以降は米ストラテジー社(旧マイクロストレテジー)などを筆頭に企業がビットコイン投資に賭ける動きが加速しているが、直近ではCB発行後の5月下旬にビットコインを購入したミーム株で有名なゲーム販売の米ゲームストップが新株予約券付社債を発行するとの報に、またもビットコインを購入するのではとの思惑が嫌気され同社株が大きく下落する場面も見られている。

ちなみに米ストラテジー社は今月も10万ドル台で約160億円相当ビットコインを更に買い増ししており、これで同社が保有するビットコインはビットコイン総供給量の3%近くにもなる58万ビットコインを超え、日本円にして実に9兆円を超えてきている。もはやビットコインそのものともいえるが、欧州勢でもビットコイン関連企業であるザ・ブロックチェーンGもビットコイン取得拡大のためファイナンスを行うと発表している。

では日本企業はどうか?当欄で先月に取り上げた東証スタンダード市場のメタプラネットは取り上げ後に3日連続でストップ高を演じたが、今週はじめにビットコインの追加購入を明らかにしたことでまたも株価が反応、本日も年初来高値を更新し先月末比で80%高と破竹の勢いを演じ、同時に取り上げていたリミックスポイントも今週はこれに連れ高し先月末比で一時40%高と急騰した。

メタプラネットの時価総額は4月安値では1500億円にも満たなかったものが、本日段階でプライム上場の日清食品や住友林業をも抜いており、年初来高値局面では1兆円倶楽部も指呼の間の水準に化けている。まさにビットコイン並みだが、そのビットコイン保有額に対しこの時価総額が妥当かどうか賛否も分かれよう。今後もフルベットな企業はビットコイン価格に一喜一憂の展開となろうが、オルタナティブとしての賞味期限にも注意しておきたいところ。


米IPO復調

先月末にBIS(国際決済銀行)が公表したリポートでは米国債の買い手として法定通貨等に価値が連動するステーブルコインの発行企業が存在感を強めている旨が明らかになっているが、このステーブルコインといえば今月は5日に発行大手のサークル・インターネット・グループがIPOをはたし公開価格に対し上場初日は168%高で取引終了し、その後4営業日では3.4倍に上昇するなどロケットスタートとなっている。

また、サークルの後に上場した防衛・宇宙事業を手掛ける米ボイジャー・テクノロジーズの初値は公開価格比で約2.3倍に急騰、初日は公開価格を82%上回る水準で取引を終え、この翌日には米新興フィンテック企業のチャイムファイナンシャルがナスダック市場に新規上場し公開価格37ドルに対し初値は43ドル、一時高値は66%高の44ドル94セントまで上昇するなどいずれも好調だ。

これらIPO復調の背景には米関税政策の先行き不透明感の後退が挙げられているが、そうなるとこの関税政策を嫌気し市場が急落した影響でIPO延期検討に入っているフィンテック決済大手のクラーナや、チケット再販を手掛けるスタブハブなどには再度期待が高まろうというもので、今後もこれらの動向には注目しておきたいところ。


日本の定位置

G7(主要7か国)サミットがいよいよカナダで開幕となったが、このG7の中で今年も最下位と不甲斐ない結果に終わったのが日本の「ジェンダーギャップ指数」である。毎年恒例の世界経済フォーラムによる男女平等の実現度合いを数値にしたこの2025年版が先週に発表されたが、今年は調査対象148カ国中で118位となり昨年の118位と変わらずという結果であった。G7中では次がイタリアであったが、同国は全体で85位であるからその差は大きい。

項目別にザッと見てみてみると、政治分野の順位が昨年は113位に浮上していたが今年は石破内閣で女性閣僚が2人にとどまったことなどで再度125位に後退、経済分野は昨年の120位から112位へとわずかに上昇したものの依然として女性管理職の低比率が続いている。ほか健康分野が昨年の58位から50位へ、教育分野は昨年の72位から60位とこちらは共に若干順位を上げる結果となっていた。

この政治だが、ランキング対象148カ国の国会議員における男女平等率は昨年には過去最高となる33%に達し、2006年の約2倍近くになっているという。ひとり置いていかれている日本の構図が際立つが、なるほど常日ごろ我々が感じているであろう日本のジェンダー格差の実感はこうした部分からも十分に感じられる。

ところで現在ミッションインポッシブル最新作が上映中だが、G7でトップの4位だったイギリスではあの「MI6」の長官に116年の歴史で初の女性が選ばれている。万年下位の国からはもう別次元の話でしかないものの、昨年は複数のプライム上場企業で女性取締役就任の報が目立つようになってきた。こうした流れが政治分野に波及してくるのはいつの日かというところだが、まだまだ壁の高さを感じざるを得ない。


経営陣の自信

トランプ関税やひところに比べた円高などが重荷となり拡大していた東証プライム市場の企業業績も2026年3月期の純利益合計は前期比7%減と6年ぶりの減益が見込まれる旨が先の日経紙に載っていたが、そういった中においても上場企業の自社株買いが2025年1~5月は約12兆円と前年同期比で2割増え、同時期としては最高となった旨が先週の同紙に出ていた。

背景の一部には3月期決算のプライム上場企業の手元資金が、3月末に112兆円と2008年3月期以降では3番目の高水準にあるなど財務に余力があることも指摘されている。確かに最近の自社株買いの規模は対時価総額比でも5%を超える企業も珍しくなくなり、本日に上場来高値を更新してきたSANKYOやアイシンなどは9%台、クシュタールの買収攻勢に揺れたセブン&アイHDやワコールHDなどに至っては実にこれが10%超えの規模となっている。

先週に東証から発表された売買動向では、6月第1週に海外勢の日本株買いは売りを上回り1000億円を超える大幅買い越しの連続記録は10週に及んでおり、こうした海外勢の連続買い越しは23年6月以来、2年ぶりの長さとなっている。先月の売買動向を取り上げた際にも書いたが、こうした背景には上記のような想定以上の自社株買いがポジティブ視されている事も大きいか。

そういった一方で、中にはアクティビストの要求に屈して?成長投資より自社株買いを優先している向きもあるなどの指摘もある。この辺は現段階での予想値でもこの自社株買いと配当などの増加でこれらを合せた総還元性向としては70%近くまで上がることが想定されており、株主に対して経営陣の自信を伝えるメッセージとしては十分だろうが、今後は成長投資とのバランスも課題になって来ようか。


2025年上期ヒット商品番付

さて、先週は日経MJがこの時期恒例の2025年上期(1~6月)の「ヒット商品番付」を発表している。昨年は東の横綱が「新NISA」、西の横綱は「円バウンド」であったが、今年は東の横綱が「米(コメ)フレーション」、そして西の横綱が「大阪・関西万博」となっていた。コメ価格はあれよあれよという間に急騰し軒並み昨年の倍に、連れて関連株までわずか数か月で2倍以上に化けるなどまさに主食のインフレで横綱も納得といえようか。

大関は東西共にスポーツ系で、今ちょうど話題なのが西の関脇「Nintenndo Switch 2」、これまでゲーム機の売り上げに業績を左右されてきた同社だが、1億5千万台以上のヒットとなった初代Nintenndo Switchの再来となるや否や、応募は初回で220万人に及び同社株かは先月に上場来高値を更新している。同ゲーム向けゲームタイトルの開発環境構築で協力したシリコンスタジオも先週末から今週初めにかけて連続ストップ高で株価は短期大化けを演じていた。

そして小結では当欄でも取り上げた「資さんうどん」、今年は福岡勢の関東進出が顕著で「因幡うどん」もここに続いて原宿に県外初の店舗をオープンしている。富士経済によればうどん市場は来年には24年比で4%増の5950億円規模に拡大する見込みというが、これを見据えてか東証プライム市場上場の外食産業がラーメン店のM&Aよろしくいずれの会社も傘下に収め動きが活発化してきている。

他に食の分野では前頭で「ドバイチョコ」も。どの商品もカダイフが入っただけでどうしてこんな強気な値段が付くのか理解に苦しむが、今やリンツやゴディバまでこのドバイチョコに便乗している始末だ。また昨年はネトフリの「地面師たち」が大ヒットし西の小結となったが、今年そのネトフリで話題になったのは東の前頭「新幹線大爆破」か。幾つかは当欄で都度触れて来たものだが、さて後半は何がランクインするのか注目しておこう。


最後?の定時株主総会

注目されるであろう主要どころの株主総会がスタートしているが、明日のトヨタ自動車の前に昨日はTOBにより非公開化予定の豊田自動織機の株主総会が開催された。上場会社としてはひとまず最後の定時総会となるが、会社提出の3議案が可決されて株主提案の3議案の方は否決されることとなった。また、はたしてというかこのTOB価格について株主からは疑念の声も上がった。

同社株といえば4月の関税ショックで10250円まで急落したものの、あとTOB価格への期待から18000円台まで上昇していたものだったが、いざ蓋を開けたら16300円と肩透かし?の価格で同社株は今月初めには一気に2000円以上も急落する憂き目に遭った。現在のBPS実績が約16300円であるからちょうどPBR1倍といったところだが、これが本質的な企業価値なのかどうかというところだろう。

これに関しては株主の英運用会社ゼナーアセットマネジメントがTOB価格は20000円以上が妥当との見解を示しているほか、同じく英の投資ファンド、アセット・バリュー・インベスターズからも本源的な企業価値より低いとの声が挙がっている。また直近では花王の臨時株主総会にて新たな社外取締役の選任を求めた香港のオアシス・マネジメントもトヨタ自動車と共に同社株主に名を連ねている。

今後彼らアクティビストが価格の引き上げ要請を含めた対話要請が出てくるかどうかだが、いずれにせよ今回のケースは日本の上場企業の非公開化としては最大になる見通しだ。非公開化が叶えば上記のようなアクティビストの標的からは外れる反面、創業家の影響力は自ずと強まることになりこれがどう転ぶかだが今後もトヨタグループの動向からは目が離せない。


枯れ木に花?

先の日曜日の日経紙・TheSTYLEでは「よみがえるゴールドラッシュ」と題し、現在も稼働中の鹿児島県伊佐市にある住友金属鉱山の菱刈鉱山を取り上げていた。同鉱山は生産開始から今年でちょうど40年、これまでの産金量は273トンに上るがこの驚異的な産金量の背景には同鉱山の鉱石が世界主要鉱山平均の4~6倍にもなる1トンあたり平均20グラムもの金含有量を誇るからに他ならない。

ところでこの金鉱山といえば昨年の9月に一度取り上げたところの1962年に閉山した北海道の静狩金山周辺はどうなっているのだろう?ここはオーストラリアの採鉱企業であるキンギンエクスプロレーションの子会社が同金山の採掘再開に向けて試掘権を取得したとかだったが、他にもカナダなどの一部企業が日本の金山開発に向けて調査を進めている旨なども耳にする。

ただ上記の静狩鉱山など再開発計画に関する住民説明会を開催したものの、水資源などの環境汚染懸念から事業反対の声が相次いだ経緯がある。史上最高値を更新してきているゴールド、今後も価格が上がって行くという前提であればこれまで採算ラインに乗らないとみられていた鉱脈にも新たな注目が集まろうというものだが、そもそも鉱脈が生きているのかどうか、また住民の理解などジパング再来への道のりは遠いか。


宇宙ベンチャーの試練

今年の1月にスペースXのロケットで打ち上げられた宇宙ベンチャー、アイスペースの月面着陸船“レジリエンス”だが、月面着陸予定だった先週末に関係者が固唾をのんで見守るなか着陸直前に通信が途絶え着陸は失敗したと発表された。同社は一昨年の4月にも月面着陸に失敗しているが、この時に次いで2度目となった今回の日本の民間企業として初の月面着陸という挑戦も果たす事は出来なかった。

これを受け東証グロース市場に上場するアイスペース株は、週末のストップ安に続き週明けの本日も終日にわたり売り気配を切り下げ比例配分のストップ安と続急落し、引け後もなお1000万株近い売り物を残している。また同社以外にもグロース市場に上場するSynspectiveなど他の宇宙ベンチャーまで週末に続いて続落するなどこの失敗が飛び火する格好となった。

ところでこの度の計画にはJAXAの「SLIM」同様にオールジャパン体制で三井住友銀行や日本航空、高砂熱学にスズキからシチズンなど、名だたる大手企業が10社超えで参画している。先に政府も宇宙基本計画の重点事項を決定し、民間の宇宙事業を促進するため宇宙活動法の改正案を来年の通常国会に提出する方針を示しており日本としても国際競争に劣後しないよう技術開発や実証等を強力に支援する必要性を強調している。

今回の失敗で上記の国際競争における劣後という部分が懸念されるところではあるが、今回の件も前向きに考えれば民間企業の将来のビジネスを見据えた経験の蓄積と捉えると貴重な経験だったともいえるか。いずれにせよ月面ビジネスの市場は2040年までに累計で約24兆円に成長する見込みとの試算がある。2027年には3回目となる次の打ち上げの計画があるというが、これら見据え一層の官民連携の重要性が今後も問われるか。