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守りの分散

さて先週末の日経紙・投信番付では「金関連ファンド」のランキングが出ていたが、そのうちトップに立ったのは金価格連動型やマイニング系の投信ではなく資産の一部に金を組み入れた日興アセットの「Tracers S&P500ゴールドプラス」であった。ちなみにこの投信は24年末までの1年間でその残高は19倍近くまで増加しているが、もともとは株式と相関性の低い商品に分散する狙いの下に投入されたものだ。

こうした異なる動きをする資産で組むことによって期待リターンを大きく下げないままにリスクを下げたポートフォリオを作れるわけだが、昨今のマーケットはリスク資産である株式が買われる一方で安全資産とされる金も米関税政策懸念、地政学リスクから衰えない国家需要などを囃し年明けも堅調推移し先月は最高値を更新して初の3000ドル大台に迫る勢いであっただけに思わぬ“両取り”が転がり込んだ格好か。

ところで新NISAがスタートしてはや2年目、人気なのはもう判で押したような“オルカン”一辺倒という状況だが、このオルカンの上記でいうところの過去実績から推計した期待リターンは一部アセットでは9%程度と言われている。ところが蓋を開けてみれば昨年の実績はその3倍の30%を超える好成績であった。いささか“出来過ぎ”ともいえるだけに守りの“分散”も今後は有効になって来ると思われる。

そうしたことも背景にこの一辺倒人気のオルカンと金を組み合わせたオルカンならぬ“ゴルカン”こと「ゴールド/オールカントリー株式戦略ファンド」を明治安田アセットが昨年末に設定、日興アセットは冒頭の「Tracers S&P500ゴールドプラス」に続いてナスダック100を加えた「Tracers NASDAQ100ゴールドプラス」を年明けに設定、またSOMPOアセットは金と米国債と組み合わせた「ゴールド・インカムプラス」を昨年末に設定している。上記の“守りの分散”という意味合いから今後も各社からユニークな商品投入が期待される。


還元の流れ

昨日の日経紙投資面では「減配でも増配目立つ」と題して2025年3月期の予想配当性向ランキングが載っていたが、累進配当方針や自己資本に対する割合に応じて配当するDOEの導入など、東証の資本コストや株価を意識した経営の要請を背景にROEを高めようと各社一段の増配等を意識している旨の記事があった。

そういった事で上場企業の2025年3月期は配当総額が約18兆円と4年連続で過去最高となる見通しだが、このランキングに挙がるような大企業はキャッシュフローの実に6割が配当に回っているという。また自社株買いも純利益の約3割が回り17兆円と前年比で7割増加しこちらも3年連続で過去最高になっているほか、直近ではトヨタが初めて株主優待制度を導入するなどこういった優待関係の拡充も目立ってきている。

そういった事もあってこれら上記の総還元性向はかつての40%台から60%を超える水準までに上がって来たと言われるが米国のそれは約90%ともいわれる。ちなみに欧州は過去3年平均で64%ともいわれておりようやくというか日本はこれに追い付いてきたという感じだが、潜在成長率などこうした先進国と比較して見劣りが目立つ部分もある。

そういった理由の一つに成長投資の伸び悩みなどが挙げられ、そろそろこの辺はリスクを取って成長戦略に向けるべきではとの声も少なくない。とはいうものの今は不透明な米トランプ政権の政策はじめ、中国の景気減速など不確実要素も極めて高いという部分もあり、そういった類の投資などリスクを取ってまでしづらい環境下でもあるのも事実なだけにまだしばらくは現況の流れは続くことになるか。


深まるGゼロ

さて、周知のように米とウクライナの記者団を入れた首脳会談においてトップの両者が激しい口論になり、予定していた資源権益に関する協定への署名が中止になっている。中間選挙までの成果を急ぐために各所で暴挙にさえ映る行動が目立ちはじめこうなるともはや感情的な振る舞いにしか映らなくもないが、その後に米は軍事支援の一時停止を検討とも報じられており一時の感情で国家の行方が左右される恐れがある様は何ともやるせない。

これまで取り上げたDEIに関しても多様性に否定的なトランプ氏は女性として初の沿岸警備隊トップとなったフェーガン司令官を、“多様性を過度に重視した”として就任直後に解任している。これに絡んで直近では米シティーグループがトランプ政権による反発を受けDEI目標を撤廃しているが、特にこの傾向が目立つ金融機関では米ゴールドマンサックスもIPOの引受業務で支援する企業に対して多様性を求める指針を撤廃している。

冒頭の交渉決裂で大喜びしているのは当のロシアだが、米が望んでいる通りに動けば独裁国家でさえ優遇されるような状況にもなってきた。今年の「世界10大リスク」を挙げたイアン・ブレマー氏は相手国とカネ目当ての打算的な関係を築き民主主義など価値観の共有はかけらもなく、目先の利益の為なら同盟国との関係でさえ犠牲にすると言っていたが、10大リスクの1位に挙げた「深まるGゼロ世界の混迷」がより一層現実化を帯びて来ている。


雛祭りにも値上げの余波

本日はご存知「桃の節句」、この雛祭りといえば“ひしもち”が必須アイテムだが、大手メーカーの越後製菓は原料米価格の急激な高騰に加え継続的な物流・エネルギー費等の上昇を背景に今月出荷分から越後ひしもちを値上げしている。恒例の帝国データバンクによる主な食品メーカーにおける今月の飲食料品値上げは2343品目と、前年同月比で約3倍にのぼり5か月ぶりに2000品目を超えた。

品目別では冷凍食品はじめ加工食品が最も多く、味の素冷凍食品にマルハニチロやニッスイなどが相次いで値上げし、次いで酒類・飲料、チーズなどの乳製品と続くが、他には依然としてカカオ豆の高騰を背景にしてこれまで何度も値上げしてきた明治やネスレ、森永製菓に名糖産業までチョコレート製品や高カカオの商品などをそれぞれ今月から値上げしている。

近年は一部値上げだけでなく定番人気の「きのこの山」や「たけのこの里」など同時に内容量も減らしてきているが、先日たまたまこれを商品棚に見掛けたので手に取ったところ箱に書いてある表示が“チョコレート菓子”から“準チョコレート菓子”に変わっていたのにはけっこう衝撃を受けた。ちなみに他の商品も幾つか見てみたが、私が好きだった「ハイミルク」まで“準チョコレート菓子”に変わっていた。

雑な言い方をすればカカオ分がこれまでの約半分くらいになっていてもおかしくはないということだが、準チョコに変わった認識で食べると素人にありがちだが心なしか味も変わってしまったのではという猜疑心も湧かないわけではない。世知辛さを感じざるを得ないが、まあカカオ豆の国際取引価格がここ2年ほどで約4倍にも急騰するなか、味を維持しつつも従前よりカカオが少なくて済む準チョコレート転換を図っているという企業努力には敬意を払わねばならないだろう。


待ち遠しい再開 

さて、明日をもってあの「帝国劇場」が再開発による建て替えの為に休館となる。帝劇といえば誰もが一度は訪れたことがあると思うが、いわずもがなミュージカル・演劇の殿堂で1911年に日本初の本格的な西洋劇場として開設、現在の帝劇は1966年開場の2代目となるがミュージカルの不朽の名作レ・ミゼラブルなど上演された作品数は実に370を超えている。

数々の演目はさておき、やはりこの建物そのものが何度訪れても魅力満載だった。デザインはホテルオークラ東京なども手掛けた谷口喜朗氏だが、エントランスを抜けて直ぐ目に飛び込むステンドグラス、そして階段の手すりのパネルにはマホガニーなどの本物のスライスが入りバックライトの効果でその木目が美しく映し出され、階段を登り切ったところから下を見下ろせばスクエアではなくて台形が広がる“演出”も為されている。

また座席の古代紫もなんともいえぬ色調で艶やかだが、側面の壁もその木材をあえて大きさをバラバラにし角度を変えて置かれてこれによって縦縞の複雑な模様を創り出している技が光る。このクロージングに伴いこうした劇場資材を活用する商品も今後は発売予定というが、オブジェの幾つかはホテルオークラ東京もそうであったように新しい劇場でも引き継がれてゆく予定とか。

しかし最近はお気に入りだった建造物の休館や取り壊しが相次いでいる。ザッと挙げても同じ劇場では「国立劇場」も休館に、昨年末には「学士会館」も建て替えの為に閉館してしまったが、レトロな空間で上質な料理が食べられるレストランは本当に穴場だった。レストランといえば営業時代に馴染みの顧客によく連れていかれた松濤の「シェ松尾」も素敵な建物だったが、こちらも老朽化で建て替え困難なため先月に閉店してしまった。話は少し逸れたが、より進化して再開が叶うものは今からその日が待ち遠しいものだ。


クルーズ船の伸びしろ

週明けの日経紙では「幸を編む 至福の船旅」と題しこの夏に就航する郵船クルーズの「飛鳥Ⅲ」の大きな全面広告が目を惹いた。実に19年ぶりとなるこのクルーズ船、今の飛鳥Ⅱを超える総トン数となり日本最大級になるという。クルーズ船といえば昨年はOLCが上記の郵船と業務提携し3300億円規模を投資するディズニークルーズ事業に向け今年度中にも造船を開始すると報じられている。

世界のクルーズ市場の構図はコロナ禍で一時落ち込みを見せるもその後は大きく回復し23年は3170万人超とコロナ禍直前の19年を200万人ほど上回ってきている一方で、日本に限ってみればその人口は20万人足らずとコロナ禍前の6割弱の水準程度しか回復しておらず、今後の伸びしろを商機と見た各社がここに舵を切ってきた背景があるか。

上記のOLCなどディズニーというキャラを使って若年層や家族層に対してのリーチを狙っているといったところだろうが、他にも大手の商船三井クルーズも昨年末に「MITSUI OCEAN FUJI」を就航させ、テラスレストランには従来無かったようなビュッフェスタイルを導入して自由度を上げたかっこうになっている。これらを見るにこれまで市場を牽引してきた主力のシニア層以下の客層への訴求がうかがえるもので、今後順次就航予定の各社の戦略には注目しておきたい。


無店舗とデジタルの強味

このところ株式市場ではNT倍率が低下傾向にあり、本日段階で14.03倍と昨年の9月10日以来、約5か月ぶりの低水準になっている旨を日経が報じている。高寄与度の半導体関連株等が冴えず日経平均の足を引っ張る一方でTOPIXを支えているのは銀行ポストで、今年のTOPIX上昇寄与度において業種別では銀行業が首位となっている。本日も日経平均が500円超の急反落で3か月ぶりの安値へ沈む中を三菱UFJやみずほFGなどメガバンクは逆行高を演じていた。

そんな堅調持続している銀行株の背景にはいわずもがな国内金利の上昇による収益の改善期待があるわけだが、そんなポストのなかでも特にここ最近では市場の関心がネット銀行に集まっている旨が先週末の日経紙投資面スクランブルに書かれていた。実際今月に入ってから住信SBIネット銀行や楽天銀行等が急騰し揃って上場来高値を更新し、メガバンク勢を大きくアウトパフォームしてきている。

以前に銀行やライセンスを持った事業者が決済などの仕組みを他の事業者に貸す事で内製化の動きの流れが顕著化すると想定した場合、同事業の市場規模は非常に広いと書いたことがあるが、住信SBIネット銀行のIPOはその想定時価総額から大型案件であったものの、このBaaS事業などの強味が評価され米銀破綻という悪地合いの中でも初値は公開価格を上回る好スタートを切り、ヤマダデンキや高島屋とコラボしてネオバンクサービスを精力的に展開している。

また強力なポイント経済圏をバックにした楽天銀行もアドバンテージがあるが、こうしたポイント経済圏やスマホ決済の広がりで大手のメガバンクとて顧客情報を独占する従前の優位性も崩れてきており、顧客ニーズを汲み取るうえでサードパーティーである各種事業者などとの連携もポイントになってきている。本日は三菱UFJがネット専業銀行を新設する方向で検討している旨が報じられているが、金利のある世界が戻るなか引き続き各社の戦略には要注目である。


J-REITもTOB標的に

昨日の日経紙総合面には長期金利の上昇に弾みがつき約15年ぶりに1.43%に上昇した旨が出ていたが、この影響をもろに受けて冴えない展開を強いられて来たのが東証REIT指数か。個別の投資口価格も下落の一途を辿ってきたが、先週には阪急阪神リート投資法人に対してシンガポールの投資ファンド、3Dインベストメント・パートナーズがTOBを実施すると発表している。同ファンドといえば先月末にもNTT都市開発リート投資法人に対してTOBを実施すると発表しておりこれで2件目となる。

REITの低迷は上記の通り“金利のある世界”になった事もそのベースにあるが、新NISAにおける積立投資枠においては所謂毎月分配型が長期の資産形成にはそぐわないとしJ-REIT特化型投信がその対象から外された事などを嫌気した資金流出が続いた事なども背景になっている。そういった事で株式のPBRにあたるNAV倍率も直近でわずかに2銘柄を除いた残り55銘柄全てが1倍割れの状況となっており、なるほどファンドの食指が動いたのも頷けるか。

東証によるPBRの1倍割れ改善要請ではこの是正に向けて多くの企業が自社株買いなどに走った経緯があるが、上記の状況を背景にこのREIT市場でもこの自社株買いにあたる自己投資口取得が防衛的意味合いも含め昨年は一昨年の実に14倍超となり過去最高の実施件数になっている。そんな状況下にあって今回の立て続けのTOB発表があったわけで、如何に外部から割安と見られていたかがうかがえる。

今回TOBの標的になった阪急阪神リート投資法人は商業施設を軸足にホテルやオフィスも所有するが、足元の円安効果もありインバウンドが大きく影響しホテルは稼働率も客室単価も堅調、オフィスにしても空室率低下で稼働率も上昇している。冒頭の通り金利上昇の逆風も吹くが、上記の件と併せ不動産価格上昇で保有物件の含み益も過去最高水準にあるだけにこうしたTOBから今後この低迷にも転機が訪れるかどうか注目しておきたい。


制度改正に第一歩

さてビットコイン価格の上昇を背景にして、年金基金やヘッジファンドなどが24年第4・四半期にビットコインETFの保有割合を増やしたことがSECへの提出書類で明らかになっている。米では昨年1月にビットコインETFがSECに承認され大手のアセットが取り扱いを開始したことで機関投資家による大規模な資金流入の呼び水になった背景がある。

ところでビットコインといえば先週の日経紙金融経済面で金融庁が仮想通貨(暗号資産)を有価証券に並ぶ金融商品として位置付ける方向で検討に入り、法改正に向けて議論することが明らかになった旨の記事があった。当欄ではこれまでも投資信託の運用対象である特定資産という枠から外れているにしてもビットコインETFの国内承認が叶わないのだろうか?と書いてきたが、これで暗号資産等で運用するETF解禁につながる可能性も出て来たという期待も高まるか。

日本の現行税制は主要国と比較して相対的に最も高水率とされ投資家に大きな税負担を強いている状況だがビットコイン等に関しては最大で税率45%、そこに住民税やらが乗り最大で55%が課せられる計算になるが、ETFであれば分離課税の適用で20%という事になる。既に昨年末段階でビットコインETFは運用資産残高でゴールドETFを指呼の間に捉える規模までになってきているだけに、周回遅れともいえる日本も方向性含め制度改正が少しでも進むことを期待したいもの。


20兆円クラブ

本日の日経紙投資面では、昨日の株式市場で日立製作所の時価総額が終値で初めて節目の20兆円を超えた旨が出ていた。当欄では昨年の1月に任天堂や伊藤忠商事の時価総額が初めて10兆円の大台を超え「10兆円クラブ」の仲間入りをした旨を取り上げており、この同じ時期に日立製作所もまた同クラブの仲間入りを果たしていたものだが、その後の1年でその時価総額はこの3社間で大きな差が出ている。

日本では「総合〇〇」と称されるコングロマリット企業がディスカウントされる傾向にあったものだが、長らくのデフレ下の構造改革効果で不採算事業が減少、事業売却などで利益が出易くなり売却益などで投資や株主還元など資本の有効活用を積極化する向きが増えて来ている。そうした効果もあってかコロナ禍以降は特にこうしたセクターはTOPIXをアウトパフォームしてきており、コングロマリットディスカウントの一括りでは語れなくなってきている。

これまで日本企業はしがらみの多い組織体系故に事業再編自体が遅々として進まなかった部分もあったが、東証の踏み込んだ改革等も背景に今後は上記のように経営資源を稼いでいるセグメントに集中投資してゆく動きがより活発化してゆくとも考えられる。コングロマリットディスカウント企業も今後ROE向上等が顕著になってくればコングロマリットプレミアムへと変貌を遂げる一歩になるはずでこの辺に期待したいものである。


幻の構想が幻に・・

昨年12月にはホンダと日産自動車が経営統合に向けた協議を始める事で合意した旨を取り上げたが、周知のように先週にはこの協議を打ち切ると両社より正式な発表がされている。協議開始からわずか1ヶ月半のスピード破談劇であったが、当初の持ち株会社構想から遅々として進まぬターンアラウンド計画にホンダ側が業を煮やし買収提案へとなる過程で要は両社で経営統合に向けた合意点が見いだせなかったという事だろう。

正式にこの破談が発表された日には両社の決算発表もあったが、ホンダは当期純利益が4年ぶりのマイナスとなり、日産も最終損益は800億円の赤字となっていた。ちなみに主要他社のこれまでに発表された決算は最大手トヨタ自動車が増収増益のほかスズキやSUBARUも増収増益、25年3月期の業績予想もトヨタ自動車、スズキ、SUBARUは揃って上方修正しておりはっきりと明暗が分かれた格好になった。

上記の業績好調組はHVやSUVなど売れる車を持っていることが特徴だが、日産など売れる車が無いというのがそもそもの問題か。既に中国のBYDは既にホンダや日産を上回る世界2位に浮上し、国営大手の重慶長安汽車と東風汽車も経営統合する可能性があるとも報じられているがこれが実現すればBYDを抜いて販売トップになる。先端技術開発力を持ちながら再編で規模を拡大するなど時代は変革期を迎えているだけに両社がどう戦略を立て直すのか注目される。

日産のプライドもあろうが長らくの低迷を経てその時価総額は今やホンダの約5分の1なだけに対等を謳うのは素人目でも無理があるのは否めないところで、日産と対等な関係でありかつ日産を支えることのできるような都合のよい相手がはたして現れるのか?時価総額が落ち込めばそれだけ大手他社からの触手が伸び易くなるわけだが、いずれにせよ今後日産の経営陣がどのような方向性で会社を導くのか、その責任は非常に重いだけに去就が注目される。


Valentin’s2025

さて明日は恒例のバレンタインデー、昨年の今頃は日経紙で「足りぬカカオ豆争奪戦」などと題し、原材料の高騰でバレンタインチョコが一昨年比較で平均4.5%の値上げとなった旨などを書いていたが、今年もこの“カカオショック”の状況は変わらずこの2年でカカオのNY先物価格は約4倍に急騰しバレンタインチョコの平均価格は更に5.8%上昇している。

とはいえ銀座松屋調べでは本命、義理、そして自分へのご褒美共にその予算は昨年より大幅な伸びを示し、特に自分へのご褒美は昨年の約2.4倍となり価格も1万円の大台を指呼の間に捉えている。そんなわけで今や一大イベントに成長した「サロン・デュ・ショコラ」や、今がたけなわの「アムール・デュ・ショコラ」などで並ぶ人気のブランドモノは数粒で5桁の値札が付く商品でも飛ぶように売れ、今年も過去最高の売り上げを更新してきているという。

確かに最近はその味もさることながらパッケージでも魅せる商品が多くなってきた。今年の商品で個人的に目を惹いたのが「ジャン=ポール・エヴァン」で、その箱や袋は私の好きな「アンリ・ルソー」が描いた絵画をモチーフにしこれだけでも欲しくなる魅力的な物であった。またこうした場では近年エシカルも意識され、前回は見た目が原因で廃棄寸前のバナナを使った商品を著名シェフとコラボして販売していたが、今年も各名店が干し芋を作る過程で出る端材を活用した新商品を展開していた。

上記のように高額商品にどんどん注ぎ込む向き以外にも幅広く消費者を取り込むべくカカオの含有量が少ない焼き菓子やイートインの強化も百貨店で見られたが、高島屋など車両を貸し切りアムール・デュ・ショコラの催事に合わせた企画として「ショコラトレイン」を展開するなどしており、今後もカカオ豆の高騰と対峙しながらも“トキ消費”の特別感などどう演出してゆくか各社一層の工夫が求められようか。