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甘い?予想

先週末に総務省が発表した2022年12月の消費者物価指数だが、変動の大きい生鮮食品を除く総合指数は104.1となって前年同期比で4.0の上昇となった。第2次オイルショックの影響で物価が上がっていた1981年12月以来、41年ぶりの上昇率となったが、品目別では電気代の21.3%や都市ガス代の33.3%等エネルギー関連が全体を押し上げている。

また同じく先週に日銀から発表された12月の国内企業物価指数の方は119.5と前年比で10.2%上昇し9か月連続で過去最高を更新、前年比での上昇は22か月連続で上げ幅も前月の9.7%から拡大し昨年9月以来の10%台を記録している。こちらも類別では電力・都市ガスなどエネルギーが前年比52.3%上昇と過去の燃料費上昇を反映する動きがみられた。

依然として米などと比較するに両物価指数の乖離は大きく今後も値上げ圧力はダラダラと続くとみられるが、直近の帝国データバンク調査では転嫁率が39.9%にとどまり全く転嫁出来ていない企業はいまだ15.9%あるという。事実上春闘がスタートしたが、賃上げの実現にはこの価格転嫁が必須なだけに今後の動向が焦点となってくる。

しかし上記のエネルギーや食品を除いた総合も着実に上がってきているだけに民間エコノミストが平均で1.73%に下がるとしている今年の予想も不透明極まりない。先に実質賃金が最低水準に落ち込んでいる旨を書いたが、総務省発表の家計調査でも実質消費支出が6か月ぶりに前年同期比でマイナスに転じており値上げ循環を阻む消費の落ち込みもまた懸念されるところだ。


10大リスクあれこれ

世界経済フォーラムは先週、国際社会に対する脅威を分析した2023年のグローバルリスク報告書を公表しているが、世界のリスクといえばこの世界経済フォーラムのダボス会議のセッションでも発言していた国際政治学者で米ユーラシア・グループ社長のイアン・ブレマー氏も年頭に政治や経済に大きな影響を与えそうな事象を予測する恒例の「世界10大リスク」を発表している。

今年の1位にはRogue Russiaを挙げ、ウクライナ侵攻を続けるロシアを世界で最も危険な(ならず者国家)と呼び、戦争に勝つ為の有効な軍事オプションはロシアに残っていないと指摘。そのうえで国際社会から孤立したロシア大統領が核兵器やサイバー攻撃を用いて欧米諸国への脅しをエスカレートさせる可能性を指摘している。

そして2位には中国の習近平国家主席への権力集中を挙げていたが、昨年ココが1位に挙げたのは「ゼロコロナ政策の失敗」であった。果たしてというかこの政策の崩壊は皆が知るところでこれを例に現在の一強体制によって意思決定の透明性が確保されずに間違いを認めて軌道修正する余地もないとし、世界経済に与える影響は過小評価されていると分析している。

このゼロコロナ政策失敗で昨年の中国の成長率は国家目標の5.5%を下回り今年も不振が続くとみられるが、同国に限らず止まらぬインフレにIMFでは世界経済の3分の1がリセッション入りと予測している。上記のロシアに中国、権威主義の台頭で民主主義を守ろうとする動きも顕在化し分断もより鮮明となったが、斯様な混沌とした状況下でどれがトリガーとなってもおかしくないだけに今年も注意が怠れない。


漸く本腰

さて先週金曜日の日経紙一面には「仕組み債販売、一斉調査」と題し、金融庁が複雑でハイリスクといわれる仕組み債の問題を十分に検証せずに顧客に販売してきた事を問題視し、地域銀行99行やグループの証券会社27社を対象に仕組み債などの金融商品の販売実態について一斉調査に乗り出した旨の記事があった。

当欄でこの仕組み債やリンク債の類に関して銀行や保険、証券などの金融の業界団体に寄せられた苦情が過去最多を記録したと取り上げたのがリーマンショック後の2009年だった。当時は「目論見書」という字も読めない一部高齢者顧客層に売りまくるなどその販売方法を巡る問題が増加と書いていたが、あれから13年以上が経過し漸く重い腰を上げたという感じか。

とりわけ冒頭の証券子会社などを持つ地銀グループなど、その販売構成を調べると実に4分の1にあたる23%が仕組み債であったという同商品への依存体質が浮き彫りになっている。背景には事業環境の厳しさ等が挙げられているが、これ以外では保険等も外貨建て一時払いなど最近の為替の急変動を考慮するに火種となりそうな商品も販売強化した経緯があり今後も動向が注目される。


あれから28年

ちょうど28年前の1995年、最大震度7を観測する阪神淡路大震災が起き6400人以上が犠牲となるなど当時としては戦後最悪の被害が出た。新型コロナウイルスの影響などで直近の2年間は各所で中止となった追悼行事の類も、今年は大きな被害を受けた地域などで犠牲者を追悼する行事が行われた模様だ。

当時テレビなどでは信じられないような惨状が放映されていたのが蘇るが、株式市場も週明けからこれを織り込むようなかっこうで1000円以上暴落、余談だがこの急落がトリガーとなってあの女王陛下の銀行とも呼ばれていた英投資銀行のベアリングス銀行がデリバティブ取引で経営破綻をするに至ったのは業界では有名な話の一つだ。

ともあれこの震災は多くの教訓を残し全国で耐震化が進められるなど防災、減災への取り組みに大きな影響を与えた。3月には東日本大震災から12年目を迎えるが、今後は震災を経験していない世代が増えるなかこの記憶や教訓などどのように次に継承してゆくのかこの辺が課題となるか。


抑え込みの限界

さて、日銀は昨年末の政策決定会合で長期金利の上限を従来の0.25%程度から0.5%程度に変更し金利上昇余地を広げるサプライズ政策を発表したが、先週末のマーケットではこの長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが上昇、一時0.545%と日銀が上限とする0.5%程度を上回った。水準としては2015年6月以来、7年7か月ぶりの高水準となる。

国債といえば当欄では昨年の6月くらいから日銀VSヘッジファンドの対立構造を書き、ジョージ・ソロス氏が英イングランド銀行にポンド売りで挑んだ一件が思い出されるとしたが、連日の指値オペなどで昨年の購入額が6年ぶりに100兆円超えるほど大量の国債買いで日銀の防戦が続き長らく劣勢が続いた海外勢も漸く報われたという感じだ。

そもそも投機筋の挙っての参戦でイールドカーブが歪み企業の起債など金融環境に悪影響を及ぼすとの理由も背景に年末の修正となったワケだが、なお足元では債権市場の歪みが解消されたとは言い難い。早々の上限突破でこれの撤廃も視野に再度の修正に動くか否かというところだが、前回の例もあるだけに明日からの金融政策決定会合が注目されるところだ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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