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PGM系のジレンマ

本日の日経紙商品面には「触媒用貴金属が急伸」と題し、世界的な環境規制の強化で1台あたりの自動車用触媒への使用量が増えるとの観測を背景に工業用貴金属のパラジウム先物相場が上場来高値を更新、ロジウム相場も11年ぶりの高値圏と急伸している旨が載っていた。

このパラジウムといえば春先までの半年間で約6割もの上昇率を記録した際に、英アングロ・アメリカのCEOがスイスで開催されたサミットの場で同相場を「バブル」と発言したのを切っ掛けに急反落したのが記憶に新しいが、これが丁度良い篩い落としとなった格好で早くも再度の高値更新と衰えを見せない。

PGM系といえば長引く米中貿易摩擦による景気減速やディーゼル用自動車の販売不振からのプラチナなどは金との価格差が過去最高水準まで拡大したが、米国による対中制裁の次なる発動表明に戦々恐々とするなかその需給から増産意欲の高い鉱山会社等は生産を絞れない事情とも相俟ってしばらくPGM相場も振り回される事になろうか。


TOCOM過去最高値

さて引けてみれば小反落であったものの一時は下げ幅を約600ドルに広げるなど米株式の動揺が続くが今週はNY市場が今年最大の下げ幅を記録し、人民元は2日続けて11年ぶりの安値を更新、FRBの利下げが予防的なものにとどまらないとの見方が日米金利差縮小観測に繋がり東京市場では円相場が1ドル105円台まで上昇する場面があるなど米中貿易戦争激化で世界の金融・証券市場が揺さぶられている。

そんな大揺れとは裏腹にCOMEXの金相場は大幅続伸し中心限月は2013年以来ほぼ6年4か月ぶりに1500ドル台の高値を付け、TOCOMも中心限月は連日の続伸から1982年の取引開始以来の史上最高値を更新、地金価格もまた1980年2月以来、約40年ぶりの水準に上昇とこちらは破竹の勢いである。

世界の投資マネーが高リスク資産を回避する動きのなか現物資産の裏付けがあり相対的に安全な資産とされる金に買いが集まる教科書通りの原点回帰の動きだが、先物主導のスペック的な動きのみならず先月も書いたようにETF残高等も6月末時点で6年3か月ぶりの高水準に達しているあたり冒頭の通りFRBの利下げが予防的なものにとどまらないとの見方の証左でもあるか。


代替通貨

さて、ちょうど1ヵ月前の当欄では最大の金ETFであるSPDRゴールド・シェアの金保有高が先月2016年7月以来約3年で最大の伸びを記録した旨を書いたが、WGCでは金価格連動の世界のETF が価値の裏付けとして保有する現物残高が6月末時点で2548トンと、2013年3月末以来の高水準となり、1か月間の増加額としても7年ぶりの高水準になった旨を発表している。

この6月といえば中旬に米利下げ観測に加え中東の地政学リスクも背景に急騰した後に一時下落を見せた価格であったが、今月に入ってから今度は米中貿易摩擦による世界景気の減速懸念などから安全資産としての需要を背景に再度上昇し3日には1,420.9ドルと2013年5月以来、約6年ぶりの高値を付けている。

最近の金は株と同時並行で上昇している部分も注目されつつあるが、国内では金関連投信の純資産残高トップが三菱UFJのファインゴールドとなり金の採掘や精錬等を手掛ける企業の株式に投資するものも上位にランクインしてきている。今月に入って1,400ドル割れがあってもすかさず切り返し1,400ドル台に回復する動きが続くが、ETF残高と併せ中央銀行の動き等今後も目が離せない。


セーフヘブン復活

さて、先週末の日経紙マーケット面にはTOCOMのパラジウム先物相場が1か月半ぶりの高値を付けた旨が出ていたが、貴金属といえばその1週間前には「金急伸1350ドルの天井に迫る」と題し、貿易摩擦が実体経済に影を落とし米利下げ観測の背景が追い風となるなか、金も長期の上値を脱する可能性がにわかに高まっている旨が出ていた。

ETFでも顕著な変化が見られ金は再度セーフヘブンとしての役割を取り戻すべく月替りにかけて1,300ドルの大台を突破してきた事を背景に、金のETFでは最大のSPDRゴールド・シェアの金保有高は今月上旬に2.2%増加し2016年7月以来約3年で最大の伸びを記録したとブルームバーグでも報じている。

ところでWGCが纏めた2019年1〜3月期の世界金需要は前年同期比を7%上回った模様だが、これを牽引しているのが冒頭の末尾にも書いてあった18年以降最大の買い手となった各国中央銀行という。とりわけ米と火花を散らしている国の買いが顕著なのが成る程という感じだが引き続きこの辺は今後のディスクロに注目したいところ。


安全資産一服

さてこのところ世界景気減速の懸念が一先ず後退したという事もあって、一般的に安全資産とされている金から一旦資金を引き揚げる動きを背景にして国際指標となるNYの先物価格の方は当面の下値とされた1280ドルを割り込み年初来安値を付ける動きになってきている。

先に復活しつつあるプラチナについて触れた時にそのETF残高が高値から一転急落の憂き目にあったパラジウムとは対照的に増加している旨を書いたが、その辺を見てみるとこの金も1月下旬から減少が続き今月中旬時点の合計では1709トンと月初から29トン減った旨が先週の日経紙にも出ていた。

フィジカルな部分ではもう一つ、「GOLD NEWS」の見出しにあるように、田中貴金属工業がまとめた金地金の1-3月期の買い取り量が8041トンと前年同期比で実に51%もの大幅な増加をみせ値下がり前に売りたいという向きの増加が浮き彫りになっている。相場が動きそうなファクターとなっている米中貿易問題やブレグジット等は流動的な部分も残されている事でこの辺絡め今後もこれら併せて注視しておきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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