4ページ目   商品先物

相場連動な盗難

さて、2年前に当欄では二宮金次郎ゆかりの地である栃木県で設置してある同氏の銅像が盗難被害に遭った件を取り上げた事があったが、先週末に再び同県でこの銅製の二宮金次郎像が盗難被害に遭っていることが報じられている。何とも罰当たりな件だが、同氏ゆかりの地ということで同市では学校など27か所も銅像が設置してありこれが狙われた格好。

目的はほぼほぼ換金狙いだろうが、一昨年はちょうどLME(ロンドン金属取引所)で銅相場が1万ドルの大台を超え、スクイズを背景に現物と先物の逆鞘幅が過去最大規模に拡大していた最中の出来事であったが、年初から先物市場の価格は堅調で今月アタマでは買い建て玉から売り建玉を引いた買い越し規模が9か月半ぶりの規模になっている。

また銅に限らずアルミなども7か月ふりの買い越し規模で非鉄市場の堅調が目立つ。そんなワケでと銅の1月国内取引基準価格はJX金属によれば1トン当たり約123万円となっており、前回盗難に遭った2021年の相場が約87万円であったから当時より4割以上も値位置を切り上げていることになる。

PGM系の価格高騰でコンバーター狙いの自動車盗難が増加した事件も過去にあったが、米欧の金融引き締めによる景気悪化懸念が薄れたほか、中国のゼロコロナ政策の事実上の解除による経済回復期待を背景にマーケットには投機マネーが流入し易くなっているだけに、こうした相場連動型の盗難もまたぞろ活発化する懸念がある。


総じてリバウンド

本日の日経紙商品面には「白金買い越し高水準」と題し、英国際調査機関のWPICから2023年の世界需給が3年ぶりに供給不足になると予想されている白金が中国需要の拡大観測も背景に米先物市場の買い越し幅が前週比24%増の3万503枚と2週連続で増加し、約1年9か月ぶりの高水準となった旨が出ていた。

確かに足元で約10ヵ月ぶりの高値を付けてきているが、これに限らず金も銀も総じて貴金属はここ切り返しの動きを見せている。世界的にリセッション入りの懸念が燻るなか安全資産へ資金が向かったか金も2022年5月以来、8か月ぶりの高値を付けてきている。そうした空気を感じ取り商魂逞しい業者などの金の買い取り強化という類の広告が最近また増えてきたようにも感じる。

また先週には米雇用統計の発表があったがその中で非農業部門の雇用者数は市場予想を上回る伸びを示したものの、民間平均時給の前月比上昇率は市場予想を下回っていた。人件費の影響を受け易いサービスのインフレが鎮静化に向かうとの期待が高まり米長期金利の頭打ち感が出てきたのも金利の付かない金にとっては追い風だろうか。明日に米消費者物価指数の発表を控えるが、結果次第でまたホットマネーが動く事になるかどうか注目だ。


システミックリスク

周知の通りロシアの供給不安で数多の商品が急騰しているが、先週のマーケットでそれが特に顕著だったのはなんといっても非鉄金属のニッケルであったか。国際指標となっているLME(ロンドン金属取引所)の3ヵ月先物は週明けの7日から前週末比約2倍に急騰、翌日も前日比約2.1倍の1トン10万ドル超えと暴騰しまさに倍々ゲームで史上最高値を更新した。

ミーム株の類ならまだしもあらゆる製品に多用されている非鉄金属がたった2日間で約3.5倍にも化ける事態となった事で、LMEはこの日ニッケルの取引を即日停止措置にしてその日の取引を全て取り消しにすると発表。その背景には多くの参加者がマージンコールへの対応に追われる中でも、中国メーカー大手の看過出来ない額のショートポジションが市場全体へ多大な影響を及ぼすと予測された事への思惑がある。

個人投資家としてLMEの鉄火場に参加するのはハードルが高いものの、手軽にこの暴騰劇が味わえたところでは非鉄大手の住友金属鉱山が7日に年初来高値を更新、またETFではWisdomTreeニッケル上場投信が週末4日の大引3,100円から8日の6,152円まで2営業日でほぼ2倍に急騰と破竹の勢いであった。

しかし同じくロシアの供給不安で急騰しているパラジウムもたしか2000年だったかTOCOMで解け合いの憂き目に遭った記憶があるが、名門LMEの取引帳消し措置は前代未聞といえる。こうなるとこれまでにも増して回収やリサイクルの強化等々、所謂都市鉱山を囲い込む戦略が今後も改めて重要になってくるか。


デジタルゴールド始動

信じ難きロシアの暴挙を背景にマーケットの激震が続くが、NY金先物価格は昨年6月以来の1900ドル台示現後も一段高し、国内でも1グラム7,000円大台を突破から一昨年の8月以来、約1年半ぶりに史上最高値を更新した先物価格が先週の祝日明けにこれを更に塗り替えていた。一方で金の代替としてかつて注目された暗号資産が軒並み値を崩す光景を見るに、依然として金が投資家から安全資産としての不動の位置にある事を感じる。

そんな中、今月は三井物産がブロックチェーン技術を用いて金価格に概ね連動する暗号資産「ジパングコイン」の発行を開始している。同暗号資産は1ジパングコインを金1グラムとしてその量に応じた金を実際に調達、価値を金で裏付け金価格と連動させる事で代表的暗号資産のビットコイン等と比べて価格変動を低減し投資以外にも既存の金融商品に無い決済手段としての機能を有するもの。

金の裏付けのあるものとしてはETFが既に定着しつつあるが、この度の商品は暗号資産等に抵抗の無いZ世代などを意識しているのだろうか?何れにせよ先ずはどの程度普及するかというところだが、それ如何でこれから他のコモディティ連動の暗号資産も商品化されるのかどうかこの辺も今後は注目されるところ。


波乱への構え?

昨日の日経紙グローバル市場には「新興国の中銀、金買い再び」と題し、WGCの集計では中銀や公的機関の4~6月の金の購入量が1~3月に比べて5割増加し200トンとなるなど、新型コロナウイルス禍で中断していた中央銀行の金買いがタイやハンダリーなど新興国中心に再度活発化してきた旨が出ていた。

新興国といえばこの頁の1~6月の金準備増減一覧の増加率上位でインドの29トンの次に25.5トン増でランクインしているウズベキスタンなどは昨年ロシアと共に準備資産の一部として保有していた金の売却の動きが目立っていたものだが、世界の中銀で昨年最大の買い手となっていたトルコは継続増加でこのウズベキスタンの次に位置している。

他に首位のタイの金準備残高は過去最高を更新し、ブラジルの金準備残高も2000年11月以来ほぼ21年ぶりの高水準となるなど新興国の積極購入が目立つところだが、米のテーパリングも現実味を帯びてきているだけに国境を越えたマネーの動きなど通貨波乱に備え各国の身構える動きが一層顕著化している構図だろうか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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