6ページ目   商品先物

逆鞘の憂鬱

さて、先週の日経紙には「歯科医悩ます「銀歯」高」と題して、 保険診療で代表的な銀歯を作成する仕入れ価格が混ぜ物の一つであるパラジウムの高騰などで近年大きく跳ね上がり、昨年から今年にかけては診療報酬上の告示価格に対する上鞘も顕著となってその鞘分が歯科医側の利幅を大きく圧迫しているという旨がでていた。

現在JIS規格では銀40%以上・金12%以上・パラジウムは20%以上と決められているが、強度を増す為にこのパラジウムは要。ちょうどこの記事が出た後に知人の歯科医師に会う機会があったのでこの辺を聞いてみたら、確かにキャストウェルも数年前は3万前後で調達出来たモノが最近だと9万円前後まで跳ね上がっておりヤレヤレという感じであった。

ただ確かに利幅は大きく減少してはいるものの新聞等で報じられているが如く銀歯の補綴一辺倒で黙って赤字を垂れ流している向きは少ないといい、その辺は近年チタン冠やCAD/CAM冠など保険の適用範囲も広がってきており双方共に選択肢もまた広がってきているだけにこの辺も一括りで酷い惨状というワケではなさそう。

とはいえ一長一短でチタン冠など硬度の面で人によって合う合わないがあり、ならばやはりジルコニアセラミック等がお勧めとなるもののなかなか全ての患者が自由診療に手を出せない部分もある。点数も順次上がってきているとはいえ昨今の市況環境も変わってきており、それらを鑑み公定価格も機動的な対応が必要な状況になってきているのかもしれない。


環境問題とPGM

さて昨日の日経紙商品面では「触媒貴金属 再び最高値圏」と題しガソリン車用触媒に使うパラジウムの国際価格が、自動車生産回復に伴う需要復調のなか主要生産国の供給懸念がにわかに強まった事を背景に、ニューヨーク市場の先物で昨年2月末に付けた史上最高値以来1年1ヵ月ぶりの水準まで急騰している旨が出ていた。

また同じくガソリン車の排ガス触媒に使うロジウムや、電子部品製造や水素生成の際の触媒等に使うイリジウムもエコブームのなか主要国の環境対策強化などを背景に急騰。同紙では5年前比で冒頭のパラジウムは約5倍、上記のロジウムは40倍を超える高騰とあったが、イリジウムもまた然りで約10倍に高騰している。

ところでこれら白金系レアメタルはプラチナの副産物として産出されるが、このプラチナもここ最近は値上がり急で昨年11月から直近までの騰落率では首位のビットコイン、2位の原油に次ぐ3位に付け注目を浴びている。上記レアメタルは電気自動車が本格普及するまでの間のガソリン車温暖化対策を背景としているが、プラチナもディーゼル車の排ガス浄化装置のほか燃料電池車の発電装置向け需要期待が背景にある。

金の下鞘に甘んじてはや数年プラチナも漸く覚醒かといったところだが、いずれにしろSDGsの掛け声が喧しい現代において今後一段と進む持続可能な社会への転換過程で常に付き纏うリスクとしてこれらに不可欠な資源不足の問題があり、これらに対応するべく更なる技術革新などが課題となってこようか。


蒸し返しの銀

一昨日はロビンフッダーパワーと題し投稿型オンライン掲示板レディットを介した投機的動きが代表的銘柄のゲームストップ始め銀や仮想通貨へまで飛び火した旨を書いたが、昨日の日経紙マーケット面でも「NY銀8年ぶり高値」としてこのレディットの書き込みを切っ掛けにNY銀先物が時間外取引で一時1トロイオンス30ドル台と2013年2月来、8年ぶりの高水準となった旨が出ていた。

ゲームストップなど株式がヘッジファンドと対峙する格好で空売り勢を締め上げろとの掛け声で煽ったなら、こちらのコモディティーも銀市場は銀行に操作されているとかインフレ調整後の銀価格は1000ドルであるべき等々こちらの方は更に荒唐無稽な内容となっておりこれはもうほとんど陰謀論の世界か。

ところでゲームストップ株から銀へ飛び火といはいうものの、寧ろこの銀の方が先で既に昨年の9月に彼らロビンフッダーの買いで急騰した経緯があり当欄でもこれを取り上げている。しかしゲームストップ株との貸借倍率の相違などこの辺の勝手の違いをどう見るか、ちなみにこちらはCFTCが目を光らせているがさて今後彼らを動かす事になるのかどうかこちらも目が離せない。


新電力の誤算

さて、このところ寒暖差が激しい日々が続いているが先週末の日経紙総合面には「新電力料金2倍に高騰も」と題して、寒波の影響から暖房用需要が高まった事などで今月に入ってからのスポット価格の上昇で自前の発電所を持たない新電力業者の経営が厳しさを増し事業環境の整備など改めて課題が浮上している旨が出ていた。

確かに電力供給は綱渡り状態で、余力を示す予備率は北陸・四国に至っては直近でたった3%という状況。同頁では昨年末からのスポット価格のグラフが出ていたが、JEPX(日本卸電力取引所)の指標価格は今月中旬に昨年12月上旬と比べて約25倍に急騰、さすがに経産省はこの影響を看過出来ず昨日から事前の販売計画と実際の販売量にズレが生じた際に支払うインバランス料金について支払い金額に上限を設けるという方策に出ている。

しかしこんなケースが出て来た時こそ先物市場がリスクヘッジで本領発揮といったところだがこの辺はまだ十分に活かしきれていない感は否めない。今回の需給ひっ迫にはLNGの調達難というのも大きな要因だが、このLNGも総合エネルギー市場を見据えての上場計画もあるだけにこれら上手く機能させてゆく事が自由化を進めてゆくうえでも非常に重要なポイントになってくるか。


潮流察知

本日の日経紙マーケット面・市場点描には「銅と金、正常化足踏み移す?」と題し、銅価格を金価格で割った銅金レシオが11月から上昇が加速し昨年6月以来の水準を回復したあと伸び悩み商状となっているなど景況感の改善を示唆する指標の動向に市場の関心が集まっている旨が出ていた。

銅といえば新型コロナウイルスの感染拡大をいち早く収束させた中国の堅調な需要などを背景として足元では国際指標であるLME3ヵ月先物は7年10ヵ月ぶりの高値を付けているが、こうした需給に目を付けたファンド勢の投機資金の流入もあってコロナ第一波の頃の3月の安値からその上昇率は実に8割にも達している。

ところで先月末に茨城の下妻市で砂沼サンビーチに埋没してある高圧ケーブル約1000メートル分が盗難被害に遭ったという事件が報じられていたが、この手は銅線の転売狙いで間違いの無いところだろう。これまでも非鉄相場が温まって来るとそれとリンクしてこの手の盗難事件が報じられる事が増える傾向にあったが、斯様に潮流を察知するのは何もファンド勢に限った事ではないという事の証左か。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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