9ページ目   商品先物

バイプロ下剋上

さて、本日の日経紙商品面には「パラジウム増産合戦」と題し南アやロシアの主要鉱山会社が、インドや中国で一段と排ガス規制が強化される事などを背景に自動車の排ガス用触媒に使用されるパラジウム需要の伸びに対応すべく他社の買収や新鉱区の開発等で生産能力の増強に動いている旨が書かれていた。

これらの効果が出て供給が増えるのは20年代中盤になるともいわれ当面高値が続く見通しとされるが、国内のETFなども前回触れたのが2月でこの時は三菱UFJ信託の純パラジウム上場信託が50,000円大台に乗せ年初来高値を更新した旨を書いていたが、今月に入ってから同ETFは60,000円大台の乗せての推移となり本日も年初来高値を更新している。

ここ数年のPGM系の推移はまさにバイプロものの下剋上と言っても過言ではない状況であり、スポット市場とは真逆な様相を呈する宝飾市場などはさながらトコロ相場?のような感覚を覚えるものだが、特有の供給制約等も背景に各鉱山会社も生き残りを賭けるなか各々の舵取りが今後も注目されようか。


現物急増の下地?

先週末の日経紙商品面には「白金ETF残高最高水準」と題し、プラチナの現物を裏付けとしたETF(上場投資信託)の残高合計が世界的な低金利環境下のなか、金と比べた割安感などを背景に投資家の継続的な買いから年初比で4割増え過去最高水準となっている旨が書いてあった。

それに伴い世界のプラチナETFが裏付けとして保有する現物は年初から25トン増加して88トンになったが、前回プラチナETFが過去最高を記録したと当欄で取り上げた今年の4月時点で73トンであったからそこから約半年一寸で15トン増加したという事になる。

減産対応もままならないなか欧州を中心とした世界的なディーゼル車販売の不振を背景に歴史的安値に甘んじている白金だが、先週には日清紡が燃料電池車の発電装置向け触媒について白金使用料を三分の一に減らした新素材開発の報があった。斯様な陰極まる環境下でのETF残高増加が復活の下地となるか否か引き続き動向を見守りたいところ。


全部高相場一服

本日の日経紙商品面には「金、3か月ぶり安値圏」と題し、足元での米中貿易協議の進展期待や米国の景況感の改善などからマネーが株式などのリスク資産に向った事で、金の国際指標であるニューヨーク先物が今月に入って調整色を強め直近では3か月ぶりの安値まで下落している旨が書かれていた。

ここまで相場を牽引してきた一つにETFがあるが、先週はETFの最大銘柄であるSPDRゴールドシェアから1日の減少幅としては3年ぶりの高水準となった13トンが流出した模様。9月末段階で世界のETF残高は半年で13%も増加し2808トンと、IMFが保有する金の量とほぼ同じとなっていただけに揺り戻しも相応というところか。

斯様に先行きの不透明感が一時後退、マイナス金利でのバブル化が急速に意識され金や債券が調整色を強めるに至った事で、先に当欄でも書いた金・株式・債券の全部高の構図から株が一人勝ちとなっている状況だが中央銀行の不気味な継続的積み上げも進行している様をみるにこの構図もバブルだったと片付けるのはまだ早計か。


PGM系のジレンマ

本日の日経紙商品面には「触媒用貴金属が急伸」と題し、世界的な環境規制の強化で1台あたりの自動車用触媒への使用量が増えるとの観測を背景に工業用貴金属のパラジウム先物相場が上場来高値を更新、ロジウム相場も11年ぶりの高値圏と急伸している旨が載っていた。

このパラジウムといえば春先までの半年間で約6割もの上昇率を記録した際に、英アングロ・アメリカのCEOがスイスで開催されたサミットの場で同相場を「バブル」と発言したのを切っ掛けに急反落したのが記憶に新しいが、これが丁度良い篩い落としとなった格好で早くも再度の高値更新と衰えを見せない。

PGM系といえば長引く米中貿易摩擦による景気減速やディーゼル用自動車の販売不振からのプラチナなどは金との価格差が過去最高水準まで拡大したが、米国による対中制裁の次なる発動表明に戦々恐々とするなかその需給から増産意欲の高い鉱山会社等は生産を絞れない事情とも相俟ってしばらくPGM相場も振り回される事になろうか。


TOCOM過去最高値

さて引けてみれば小反落であったものの一時は下げ幅を約600ドルに広げるなど米株式の動揺が続くが今週はNY市場が今年最大の下げ幅を記録し、人民元は2日続けて11年ぶりの安値を更新、FRBの利下げが予防的なものにとどまらないとの見方が日米金利差縮小観測に繋がり東京市場では円相場が1ドル105円台まで上昇する場面があるなど米中貿易戦争激化で世界の金融・証券市場が揺さぶられている。

そんな大揺れとは裏腹にCOMEXの金相場は大幅続伸し中心限月は2013年以来ほぼ6年4か月ぶりに1500ドル台の高値を付け、TOCOMも中心限月は連日の続伸から1982年の取引開始以来の史上最高値を更新、地金価格もまた1980年2月以来、約40年ぶりの水準に上昇とこちらは破竹の勢いである。

世界の投資マネーが高リスク資産を回避する動きのなか現物資産の裏付けがあり相対的に安全な資産とされる金に買いが集まる教科書通りの原点回帰の動きだが、先物主導のスペック的な動きのみならず先月も書いたようにETF残高等も6月末時点で6年3か月ぶりの高水準に達しているあたり冒頭の通りFRBの利下げが予防的なものにとどまらないとの見方の証左でもあるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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