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倫理観の希薄化

さて、東京証券取引所の職員がインサイダー取引に関与したとして証券取引等監視委員会から金融商品取引法違反容疑で強制調査を受けていた旨が各紙で報じられている。インサイダー取引の疑いといえばつい先週末にも金融庁に出向中の裁判官もまたインサイダー取引容疑で強制調査を受け、同委員会が東京地検特捜部への告発を視野に取引状況等を調べている旨も報じられている。

上記の東証職員の場合、上場部開示業務室に勤め企業の公開前の適宜開示情報を基に親族に株の売買を推奨した疑い。また裁判官の方は上場企業情報開示制度の企画立案他、企業の上場時やTOB、M&Aなどを行う際に提出する開示資料の審査も所管する企業開示課が出向先であった。こちらは堂々と本人名義で取引していたというから素人丸出しだが、双方共に取引を行った輩がこれまでとは毛色が異なるところが異例だ。

数あるインサイダー取引ネタの中でも特にTOBは企業破綻と共に確実性が高くその旨味も大きいだけに、その甘い香りに魅せられ情報を掴んだ多くの向きがインサイダー取引に手を染めてしまう例が多いが、曲がりなりにも市場改革の旗振り役である取引所の内部でインサイダー取引が行われていたのでは洒落にもならない。今後東証へ行政処分が及ぶか否かだが、いずれにせよ早急な信頼回復が求められる。


東京ゲームショウとIP株

さて、先週にサウジ政府系ファンドのPIFが任天堂の保有比率を低下させたことが明らかになっているが、PIFといえばこの任天堂はじめ日本のゲーム株保有が有名なところ。ところでゲームといえば先月末まで「東京ゲームショウ」が幕張メッセで開催されていたが、今年の出展社数は985社と過去最高となった模様で、この幕張メッセでもサウジが大型ブースを構え今後も日本への投資を進める考えを示していた。

ところでこの東京ゲームショウの期間中に歩調を合わせるべく株式市場では年初来高値を更新するゲーム株が多数出たのがひときわ印象的だったが、上記のサウジ政府系ファンドが大量保有してきた経緯があるカプコンはこの初日に年初来高値を更新、ちなみに同じく同ファンドが買い増しを続けて来た東宝もまたこの期間中に年初来高値を更新してきている。

他にもこの日に同じく年初来高値を更新していた銘柄にコナミグループや先週に年初来高値を更新してきたバンダイナムコHDもあったが、こうしたエンタメ関連株は先に経団連によるコンテンツ予算増提言も報じられていた通り、政府からのサポート期待も支えにこの期間に限らずともここ数か月の混乱相場やその出直りにおいてもTOPIXを大きくアウトパフォームするなどその堅調さが目立っている。

また上記所銘柄はそれぞれ例えばバンナムはドラゴンボールやワンピース、コナミも桃鉄など有力IPを保有しているが、前にも書いた“ゴジラ”や親子世代にわたるゲームなどと同様に登場して既に数十年経ってもなお多くのファンを抱え、同時にマネタイズが進んでいる点などからもIP関連株には今後も引き続き注目しておきたい。


構成銘柄下剋上

さて日経平均の構成銘柄は春と秋の年2回定期見直しが行われているが、これにのっとり昨日の算出より一部入れ替わりが行われ日本製紙とDICが除外され、新たに野村総合研究所、良品計画が採用されている。構成銘柄入れ替えといえば米でも2月にアマゾンがダウ構成銘柄に加わったが、さかのぼること20年8月に行われた3銘柄の入れ替えも記憶に残る。

この時はセールスフォースやアムジェンが新規採用され、最古参のエクソンはじめ製薬のファイザー、防衛関連のレイセオン・テクノロジーズが除外されている。この外されたエクソンといえばかつて時価総額で米1位に君臨した事もあったが、上記のアマゾンよろしく近年のIT銘柄の台頭やESGの波も背景にその存在感も薄れていたということか。

斯様に長年指数に採用されていながら直近で株価指数から外された例としては、英ラグジュアリーブランドのバーバリーも9月に英国の代表的株価指数、FTSE100種総合株価指数の構成銘柄から外れている。同社は昨年4月に過去最高値を付けるも、そこから現在の株価は8割近くも暴落しており構成銘柄に求められる水準を大きく下回っている。新陳代謝もマーケットのルールの下に近年は下剋上がより鮮明になってきている感がある。


総裁選相場

過去最多の9人で争うという異例のケースで注目された自民党総裁選であったが、周知のように自民党は先週末に石破氏を第28代総裁に選んだ。これで来月1日の召集の臨時国会で102代目の首相に就任する運びとなったが、異例といえばマーケットも総選挙を睨んでの一喜一憂で為替や株式も夜間取引に跨って急騰急落の乱高下を演じることとなった。

週末の場中では金融緩和に前向きな高市経済安全保障相が勝利する可能性が高まった事で、同氏の金融緩和を想定した円安・ドル高が進み企業業績改善期待から日経平均は2日連続の大幅高を演じていたものだが、第一回投票首位から一転し引け後に金融所得課税強化案や法人税引き上げのイメージがある石破氏の選出を受けドル円相場は146円台から142円台まで急騰、また日経平均も900円超の高値引けから夜間先物では2000円以上の急落で倍返しの憂き目に遭っている。

週明けの日経平均も先物に寄せる形で1910.01円安となったが、斯様に先物オプション市場などは先月から続く乱高下で大きく取れるチャンスが近年稀に見る多さとなっている。週末夜間の動きでは上記の日経平均の約3000円の振れ幅の動きに合わせコールは期待の剝げ落ちから軒並み4分の1に暴落、反面プットは息を吹き返しディープアウトのものまで幅広く反応し約2~4倍の大化けとわずか数時間で大逆転劇を演じた。

さて、新内閣の発足後はマーケットの焦点が衆院解散時期に移るが、本日の会見で早くも石破氏は来月27日に解散総選挙を行いたいとの考えを表明している。ところで解散といえば2000年以降の解散は8回、うち日経平均は全勝しTOPIXも7回が上昇、解散前日大引から投開票直前の大引までの平均上昇率はそれぞれ5.2%、4.1%となっている事で先月も当欄で“解散は買い”というアノマリーがあると書いたが、さて今回はどうなるか海外勢の動向含め注目しておきたい。


民営化から20年

先週金曜に東証は東京メトロ(東京地下鉄)の上場を承認し、翌日の日経紙にも「東京地下鉄株式会社」の新規上場に伴う株式売り出しの全面広告が出ていた。来月にプライム市場上場予定ということで、2018年のソフトバンク以来約6年ぶりの大型上場となるが、実に民営化から20年を経て満を持しての上場という感じか。

現在は国が僅かに50%を上回るものの東京都とほぼ半分ずつの株主構成となっているが、双方同率の売却で売り出しの想定価格は1株1100円、来月8日からブックビルディングとなり正式な売り出し価格は15日に決定する。抜群の認知度を誇る同社に投資家の需要がどの程度積み上がるかだが、需要を喚起するために早くも同社は株主優待の導入を発表している。

鉄道系の優待は最近ではけっこうお得なモノも多くなってきているが、同社が発表したものを見てみると利用者も多い駅ナカ蕎麦のトッピング無料券などユニークなモノに加えゴルフ練習場や地下鉄博物館無料招待から定番の優待乗車券などラインナップしており、ほぼ毎日利用する向きにとってはそこそこ魅力的に映るモノとなっている。

その辺は兎も角も近年では総会でもお土産を廃止する企業が続出し、株主優待もまた東証再編による株主数規定緩和や株主平等性の観点から実際に特典を受け難い外人投資家などの批判を受け一頃は減少傾向にあったものだが、新NISAの導入でここへきてまたぞろ優待創設の動きも出てきている。分割の動きもそうだが、政策保有株の売却加速等も背景に改めて個人の存在が再認識されはじめているということか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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