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最大手生保の買収劇

本日の日経平均は値嵩株への売り物から急反落となったが、そんな中で医療データ分析のメディカル・データ・ビジョンが引けで5700万株以上の成り行き買いを残し比例配分でストップ高に張り付き異彩を放っていた。これはいわずもがな日本生命が同社へTOBを実施し全株式を買い取る旨の一部報道によるもので、同社は昨年も国内介護大手のニチイHDを買収しているが国内の現役上場企業に対してのTOBはこれが初の案件ということになる。

ところで生命保険会社による上場企業の買収は、昨年に当欄でも取り上げた第一生命HDのベネフィット・ワンが記憶に新しい。パソナグループの子会社だった福利厚生代行サービスの同社へは第一生命より先に医療情報サイト大手のエムスリーがTOBを実施中だったものの、最終的には第一生命が同社を手中に収めている。その辺はともかくも他には住友生命も医療データ解析大手のPREVENTを買収している。

いずれにせよ日本生命はこの日本最大級のデータ蓄積量を誇る企業買収でヘルスケア関連事業の基盤を固め、保険事業の基盤を強化したい狙いだ。前回も書いたが少子高齢化・人口減少で国内の生保市場は中長期的な縮小が避けられず、収益の多様化を図るべくその事業開拓が急務となっており、生保トップに君臨する日本生命でさえ斯様な買収劇に動くさまはこの辺を象徴しているといえ今後もこうした動きが続くか。


裏原系デザイナー創業が上場

先週末に東証グロース市場には株式投資型クラウドファンディングを展開する「FUNDINNO」がはれて上場の運びとなった。米では既にイーーロンマスク氏率いるスペースXなどの超が付く未上場ユニコーン企業株式の売買を仲介する整備が進んでいるが、未上場株取引を主力とする新興企業が上場するのは日本では初のこと。注目の初値は公開価格620円を42%上回る883円となりあと続伸し900円で引けたが2日目の今日は急反落となっている。

IPOでもう一つユニークなところで上場後も堅調持続しているのは、先月末に同じく東証グロース市場に上場したデザイナーのNIGO氏が創業したストリート系ファッションを代表するブランド「HUMAN MADE」か。アパレル以外にも雑貨から飲食事業まで手掛けるが、こちらの注目の初値は公開価格3130円を9.9%上回る3440円となり、今月に入ってからは上場5日目に4900円の高値まで買われている。

NIGO氏といえば90年代には裏原系のファッションブームもけん引した人物だが、HUMAN MADEの前にはAPEなども大ヒットさせている。斯様に一デザイナーが主導し上場までこぎつけた様を見るに、東証スタンダード市場に上場するフレンチレストランのひらまつが頭に浮かぶ。ここも料理人の平松氏が西麻布のレストランからJASDAQ、そして東証二部から東証一部にまで順次昇格させてきた企業だ。

HUMAN MADEはこれまでコカ・コーラ社やアディダスなど著名なカジュアルブランドから20年にはヴィトンなどラグジュアリーブランドともコラボを行ってきたが、コロナ明けから今年までその売り上げは6倍以上に伸びてきている。上記のヴィトンも擁するラグジュアリー複合企業よろしく、同社の事業の多角化が上場後にうまく回せてゆけるかどうか今後も株価と共に注目しておきたい。


拠り所の変遷

本日の日経紙金融経済面には「投資 先生はSNSの功罪」と題し、資産形成の機運が高まりNISA(小額投資非課税制度)の口座数が6月末時点で約2700万にのぼるなか、金融(Finance)とインフルエンサー(Influencer)を組み合わせた「フィンフルエンサー」がXやTikTokで発信した情報をみて投資に踏み出す若者が多くなっているなどデジタル化の浸透から投資判断で頼る先が変質している旨の記事があった。

かつて80年代のバブル期には兜町に街の投資助言業者が犇めいていた時代で、今やその言葉さえ知らない向きも多い「ダイヤルQ2」などでも銘柄推奨などしていた時期もあったが、そう考えるとこれらの媒体変遷は隔世の感を禁じ得ない。従来投資助言業者は金融庁が登録制として確認してきたものだが、これらSNS等を媒体としているもの等は実際の部分が曖昧なものが多くグレーゾーンとも見える。

新NISAで投資機運が高まっているなか今は斯様に多様な選択肢がある一方で、投資詐欺の類のツールにも使われるなど弊害も並行して急増している。以前に行った金融庁の金融リテラシー調査では金融教育経験について、受ける機会は無かったが75.7%、わからないが15.4%という数字があり嵌める標的予備軍が世にあふれているだけに、投資環境の制度が形骸化しないで本来目標としてきた実効性を持たせるようにする為に基本を押さえた金融リテラシーが不可欠などは言うまでもない。

同頁で「ネット系金融を利用する若者の情報源」として挙げられていたものではトップが冒頭の通りSNSで51%、次に動画サイトが44%であったが上記の金融教育に力を入れる大手勢も、若い世代やマーケット情報に馴染みの無い人にも身の回りのものから投資関連の情報に気軽に接してもらう等の工夫が今以上に今後必要になってこようか。


インバウンド関連の憂鬱

さて高市総理が所謂「台湾有事」をめぐる件で、集団的自衛権の行使の前提となる「存立危機事態」に該当すると答弁したことに中国が猛反発を強め事態収束が一向に見えてこないが、そうしたなか懸念されるのが経済への影響か。早速中国のSNSではやはりというか日本製品の不買を呼びかける内容の投稿が激増、「北京日報」は日中関係の緊張が続けば中国はパンダの新たな貸出を停止し日本でパンダが見られなくなるとし、一部で“バシー海峡”封鎖思惑まで出る始末だ。

斯様な過剰反応を見るに2012年に日本が「尖閣諸島」を国有化した時の騒動をどうしても思い出してしまうが、この時には中国人観光客は約3割の減少を見た。日本政府観光局が先週に発表したところの1~10月までの累計訪日客数は約3500万人であったが、うち中国人訪日客数は820万人と国別ではトップ。その消費額は1.6兆円超とされているが、野村総研では渡航自粛が続いた場合、その経済損失は1兆7900億円にものぼると試算されている。

この辺を嗅ぎ取り株式市場でも関連株は急落の憂き目に遭った。インバウンド減少懸念から百貨店大手では三越伊勢丹、高島屋にJフロントリテイリングが揃って急落、冒頭の不買懸念では中国の売り上げ比率の高い資生堂をはじめとしてファストリに良品計画も急落、外務省が呼びかけた渡航自粛から航空券のキャンセルが54万件以上に上っていると報じられており日本航空にANAHDも揃って下落、他にもマツキヨに壽スピリッツから東宝等々挙げればきりがない。

懸念していた日本産水産物も事実上の全面輸入停止が判明するなど日に日に攻撃的な姿勢が強まっているが、日本に比べて切るカードが多い中国側は非難合戦で輸出規制とか次のステージに入ってくる可能性もある。とはいえ台風一過となった先を見据える動きもあり上記銘柄の急落が絶好の拾い場であったということになるのか否か、今後の動向も引き続き注視しておきたい。


今やカタリストに

先週末の日経紙総合面には「アクティビスト、日本で稼ぐ」と題し、資本効率の改善など株主提案を通じて企業価値の向上を求める“物言う株主”のアクティビストの投資対象となった企業の株価上昇で、今年のヘッジファンドのリターンは世界平均の1.7倍に達するなどその戦略が奏功して儲けが急増している旨の記事があったが、IRジャパンの纏めでは日本に参入するアクティビストはここ5年で6割増加している模様だ。

アクティビストといえばかつての「ブルドックソース事件」くらいまで“ハゲタカ”呼ばわりでネガティブ視されていた時代ももう懐かしくなってきているが、株主を意識した経営が普及していなかった市場は彼らにとってかっこうのターゲットだったのだろう。ただ近年は徹底したボトムアップリサーチで企業改革やガバナンスに踏み込んだ提案が企業の変革を促す原動力の一つともなってきており、これが併せて機関投資家の賛同をも誘っている。

こうした効果もあってTOPIX構成銘柄のうちPBRが1倍以上の割合は東証の企業改革要請があった一昨年の約47%から先月段階では約63%にまで増加してきており、ROEなどを見ても約9%近くまで改善してきている。とはいえ米S&P500では4割の企業でROEが20%を超えている現状があり、こうした部分ではこれらの指標面でも伸びしろはまだまだ残しているといえるか。

これまで当欄では日本の証券取引所を2010年代には「インサイダー天国」、その後に「アクティビスト天国」と形容していたが、インサイダー天国はかつての手薄な証券取引等監視委員会から今やマンパワーや技術も充実してほぼ挙げられるようになり、アクティビストも上記のようにかつての“ハゲタカ”時代から近年の東証の改革要請の追い風もあり今やカタリストとしてウィンウィンの構図を企業と共に創造しているあたりかつてのマーケットから隔世の感を禁じ得ない。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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