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大台超えに仲間入り

さて、昨年は日経平均が33年ぶりの高値を更新するなどの株高のなかで個別でも時価総額が節目となる1兆円の大台を超えた企業が、此処でも取り上げたOLCとねじれの京成電鉄など含め165社に達し22年末比で約2割増えることとなった。そしてさらにハードルの高い5兆円大台をクリヤした企業もまた32社とこれも過去最多となっている。

今年も時価総額の更なる増加に期待がかかるというものだが、周知の通り年明けからも日経平均は好スタートを切り1兆円、5兆円よりさらに狭き門の10兆円の大台に乗って来るプライム企業も出てきている。先週10日には任天堂が10兆円を超える場面があったが、ゲームで育てた豊富なコンテンツを武器にIPビジネスでは他の追随を許さない強味が光った一例だろうか。

そしてこの翌日11日には伊藤忠商事の時価総額も初めて10兆円を超え、総合商社では三菱商事に次ぐ2社目となった。総合商社といえばあの著名投資家のウォーレン・バフェット氏による買い増しの報で昨年は各社ともその水準を一段引き上げることとなったが、商社の中にあって非資源分野が強く最も収益安定性見込めるところが買われる格好になっている。

ところで昨年はカタリストとして東証が資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応などに関する要請や、経産省も企業買収における行動指針が出たりしたが、こうしたことによってTOBやMBOなども急増し企業の事業再編など加速してきた。こうした変革の波は今年も続くとみられ今後もその結果順次大台替えを達成してくるであろう向きには引き続き注目としたい。


経営者が占った2023年

今年の株式市場は能登半島の被災者に捧げる黙とうで始まり、取引の鐘も鳴らさないという異例の大発会で3日続落でのスタートとなったものの、先週は2,000円以上も値を上げ週明けの本日も続伸し5営業日連続でバブル後の最高値を更新、約34年ぶりの高値水準と辰年らしい登り龍の様相となっている。そこで今年もまた新春恒例の日経紙「経営者が占う」シリーズで株式市場を振り返ってみたい。

昨年の日経平均の高値予想平均は31,200円でその時期は9割以上の向きが10~12月との回答であったが、時期は大方の予想通りとなり値段も予想平均を2,600円以上上回る好パフォーマンスとなった。一方で安値平均予想は25000円台でその時期は3月を挙げる向きが多かったが、こちらは結局大発会が安値となったことで平均25,000円台に当て嵌まった格好になった。

今週の日経紙投資情報面では「注目銘柄2024」と題し、個別の有望銘柄を順に取り上げているが、こちらの1位に昨年選ばれたのはソニーG、一昨年は3年連続でトップに選ばれながらも40%以上の下落の憂き目に遭ってしまったが、昨年は大発会の10,120円から6月高値の14000円台示現まで約40%の上場と面目躍如となった。

さて今年の経営者各氏の予想はというと、日経平均高値の平均は約37,900円で年末高を予想する各氏が多く、安値予想の平均は31,250円でこちらは逆にその時期は1~3月を挙げる向きが多かった。有望銘柄は3年連続トップだったソニーGが4位に沈む一方で昨年2位だったダイキン工業が今年はトップに。昨年3位だったトヨタ自動車も5位に沈んでいる。

また今年は日経平均の史上最高値を塗り替える予想を挙げる経営者も散見されるのが印象的だったが、証券会社団体の年初の集いでは野村、大和、SMBC日興の大手三社のトップが揃って4万円台の大台を示し万年強気にも一層拍車がかかっていた。ただ昨年は東証のPBR1倍割れ是正要請や経産省の買収における行動指針が出て市場は様変わりの様相を見せており、昨年が水準訂正第1弾だとして次のステージで何処まで更なる水準引き上げが叶うか、今年も市場の新陳代謝から目が離せない。


6502退出

再来年には創業150年を迎える名門東芝だが、今年9月の日経紙にて「株式会社東芝の株主の皆さまへ 公開買い付けへの応募はお済みでしょうか?」との全面広告から3か月、周知のように本日付けで上場廃止を静かに迎え、今後は先に同社のTOBを実施した日本産業パートナーズらの陣営の下で再建を目指すこととなった。

「サザエさん」の番組スポンサー企業でもあったこの名門、以前にも書いたが2015年の不正会計でケチが付いて以降迷走が続いた。この翌年には約9000億円を投じて買収した米ウエスチングハウスの巨額赤字が明らかとなりその翌年には債務超過に転落、この時の苦し紛れの第三者割当増資が悪夢の始まりとなったが、漸く魑魅魍魎の呪縛から解かれることとなる。

とはいえ今後は事業の成長と共に負債の返済も両立させてゆくのが必須となる。ちなみに昨日の最終売買日は前日から出来高を5倍近くまで膨らませ、その終値は前日比5円安の4590円で一旦株式市場からは退出となった。74年にわたる上場企業の歴史に幕を下ろしたわけだが、はたして再上場が叶うかどうかすべては上記の課題にかかっている。


債券以上株未満?

さて、先週は東証プライム市場に上場している日本酸素ホールディングスが2019年1月に発行した劣後特約付き社債を財務の改善進行を背景に繰り上げ償還するとの発表があったが、社債といえば先月はソフトバンク(株)第1回社債型種類株式が東証プライム市場に上場している。ところでこの社債型種類株式、日本では初めてとなるシロモノだが会社法上では株式となる。

一部議決権や普通株式への転換権利があるこれまでの種類株で代表的であった優先株とは違いそれらの権利は持たないものの配当請求権が優遇される株より債券寄りな商品で、発行日から5年間年率2.5%の固定配当を得ることが出来、それ以降は発行体が買い戻せる権利が生じその際は発行価格相当で買い取る可能性もある。今回調達した資金は1200億円で購入申し込みの実に92%が個人投資家であったという。

初めて東証に上場したといえば9月にはETFのアクティブ型も計6本が初めて上昇している。パッシブ型のラインナップに新風を吹き込んだ形だが、この度の社債という絡みでは8月には三菱UFJ信託銀行とNTTデータが年度内に1万円単位で社債を売買出来るインフラ整備の旨が報じられている。

従来では100万円単位の取引が主体であった社債に個人も投資し易くなることで個人の投資と企業の資金調達の手段の幅も広がってくる。こうした新しいデジタル技術が与えるメリットとして効率性に加えて上記の通り投資家の選択肢の広がりなどがあるが、新NISAを前に今後も新たな枝葉の広がりに期待したいところ。


買収たけなわ 

当欄では先月だけでベネッセホールディングスや大正製薬など3件のMBOを取り上げたが、今月に入ってもこの流れが止まらない。先週末はプライム市場に上場している人材派遣のアウトソーシングの創業者が投資ファンドのベインキャピタルと共にTOBを実施した後に株式非公開化の方針との旨が報じられている。

さてTOBといえばもう一つ、直近では人材派遣業界3位のパソナグループの子会社ベネフィット・ワンに対し第一生命ホールディングスがTOBを実施する旨もまた報じられている。とはいえ同社に対しては既に医療情報サイト大手のエムスリー社がTOBを実施中でパソナも賛同を表明しており、買収対象の同意を前提とするとしている第一生命に対してのパソナ側の対応が注目される。

ところで10月に当欄では京成電鉄が保有するオリエンタルランド株の方が親会社である京成電鉄よりも時価総額が上回っている親子逆転現象について書いた事があったが、このベネフィット・ワンもまた親会社のパソナより一時期は5倍以上の時価総額を誇っていた“超親子逆転”株で有名であった。近年ではこの差も随分と縮まったが、それでも先週7日時点で子会社の方が約2.5倍と10年以上続く親子逆転は解消されないままであった。

それは兎も角も、つい最近では日本生命が介護大手のニチイホールディングスの買収を明らかにしているほか、住友生命も医療データ解析のPREVENTを8日までに買収と大手生保の異業種買収がこのところ目立つ。国内の少子高齢化・人口減少で市場が縮むなか、収益多様化を図る動きの活発化でこうした買収により活路を見出す動きが今後も増加してくるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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