3ページ目   株式

あの時の面々揃い踏み

さてトランプ関税とは別のところで一連の騒動による問題を抱えているフジメディアHDだが、先週には旧村上ファンド代表であった村上世彰氏の長女である野村絢氏が個人で8.96%を保有する筆頭株主に躍り出たことが明らかになっている。そんなわけでこの米トランプ大統領の関税ショックで彼方此方の株価が急落するなかでも同社株はさまざまな思惑を乗せて先週には年初来高値を更新してきている。

同社株については当欄でも年明けに一度触れており、20年前のライブドアを介したニッポン放送株取得によるフジテレビ経営の関与を目論んだ実業家の堀江氏の同社株式取得を書いたが、この直後に同社株取得に動いていたのが運用会社のレオス・キャピタルワークス。そしてこのライブドア事件の騒動の時に堀江氏と共にインサイダー取引で逮捕されたのが村上ファンドの村上氏であったわけだが、20年の時を経てその村上氏の長女が筆頭株主に躍り出てきたあたり因果なものだ。

ところで直近では7.19%を保有する別の物言う大株主の米ダルトン・インベストメンツが同社に取締役候補としてSBIHDの北尾会長兼社長はじめ総勢12名を提案するとの報道があった。ちなみに上記のレオス・キャピタルワークスもSBIHD系だが、この北尾氏といえば上記のライブドア騒動では“ホワイトナイト”として登場し、ライブドアにニッポン放送株を手放させて和解に持ち込ませた人物。こちらもまた因縁を感じるが気が付けばかつての東芝並みにキャストが出揃っている。

株主提案というところでは筆頭株主の野村氏の場合、直近で急速に株式を取得しその保有期間から提案の要件は満たして無くその権利は無いだろうが、これまでも大量取得した上場株式のイグジットにおいて企業再編に絡んできた経緯は少なくない。ダルトンにしても認定放送持ち株会社特有の壁などあるが、いずれにせよ6月の株主総会に向けてそれぞれのキャストがどういった行動に出るのかまだまだ今後も目が離せない銘柄の一つだ。


上場ゴールの篩い分け

世界を震撼させている震源地の米株式市場だが、昨晩は5日ぶりに急反発し3000ドル超えの場面も交え1日の上げ幅として過去最大を記録した。先進国にあってフェイクニュース等で振り回され乱高下する様はまるで新興市場との一部指摘も出ているが(まあ日本市場も同じだが・・)、ところで新興市場といえば国内では先に東証がグロース市場に関し上場5年で時価総額100億円未満企業を上場廃止にする方向など上場維持基準を厳しくする方針を示している。

この辺に関しては先週末の日経紙でこの100億円水準をクリア出来ていない企業が7割にのぼる旨も書かれていた。現行の上場10年で40億円以上からみれば5年後で100億円は一気にハードルが上がった感もあるが、先月には東証の上場維持基準による経過措置が終了しているものの経過措置対象企業はプライム市場で55社、スタンダード市場でも140社近く残っているのを見るに約4割が上場時の時価総額を下回っている同市場の篩い分けも当然の流れか。

これまで新興企業ポストはその資金調達のパイプの細さやVCが早期イグジットを望む姿勢、また個人を中心とした売買主体の特異な構図等から小粒上場が問題になっており“上場ゴール”などという言葉まで飛び交った事があったが、こんな状況が改善されないままでは本来描いていたグロース市場からスタートしその成長と共に上のポストを目指すというあるべき姿も絵に描いた餅になってしまうのも確かに致し方なしか。

こうした素地の改善が先なのか強制退場が先なのか考えるべき点は多いが、先月の上場維持基準による経過措置終了でも既に感じた事だが経過期間はあっという間に過ぎ去る。このグロース市場に関する上場維持基準強化が今回設定された5年間でどの程度未達の企業に影響を及ぼすのか未知数だが、プライム市場、スタンダード市場、そしてこのグロース市場の果たす役割を改めて考えつつ今月下旬の東証有識者会議での議論を経た最終決定を待ちたい。


牛歩の新陳代謝 

さて、今週始めの日経紙では「投資家の皆さま、ご注意ください」、「2025年3月 上場維持基準による経過措置が終了します。」として、2025年3月以降の基準日において基準未達の企業は原則1年間の改善期間内に基準を達成出来なければ上場廃止となります。上場廃止後は東証を介した株式の売買が出来なくなりますのでご留意ください。との一文が入った5段広告が目に付いた。

すっかり時が経過していたのを忘れていたが、これを見てあらためて経過措置がそういえばあったなと思い出すものだ。日経紙によればここまでなんとか市場に嚙り付いてきた経過措置の対象企業はプライム市場では55社、スタンダード市場では140社、そしてグロース市場では51社と全体で250社近く残っている模様。3月末決算企業ではこれら改善期間のあと監理銘柄、そして整理銘柄を経て半年後の2026年10月1日に上場廃止となる。

当初は何処までダラダラと延長するのかはなはだ不透明だったが、いよいよ終わりが見えてきた事で重い腰を上げ優待等で大盤振る舞いする向きも出て来た。日米の株価指数の組み入れ銘柄のうち30年前から上場している企業と30年前以降に新規上場した企業の比率を見ると、ナスダック等では30年前から上場している企業とそれ以降に上場した企業はほぼ半々だが、これがTOPIXでは前者が70%超、後者が約30%となっており業績や株価が低迷したまま市場に残り続ける企業が前者の比率を上げているという見方も出来る。

上記の優待事情として23年以降では上場基準に経過措置対象であった企業による優待の新設比率は全体平均よりも高い傾向にあるとか。そういったことで今後も上記の経過措置対象企業の悪足掻き?で優待の新設など高水準が続く可能性もあろうが、昨今の傾向から中にはMBOなどで自ら市場退出を選ぶ向きも出て来よう。いずれにせよ牛歩ながら新陳代謝の動きが少しでも促進されることに期待したいもの。


脱コングロマリット

さて当欄では東京メトロやキオクシアの上場など大型上場を取り上げてきたが、先週はこれらに続く大型モノのJX金属が東証プライム市場に上場している。ゆうちょ銀行の売り出しと重なるなかにあって公開価格は仮条件の上限で決まり市場からの資金吸収額が18年に上場したソフトバンク以来の大きさと注目されるなか、初値はその820円の公開価格に対して2.8%高となりその後も続伸してかつての親会社の株価を抜き好調なスタートを切っている。

JX金属といえば周知のようにこれまでENEOSホールディングスの100%子会社だったが、同社は祖業である銅の精錬事業から今では半導体材料企業として生まれ変わる方向へ舵を切っておりこれまでの金属と親会社の石油の両輪ではシナジー効果が無かったワケで、今回の上場は所謂コングロマリットディスカウントを解消し成長の機会をより確実にする意味でもいい独立事例ともいえるか。

この上場で親会社のENEOSホールディングスの連結対象からは外れ親子関係は解消する形となるが、ENEOSとしてもこれで3600億円超の売却資金が入るわけで既に同業のコスモ石も来月から本格生産するSAFやバイオ・合成燃料など次なる成長投資に充てることも可能になり、JX金属も石油から離れてこちらもまた成長事業投資で企業価値を高めてゆけるウィンウィンの構図が描ける。

折しも国内では半導体需要が広がるなか、本来持っていた強味を活かしてかつて世界を牽引した“日の丸半導体”の復活で再度日本が存在感を示すことを目指す動きも活発化してきている。同セクターの大規模上場の好調スタートはカンフル剤となり後続企業にとっても追い風となるだろうが、今後もこの手のコングロマリット解消からスピンオフの動きが増えてくることも予想されるか。


読売333指数始動

本日から読売新聞社が提供する株価指数「読売333」の算出が始まった。これは日本の株式市場から主要銘柄として選んだ333銘柄で構成される新しい株価指数で、初日の終値は35,507.74円であった。この指数だがその算出方法が最大の特長で、この読売333は「等ウェート型」を採用し各銘柄の値動きの比率を足し合わせたものを全銘柄の333で割る算出方法となり値動きの平均値を示すもの。

これにより大企業や特定企業の動向に左右されにくい点や、時価総額が小さくても成長性の高い銘柄の値動きを捉え易く中小型の伸びも取り込める点が特徴で、実際に東証プライム市場のみならずスタンダード市場やグロース市場の銘柄も含まれ地方企業や新興企業が含まれている事にも注目だ。こういった等ウェートを採用する株価指数は日本では初めてであると思うが、海外では既にS&P500イコール・ウェイト型指数などがある。

ちょうど直近では米市場全体を牽引してきた所謂“マグニフィセントセブン”はエヌビディア株の下落やテスラ株の往って来いなどが重なったこともあり高値からの下落率が先週には20%を超え弱気相場入りしている。時価総額加重平均型では上記のような主力の特定銘柄が与える影響が高くなるが、イコール・ウェイト型ならこうしたことを回避出来る。

この指数の始動で早速26日(水)には「eMAXIS Slim 国内株式(読売333)」が設定される予定で、これはNISAの成長投資枠の対象ファンドにもなっており信託報酬率も低めの設定になっている。目下のところ人気の矛先は付和雷同的にオルカンやS&P500一辺倒と喧伝されているが、斯様な新商品の登場も含め新たな指数の始動で日本企業への投資を見直すきっかけにもなる事も期待したい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

カテゴリー

アーカイブ

2025

6

1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30