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ビットコインに賭ける企業

さて、2024年11月の米大統領選以降は米ストラテジー社(旧マイクロストレテジー)などを筆頭に企業がビットコイン投資に賭ける動きが加速しているが、直近ではCB発行後の5月下旬にビットコインを購入したミーム株で有名なゲーム販売の米ゲームストップが新株予約券付社債を発行するとの報に、またもビットコインを購入するのではとの思惑が嫌気され同社株が大きく下落する場面も見られている。

ちなみに米ストラテジー社は今月も10万ドル台で約160億円相当ビットコインを更に買い増ししており、これで同社が保有するビットコインはビットコイン総供給量の3%近くにもなる58万ビットコインを超え、日本円にして実に9兆円を超えてきている。もはやビットコインそのものともいえるが、欧州勢でもビットコイン関連企業であるザ・ブロックチェーンGもビットコイン取得拡大のためファイナンスを行うと発表している。

では日本企業はどうか?当欄で先月に取り上げた東証スタンダード市場のメタプラネットは取り上げ後に3日連続でストップ高を演じたが、今週はじめにビットコインの追加購入を明らかにしたことでまたも株価が反応、本日も年初来高値を更新し先月末比で80%高と破竹の勢いを演じ、同時に取り上げていたリミックスポイントも今週はこれに連れ高し先月末比で一時40%高と急騰した。

メタプラネットの時価総額は4月安値では1500億円にも満たなかったものが、本日段階でプライム上場の日清食品や住友林業をも抜いており、年初来高値局面では1兆円倶楽部も指呼の間の水準に化けている。まさにビットコイン並みだが、そのビットコイン保有額に対しこの時価総額が妥当かどうか賛否も分かれよう。今後もフルベットな企業はビットコイン価格に一喜一憂の展開となろうが、オルタナティブとしての賞味期限にも注意しておきたいところ。


米IPO復調

先月末にBIS(国際決済銀行)が公表したリポートでは米国債の買い手として法定通貨等に価値が連動するステーブルコインの発行企業が存在感を強めている旨が明らかになっているが、このステーブルコインといえば今月は5日に発行大手のサークル・インターネット・グループがIPOをはたし公開価格に対し上場初日は168%高で取引終了し、その後4営業日では3.4倍に上昇するなどロケットスタートとなっている。

また、サークルの後に上場した防衛・宇宙事業を手掛ける米ボイジャー・テクノロジーズの初値は公開価格比で約2.3倍に急騰、初日は公開価格を82%上回る水準で取引を終え、この翌日には米新興フィンテック企業のチャイムファイナンシャルがナスダック市場に新規上場し公開価格37ドルに対し初値は43ドル、一時高値は66%高の44ドル94セントまで上昇するなどいずれも好調だ。

これらIPO復調の背景には米関税政策の先行き不透明感の後退が挙げられているが、そうなるとこの関税政策を嫌気し市場が急落した影響でIPO延期検討に入っているフィンテック決済大手のクラーナや、チケット再販を手掛けるスタブハブなどには再度期待が高まろうというもので、今後もこれらの動向には注目しておきたいところ。


経営陣の自信

トランプ関税やひところに比べた円高などが重荷となり拡大していた東証プライム市場の企業業績も2026年3月期の純利益合計は前期比7%減と6年ぶりの減益が見込まれる旨が先の日経紙に載っていたが、そういった中においても上場企業の自社株買いが2025年1~5月は約12兆円と前年同期比で2割増え、同時期としては最高となった旨が先週の同紙に出ていた。

背景の一部には3月期決算のプライム上場企業の手元資金が、3月末に112兆円と2008年3月期以降では3番目の高水準にあるなど財務に余力があることも指摘されている。確かに最近の自社株買いの規模は対時価総額比でも5%を超える企業も珍しくなくなり、本日に上場来高値を更新してきたSANKYOやアイシンなどは9%台、クシュタールの買収攻勢に揺れたセブン&アイHDやワコールHDなどに至っては実にこれが10%超えの規模となっている。

先週に東証から発表された売買動向では、6月第1週に海外勢の日本株買いは売りを上回り1000億円を超える大幅買い越しの連続記録は10週に及んでおり、こうした海外勢の連続買い越しは23年6月以来、2年ぶりの長さとなっている。先月の売買動向を取り上げた際にも書いたが、こうした背景には上記のような想定以上の自社株買いがポジティブ視されている事も大きいか。

そういった一方で、中にはアクティビストの要求に屈して?成長投資より自社株買いを優先している向きもあるなどの指摘もある。この辺は現段階での予想値でもこの自社株買いと配当などの増加でこれらを合せた総還元性向としては70%近くまで上がることが想定されており、株主に対して経営陣の自信を伝えるメッセージとしては十分だろうが、今後は成長投資とのバランスも課題になって来ようか。


最後?の定時株主総会

注目されるであろう主要どころの株主総会がスタートしているが、明日のトヨタ自動車の前に昨日はTOBにより非公開化予定の豊田自動織機の株主総会が開催された。上場会社としてはひとまず最後の定時総会となるが、会社提出の3議案が可決されて株主提案の3議案の方は否決されることとなった。また、はたしてというかこのTOB価格について株主からは疑念の声も上がった。

同社株といえば4月の関税ショックで10250円まで急落したものの、あとTOB価格への期待から18000円台まで上昇していたものだったが、いざ蓋を開けたら16300円と肩透かし?の価格で同社株は今月初めには一気に2000円以上も急落する憂き目に遭った。現在のBPS実績が約16300円であるからちょうどPBR1倍といったところだが、これが本質的な企業価値なのかどうかというところだろう。

これに関しては株主の英運用会社ゼナーアセットマネジメントがTOB価格は20000円以上が妥当との見解を示しているほか、同じく英の投資ファンド、アセット・バリュー・インベスターズからも本源的な企業価値より低いとの声が挙がっている。また直近では花王の臨時株主総会にて新たな社外取締役の選任を求めた香港のオアシス・マネジメントもトヨタ自動車と共に同社株主に名を連ねている。

今後彼らアクティビストが価格の引き上げ要請を含めた対話要請が出てくるかどうかだが、いずれにせよ今回のケースは日本の上場企業の非公開化としては最大になる見通しだ。非公開化が叶えば上記のようなアクティビストの標的からは外れる反面、創業家の影響力は自ずと強まることになりこれがどう転ぶかだが今後もトヨタグループの動向からは目が離せない。


黄金株浮上

先月末にペンシルベニア州にあるUSスチールの製鉄所にてトランプ米大統領は鉄鋼の輸入関税を25%から50%に引き上げると表明している。またもやれやれという感じだが、演説を行ったこのUSスチールといえば日本製鉄による買収交渉は約140億ドルの追加投資を表明するなど大詰めを迎えてはいるものの、日本製鉄が求める完全買収という形で決着するのかどうかいまだ予断を許さない状況となっている。

ところでこの買収案件に絡んでは先月にこのペンシルベニア州選出の上院議員が政府による「黄金株」の関与を仄めかしている。なんとも久し振りに聞いた言葉だが、1株の保有で経営上の重要な決議に拒否権を発動出来る特別な株式。国の安全保障上ふさわしくないと思われる時、この黄金株を創業者や国家が持つことで合意無き買収を避ける効力を発するもの。

ちなみに日本の株式市場でこの黄金株を発行している企業としてはかつての「国際石油開発帝石」がある。現在東証プライム市場に上場する「INPEX」だが、此処はエネルギー安定供給の観点からこの黄金株を経産省が所有している。米政府が黄金株を持つ事で買収となるも米政府が安全保障上のコントロールを握り、完全買収に難色を示していたトランプ氏の面子も辛うじて保てる究極の策とも取れる。

そう考えると成る程いま考えられるベストなシナリオとも思えなくもないが、いずれにせよ買収が叶えば高品質鋼材を武器に需要超過の巨大な米市場への参入、生産コスト削減に安定御供給やサプライチェーン強化等々メリットは計り知れない。当の日本製鉄は明後日の5日までに決着させたいとしているがなんとか良い決着が望まれるところだ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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