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To the moon

さて、今年2月にはSNSで連携した個人の共闘買いからひと月で約20倍にまで大化けしたゲームストップ株が米証券ロビンフッドまで巻き込んでいろいろとマーケットをザワつかせたが、先週は映画館大手AMCエンターテインメント・ホールディングスが同様な共闘買いで乱高下し、上記のゲームストップ株も蒸し返しの動きで約2か月半ぶりの高値まで再度急騰したのが話題になっていた。

なにせ今月に入ってから1日は23%高、その翌日2日に至ってはサーキットブレイカー発動を交え再開後もなお急騰を続け終値は95%高と暴騰し上場来の高値を更新、この日だけでも倍増だがかれこれ年初来ではおよそ30倍もの大化けを演じている。この株高に乗じて最大で1155万株を売り出す増資計画の発表で3日はさすがに一服となったが、1日の売買代金があのテスラをも凌ぐ日があるなど熱狂冷めやらぬといった感だ。

上記のようなこの手の銘柄は米個人投資家の間では、何所までも値上がりする意を込めるTo the Moonの合言葉と共にMemestock(ミームストック)なる新語で扱われている模様だが、暗号資産が下落し足元でダウ工業株30種平均も史上最高値まで指呼の間と迫っているものの小動きの展開が続き短期のホットマネーは虎視眈々と次のミーム銘柄を狙っている。

日本のイナゴ勢?とは違って最近の彼らはオプション市場も利用してディープアウトを買い上げたりプットでヘッジしたりとデリバティブを駆使しているだけに自ずとVIXなどへの影響力も高まって来るが、これが顕著になればひいては全体へ及ぼす影響度も高くなってくる可能性もあるだけにこの辺も注視しておきたいところか。


競争力強化の鍵

昨日の日経紙総合面には「東証、取引時間の延長検討」と題し、東証が仕事帰りの取引機会が増える個人投資家や、時差がある海外投資家の利便性を高めると同時に東証の国際競争力も挙げる狙いから現物株取引で夕方や夜間取引を軸に取引時間の延長を見据え証券会社などと調整を進める旨の記事が載っていた。

後場の時間延長や昼休みの廃止も含めた延長の具体策を練るとの事だが、この昼休み廃止論は今から11年前にも議論された件で、当時の当欄でも「欧米主要取引所は昼休みを設けないのが主流でグローバルな流れからもそういった機運になってきたか。」と書いていた。侃々諤々の末に辛うじて30分の短縮が叶ったが果たして今回は如何に。

そういえば昼休み撤廃論が出た当時は前引け・後場寄りのギャップを狙ってスキャルピングを狙う向きも多数居たものだったがHFT業者が蔓延る現在では随分と光景も変わっている。また当時はコストの問題もあって時間延長が対面メインの中小証券等の反対に遭った経緯があったが時代の流れで当時とは状況も異なってきている。

場が立っていない時間の材料を受けた取引は海外やPTSへという流れだが、PTSは米国の取引量に占める割合が約30%なのに対して日本では双璧の2社合計でも7〜8%程度と振るわない。私設取引も課題を抱え試行錯誤が継続しているが、何れにせよ取引システムの刷新が予定される2024年を睨み大幅な見直しが具現化する否か注目されるところ。


親超え企業価値

さてGW期間で営業日が2日のみであった先週の株式市場だが、先週末の日経紙投資情報面にて「時価総額でキリンHD超え」と題し取り上げられていた通り、協和キリンの時価総額が同社株の5割を保有する親会社のキリンHDを初めて上回るという所謂「親子逆転」現象が見られた。

2008年にキリンHDが連結子会社として以来協和キリンの下鞘が通常であったが、昨今のキリンHDはミャンマー政変による事業影響への懸念から右肩下がりが続く一方、協和キリンは骨の病気の治療薬や新薬開発への期待を背景に値位置を切り上げ先週末には年初来高値更新と対照的である。

同紙ではこの手では他にGMOインターネット・GMOペイメントゲートウェイ等も挙げられていたが、これら以外でも例えば大型TOBが成立したNTT・NTTドコモも然り、またパソナグループが株式の50%を保有する傘下のベネフィットワンなどはその時価総額がパソナの5倍超となるなど冒頭の協和キリンどころではない格差だ。

これら極端にいえば親会社の株を保有している株主は会社解散で小会社の株式を現金化すれば利益が出る勘定とも成り得るワケで、企業価値の逆転現象に対しアクティビスト含めた投資家の視線も厳しくなるにつれ下鞘な時価総額に甘んじている「親」も企業統治の観点含めその身の振り方が問われる場面が出て来る可能性も今後高くなりそうな気がする。


メルカリ以来のユニコーン

先週木曜には新興市場で前人気の高かった銘柄がIPOとなったが、果たして何れも好スタートを切っている。先ず小粒の方からジャスダック上場のネオマーケティングは公開価格1,800円に対し初値は2.1倍の3,800円のロケットスタート、マザーズ組からはステラファーマが公開価格460円を54.7%上回る712円の初値形成となり、同じく同ポストでは注目のビジョナルの初値が公開価格5,000円を43%上回る7,150円とこちらも好スタートとなった。

この求人サービスのビズリーチを傘下に持つビジョナル、18年上場のあのメルカリ以来の規模のユニコーンで市場からの吸収金額が682億円ある巨大な案件であったものの公開株式の大半を海外販売している事から思われているほどの荷もたれ感は無く通過、何れにしろこれでIPO銘柄の初値が公開価格を上回る連続記録は20年12月から42社となって12年12月〜13年12月以来の数となった。

これより前にQUICK IPOインデックスも今月上旬で2か月半ぶりの高値を付けていたが、直近上場組で知名度の高いところでは紀文なども上場後もなお順調に値を上げておりこうした部分に一役買っている。ここまで値動きの良さに個人も物色意欲を刺激されてきたものの、GW前だけに冒頭銘柄など上場後の利確の動きは否めないところだが連休明け後に再度物色熱が戻って来るか否かこの辺にも注目しておきたい。


快挙とご祝儀買い

周知の通り男子ゴルフ4大メジャーのマスターズ・トーナメントで、これまで青木功氏や中嶋常幸氏らの大物でさえ挑戦し成し得なかった厚い壁を松山英樹氏が10度目の挑戦で日本人初の優勝を飾った。日本人には出来ないというこれまでの常識を覆しコロナ禍で疲弊する世に希望を与えてくれたが、当然ながら株式市場もこれを囃し昨日は日経平均が安値引けとなるも関連株には物色の矛先が向いた。

松山選手が愛用するゴルフシャフトを製造するジャスダックのグラファイトデザインは昨日ザラバでストップ高まで急騰し年初来高値を更新、マザーズのプレー予約サイト運営のバリューゴルフもザラバ急騰し2000円大台を回復、また中古ゴルフクラブ専門店のゴルフ・ドゥもザラバで突飛高を演じ年初来高値を更新するなど地方、新興市場がピンポイントで賑わった。

テニスの大坂なおみ選手が2年ぶり2度目の全豪オープン制覇の時でさえここまで関連株は賑わっていなく、広義でスポーツ関連といえば東京五輪の開幕が決定した約1年前のアシックス等のストップ高はじめスポンサー企業群への物色以来の事のように感じる。これら所謂ご祝儀モノは息の長い相場へ発展する可能性は望むべくもないが、ウイルス関連や防衛関連が賑わうより遙かに平和的なのは言わずもがなだろう。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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