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後出しジャンケン?

SBIホールディングが新生銀行に対してTOBを実施すると発表してからはや1ヵ月、新生銀行側はこのTOBに反対の意向を表明する方針を固めた模様。臨時株主総会で買収防衛策導入の是非を問う運びだが、従前の買収防衛策はこれまで平時に導入されるパターンが通常であったものの昨今の株主総会ではこの承認が得られ難くなってきている事で今年は斯様なケースが少なくないようだ。

この有事のパターンでポイズンピルなどの買収防衛策は、以前では昨年に当欄でも取り上げた事のある旧村上ファンド系のシティインディテックスイレブンズからTOB意向を受けた東芝機械の例や、更にその前にはスティール・パートナーズからTOBを仕掛けられていたブルドックソーズの例があったが結果は何れも辛勝している。

但しTOB価格を軸にして防衛側の経営陣が描く将来の株価像との比較機会が阻害されてしまうのは否めないところで、上記の東芝機械(現・芝浦機械)は当時ファンド側が提示したTOB価格から本日終値でも800円以上安い値位置に甘んじている。今回は株主判断に十分な時間を確保する必要があるとして相手側のTOB期限延長に応じているが、単なる時間稼ぎにするのではなく株主の支持が得られるような具体策を今後示せるかどうかが焦点となってくるか。


上場意義を問う

本日の日経紙投資情報面には「コロナ下、経営改革狙う」と題し、今年1月から9月のMBO件数が前年同期比約2倍の15件と同期間で過去最多であった2011年に並ぶなど経営陣が参加する買収で株式を非公開化する動きが活発になっている旨の記事があった。背景にはこのコロナ禍で経営環境が悪化する中、金融緩和で資金調達のハードルが下がった側面もある。

思い出せば上記の2011年は前半の段階でザッと挙げても知名度の高いところでワインのエノテカ、幻冬舎、レンタル屋のCCC、引っ越しのアートコーポレーション等々次々とMBOのラッシュとなり、エノテカを巡ってはSMBC日興の役員がこれに乗りインサイダーで強制捜査を受けたオマケまで付いたが、商品業界からはユニコムグループホールディングスもまたMBOによってジャスダック市場からその姿を消した経緯がある。

ところでMBOといえば予てより指摘されてきたものにその買収価格の低さがありこれまでも経営陣と大株主のアクティビストとの間でこれに絡んだ物言いも少なくなかったが、ガバナンスの観点からもディスクロ含めた透明化が求められよう。もっともこれを選択する企業は直近の例を見ても長らく低PBRで放置されてきた向きも少なくないあたりこうした素地もあったワケだが、上場の意義を見直すうえで来年の東証の市場再編が背中を押す切っ掛けとなった部分もあろうか。


初の銀行対象敵対的TOB

さて、先週にも取り上げたがこのところ関西スーパーマーケットや道路舗装最大手のNIPPOなどTOBの発表が相次ぎ、先週は対象銘柄が軒並みTOB価格にサヤ寄せする急騰を演じていたが、これらに続いて前回の当欄でも少し触れた通りSBIホールディングスが新生銀行の株式を大幅に買い増すべくTOBを実施すると発表している。

これを受け同社の株価はTOB価格にサヤ寄せすべく、先週末の比例配分のストップに続いて週明けの本日も大幅続伸し年初来高値を更新して引けている。旧長銀の新生銀行といえばかつては旧日債銀のあおぞら銀行との合併を目指していたもののこれが破談に終わった経緯もあったが、こちらも再編思惑の再燃か揃って年初来高値を更新していた。

同行も米投資ファンドのサーベラス支配が長らく続いていたが、破談劇からもう11年である。それは兎も角もこれまた先週書いた関西スーパーマーケットの例に見られるように従前は友好的な立場を築いていたものの、今回のケースのように競合証券会社との提携など信義にもとる?行為から何れもTOBに踏み切られているケースが多い。

先週末の発表前から2営業日で3割超の急騰とはいえ同行のPBRはそれでも未だ0.45倍程度、非上場となれば公的資金の絡みから金融庁も期待が膨らむというものだが、その金融庁は既に先週末SBIに対して新生銀行の主要株主認可を出している。同意なきTOBと喧しい展開で、同行は週内にも質問状を送付する運びだが先ずは今月中に明らかになる諾否の行方を見たいところ。


市場に問う

さて、既に先月末でエイチ・ツー・オー リテイリングの傘下企業と経営統合を発表している東証一部の関西スーパーマーケットだが、先週末には同社に対し同じく同社の大株主でもあるディスカウントスーパー・オーケーが買収提案する事を決めた旨が報じられている。これを背景に先週末に終日買い気配で売買が成立しなかった同社株は、今週TOB価格にサヤ寄せする格好で週明けから連続ストップ高の急騰を演じ上場来高値を更新していた。

この報で思い出すのが、先に当欄でも取り上げたDCMホールディングスによる同業の島忠に対してのTOB実施中のところに対抗する形で家具大手ニトリが参戦した件か。結局は愛の力よりカネの力の方が勝った?か鳶に油揚げを攫われる形で同社を手中に収める結果となったが、こちらは5年超しの因縁で予定している経理統合も株式交換という事で全く同じ構図では無いもののこれに劣らぬ争奪戦である。

スーパー業界といえばこのコロナ禍の巣ごもり消費で足元では好調に見えるものの、上記のホームセンター業界よろしく少子高齢化で出店余地が限られるなか競争が激化、加えてネット通販勢との競争も激化しEC対応の投資も課題となるなか、先行したイオンなどに見られるようにこちらも再編の機運が広がっているのが現状だ。

しかし先のニトリ然り今回のケース然り、また本日もSBIホールディングスが新生銀行にTOB実施の報が飛び込んで来たが、最近は上場企業間でも従来は禁忌とされてきた敵対的TOBを積極的に打って出るケースが本当に目立つようになってきた感がある。昨年の島忠を巡る争奪戦では、結納まで済ましていた両者の縁談を途中から参戦したニトリが白紙にして結局同社を手中に収める結果となったが、今回の参戦劇でも撤回意向は無いとしている関西スーパーの心変わりはあるや否や今後も注目が怠れない。


値決めの是非

さて、先週末には3週間ぶりのIPOとなるシイエヌエスとフューチャーリンクネットワークがマザーズへ新規上場を果たした。注目の初値はシイエヌエスが公開価格を55%上回りフューチャーリンクネットワークも公開価格を75%上回る好発進となったものの、共にあと売り物が嵩み前者は初値を23%下回り後者も初値を16%下回って共にストップ安の引けとなり、今週に入っても安値更新するなど軟調展開を強いられている。

ところでIPOといえば過日の日経紙には一面で公正取引委員会が新規株式公開時に適切に資金調達出来ているかの調査を始めた旨が出ていた。事前に証券会社と決める公開価格と最初に売買が成立した初値の差が欧米より大きく、企業が調達する額が低いとの指摘があるためで資金調達の面から改善を探る動きという事だ。

IPOで上場した米国や欧州主要国の初値は平均で公開価格の1.1~1.2倍なのに対し、日本企業の初値は平均で公開価格の約1.5倍となっている。この辺を一括りにするのは難しいところだが、日本は売買主体が欧米のような機関投資家というより個人投資家が多く新興ポストには小粒な企業が集まりがちという要因もある。

また資金調達のパイプも欧米ではスタートアップ企業等に資金供給する道筋は多岐にわたるが、対して日本はこのパイプが細く企業の規模が小さいままIPOを急いでいるきらいがないとはいえない。勿論のことロードショーを巡る問題点や証券会社の取引慣行の見直しなど図るのが悪いとは言わないが、SPACなどを巡る腰の重さもこれまで目に付くだけにこの辺も併せて図ってゆく必要もあるのではないか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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