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「蜜」な年末IPO

さて、先に米IPO市場の調達総額が今年は過去最高記録を更新するなど活況を呈している旨を書いたが、日本でも先週から12月のIPOラッシュがスタートしている。先週木曜には5社が同時上場とマザーズなどはまさに「蜜」状態を呈しているが、既に知名度の高い新興家電の「バルミューダ」などは上場日から本日で4日連日のストップ高の離れ業で上場日の寄りで買ってもたった4営業日で実に株価2倍と大化けしている。

他にも上記のラッシュの17日にマザーズに新規上場した「ビートレンド」や「プレイド」、「かっこ」はいずれも買い気配のまま初日を終え、翌18日に同じくマザーズに新規上場した「ココペリ」も買い気配のまま初日を終えその後いずれも公開価格の約2倍から4倍で初値を形成、また本日マザーズに上場した「いつも」も公開価格の2.3倍にあたる3545円まで気配値を切り上げ買い気配のまま取引を終えるなど猛ダッシュのスタートを切っている。

今年は国内で新規上場する企業は前年から7社増え93社と2007年の121社以来、13年ぶりの高水準となるが特にここからは営業日を考慮するに1日平均で2社以上のハイペース公開が続く。中には公開後に急反落と息切れしているモノも散見されるが、先に上場延期となったキオクシアの上場延期も需給面で一役買っている素地もありこのラッシュが新興ポストにとって追い風となるか否か月末まで注目したい。


思惑の乱高下

昨日の日経紙総合面には先週末に上場したユニコーンの民泊仲介エアビーアンドビーの時価総額が10兆円に達し話題な旨の記事があったが、米IPO市場の活況は今がまさに旬?でこれ以外にもこの前日の9日に上場した米料理宅配大手ドアダッシュも初日は公開価格を9割近く上回る水準で引け好スタートを切っている。

ところでこのドアダッシュに傘下ファンドが出資している事でその含み益思惑から翌日のソフトバンクG株は急騰し年初来高値を更新、この日の日経平均の上げ幅の実に4分の1は同社が寄与するという格好になった。もう一つ、この急騰の背景にはドアダッシュ以上に材料視されているものに依然として燻るMBOの思惑もある。

創業者の持ち分が他株主の締め出し可能になるまで少しずつ発行済み株式を買い戻すという所謂スローモーションMBOなるもので、自身の買い増しでなく他株主が買戻しに応じる事によって保有比率が上昇、ゆくゆくは他株主から未保有株を買い取る権利が発生しプレミアムを支払わずに済むとブルームバーグは具体的なスキームを報じている。

直近でも先週末にロボット開発の米子会社を600億円で売却合意との発表が為されるなど粛々と資産売却を進める同社と沈黙を続ける創業者に様々な思惑が募るが、何れにせよ10日の年初来高値更新で3月の安値からは実に3.4倍にも化けた同社株、上記の通り日経平均への寄与度が高いガリバー的存在になっているだけに今後も同社の動向からは目が離せない。


其々の出口

週明けの日経平均は引けにかけて米MSCI株価指数採用銘柄入れ替えに絡んだ売り需要が発生するとの観測から急速に値を崩し5日ぶりに急反落となったが、売り需要といえば先週の日経紙経済面ではGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の7〜9月の売り越し額が数千億円と株高局面で日本株売りに転じている旨の記事があった。

背景には先週末まで日経平均は4日続伸で1991年4月以来、約29年半ぶりの高値水準まで値を上げて来ておりこれによって保有株式の時価が膨らみ運用資産に占める割合が目安とした25%を超過してくる事があるが、こうした動きが出ると気になるのがやはりETFの保有額が35兆円まで膨らんでいる双璧の日銀の存在か。

以前に当欄ではこちらの出口策に関して日銀勘定から別の機関等に移管・分離させイグジットを探るというさながらバブル時代に証券会社で大流行した所謂飛ばしのようなスキームも話題に挙がっていると書いた事があったが、過日の日経紙にはこのETF購入の立案に関った日銀OBから相応のインセンティブ付与を前提に売却制限付きで個人への譲渡案も出ている旨の記事も載っていた。

いずれにせよ冒頭のGPIFと合せ両者で実に東証時価総額の12%を優に超えるワケだからコーポレートガバナンスの観点も絡め常にランディングの在り方が議論の対象となるのは避けられないが、低迷期と環境も変わり昨今の株高がよりこうした出口策の一歩進んだ議論を後押ししているといえようか。


持てる者と持たざる者

英アストラゼネカがオックスフォード大学と共同開発する新型コロナウイルスワクチンの臨床試験で有効性が確認され、米ファイザーの新型コロナウイルスワクチン接種が来月にも始まる見通しとなるなど経済活動正常化への期待が高まり週明けの米株式は急反発となっていたが、個別ではやはりテスラの独走ぶりが目立ちまたも上場来高値を更新していた。

この背景には周知の通り来月後半からS&P500種株価指数に採用が決定した件が大きいが、それにしても今年の1月にその時価総額が独フォルクスワーゲンを抜き我らがトヨタ自動車に次ぐ2位に躍り出たと当欄で書いたのも束の間、その半年後にはトヨタ自動車を抜き、更に4か月後の現在ではその時価総額が実にトヨタ自動車の2倍超にまでなっているワケだからなんとも破竹の勢いである。

生産台数・販売台数共に世界各国の大手に大きく見劣りするにも拘らずそれらを束ねた時価総額をも上回るテスラがファンダメンタルズに見合っているのかどうかは市場関係者の間でも議論が分かれるところだが、複数の有力証券会社のアナリストは今なお挙ってその目標株価の引き上げに動いている。

トップ企業への一極集中が加速しS&Pによれば現在はアップル、マイクロソフト、アマゾン、アルファベットなど所謂GAFAM銘柄でS&P500種株価指数に占める比率が約20%というが、此処に新規採用銘柄として過去最大の同社が加わる事で一握りの企業が株式市場を大きく動かす構図が今後より顕著になるのは想像に難くないか。


期待と不安の並走

周知の通り米ファイザーと独ビオンテックが新型コロナワクチンの臨床試験での有効性が9割に達したとの報で米株式が急反発しザラバ史上最高値を更新、これを受けた本日の株式市場も29年ぶり高値水準である25000円台を示現するなどバブル崩壊後の高値を3営業日連続で更新することとなった。

株式に限らずこの新型コロナワクチンに関する朗報を受け直近103円台で推移していたドル円相場は105台へ迫る水準まで軟化、債券も売られ金利が上昇、金も急落と安全資産が軒並み売られる展開となるなどリスク回避の取引が一斉に巻き戻しの様相となった。

また個別でも米市場ではウォルト・ディズニー・カンパニー株が前日比11.9%の上昇を演じた一方で散々持て囃されたビデオチャットサービスのZoomやエクササイズマシーンのPelotonは共に13%安の憂き目に遭い、東京市場もOLCが前場段階で昨年記録した上場来高値を上回る場面があった一方、これまで我が世の春を謳歌していた銘柄群が売られマザーズ指数は急落となった。

さて新型コロナワクチンの朗報が発表される一方で昨日は新型コロナウイルス対策分科会が緊急提言を訴えるに至り、本日の都内での新型コロナ感染者数は290人超と300人に迫る勢いとなっている。日経平均は引けにかけて一時マイナス圏に沈むなど尻すぼみとなったが、原油もまた然りで期待と並走している不安をマーケットは如実に表しているといえようか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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