続く円安と転落

さて先週にIMF(国際通貨基金)が発表した最新の推計によれば、日本の名目GDPは為替が円安傾向にありドル建てて目減りしている影響もあり来年は4兆4636億ドルと世界4位から5位に後退する模様だ。そういったことで26年はインドにも逆転される模様だが日本は一昨年にドイツに抜かれて以降、昨年のそれも4兆193億ドルと米国、中国、そしてこのドイツに次いで4位であった。

上記のインドだが自動車販売台数は22に日本を抜いており、人口もまた中国のそれを抜いていると推定されており中間層の急増が経済成長に寄与しているわけで高成長も頷けるというものだ。こうした猛迫してきた国と比較するに日本の成長率は見劣りし、何と言ってももはや金利差では説明がつかなくなってきている近年の円安でこうした成長率自体も吹き飛んでいる格好となっている。

日本のみがインフレ下にあってなお低金利状態にあるわけだが、日銀も政府も円安弊害の自覚があるのか無いのか直近の“高市トレード”で円安にも一段と弾みがついている。新興国に抜かれ経済的な存在感自体が小さくなる可能性が高いわけだが、この位置でインドと共に数年のあいだ競り合ってきた英国もジリジリと接近しつつあり、円安含めた構図に変化がない限り日本の転落もまだ途上ということか。


自維連立

週明け本日の日経平均は1603.35円高と急反発し49000円の大台を初めて超えてきた。これは言わずもがな政局不安が後退したのが背景にあるが、日本維新の会は自民党との連立で合意する方針を明らかにし、明日にも実施される首相指名選挙で自民の高市総裁が首相に選ばれるのが確実な情勢となっている。この両党に加え無所属層を取り込めるなら衆参両院の過半数確保が視野に入り、自公時代より政策遂行力が高まるとの楽観論も出ている感じだ。

そうしたことでマーケットではAI関連の再物色から個別ではソフトバンクGが急反発し上場来の高値を大きく更新、同じく上場来高値更新組みでは高市銘柄のセキュリティーものでグローバルセキュリティエキスパートも急反発し上場来高値を更新していた。また“維新銘柄”として物色の矛先が向かったものとしては、副首都構想関連でイトーヨーギョーがストップ高の引けとなり、同じく桜島埠頭もストップ高で大引け、また南海辰村建設もザラ場ストップ高まで買い進まれるなどスタンダード市場も大賑わいの一日になった。

この連立、冒頭のように期待感がある一方で維新の経験不足を懸念する声もある。与党政権を経験した議員が少なく、自民としても公明以外と組んだ経験が20年以上もなく維新との与党でさまざまな政策決定が今後スムーズに出来るか否か不透明感も漂う。米市場では先週「VIX」が25台まで上昇、また国内市場も「日経平均VI」が先週末に35台まで上昇してきておりまだボラタイルな展開は続きそうだ。


総裁就任1週間の暗雲

ちょうど1週間前に当欄で「高市トレードの賞味期限」と書いた際に末尾では今後連立の行方など課題は山積みなだけに暫くは目が離せそうもないと書いていたが、周知のように先週末に公明党が自民党に連立政権から離脱する方針を伝えている。企業・団体献金の規制強化について折り合えなかったということだが、総裁選から政権運営の安定化のために連立拡大を訴えて来た新総裁もこれは誤算だったか。

というわけで本日のマーケットもこれを受け日経平均は1241.48円安と大幅続落となったが、昨日の「体育の日」が緩衝材的なものになったか週末の先物12月限の45200円引けなど見るに本日は中途半端にマイルドな下げに終始した感が強い。オプション市場も板が薄いなか商いもそこそこで個別の仕込みやデリバティブなどで一回転狙っていた向きにはなんとも今年の祝日は邪魔になってしまったか。

一方で個別では“高市トレード”で本命とされ直近で上場来高値を更新した三菱重工は本日の寄りがわずかに7円安でスタート、またIHIに至っては8.5円高と反発スタートとなるなどしており引けでは弱含んだもののこの辺を見るにまだ新総裁が総理大臣に選出される期待感は消えていないのか?確かに公明も総理指名選挙では野党側に協力するかどうか微妙な部分もあり今日のこの辺の動きに繋がっている可能性もあったか。

いずれにせよ今後矢継ぎ早に現れる関門として先ずはこの来週早々にも予定されている臨時国会での総理大臣指名選挙ではたして新総裁が次の総理に選出されるか否か、野党側も上記の通り一枚岩にはなれていない現状でこちらも一本化出来るか否かといった状況だが、離脱した公明党の身の振り方も気になる。そうこうしているうちに来週末にはASEAN関連会議、その翌日にはトランプ大統領の来日予定など重要日程が容赦なく迫っており、政局もマーケットも暫くは要注目である。


指数回復に寄与するか?

先週は経団連から東証プライム市場に上場している企業1625社の女性役員比率が今年の7月1日時点で18.4%だったことが発表されている。政府が掲げるところでは今年の中間目標が19%、経団連の会員企業712社は2.2ポイント上昇の19%とちょうどこの数値目標に届いてはいたものの、全体では去年より2.3ポイント上昇したとはいえこれには今一歩届かずという現状だった。

また政府は今年までにプライム上場企業の女性役員を1人以上にすることも目標としているが、39社は女性役員の登用はいまだゼロである。海外を見てみると米S&P500や英FTSE350指数構成銘柄は女性取締役の居ない企業はなく、いずれも取締役総数の3割を女性が占めているのが現状で、ノルウェーなど女性役員の数値目標を達成出来なかった企業には裁判所からペナルティーを課される政策を取った例もある。

ところで今年の日本の「ジェンダーギャップ指数」は昨年と変らずの118位であったが、調査対象148か国中で万年低位に位置している。うちこうした女性役員数などが影響する経済分野は112位であった。一方で政治分野は石破内閣で女性閣僚が2人にとどまった事で昨年の113位から125位に後退していたが、周知のように自民党立党70年で初の女性総裁が誕生し景色は少し変わったか。

加えて当の女性新総裁もその党と閣僚の人事では刷新感をアピールする意味でも女性の起用を過去最多にする方向で検討している事が一部で報じられている。こちらの政治分野ではランキング対象国の昨年の国会議員における男女平等所比率は過去最高となる33%に達している。今回の閣僚人事でこの辺が少しでも嵩上げされるのかどうか次回の結果と併せ注目しておきたい。


免税品にも転売ヤー

さて、今月は「国慶節」で1日から中国では延べ23億人以上が移動すると予測されている。先の土日も街では多くの中国人観光客を見かけたが、政府観光局によれば円安なども背景に旅行需要が高まっており8月の訪日外国人客数は342万8000人(前年同期比でプラス16.9%)と8月として初の300万人超えとなり、中国は5か月連続の増加で8月の100万人突破はコロナ禍後で初の事という。

インバウンドといえば“爆買い”が最近はトーンダウンしているとの報道が一部為されてはいるものの、街では依然としてハイブランドの大きな袋を幾つも携えている向きを多く見かける。観光庁発表によれば訪日客消費はここ10年で4倍に増えて昨年のそれは8兆円強に上っており拡大を後押ししてきたものに免税の存在もあるというが、この免税を巡っては近年免税で購入した商品の国内転売が少なくないという。

帰国時に詳細の確認が出来ないままに出国するケースが横行していることもあり、財務省の方では来年からリファンド方式を採用するとしている。消費税分を後から還付する方式だが、最近の転売ヤーは組織化しているケースも多く免税店とグルになったらこれまた“いたちごっこ”になるか。百貨店等はこの国慶節で売り上げの波を期待しているが、インバウンド頼りの施策も再考の時期に来ているか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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