基準地価2025

この時期恒例で日経紙第二部では今年の基準地価特集が折り込まれている。というわけで国土交通省がまとめた今年7月1日の土地取引の目安となる基準地価は、全国平均がプラス1.5%と昨年に続き上昇しこれで4年連続の上昇となった。用途別では住宅地がプラス1.0%、商業地がプラス2.8%といずれもバブル崩壊で下落した1991年以降で最大の上昇率となっている。

商業地上昇率トップでは昨年は台湾の半導体メーカーTSMCの工場進出で熊本県大津町であったが、今年も半導体絡みで次世代半導体の国産化を目指すラピダスが進出した北海道の千歳市がプラス31.4%でトップに躍り出た。同じく北海道では富良野市が住宅地の上昇率トップとなったが、こちらはインバウンド向けの別荘など住宅需要の増大が要因となっている。ちなみに全国最高地価地点は不動の「明治屋銀座ビル」となり、これで20年連続である。

都内の住宅地も港区赤坂1丁目では昨年比で15.6%上昇したが、インバウンド増加も密な関係で今年上半期の海外投資家による不動産への投資額は05年以降で最大となっている模様だ。円安や金利水準を背景とした“お買い得”感からその勢いは衰える気配を見せていないが、同じ港区の三田ガーデンヒルズなど外国勢力が暗躍し現在の価格は一昨年の分譲価格からはや約2倍に化けるなどしており、過度な投機には規制も検討すべき時に来ているのかもしれない。


デジャヴ感

衆院選、都議選、そして先の参院選と歴史的な3つの大敗でもなおこれまで続投の姿勢を崩さなかった石破首相だが、本日に予定されていた自民党総裁選を前倒しするかを判断する手続きギリギリのタイミングで自民党総裁を辞するとの表明をした。ちなみに次の総裁選にも出馬しない考えで、分断を避けるべく後進に道を譲る決断と聞こえはいいが政治空白が長引いた感は否めない。

一方でマーケットの方は自民党総裁選を巡る混乱がひとまず収束に向かった事や、次期政権が野党の協力を得る為に大規模な経済対策を打ち出すとの観測も高まり一気にリスクオンの流れから3日大幅続伸となった。個別でも双璧と言える次期首相候補で防衛力強化を訴える高市氏関連では三菱重工やIHIが大幅高、もう一人の小泉氏関連では同氏地盤で百貨店を展開するさいか屋が一時ストップ高まで買われる大幅高となっていた。

そういえば今回首相の説得に動いたのが菅副総裁小泉農相であったが、菅氏の時もやはり説得されての一転退陣表明だったなと。この時も日経平均は大幅に6日続伸し、TOPIXに至っては約31年ぶりの高値となったのが記憶に新しい。今回と併せてデジャヴ感だが、財政拡張への不安も一部出て超長期債は3日に付けた最高水準に並ぶなどしており後任候補の政策如何でまたこの辺にも注意が必要になろうか。


グミの日

さて本日9月3日は“グミの日”とか。グミといえばその市場が近年急拡大していると聞き及んでいるが既に販売金額は21年にはガムを抜いている。思えばガムを抜いたこの年はちょうど東京オリンピックで選手村のメインダイニングで餃子と並んでこのグミが大人気と彼方此方で取り上げられていたのを思い出すが、そういった背景もあってインバウンドの土産ニーズも高まっての数字か。

また今年上半期ではスーパーやコンビニなどのグミの販売金額が初めて飴の販売額を抜いている模様といい、昨年の市場規模は前年比17%増加の1138億円と初めて1000億円を突破し17年比でほぼ2倍になっているという。今年上半期でも665億円と昨年554億円だった上半期の数字を抜いてきており過去最高更新が既に既定路線になっている。主流の系統も今後は変化するだろうが世の嗜好の変化を感じる。

ところでグミといえば中には大麻由来成分のCBD等含有しているモノも一部流通しているが、直近ではサントリーHD会長が購入したCBD入りサプリに関して警察当局の捜査が入ったとして同氏が会長職を辞任した報が入っている。同氏はこのほか経団連と並んで経済三団体の一つ「経済同友会」の代表幹事も務めているだけに何ともショッキングなニュースだが、何が出てくるか分からない世の中になったものだ。


猛暑インフレ

過日に7月の消費者物価指数が発表されているが、依然とした高止まりで伸び率は3%を超えこれがかれこれ8か月連続となっていた。変動の大きい生鮮食品は含まれてはいないがこれらの伸びはひと際顕著で、今年の猛暑で野菜から食肉まで各種の生育不良が相次ぎ所謂“猛暑インフレ”の様相を呈している。

これら食品にとどまらず今月も引き続き多くの食品値上げが行われる。帝国データバンクによる主な食品メーカーにおける飲食料品の値上げは先月の1010品目に続いて今月は1422品目にのぼるが、値上げが前年を上回るのは9か月連続となり、単月の値上げ品目数としては4ヵ月連続で1000品目を超えている。

主な品目では調味料が427品目と最も多く、次いで冷凍食品などの加工食品が338品目、そしてオリーブオイル並みに価格が倍増しているチョコレートなど菓子が291品目と続くがこの猛暑の時期、ガリガリ君はじめピノやパルムにMOWから雪見だいふくまで皆に人気の需要が高い定番アイスもまたどれもこれも軒並み値上げとなる。

飲食料品の値上げは人件費に起因したものが一昨年は9%台だったものが昨年は26%超に、そして今年は50%を超えるとの予測が出ており、既に内部要因による物価上昇に起因したものにシフトしている。食品以外でも電気やガスは政府の補助金が減少し大手各社は値上げ予定、当の食料品も10月の値上げ予定品目数は今年の4月以来となる3000品目超えとなる見通しで、“食欲の秋”の到来が近いものの猛暑インフレと併せその食欲も減退しそうだ。


攻めのバランス

さて定期的に起きる広告モノの炎上騒ぎだが、今月もひと騒動が起きた。スイスの時計メーカー、スウォッチでモデルが目尻を両手で引き上げている画像を使った広告がそれで、これに対し同社が謝罪し全世界で関連素材を取り下げたもの。同社は収益の約3割を中国(香港・マカオ)から得ているというが、最近の不況や米関税騒動も加わりその株価も16年ぶりの安値に沈んできているなかでの騒動勃発だ。

ところで中国絡みで問題になるのはイタリア勢が多い覚えがある。中国向けに流した広告で中国系モデルが箸でイタリア料理を食べる様が馬鹿にしていると炎上、たった数時間でECサイトから製品が引き上げられ上海での大規模ファッションショーも中止され巨大マーケットを失った「ドルチェ&ガッバーナ」など記憶に新しいが、その1年後には「ヴェルサーチ」がTシャツデザインを巡って炎上、アンバサダーを務めていた中国系女優がモデルの契約解除を申し出ている。

このヴェルサーチの炎上と同じようなパターンでは、一昨年には「ブルガリ」が海外のウェブサイトで台湾を中国からの独立国のように扱っていると炎上してしまった件もあったなと。今回の冒頭の騒動でも早速スウォッチ製品のボイコットを求める声が広がったというが、伝統的?に中国の消費者は自分達の文化を侮辱されたり国益を脅かされたりしたと感じた際には不買運動を実施する傾向が強い。

こうした騒動があるたびに政府と国民が一体化し連動している踏み絵のような市場という事を思い知らされるが、そういえば今月は米アパレルのアメリカン・イーグル・アウトフィッターズのジーンズ広告も炎上騒ぎを起こしている。どれもこれもひと昔前なら“Cool!”の賞賛で片付いていた一寸攻めた広告も今や直ぐに炎上、不買運動に発展する何かこう世知辛い世の中になったとも感じるがこれも時代なのだろう。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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