お茶の明暗構図

本日は抹茶を点てていただく場に招待いただいたのだが、抹茶といえば先週末の日経紙夕刊では「抹茶、海外向け増産」と題し、欧米を中心とした日本食の広がりや健康志向の高まりを背景に抹茶の引き合いが強まっている事で製茶問屋などが海外向け抹茶生産を増やしている旨の記事があった。そういった事も背景に農水省の方でも先にこれを増産する方針を発表しており、大手企業などでも生産能力を倍増させる動きも一部出てきている。

以前も書いたと思うが、一昨年の荒茶の価格は煎茶が1㎏1197円、対して抹茶の原料のてん茶は1㎏3278円と約2.7倍となっており生産量も10年前から2.7倍に膨らんでいる。そういった事で抹茶を含む緑茶の輸出額は約10年前の2015年で100億円くらいだったものが以降右肩上がりが続き、2024年には364億円、昨年2025年には前年比98%増の721億円にまで拡大している。

こういった事で国の動きもさることながら東京都も煎茶から抹茶への生産切り替えを支援し、茶農家の間では煎茶からの転向組が急増してきている。とはいえ茶葉に直接日光を当てる露地栽培とは違って、抹茶の生産では畑でカバーをかけ日陰で葉を育てる被覆栽培というカバーをかける手間がかかる作業が必須で高齢農家には厳しい環境になっている側面もある。

加えて若年層の茶離れや冠婚葬祭向け需要の減少など煎茶消費は縮小傾向になってきており、これと相俟って製茶業者の休廃業は過去最多になっている。抹茶人気の裏でこうした陰の部分も露呈しつつある構図だが、サプライチェーンの縮小に対し加工に注力など生き残りをかける動きもみられるが、いずれにせよ抹茶ブームが業界に多大なる影響を与え転換期に差し掛かっているのは間違いのないところだろう。


政府売上高目標と課題

さて、昨日からモスバーガーでは一部除く全国の店舗で「米粉入りバンズのアボカドバジルバーガー」なる新商品の販売を開始している。主要原材料に動物性食材を使わず植物由来の主原料を使用したモノというが、これまで同社ではバンズの代りに具材を野菜で挟んだ商品を展開し数年前からはソイパティ商品の販売をしているがこのラインナップに新顔が加わったかっこうだ。

ところで植物由来といえば、これらを使った食品やビタミンなどをバランスよく含む機能性・栄養食品について政府は2040年までに3兆円に売上高を伸ばす目標を作る旨の記事を昨日の日経紙経済・政策面で見かけた。高市政権が掲げる戦略17分野に含むフードテックの中に新規食品として位置付け、植物工場や食品製造機と並んで集中的に支援する意向という。

3月に東京ビッグサイトで開催された「FOODEX JAPAN」においても日本勢からはプラントベースフードの類が多数開発され出展されていたが、東証プライム市場に上場している食品大手も早くからこの分野に参入し売り上げ目標を計画に掲げている。これらに見られるように世界市場でもこのマーケットは拡大の一途にあり、数年前の約3兆円から2030年には5兆円超えの予測が出ている。

とはいえ国内の課題として“美味しさ”に加え価格面など解決すべきものは多いか。著名な料理人が商品をジャッジする某バラエティー番組があるが、かつてプラントベースフードを使ったメニューでは味の壁が立ちはだかり全員が不合格判定をした場面を見た事がある。日本は発酵調味料など素晴らしい食文化を持ち海外勢からも非常に注目されているだけに、健康志向という大義名分を超え“味”で選択される商品を如何に開発出来るかが焦点になろうか。


早くも猛暑日続出

ちょうど1週間前に気象庁は夏までに地球規模で豪雨や干ばつ、高温といった異常気象をもたらすエルニーニョの発生確率が90%に高まっていると発表しているが、昨日に続き本日も都内はかなりの暑さに見舞われ東北でも今年初の猛暑日を記録している。既に今月の真夏日地点は5月中旬としては過去最多を記録しており、早くも熱中症対策に欠かせない“暑熱順化”の準備やエアコン使用の推奨と喧しい。

エルニーニョといえば先週末の日経紙ではさらにNOAA(米海洋大気局)で“スーパーエルニーニョ”が10年ぶりに発生する可能性が高まりを発表した旨の記事もあった。これまでにこれが発生した時期には特に豪雨や干ばつなどで作物の生産に甚大な影響を及ぼしているが、加えて足元では中東情勢の緊迫化で生産や輸送を頼る尿素肥料も値上がり急となっておりアジア圏ではこの肥料が不可欠なコメ作り本格化を控え世界の供給量に暗雲が漂う。

気温が上昇することによる経済効果もあるが昨今の猛暑や酷暑は経済損失の方が遥かに多く、上記の農産物への影響は24年以降の5年間で世界規模で5兆ドルの損失が試算されており、また労働生産性への影響では2030年度には2兆4000億円の損失との試算も出ている。上場企業なども開示項目でこれらに絡んだものも義務付けされているが、今年も未知の異常気象に身構える動きが続きそうだ。


政府との温度差

さてゴールデンウイーク中には愛車にたっぷり給油して出かけた向きも多かったと思うが、現在実施されているガソリン価格を抑制する国の補助金の確保分の4割以上が使用され、このままのペースで行けば来月にも枯渇するとの一部試算が出ている。この補助金、以前より批判も多いが、今月に入って総務省が発表した4月の東京23区消費者物価指数は前月から伸びが縮小する結果となっている。

中東情勢の緊迫化で原油高がインフレを加速させるなか、世界の主要国では米国が3月の消費者物価が前年同月比で3.3%の上昇を演じ約2年ぶりの伸びとなっているほか、欧州圏も4月の消費者物価は3%上昇し3月の2.6%から加速しているような中で、上記のガソリン補助はじめ電気代やガス代など政策効果で日本の物価だけがなんとも歪んで見えるのは否めないところだ。

アジア各国でも既にエネルギーの消費抑制策が次々と取られているが、これを尻目に先の衆院予算委員会で高市氏は、「燃油等の使用を控えるよう制限かけたらどうかという声を頂くが、経済活動や社会活動を今止めるべきではないと思っている。」と答えていたが、本日も「現時点で国民に更に踏み込んだ節約をお願いする段階にはないと考えている」と答えている。とはいえ一部世論調査では原油が高騰するなか節電や節約が必要と答えた向きは必要あるが74%にのぼっている。

また経済学者と対象とする日経エコノミクスパネルでの調査でも、原油高で日本政府が石油の消費抑制策が必要とした向きが66%となっている。直近の為替介入にしても円を取り巻く構図の変わらない中で急場しのぎの対処療法との見方も多く斯様な温度差も勘案するに出口戦略の難しさも浮き彫りになってきたが、デフレ慣れした日本の免疫力を政府が今後この環境でどう捉えてゆくのか注視しておきたい。


タイムラグで顕在化

さて今年のゴールデンウイークも終わったが、足元では中東情勢の悪化によるナフサ不足で商品包装材などの価格高騰で食品類などへの影響が出始めている。食品類といえば月初め恒例の帝国データバンクによる主要食品会社の値上げ状況に少し触れれば、今月は2798品目であった4月比で97%減少し70品目と1月以来、4か月ぶりの100品目を下回る模様だ。

分野別ではチョコレート菓子などの菓子類が最も多かったが、チョコといえば一昨年の今頃には1万ポンドに迫る高値を付けたカカオ豆先物相場であったが、そこから今年の3月には高値の約5分の1近くまで下落してきてはいるものの依然として製品の値が緩むことはない。仕入れやストック、タイムラグなど影響していると思われるが、上記のナフサ供給不足もこれが続けばタイムラグを伴いながらこのコストが顕在化してくる。

生団連の調査によるとナフサ不測の影響を受けていると回答した食品メーカーなどの企業は44%にのぼったが、これが3か月以内には75%以上に拡大する見通しという。既にミツカンは来月から“物価の優等生”といわれてきた納豆商品の一部をトレーやフィルムの高騰で最大2割も値上げし、食品トレー大手のエフピコも来月からの出荷分を2割引き上げと発表している。

このエフピコは先行きの不透明感から2027年3月期業績予想の発表も見送りとして、先週末の株価も年初来安値を更新してきているが、関係各社とも安定供給できる期間も今後限られて来ようか。そういったことも含め帝国データバンクでもこの夏以降、ナフサ不足を要因とした広範な値上げが再燃する可能性があるとしているが、各社共まだまだ中東緊迫の影響は出尽くしておらず身構える動きが続こうか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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