分断の影
昨日の日経紙投資情報面には「ESG株主提案、支持低く」と題し、米国の株主総会で今年初めから今月12日までに米企業に出されたESG(環境・社会・ガバナンス)提案への平均賛成率が22年通年から低下し、ESG投資が本格化する前の16年以来の低さとなるなどこの推進を求める株主提案への支持率が下がっている旨の記事があった。
既に企業側も気候変動対策などESGへの対応を進めており株主提案に賛成する意義が薄れたと考える株主も増えているようだが、確かに過去最高益を叩き出しその株価も1年で4~6割の上昇を演じ過去最高値を更新した米エクソンやシェブロンなど、それぞれ二酸化炭素の排出削減や、二酸化炭素回収・除去技術開発への投資を拡大するなど脱炭素投資への拡大を既に表明している。
ESGを巡る社会的分断については当欄でも先月に取り上げていたが、賛成票の低下には共和党等による反ESGの主張が議決権に影を落とし政治的圧力から株主がESG提案への賛成に慎重になっている可能性もあるというが、反ESGを掲げるウェストバージニア州やフロリダ州から取引を停止されたり、運用資金を引き揚げられた米ブラックロックのCEOはESGという用語が攻撃材料として使われる為に自身としてはもう使うつもりはないと公言している。
運用会社が政治との距離感で苦慮する様がブラックロックCEOの発言に表れているが、それぞれの層からの圧力のなか最良のパフォーマンスに繋がるのは理想主義なのかどうか、上記の各企業の気候変動対策等の動きに引き続き注目しつつ今後米以外でもこの手の株主提案に頭打ち感が出てくるのかどうかも注視しておきたい。