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間接効果の恩恵

昨晩はWTIが3月以来の40ドル大台を回復してきたが、先週末の日経紙商品面では原油価格指数に連動するETNの売買が個人マネーの流入で急増、発行体の金融機関が原油先物の持ち高を増加させたことで東商取の原油先物の4月の売買高は前年同月比で4倍以上となるなど取引が急拡大となっている旨が載っていた。

このETNといえば文中に挙げられていた「日経・TOCOM原油ダブル・ブルETN」が代表銘柄であるが、これまでも原油が数年ぶり安値に沈む度にこのETNが商いを集めて注目されており、その建玉は先週段階で1年前の約4倍に増加し売買代金もまた4月には上場以来の最高を記録している。

原資産の存在も緩和マネーの影響で投資に流入する厚み自体が増し各々数カ月ぶりの高値となっており、他にも先に当欄で取り上げていた野村のインデックスETFなどはWTI暴落に乗じて個人が群がった当時の二桁から三桁へと値段が跳ね上がっている。これらETNやETFなどその設計上から東商取への間接効果は上記の通り無視出来ないものがあるが、今後どの程度商いを集められるのか注目というところか。


幻の増資

さて先週末の日経紙総合面には「破綻ハーツ、増資頓挫」と題し、先月に破綻したレンタカー大手のハーツが投機熱で上昇した株価をテコに米中堅のジェフリーズ証券を主幹事として増資を計画しようとしたものの、SEC側がこれを問題視した事でこの増資計画が中止となった旨の記事があった。

国内でも先週は破綻して東証での最終売買を終値4円で終えたレナウンが利鞘狙いのイナゴ?の群がりから売買代金を約5倍に膨らませていたが、このハーツも上記のSEC委員長が同社に言及した当日も売買停止前に急騰を演じ、受け皿となった新興ネット証券のロビンフッド等では同社ホルダーが破綻から2週間で10万人以上増えたという。

かつて国内でも持ち帰り寿司の京樽が破綻後に急騰しついには破綻前の株価をも抜いた珍事があったが、もっと近年のところではスカイマークも最終売買日が14円と驚きの二桁終値、JALやライブドアも然りで常識で考えれば無価値になるモノへ時に驚きの商いが集まるケースがある。冒頭の増資が仮に叶えば歴史に残るファイナンスとなっただろうが、こんなところにも緩和マネーの膨張を背景にした珍事が及んでおりまた別の幻も今後出て来ようか。


商慣習とガバナンス

さて先週末の日経紙には「もの言う株主がNO」と題し、オフィスビル賃貸の京阪神ビルに対し旧村上ファンドの元幹部が率いるストラテジックキャピタルが、社内取締役の過半を親密銀行のOBが占めている事から企業統治がゆがめられているとの株主提案を突き付け波紋が広がっている旨の記事があった。

同ファンドといえば以前からこういった特定企業OBによる企業の私物化懸念を問題にしており他にも投資先である東レはじめとして中堅ゼネコンの淺沼組や世紀東急工業、極東貿易などに株主提案を実施した経緯があるが、斯様なアクティビストから提案を受けた企業はアイ・アールジャパン調査では先週段階で昨年から6社増加し22社と最多となっている模様だ。

注目された16日開催の株主総会では結局のところこの株主提案は否決される事となったが、このコロナ禍で内部留保を背景とした一昔前のような増配や自社株買い要求が減少する一方でガバナンス絡みの提案へと変化してきているという。親密企業OBの天下りなど持ち合い株と並び典型的な従前からの商慣習の一つでもあるが、こうしたファイナンス絡みの後ろ盾もコロナ禍を経て漸く変ってゆく事になるのかどうか今後も注目されるところ。


明暗分かれた在庫増

今月のアタマに当欄では「コロナの歪」と題し、昨今のコロナ禍を背景とした国境閉鎖や商業航空の大幅な減便など物流リスクの影響で現物デリバリー前提の裁定取引の困難から貴金属のNY先物価格とスポット価格との差が顕著になっている旨を取り上げたが、本日の日経紙商品面にはNY先物市場で現物の金の在庫が急増している旨が載っていた。

コロナショックの真っ只中から経済再開の動きを経て物流リスクも病み上がりの中漸く正常化に向けての歩みかというところで、併せて商機とみた裁定の方もこれが効いて来た格好か。これと併せCMEのデリバリー規定緩和も背景にスイスから米国向け金輸出は昨年比で4月は実に115倍に膨らんだという。

今週は週明けのNYダウがコロナウイルス感染第2波懸念からラバで急落する場面も見られたが、斯様に再度の物流リスクも睨みながらこの一連の動きの中で現物志向も高まっているという。在庫増といえば先のWTIも記憶に新しいところだが、同じ在庫増でも両者でその背景は事情を全く異にしているという感だ。


お土産に続き・・

さて、緊急事態宣言発令前の当欄でコロナ禍の影響で外食チェーン各社が株主優待食事券の有効期限を相次ぎ1〜3カ月程度延長し始めた旨を書いていたが、昨日の日経紙夕刊1面には新型コロナウイルスによる企業業績への打撃によりこれまで提供してきたプリベイドカードや百貨店のカタログギフト等の株主優待を休止や中止するなど決めた企業が5月末迄に約10社に上る旨が出ていた。

株主優待といえば優待満喫生活を売りにしたタレント化した投資家など度々メディアが取り上げているが、昨年は株主優待制度導入企業が1月末で1500銘柄を超えるなど実に上場銘柄全体の4割に達し、近年では長期に保有するほどより優遇を受けられる仕組みとする企業も増加してきていた。

またこのコロナ禍の影響で今月が酣となる総会も今年は様変わりの光景だろうが、ただでさえここ数年の間に個人株主の楽しみの一つでもあった総会のお土産も続々と廃止する企業が続いていただけに上記と併せこれら目当ての個人が更に篩にかけられる構図が見えるが、ここ数年持ち合い解消促進の後の受け皿としての個人の存在が重要視されてきただけに今後各社共に思案のしどころだろうか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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