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雛祭りにも値上げの余波

本日はご存知「桃の節句」、この雛祭りといえば“ひしもち”が必須アイテムだが、大手メーカーの越後製菓は原料米価格の急激な高騰に加え継続的な物流・エネルギー費等の上昇を背景に今月出荷分から越後ひしもちを値上げしている。恒例の帝国データバンクによる主な食品メーカーにおける今月の飲食料品値上げは2343品目と、前年同月比で約3倍にのぼり5か月ぶりに2000品目を超えた。

品目別では冷凍食品はじめ加工食品が最も多く、味の素冷凍食品にマルハニチロやニッスイなどが相次いで値上げし、次いで酒類・飲料、チーズなどの乳製品と続くが、他には依然としてカカオ豆の高騰を背景にしてこれまで何度も値上げしてきた明治やネスレ、森永製菓に名糖産業までチョコレート製品や高カカオの商品などをそれぞれ今月から値上げしている。

近年は一部値上げだけでなく定番人気の「きのこの山」や「たけのこの里」など同時に内容量も減らしてきているが、先日たまたまこれを商品棚に見掛けたので手に取ったところ箱に書いてある表示が“チョコレート菓子”から“準チョコレート菓子”に変わっていたのにはけっこう衝撃を受けた。ちなみに他の商品も幾つか見てみたが、私が好きだった「ハイミルク」まで“準チョコレート菓子”に変わっていた。

雑な言い方をすればカカオ分がこれまでの約半分くらいになっていてもおかしくはないということだが、準チョコに変わった認識で食べると素人にありがちだが心なしか味も変わってしまったのではという猜疑心も湧かないわけではない。世知辛さを感じざるを得ないが、まあカカオ豆の国際取引価格がここ2年ほどで約4倍にも急騰するなか、味を維持しつつも従前よりカカオが少なくて済む準チョコレート転換を図っているという企業努力には敬意を払わねばならないだろう。


待ち遠しい再開 

さて、明日をもってあの「帝国劇場」が再開発による建て替えの為に休館となる。帝劇といえば誰もが一度は訪れたことがあると思うが、いわずもがなミュージカル・演劇の殿堂で1911年に日本初の本格的な西洋劇場として開設、現在の帝劇は1966年開場の2代目となるがミュージカルの不朽の名作レ・ミゼラブルなど上演された作品数は実に370を超えている。

数々の演目はさておき、やはりこの建物そのものが何度訪れても魅力満載だった。デザインはホテルオークラ東京なども手掛けた谷口喜朗氏だが、エントランスを抜けて直ぐ目に飛び込むステンドグラス、そして階段の手すりのパネルにはマホガニーなどの本物のスライスが入りバックライトの効果でその木目が美しく映し出され、階段を登り切ったところから下を見下ろせばスクエアではなくて台形が広がる“演出”も為されている。

また座席の古代紫もなんともいえぬ色調で艶やかだが、側面の壁もその木材をあえて大きさをバラバラにし角度を変えて置かれてこれによって縦縞の複雑な模様を創り出している技が光る。このクロージングに伴いこうした劇場資材を活用する商品も今後は発売予定というが、オブジェの幾つかはホテルオークラ東京もそうであったように新しい劇場でも引き継がれてゆく予定とか。

しかし最近はお気に入りだった建造物の休館や取り壊しが相次いでいる。ザッと挙げても同じ劇場では「国立劇場」も休館に、昨年末には「学士会館」も建て替えの為に閉館してしまったが、レトロな空間で上質な料理が食べられるレストランは本当に穴場だった。レストランといえば営業時代に馴染みの顧客によく連れていかれた松濤の「シェ松尾」も素敵な建物だったが、こちらも老朽化で建て替え困難なため先月に閉店してしまった。話は少し逸れたが、より進化して再開が叶うものは今からその日が待ち遠しいものだ。


クルーズ船の伸びしろ

週明けの日経紙では「幸を編む 至福の船旅」と題しこの夏に就航する郵船クルーズの「飛鳥Ⅲ」の大きな全面広告が目を惹いた。実に19年ぶりとなるこのクルーズ船、今の飛鳥Ⅱを超える総トン数となり日本最大級になるという。クルーズ船といえば昨年はOLCが上記の郵船と業務提携し3300億円規模を投資するディズニークルーズ事業に向け今年度中にも造船を開始すると報じられている。

世界のクルーズ市場の構図はコロナ禍で一時落ち込みを見せるもその後は大きく回復し23年は3170万人超とコロナ禍直前の19年を200万人ほど上回ってきている一方で、日本に限ってみればその人口は20万人足らずとコロナ禍前の6割弱の水準程度しか回復しておらず、今後の伸びしろを商機と見た各社がここに舵を切ってきた背景があるか。

上記のOLCなどディズニーというキャラを使って若年層や家族層に対してのリーチを狙っているといったところだろうが、他にも大手の商船三井クルーズも昨年末に「MITSUI OCEAN FUJI」を就航させ、テラスレストランには従来無かったようなビュッフェスタイルを導入して自由度を上げたかっこうになっている。これらを見るにこれまで市場を牽引してきた主力のシニア層以下の客層への訴求がうかがえるもので、今後順次就航予定の各社の戦略には注目しておきたい。


無店舗とデジタルの強味

このところ株式市場ではNT倍率が低下傾向にあり、本日段階で14.03倍と昨年の9月10日以来、約5か月ぶりの低水準になっている旨を日経が報じている。高寄与度の半導体関連株等が冴えず日経平均の足を引っ張る一方でTOPIXを支えているのは銀行ポストで、今年のTOPIX上昇寄与度において業種別では銀行業が首位となっている。本日も日経平均が500円超の急反落で3か月ぶりの安値へ沈む中を三菱UFJやみずほFGなどメガバンクは逆行高を演じていた。

そんな堅調持続している銀行株の背景にはいわずもがな国内金利の上昇による収益の改善期待があるわけだが、そんなポストのなかでも特にここ最近では市場の関心がネット銀行に集まっている旨が先週末の日経紙投資面スクランブルに書かれていた。実際今月に入ってから住信SBIネット銀行や楽天銀行等が急騰し揃って上場来高値を更新し、メガバンク勢を大きくアウトパフォームしてきている。

以前に銀行やライセンスを持った事業者が決済などの仕組みを他の事業者に貸す事で内製化の動きの流れが顕著化すると想定した場合、同事業の市場規模は非常に広いと書いたことがあるが、住信SBIネット銀行のIPOはその想定時価総額から大型案件であったものの、このBaaS事業などの強味が評価され米銀破綻という悪地合いの中でも初値は公開価格を上回る好スタートを切り、ヤマダデンキや高島屋とコラボしてネオバンクサービスを精力的に展開している。

また強力なポイント経済圏をバックにした楽天銀行もアドバンテージがあるが、こうしたポイント経済圏やスマホ決済の広がりで大手のメガバンクとて顧客情報を独占する従前の優位性も崩れてきており、顧客ニーズを汲み取るうえでサードパーティーである各種事業者などとの連携もポイントになってきている。本日は三菱UFJがネット専業銀行を新設する方向で検討している旨が報じられているが、金利のある世界が戻るなか引き続き各社の戦略には要注目である。


J-REITもTOB標的に

昨日の日経紙総合面には長期金利の上昇に弾みがつき約15年ぶりに1.43%に上昇した旨が出ていたが、この影響をもろに受けて冴えない展開を強いられて来たのが東証REIT指数か。個別の投資口価格も下落の一途を辿ってきたが、先週には阪急阪神リート投資法人に対してシンガポールの投資ファンド、3Dインベストメント・パートナーズがTOBを実施すると発表している。同ファンドといえば先月末にもNTT都市開発リート投資法人に対してTOBを実施すると発表しておりこれで2件目となる。

REITの低迷は上記の通り“金利のある世界”になった事もそのベースにあるが、新NISAにおける積立投資枠においては所謂毎月分配型が長期の資産形成にはそぐわないとしJ-REIT特化型投信がその対象から外された事などを嫌気した資金流出が続いた事なども背景になっている。そういった事で株式のPBRにあたるNAV倍率も直近でわずかに2銘柄を除いた残り55銘柄全てが1倍割れの状況となっており、なるほどファンドの食指が動いたのも頷けるか。

東証によるPBRの1倍割れ改善要請ではこの是正に向けて多くの企業が自社株買いなどに走った経緯があるが、上記の状況を背景にこのREIT市場でもこの自社株買いにあたる自己投資口取得が防衛的意味合いも含め昨年は一昨年の実に14倍超となり過去最高の実施件数になっている。そんな状況下にあって今回の立て続けのTOB発表があったわけで、如何に外部から割安と見られていたかがうかがえる。

今回TOBの標的になった阪急阪神リート投資法人は商業施設を軸足にホテルやオフィスも所有するが、足元の円安効果もありインバウンドが大きく影響しホテルは稼働率も客室単価も堅調、オフィスにしても空室率低下で稼働率も上昇している。冒頭の通り金利上昇の逆風も吹くが、上記の件と併せ不動産価格上昇で保有物件の含み益も過去最高水準にあるだけにこうしたTOBから今後この低迷にも転機が訪れるかどうか注目しておきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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