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免税品にも転売ヤー

さて、今月は「国慶節」で1日から中国では延べ23億人以上が移動すると予測されている。先の土日も街では多くの中国人観光客を見かけたが、政府観光局によれば円安なども背景に旅行需要が高まっており8月の訪日外国人客数は342万8000人(前年同期比でプラス16.9%)と8月として初の300万人超えとなり、中国は5か月連続の増加で8月の100万人突破はコロナ禍後で初の事という。

インバウンドといえば“爆買い”が最近はトーンダウンしているとの報道が一部為されてはいるものの、街では依然としてハイブランドの大きな袋を幾つも携えている向きを多く見かける。観光庁発表によれば訪日客消費はここ10年で4倍に増えて昨年のそれは8兆円強に上っており拡大を後押ししてきたものに免税の存在もあるというが、この免税を巡っては近年免税で購入した商品の国内転売が少なくないという。

帰国時に詳細の確認が出来ないままに出国するケースが横行していることもあり、財務省の方では来年からリファンド方式を採用するとしている。消費税分を後から還付する方式だが、最近の転売ヤーは組織化しているケースも多く免税店とグルになったらこれまた“いたちごっこ”になるか。百貨店等はこの国慶節で売り上げの波を期待しているが、インバウンド頼りの施策も再考の時期に来ているか。


ノーベル賞ウィーク2025

今年もやってきたなという感じのノーベル賞ウィークだが、初日の「生理学・医学賞」は免疫反応を抑えるブレーキ役となる「制御性T細胞」を発見した大阪大学の坂口志文特任教授ら3人に授与されることとなった。この坂口氏、昨年のノーベル賞でも当欄では受賞候補として小胞体ストレス応答を解明した京大高等研究院の森和俊特別教授と共に名前を挙げていたのを思い出すが1年遅れで見事受賞となった。

ノーベル賞といえば関連株だが、今回の生理学・医学賞では中外製薬が挙がるか。同社と坂口氏が所属する大阪大学免疫学フロンティア研究センターとは10年間にわたる包括連携契約を2016年に締結しており、免疫抑制機能を高めた細胞を作る仕組みを解明したという。とはいえ既に同社は受賞思惑を囃して本日前場まで大きく7日続伸していただけに材料出尽くし感もあって引けではさすがに一服となっていた。

いずれにせよ日本人のノーベル賞受賞は去年の平和賞に続いて2年連続となり、この生理学・医学賞では免疫チェックポイント阻害因子の発見をした2018年の本庶氏以来7年ぶり6人目となる。今後のスケジュールは本日の物理学賞、明日が化学賞、明後日が文学賞、金曜日が平和賞、来週月曜日には経済学賞と続くが、さてまだ坂口氏の後に日本人の受賞が続くかどうか関連銘柄の動向とも併せ注目しておきたい。


高市トレードの賞味期限

周知のように一昨日の総裁選において高市前経済安全保障相が自民党第29代総裁に選ばれた。15日にも召集する臨時国会で第104代首相に氏名される公算が大きいという事で、「アベノミクス」のような金融緩和や機動的な財政政策路線を継承するとされる「サナエノミクス」思惑から本日の日経平均は2175.26円高と大幅に3日続伸し過去最高値を更新、またドル円も8月上旬以来、約2か月ぶりに150円台の節目を付けることとなった。

個別銘柄では先月の石破首相が辞任表明した際の二番煎じと左程期待していなかったが、それでも改めて三菱重工やIHIが買われ揃って上場来高値を更新、逆にネガティブに働いたのが高市氏の前向きな原発再稼働の対であるレノバなどの再エネ関連で先週末の高値引けから一転して今日は急反落、失望売りといえば小泉関連として地盤を買われ前回ストップ高を付けたさいか屋が本日は一転してストップ安に、またライドシェア推進派だっただけに大和自動車も同じくストップ安と急落の憂き目に遭っていた。

こうした個別銘柄のストップ安続出を見るにある意味で小泉氏の敗北はサプライズな部分もあったというところだが、浮かれる株式市場の裏では財政悪化リスクを懸念し超長期債は海外勢を中心に売られ、新発30年物の利回りは過去最高水準に、20年物も約26年ぶりの高水準を付けている。こうしたことを背景に日銀の早期利上げ観測も後退、今後はこの日銀との関係性、またコンサバ色が強いといわれるなかで人事や連立の行方など課題は山積みなだけに暫くは目が離せそうにない。


秋の分割ラッシュ

多くの企業が下期入りする10月だが、昨日1日を効力発生日として、家具のニトリ、ドンキ運営のパン・パシフィック・インターナショナルHDや先に米USスチールの買収劇で沸いた日本製鉄など実に67もの企業の「株式分割」が行われちょっとした“分割ラッシュ”の様相だ。この株式分割、ここまででも今年4月から先月9月までの株式分割件数は前年同期比で2割増の124件となり12年ぶりの高水準となっている。

上記のニトリなど分割実施は11年半ぶりと久し振りになるが、今回の分割ではつい2年前に4分割した建材商社の高島などは早くも2分割を再度実施し、ジャパンエレベーターサービスHDは上場後これで4度目の株式分割である。一方で同じ2年前に3分割を実施したユニクロを運営するファーストリテイリングは以降再分割の動きはみられず分割してなお最低購入代金は本日現在でも440万円を超えている。

東証が努力義務としてきた最低投資金額は50万円未満であったが、4月にはこれを個人投資家が求める水準として10万円程度に引き下げるよう全上場企業に要請している。今回の分割ラッシュでは発表日の終値ベースで最低投資金額が50万円未満だった比率は6割を超えていたというが、確かに新NISA投資枠など考慮するにまだまだ値嵩モノは買いたくても他銘柄が組めなくなってしまうのが現状か。

東証要請以外でも近年では持ち合い株の解消が加速しており、これに活発化しているアクティビストの存在も絡むだけに安定株主作りはどこも課題になっている。今回は銘柄数が多いだけに中には分割後の最低単元から株主優待がもらえるものあり、今が“旬”の値嵩テーマ株もハードルが下がりより選択肢が広がってきたが、上記の件もあり今後も企業は個人株主の取り込み含めより一層の舵取りが要求されるか。


価格転嫁とPB強化

10月となったが今月の値上げ状況も半年ぶりの山になりそうな気配で、帝国データバンクによる主な食品メーカーにおける今月の飲食料品の値上げは3024品目となり、今年4月以来6か月ぶりに3千品目の大台を上回っている。これで1月から10ヵ月連続で前年を上回る事となり、連続増加期間としては前月に続いて2022年の統計開始以降で最長を記録することとなった。

今月は食品分野別では「酒類・飲料」が2262品目で最多、遂に500mLペットボトルも200円時代の到来である。次いで加工食品の340品目、調味料の246品目と続くが、消費者における物価高への反発は根強く割安商品へのシフトといった節約志向が続いている。小売り大手もPBブランドのラインナップを増やしたり、定期的な値下げを行うなど節約志向に対応し価格競争力を維持すべく今後も低価格戦略を貫く姿勢を鮮明にしている。

今年の値上げは賃上げによる労務費など粘着性が高く国内経済情勢に起因した圧力が強まっており、特にこの人件費では昨年以降続いた賃上げによるコストアップが時間差で価格に反映されているとしている。そもそも食品セクターは業界別での平均年収が相対的に低い企業が少なくなく賃上げの流れは避けられない事態、そうしたことからこうした賃上げを起因とした人件費上昇からの値上げの動きはまだしばらく続くことになるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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