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規制の匙加減

昨日取り上げたバークレイズの件に絡んだ話だが、ちょうど昨日の日経紙多面鏡には「米で現物業務の規制案」として、米国で浮上している金融機関による商品現物業務の規制を強化する案を巡る話が載っていた。

同紙にはグラス・スティーガル法廃止で動きの幅が広がり、大手銀などが次々とLME等の指定倉庫や様々な設備を所有するようになったのに伴い商品の需給や価格形成に影響を及ぼしかねない不安もあるとあったが、上記のLMEなど値鞘稼ぎの在庫積み増しの裏で大口需要家は思うように出庫出来ない弊害が出ている旨が書いてあった。

この在庫積み増しによって手数料を稼いだと書いてあるが、おそらく先をショートして調達しておいた現物の渡しというパターンで積みあがったということだろうか?また、一連の規制とは関係無いと表明しつつも銀の値決めから撤退したドイツ銀行の影響もあって今年8月にはロンドンの銀価格算定基準が失われる。今後の円滑な市場機能維持に向けた施策は焦眉の急である。


LIBORから金まで

さて先週末には英金融大手バークレイズに対し英国市場監視当局のFCA(金融行為監督機構)が、金価格の値決めに関して内部管理を怠ったとして2,600万ポンドの制裁金を科した旨が報道されていたが、この件は本日の日経紙社説にも「商品市場の不正は許されない」として取り上げてあった。

バークレイズといえば、一昨年にもLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)の不正操作で2億9,000万ポンドの罰金を科せられた一件があったが、金価格操作におけるトレーダーの不正行為は10年近くに及びLIBOR問題の制裁金を科された翌日もこうした行為が行われていたというからその管理体制も責められよう。

この金価格操作だが、金指標価格が特定水準を超えれば代金を顧客に払う契約でこの特定水準を超えないように価格操作を施しこの顧客への支払いを免れていたというもの。まあこの辺は国内でもEB債などのノックイン商品においてそれらに絡む証券会社等によるこうした価格操作が疑われてきた事例も枚挙に遑がないが、国際的指標価格に携わってきた企業だけに失望感は大きく影響が懸念される。


岩盤規制

昨日の日経紙社説には「治療の選択肢広げる混合診療の拡充を」として、保険が利かない自由診療を一連の治療の中で組み合わせる「混合診療」の拡大を検討する件に絡んだ旨が載っていたが、安倍政権の成長戦略の具体化への期待が高まっているなかでこの分野は政府内での対立がいわれて久しい。

この混合診療に関して当欄で最初に触れたのが漢方薬の保険適用外論議が騒がれた5年ほど前であったが、足元で規制改革会議が適用拡大のため医師と患者が同意すれば混合診療の対象とする選択診療を提唱しているのに対し、厚労省は高額医療の強要懸念等々慎重意見はブレていない。

ただ今まで自身の経験で言えば、大手大学病院でも個人開業医でも自由診療と保険診療に結果が大差無き場合などこれを選択する必要性がない理由を医師がしっかり説明してくれるケースが多く、その辺の懸念は杞憂と思われるしまして歯科系など既にその境界線は無いようにも思う。

医療格差の広がりという論もまたあるが、衣食住とてこれとステージは同じではないだろうか?反対勢力の懐柔も時間との戦いではあるが自由診療の受け皿となる機関の充実もまた課題、いずれにせよ原則論にとどまったものを変えることができるかどうかその成り行きが注目されるところ。


首都圏SM連合

さて今週目立ったニュースといえば週明けの日経紙一面トップに出ていたようにイオンによる食品スーパー事業の再編の報だろうか。今回は資本提携するマルエツとカスミが来年春までに持ち株会社形式で経営統合、イオンと丸紅が共同出資で設ける新会社が株式の過半数を持つ方針という。

この報道で当日の株式市場ではマルエツが急騰し年初来高値を更新、カスミもほぼ年初来高値を舐めにゆく急騰を見せていた。ただ、イオンや丸紅はこれら以外にも彼方此方資本提携をしており、今後もこの持ち株会社への参加思惑で折に触れて物色再燃の動きも出てくるかもしれない。

ところでこんな銘柄の流通再編の光景を見るにふと思い出したのだが、バブル期における秀和が流通再編を掲げてスーパー株や百貨店株等を買い占めした事件。上記のマルエツの発行済株式の25%近くを集めたのをはじめ裁判沙汰にまでなった忠実屋やいなげやその他百貨店まで幅広い買い占めが行われ、急騰した株の恩恵にあずかった投資家も多数居たものだった。

バブルに乗っての舞台だっただけに、ほどなくおとずれる不動産バブル崩壊でこの構想は食い散らかしたまま消耗戦で終焉を迎え当の秀和は外資に買収され、その前に破綻回避策として株を担保に同社に融資したダイエーも今や上記のイオン傘下になっている。時を経てこの騒動時に買い占めに遭った百貨店など近年は再編が進み、今度はスーパーにもこうした波が来ているのを見るにいろいろと感慨深いものがある。


植物への想い

先週から日経紙文化面には「植物幻想十選」として仏文学者の巖谷氏の連載があるが、週明けは酒井抱一の「白蓮図」が取り上げられ、昨日はエミール・ガレの「キノコ文火器」が取り上げられるなど、いずれも私が個人的に好きな作者が立て続けに登場し久しぶりにこの欄が目に留まった。

このうちエミール・ガレは、昨日まで「芸術と自然のふれあい ガレ・ドーム展」として日本橋三越で催し物があった。ほぼ定期的にある催し物ながら毎回あまり作品がかぶっていなく、なんといっても名品が間近に見ることが出来るのが素晴らしいところ。

美術名鑑に載るような作品も稀に出てくるが、今回の展で目に留まったのはドームの「トンボとアイリス文花瓶」か。形状が「トリステスの花器」に酷似していることで最初はガレかと思ったくらいだが、淡いパープルのグラデーションがなんとも美しく時を経た金彩の絶妙具合も然りで今年もまた良いものを見せて頂いた。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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