78ページ目

上場74年に幕か

投資ファンドの日本産業パートナーズらによる東芝への8日からのTOBを控え、本日の日経紙には「株式会社東芝の株主の皆さまへ 公開買い付けへの応募はお済みでしょうか?」との全面広告が出ていた。ちなみに公開買い付け代理人は週内にも2500億円の資本増強に踏み切ると報じられているSMBC日興証券である。

不正会計や原子力事業の失敗で経営危機に陥り2017年に実施した約6000億円の苦し紛れの第三者割当増資が悪夢?の始まりだったが、以降これに応じた魑魅魍魎の株主の顔色を窺いながら一般株主や従業員など他のステークホルダーは蚊帳の外に置かれたまま近年はアクティビストらの突き上げによる臨時株主総会が頻繁に開催される迷走だけが目立っていた感がある。

そんな東芝も今回のTOBで所謂物言う株主からの呪縛から解かれるということになろうが、彼らとて応募で一定の利は確保するとはいえその価格に納得している筈も無くこれまで費やした時間とその労力に見合ったイグジットではないだろう。この幕引きで彼らの次のターゲットにも関心が向かうが、いずれにせよこのTOB成立が叶えば74年間の上場の歴史に幕を閉じることになる事でなんとも複雑な思いだ。


2か月連続鈍化

さて月初め恒例の値上げ品目チェックだが、帝国データバンクによれば主要195社の今月の食品値上げは2067品目となり、値上げが本格化した22年以降で初めて2か月連続で前年同月を下回ることとなる。全食品分野で最多となったのは調味料であと加工食品や菓子類が続くが、加工食品は2023年通年での全食品分野で唯一1万品目の大台を超えている。

またこれに次いで粗糖やチョコレートの原料となるカカオ豆などの原材料価格が上昇したことが影響して菓子類の値上げも目立つ。ところでこのカカオ、産地の南米諸国はじめ主要生産国の大雨や洪水の影響によりNYやロンドンの先物価格は足元で数十年ぶりの高値を付けており、菓子類はもとより早くも来年のバレンタイン商戦で幅広く価格に影響が出そうとの懸念も台頭している。

ともあれ値上げの浸透や一部の原材料価格の一服を背景に年内の値上げは来月を最後にいったんピークアウトする可能性も高いとしているが、日本と諸外国の金融政策の方向性の違いから金利差拡大を材料に円安が長期化するなどコスト増加要因は依然燻るだけに、はたして素直に値上げ機運後退の気配が出てくるのか否かこの辺を引き続き注視してゆきたい。


62年ぶりスト

さて今年の2月に当欄では、「池袋の憂鬱」と題しセブン&アイホールディングス傘下のそごう・西武の米投資ファンドへの売却を巡り迷走している様子を取り上げたことがあったがあれから半年、本日はとうとう旗艦店の西武百貨店池袋本店で労組側がストライキを決行する異例の事態となっている。大手百貨店のストライキは1962年の阪神百貨店以来、61年ぶりの事である。

事の発端は売却先の米投資ファンドがヨドバシホールディングスと連携している事でココの西武百貨店への出店案が雇用不安を生み出し、同時に2月にも書いたように当のテナントに20年以上入居しているラグジュアリーブランド勢はじめ地元の豊島区長、地権者からも猛反対を食らっているなど元凶?となっている。

従前に見られたような単純な賃上げストではないケースが時代を感じるが、報じられているところでセブン&アイ社長の「今まで十分に時間をかけて説明をしてきてこれ以上時間をかけられない」という主張に対し、労組側はこの辺の説明は今月から始まったばかりと述べており、また改装案にて大幅に入居場所が移動になるラグジュアリーブランド勢に対してもこれまでこの件に関する説明は無いとされている点など不透明を感じる向きも多いのではないだろうか。

ともあれこの一件を機に他の労組も実際にスト権利を交渉手法の一つとして活用しようとする契機になるのかどうかM&Aする側としてもその辺も留意すべき事項となって来ようが、不採算事業のイトーヨーカ堂も抱えるなか多くの利害関係者の納得を得られていない状況下で売却を強行した代償を今後負うことになるのかどうかも含めて事の成り行きを見守りたい。


株価も二極化?

さて今月は米ウォルマート株が上場来高値を更新してきたが、先に発表された同社の5-7期決算も既存店売上高が予想を上回り食品やヘルスケア関連など生活必需品を中心に堅調であった。そういった一方で米では節約志向が鮮明になりつつあり、不要不急の裁量消費の一部は我慢しようという二極化の動きが進んでいる模様だ。

この辺は株価にも色濃く表れており、上記のウォルマートの他にマクドナルドも先月には年初来高値を更新してきている一方で通期の予想を据え置いた高級志向のブルーミングデールズを持つ米老舗百貨店メーシーズや、米化粧品大手のエスティ・ローダーも米で高価格帯の売り上げが低迷し今月発表した2023年4-6月期の最終損益は20年4-6月期以来の赤字へ転落、株価も20年4月以来の安値を付けていた。

とはいえ富裕層に関しては株高による資産効果もあり堅調な消費が予想されるだけに振り切って高級に特化している仏エルメスや伊フェラーリ等の需要は安定的だと思うが、それ以外の層はパンデミックで急増した消費者の過剰貯蓄の取り崩しが進んでおり、加えて免除されていた学生ローン返済再開等も背景に今後の個人消費は不透明感が台頭する展開になるか。


初の1万円大台超え

本日、田中貴金属工業が発表した金の販売価格が1グラム10,001円(買取が9,886円)となり史上最高値を更新している。中国経済の減速懸念をはじめインフレ圧力が根強く残る米の金融引き締めが長期化するとの観測から日米金利差の拡大を見込んだ円売り・ドル買いも続いていること等が背景だが、1万円の大台に乗ったのはこれが初の事である。

これでまたTVでは金製品などを中古品買い取り店に売りに来る客の姿を報じる光景が増えそうだが、売り急ぎが目立つ本邦勢とは逆にWGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)がまとめたところによると4~6月の金地金・金貨の需要でトルコと中東が80トンと昨年2~3月比で2.7倍に増えている旨が報じられている。

このトルコといえばインフレのなか、足元で通貨リラの下落も止まらず過去最安値圏での推移が続いていることで国民が安全資産として主軸の金を買い進めている。後者の中東もエジプトなど先月の物価上昇率が過去最高となり、通貨のエジプトポンドも対ドルで1年半前に比べ半分の価値に沈んでいるなどトルコと構図を同じにしている。

所謂肌感覚で資産防衛の意識が染みついているといったところだが、各国中銀の純購入量も6月時点で2月以来、4か月ぶりの買い越しに転じている旨を上記のWGCが報じている。特に増加が目立ったところでは8か月連続で保有量を増加させている中国に、ポーランドやウズベキスタンも金買いを進めている模様で、この各国中銀の動きも引き続き注視してゆきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

カテゴリー

アーカイブ

2025

9

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30