有事でも下落の安全資産

中東情勢の緊迫化でマーケットの乱高下が続いている。市場の不安を映して日経平均VIは高水準を維持しながら約1か月前に付けた史上最高値の59000円台から今週アタマのザラバ安値まで8600円以上の急落を演じたが、これに歩調を合わせて下落が目立つのが教科書的には有事の際に買われるはずのゴールドをはじめとする貴金属でこの度の中東情勢緊迫化以降は一貫して下落傾向を辿っている。

金といえば大阪取引所では先週のサーキットブレーカー発動に続いて今週も貴金属三品の先物は週明けからこのサーキットブレーカーが発動される急落を演じていたが、一昨日にバックワーーデーション化を取り上げた原油価格の急騰で金利が高止まり、これが相対的な金の魅力低下に繋がったほかドル建て取引の金の割高感も意識されこれらが地政学リスクに勝るマクロ要因として作用したといった状況か。

安全資産の類では米国債もまた同様に換金売りの対象になっているが、上記の原油と共に開戦後に上昇しているのがデジタルゴールドといわれるビットコインで開戦後の金の下落率と同率の上昇を見せている。昨年に約6割上昇を演じた金に比べ最高値から約半値まで調整したビットコインの割安感が意識されるというが、後付けの解説は兎も角も地政学リスクも不透明感が強くなるにつれ資金フローもカオス化してくる。

金も近年は個人が大挙し投機で参入しこの辺もボラを高めているが、安定株主的存在の中央銀行はこれらとは一線を画し粛々と動いている。昨年10月の下落局面でも中銀は金買いに動いたが、市場から遠ざかっていた国の中銀がここ数か月で金の購入に動いているとロイターが報じている。先に多くの外銀勢は6000ドル超にターゲットプライスを置いていたが、この調整局面が長期的ポジションを構築する好機になるのかどうか今後も注目される。


半導体企業誘致バブル

先日銀座に出かけた際に今年もまた商業地最高価格地点が山野楽器本店だったなとふと思ったが、この時期恒例の公示地価の発表では全用途の全国平均が5年連続のプラスとなりその伸び幅はバブル期以降で最大となった模様。ほか商業地では4.3%のプラス、住宅地は2.1%のプラスとなっていたが、やはり上昇率では東京圏と大阪圏が拡大し東京の住宅地などその上昇率はリーマンショックの直前以来、18年ぶりに全国で最も高くなっている。

この住宅地の地価上昇率で昨年にトップだったのがインバウンド増加を背景にした北海道富良野市北の峰町の31.3%、この富良野は毎年上位に顔を出すが今年は同じく好調なインバウンドを背景に長野・白馬村の33%が首位であった。恒常的に安く成り下がった円の影響もあり別荘やコンドミニアムなどインバウンドの富裕層需要がこんなところで生み出されている。

また商業地の上昇率1位は北海道千歳市の44.1%であったが、これは言わずもがなの半導体の“ラピダス効果”によるもの。巨額の投資で工場建設が急ピッチで進み周辺にはホテルも新規開業が相次ぐ。数年前には同じ半導体の“TSMC効果”で熊本工場周辺がバブル化していたのを彷彿させるが、同じ半導体企業でも完成形のTSMCと違って数年前に国策連合でスタートしたこのラピダスは軌道に乗るかどうかこの辺が未知数なだけに今後この辺も見ておきたい。


バックワーーデーション模様

本日の日経紙グローバル市場面の市場を知るニュースワードでは「バックワーーデーション」が取り上げられていたが、商品業界の人間ならこれはもう馴染みのワードだろうか。足元の中東情勢緊迫で原油相場が急騰急落と乱高下模様だが国際指標の北海ブレントやWTIの先物市場では期近が急上昇、期先のそれを凌駕?し教科書通りのバックワーーデーションを形成するに至っている。

斯様に原油価格が急騰する一方で昨年から原油以上に注目を集めていた貴金属だが、地政学リスクで本命視されていたゴールドがズルズルと下落しているのが目立つ。このゴールド以上の上昇率だったのがシルバーだが、シルバーもまた急騰の裏でこのバックワーーデーション著しくかつてのコンタンゴ下で安定して利鞘を得ていたブリオンバンクなどは昨年の急騰で思わぬ番狂わせとなったかっこうか。

しかし原油といえばコロナ禍の頃の春に価格が一時マイナス40ドルまで急落し結局マイナスのまま引けたのが記憶に新しい。もはや先物カーブ云々で測れる次元では無いがそれは兎も角も当時400円台だったシンプレクスのWTI連動ETFは昨日に5326円の年初来高値を示現している。これら原油ETFも複数上場しているが、いまだ3週間前の高値を抜けないものもあり今後も先物カーブを睨みながらの気迷いはまだ続くか。


春闘2026

今年の春季労使交渉の集中回答日が先週にあったが、連合が目標としている5%以上の賃上げが相次ぎ先ずはプライム上場の主要製造業の6割超が労働組合の賃上げ要求に満額回答している。斯様な大企業では好調な数字が並ぶ結果となっているが、連合側としては昨年に全体の要求水準として5%以上、中小企業には6%以上、そして非正規労働者に対しては更に高い7%の目標を掲げていた。

大企業は上記の通りとして、こうした恩恵も及ばず取引先にも十分な価格転嫁が出来ていない向きもある中小企業勢にこの賃上げの動きが波及するかどうか気になるところ。昨年も連合は大手企業との格差是正を目指し6%以上所目標を掲げるも5%にも満たない結果に終わっている。今年も格差是正を目指し同じ目標を謳っているが、よりによってこの時期に中東情勢緊迫化の地政学リスクが勃発している。

この影響でにわかに我々を直撃した足元の原油価格高騰に対して政府はガソリン補助金再開など再度のバラまきで躍起になっているが、円安も恒常化しておりディマンドプル型でないコストプッシュ型のインフレがより一層加速しないのかの懸念が強まる。物価の影響を除いた実質賃金は1月に13か月ぶりにプラスとなったが、こうした好転の兆しに冷や水を浴びせるには十分である。

ともあれ働く人の約7割を占めるところの中小企業勢がどの程度大手との格差是正が叶うか否かだが、日本商工会議所の調査では中小企業の25%が今年の賃上げを行わない予定と回答している。これからこちらの交渉が本格化するのを前に暗雲だが、地政学リスクに晒される中でもこれに左右されない実質賃金プラスが定着するかどうか正念場か。


代替食品需要は如何に

毎年3月恒例の業者向け「FOODEX JAPAN」が先週末まで東京ビッグサイトで開催されていた。もう50回を超えるこの展示会だが約80の地域から食の最新情報・プロフェッショナルが一堂に集結しており、今年も本邦勢のプラントベースの豚骨風スープやこんにゃくを使った代替肉などの植物由来の原料の代替食品が数多開発されて出展されていた。

こうした植物由来の代替食品が登場して久しいが、近年では一部ラグジュアリーホテルのレストランメニューや一部ビジネスホテルの朝食ビュッフェにも登場してきている。TPCマーケティングリサーチによれば、プラントベースフードの世界市場は年々拡大を続けている。12年前の2014年には2兆円にも満たなかった市場だが2022年には3兆1372億円と3兆円を超え、2030年の予測では5兆円の大台を超えるという。

こうした事を背景に国内の食品大手も動き出しており、不二製油グループ本社では2030年までにプラントベースフードの売り上げ1000億円の達成を計画に掲げ、キューピーも既に2023年に新たなブランドを立ち上げている。また半世紀以上にわたってプラントベースフードを手掛けて来た昭和産業は代替肉の開発で培った技術を生かし肉以外の新感覚用途食材を開発しミシュラン店などに新食材を試してもらう試みも。

フーデックスジャパンの責任者は「代替食品は一時期は健康という話で増えてきた部分もあるが、昨今の物価高で肉や卵が値上がりしていることもあり代替食品はひとつの大きなカテゴリーになっている」と述べていたものの、インフレの足音が聞こえ節約志向が高まるなか、お世辞にも安いとは言えないプラントベースフードの需要の高まりがどの程度盛り上がるのだろうか?一方では額面通り受け取れない部分もあるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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