個人株主誘致合戦

先週末の日経紙投資面では、3月期決算企業を対象に有価証券報告書に記載された単元株主数の「個人その他」を個人株主とみなして26年3月末時点の数と1年前からの変化を調べた結果が出ていた。かつてトヨタ自動車が株式分割を実施した後に株主数が急増した時の当時の記事を思い出すが、昨年の首位となったのは若年層を取り込み3割強の増加となったソフトバンクであった。

この首位のソフトバンクは24年に株式の10分割を実施しているが、2位のNTTも25分割と大幅分割を実施しており、3位の日本製鉄も昨年秋に株式の5分割を実施するなどこのランクインした一覧を見ると分割実施企業が多くみられる。これ以降も4位にランクインした株主数が2倍になった伊藤忠商事も年明けに株式の5分割をやっており、25年に株式の7分割を実施した9位のIHIも株主数が3倍になった模様だ。

分割と併せて各社優待も見直す向きも多い。上記3位の日本製鉄は分割と併せてこれまで株主から要望の多かった“工場見学会招待”の枠を拡大するなど見直しを進めている。8位にランクインしたサンリオも集計後ながら今年は株式の5分割を実施しているが、株主優待の長期保有制度を導入しており、若年層にはややハードルが高い株数ながら株主限定の“アクリルスタンド”や“株主限定のぬいぐるみな”どの提供を用意している。

以前に当欄では“ファン株主”を書いたことがあるが、こうしてみると分割しかり優待しかり総じて個人へのメッセージが熱い。一部外資系証券では株主優待導入企業の株価リターンがTOPIXを上回る旨のリポートも出ているが、斯様に外人勢も注目し始めるなかで株主優待導入企業の比率は7年ぶりに最高になっており今後も各社の“ファン株主”獲得の施策には注目しておきたい。


制度変更続くふるさと納税

さて、ふるさと納税仲介サイトから10月の制度変更に伴う返礼品への影響等の案内が来ていたが、先週末の日経紙総合面では「自治体、窮余の独自サイト」と題しこうした民間の仲介サイトが主流のなか、ふるさと納税の寄付を直接受け付ける自治体独自の“官製サイト”も広がりつつある旨の記事があった。背景には仲介サイトへの手数料問題や国による経費規制の強化があるといい、総務省は経費率の上限をこの秋から段階的に下げる。

2.5%ずつの下げで2029年には50%から40%になる見込みとなるが、既に民間の仲介サイトが顧客や知名度が定着した中ではたしてどの程度利用者を囲い混むことが出来るのかこの辺は甚だ不透明と言えようか。そんな中、直近では総務省が返礼品に海外ワインを地域のトンネルや海底で貯蔵・熟成したものを地場産品として扱う自治体の実態調査に乗り出す旨の報があった。

これで思い出したのが今から3年ほど前だったか、これまで総務省と何度となくバチバチやってきた大阪の泉佐野市の人気の返礼品だった「熟成肉」を総務省が返礼品として認めない旨の通達を出した件か。この海外やほかの都道府県のモノを自治体で独自の付加価値を付ける構図は今回のワインと全く同じで、たしかにこれが野放しにされていたらこれを奪われた?泉佐野市も黙っていないのは想像に難くないか。

こうしたふるさと納税を巡る総務省と自治体の“いたちごっこ” の裏で昨年の全国の寄付額は過去最高ながらその伸び率は鈍化したという。冒頭の経費率の引き下げは更なる返礼品のお得感を低下させるものだが、これでふるさと納税は転機を迎えてしまうかには疑問符か。富裕層にとってたったの実質2000円で高額返礼品もいただき放題と魅力的な面には変わりなく今後もいたちごっこは妙な均衡を保ちつつ継続されるだろうか。


再挑戦のルルレモン

本日はカナダ発のスポーツアパレル大手の「ルルレモン・アスレティカ」が原宿で日本初となる旗艦店をオープンしている。昨日はこれに先行し開業イベントを開いていたが、私の周りでも昔からここのウエアは人気でその愛用者は少なくない。SNSで俄かファンになった向きも多いと思うが、かつては20年以上も前に日本進出を果たしたものの撤退の憂き目に遭った経緯がある。

店舗の再挑戦など意気込みは十分なものの、株式市場の方では関税の影響なども影響し今年に入って4割超も下落するなど低迷している。こうした傾向は同社に限ったことではなく、スポーツアパレルで世界シェアトップを誇る「ナイキ」の株価も同様に安値低迷に甘んじて米&P500に対する相対的な弱さは約25年ぶりの水準にあるのが現状だ。ちなみにこの原宿の旗艦店はナイキの跡地に建つあたりが何か因縁を感じる。

そういった意味では最近「オニツカタイガー」の事業部を分社化した「アシックス」は今秋に入ってからも上場来高値を更新と破竹の勢いといえようが、スポーツアパレルの株価も長年追いかけているといろいろ業界模様が垣間見られてなかなか面白い。いずれにせよこの店舗、プロダクトのみならずアートやコミュニティを通じ同ブランドの価値観を体験出来る空間に仕上がっており再挑戦の試金石として興味深い。


キティも保有増

本日の日経紙総合面では「海外投信、日本買い急増」と題し投信情報会社モーニングスター・ジャパン協力調査で、グローバル株式を運用対象とする世界の投資信託のうちアクティブ型の動向では、2026年1~6月の保有純増額が289億ドル(約4兆5000億円)と半期で過去最大規模になった旨の記事があった。

個別では個人でも物色人気が盛り上がったAI・半導体関連株で保有の増加が目立ったが、このAI・半導体関連株への物色偏重でダラダラと売られていた中でもしっかり積み増されているものがこちらでも明らかにされている。例えばサンリオ、好業績に分割発表でストップ高の後の続伸で高値から半値にまで落ち込んだ後のV字戻りが期待されたが、三日天下で急騰前水準をも割り込んだ。

ちょうどこの時期にはIP関連のETFも設定された時期でもあり、強固なIPを持ち好業績なうえにキャッシュリッチまで三拍子揃った同社は魅力的な存在であったものの、それ以上に意味不明なまま年初来安値を更新する様が気持ち悪く映ったものであったが、やはりというかそういった不気味なところでしっかりと腰が据わった買いが入っていたのがわかる。

同頁で載っていた保有株増加銘柄の中にはこのサンリオ以外でもそうした軌跡を辿った銘柄が散見されるが、こうした海外長期マネーの矛先はこの手の伸びしろのある銘柄を常に虎視眈々と狙っている。そういった意味でも今後振るいに遭う局面においては場味に惑わされない胆力も必要になってくるか。


Win-Winいつまで

さて、当欄では先月に株式市場で信用取引の買いがかつてないほど活況を呈し過去最大水準に膨らんでいると書いた事があったが、先週の日経紙総合面では「個人の株信用取引123兆円」と題し、7月の信用取引の売りと買いの合計額が123兆円と半年で2倍になり、現金取引を含む個人の売買代金に占める信用の比率は同月に83%と最高になった旨の記事があった。

以前に当欄でキオクシアHD株をマル信枠で目一杯張っている向きをチャレンジャーと称したことがあったが、このキオクシアHDの買い残高は今月上旬段階で1323万株、実に時価で6000億円以上にのぼっている。マル信はコストに金利が乗っている分、通常は現物よりも利食いを早めに入れる傾向があり信用評価損益率はマイナス圏で推移することが多いが、6月はプラス圏に浮上したというから異例だ。

それだけ上手く回転が効いたということだろうが、波に乗れた投資家だけでなくこれら信用の活況は胴元の証券各社にも収益をもたらしている。今月アタマに出揃った大手ネット証券の2026年4~6月期の合計純利益は前年同期比で2.3倍に膨らんだが、背景には信用取引の金融収支が貢献し各社これが大幅増加、収益全体に占める割合も大きく伸びてきている。

かつて手数料の引き下げ競争で遂にはゼロまで行き着き“不毛な戦い”ともいわれた時期があったが、当時はこの活況を誰が想像しただろうか?とはいえ需給面では過度な膨張はボラティリティーにも響くリスクも孕んでいるがこの辺は相場次第か。今後は米市場の23時間取引対応も年末から始まるが、いずれにせよ各社の更なる収益を睨んだ舵取りが注目されるところだ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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