土用の丑2025

さて、明後日は土用の丑の日である。この丑の日といえばいわずもがなウナギだが、水産庁によれば今年のシラスウナギの国内漁獲量は昨年比で倍増しキロ当たりの平均価格も前年の約半値で推移しているという。そういった事で少し手頃になるのではとの期待もあるようだが、この辺は成育などタイムラグもあることから一部小売りではやや値下げを意識したところもあるようだが総じて足元では例年並みといったところか。

とはいえ今後はコメよろしく徐々に値段が下がって来る事に期待が募るというものだが、一方で不穏な空気も漂う。EUの動きがそれで、絶滅の恐れがあるということから先にニホンウナギを含むウナギの全種類について国際取引を規制するワシントン条約への掲載提案を正式に決定している。11月~12月に行われるワシントン条約の締約国会議で提案が採決されれば、キリン等の動物と同様にこのウナギも輸出する際に許可証の発行が必要になる。

許可証云々となるとこれまでよりも国際取引に時間がかかる可能性も浮上することになるがこの可否如何で供給量が減少した場合、ウナギに対する需要が現状のままであれば値段は上昇傾向になるか。当然ながら国内で捕獲し出荷する純国産であれば規制の影響はないが、ちなみに2024年の国兄のウナギの供給は約7割を輸入に頼っているのが現状なだけに日本としてはなかなかの打撃になる可能性が高い。

ただこうした保護意識が高まるなか国内でも動きが出ている。先に水産研究・教育機構は完全養殖のウナギを量産するのに必要な基幹技術の特許を取得しており、ここには大手民間企業や大学も協力し連携を図っている。これまでこの手では鯛やマグロなどで完全養殖の商業化が進んできたが、はたしてウナギもこれに続きいつでも堪能する事が出来るようになるかどうか今後の進展に期待したいところ。


覇権維持

今週はビットコインが12万ドルを突破しまたも史上最高値を更新している。この暗号資産といえば時を同じくして米下院議会は、ステーブルコインの信頼性を高める法案や暗号資産の包括的な規制枠組みを明確にする所謂ジーニアス法案など一連の法案の審議をはじめているが、この辺の動きが暗号資産業界にとっては追い風となることでビットコインの大台突破に一役買った格好か。

こうした普及を急ぐ?背景にはブロックチェーンの技術を用いた次世代資金決済網を世界の金融等におけるプラットフォームにし、米ドル通貨覇権を維持する狙いとの見方もある。現状世界で流通している米ドル連動のステーブルコインは約2400億ドルともいわれているが、数年後には約2兆ドルにも達するとの見方も出ている。ブロックチェーンも技術が成熟し規制も整備されつつあるので、金融業界のインフラも再設計されるとの指摘もある。

そういった事で既に暗号資産大手のコインベースなどはトークン化した株式の提供に向けてSEC(米証券取引委員会)に認可を申請している。上記のステーブルコインもそうだが、金融資産のトークン化も年間で5割のペースで増加してゆくとの試算もあるだけにそのポテンシャルへの期待は大きく、今後もこの手の分野へ海千山千が挙って参入してくることが予測される。


次のイグジット

本日の日経紙金融経済面には、日銀が金融システム安定策の一環として2002年から銀行から買い取ってきた2兆4000億円あまりの株式を、金融不安が後退したとして2016年から続けていた売却を完了した旨の記事が載っていた。当時は中央銀行としては極めて異例の措置といわれたものだったが、そこから20年余りをかけてようやくその役割を終えた形になるか。

さてこの保有株式の売却が完了した事で市場の関心は日銀が保有する簿価で37兆円、3月末時点での時価にして70兆円のETFの取り扱いに向かう。この扱いを巡っては野党の一部からはこれを政府が買い取ったうえで分配金収入を子育て支援の財源として活用する事などを求める案などが浮上しているが、このスキームと同じことを既に当欄では2年前に書いている。

他にも日銀勘定から別の機関等に移管・分離させてその出口を探るというバブル真っただ中の一時期に一部証券会社でも流行った?“飛ばし”のようなスキームも挙げたのを思い出す。また相応のインセンティブ付与を前提に売却制限を付けて個人へ譲渡する案などもあったがいずれにせよ一時期は170年かかるともいわれたこのETF処分、今後どういったペースで処理をしてゆくのかが焦点となる。


猛暑の経済損失

今月のアタマには気候変動から長期化しつつある「夏」で売れ筋の変化から1年を二季として商品構成を考えるアパレル各社の戦略などを書いたが、日曜日の日経紙・科学の扉では「世界で酷暑、損失600兆円」と題し、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次評価報告書によれば気候変動による世界のインフラの損失額は平均気温が2度上昇した場合に2100年には約600兆円に上ると推計される旨の記事が載っていた。

世界レベルの損失といえばILO(国際労働機関)も暑さによって失われる労働時間が2030年までに全世界で2.2%に達しフルタイムで働く8000万人分の労働力が消失すると分析、その経済損失は2兆4000億ドル(日本円で約380兆円)になるとしている。また日本でいえば医学誌のランセットによれば23年は暑さで日本の労働生産性が低下、労働時間の損失は年間で約22億時間、潜在的な収入損失は年間で約5兆4000億円という。

それ以外でも同紙に出ていたように天候不順からさまざまな果実の収穫が減少、オリーブオイルやチョコレート製品は価格がここ数年で2倍以上に跳ね上がり、漁獲量などを見ても理解できないほど従来のバランスが大きく崩れている。そのほか洪水や干ばつ被害の頻発から一部では火災保険が続々と停止に追い込まれ各所で生活に大きな影響を与えている。

冒頭のIPCCだが、地球の気温上昇を1.5度以内に抑えるためには2035年に2019年比で60%の温暖化ガス削減が必要としている。2050年には実質排出のゼロを実現しなければならないが、足元では第2次トランプ政策の壁が立ちはだかるなど停滞も懸念されるところ。とはいえこの手の取り組みは人々や生態系に関わって来る重要な事だけに流れとしては不可逆的なものになろうが、いずれにせよ各国による実効性のある対策が喫緊の課題といえるか。


選択と集中

今月の日経紙「私の履歴書」は資生堂の前会長が書いているが、この資生堂といえば先週末に同社が日本で代理販売を行っている「ローラ・メルシエ」の販売を、事業の選択と集中を進める戦略の一環で10月末をもって撤退する旨を発表している。同ブランドは下地やベースメイクはじめ多彩なアイテムを揃え、官能的?な香りの一部商品など愛用者も多かった事で残念がる向きも少なくないか。

このローラ・メルシエは資生堂が2016年に買収しているが、同じく買収したブランドではその3年後に米スキンケアブランドの「ドランク・エレファント」も買収している。こちらは環境や肌への負荷が少ない天然由来成分を売りにしていたブランドであったが、このドランク・エレファントもまたローラ・メルシエより一足先の先月末に既に国内販売を終了している。

資生堂といえばもう一つ、買収したローラ・メルシエは5年後に2021年に米投資ファンドに売却しているが、その翌年にはやはり輸入販売を手掛け上記ブランドと共に三越等の大手百貨店で展開していた「ドルチェ&ガッバーナビューティー」も撤退表明している。一部ECなどからこのドルガバビューティーのアウトレット案内が来た事があったが、この辺の事情が背景にあったか。

斯様に人気のあった欧米ブランドが数年で次々に撤退の憂き目に遭っているが、コスメ業界といえば近年は韓国勢の台頭が著しくこの辺も大きく影響しているのかも知れぬ。最後に資生堂といえば余談にはなるが、横浜の資生堂パーラーも今年の8月に閉店してしまう。実に40年の営業に幕を下ろすわけだが、銀座と同じメニューがお安く頼めてかつてよく使っていただけに何とも残念である。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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