分割ラッシュ

今週も日経平均が史上最高値を更新するなか、株式分割の発表も相次いでいる。先週の日本ハムや福田組に続いて今週は株価大化け中の古河電気工業も株式分割を発表、これを好感し一昨日はストップ高まで買い上げられ一気に大台を変えていたが、株価急騰中の電線大手では住友電気工業もまた株式分割を発表している。また昨日には三井住友FGも1株を2株に株式分割を行うと発表している。

斯様に分割熱が喧しいが、この辺に絡んでは先週の日経紙総合経済面でも「株投資、下がるハードル」と題し、昨年の株式分割の発表件数が前年度比で36%増加し2025年度末の上場企業平均の最低投資額は21万円と20年前の半分以下になった旨の記事があった。先に書いたように日経平均は年を追うごとに大台塗り替えが加速し、ここ3年ではや2倍になった割に最低投資額が同じように上昇してこないのは企業の株式分割が活発化している証左だろう。

ただ投資金額が従前より数分の一になるなど大幅に下がっただけに値嵩時代に買えなかったホルダーの中には下落耐性があまり無い向きも一定数居る事で、そういった時の振れ幅が大きくなるケースも出てこようか。それでも新NISAの創設もあったほか企業側としても、持ち合い解消の受け皿としての個人株主の取り込みを重要視しておりこうした動きはまだまだ道半ばだろうか。

しかし今から4年くらい前の当欄で米アップルなどの主力株は数万円で投資出来ると書いた事を思い出すが、これだけ東証側の詳細な要請など後押しが奏功しているわりにいまだ単元株制度を堅持している光景も時に奇異にさえ映る。企業側も上記のように挙って対応しているが、この辺の課題も株主提案の要件の議決権数などの見直しと併せて今後も折に触れて議論されるべきであろうか。


下剋上の10兆円クラブ

本日の日経紙総合面には「時価総額10兆円クラブ27社に」と題し、日経平均が史上最高値を更新するなか個別企業の時価総額も膨らみ、その時価総額が10兆円以上の企業数が2025年末から4社増加し今週のあたま時点で27社になった旨の記事があった。同頁にも出ていたが10年前にはこれがわずか3社であったから躍進といえるが、銘柄間でもなかなかの下剋上模様である。

この辺でいえば当欄では一昨年の年初に日立製作所に伊藤忠商事や任天堂が10兆円クラブ入りを果たした旨を書いてきたが、この3銘柄だけでもそれ以降は各社共に大きく差がつき日立製作所はそこから時価総額を2倍以上にした一方、任天堂は本日終値では10兆円クラブから陥落している。そういった中でも株価の大化けと共に上位に食い込んできたのはやはり半導体・AI関連か。

ここまで日経平均の上場来高値を演出してきたのはいわずもがなこのセクターだっただけに当然といえば当然だが、10年前の上位企業と併せ見るに日本企業の産業構造の転換も垣間見える。前回もコングロマリットディスカウント企業でも構造改革で変貌を遂げる一歩と書いていたが、半導体・AI関連など“旬”の企業と併せコングロマリットプレミアム企業として今後もどの程度伸びてくるのか注目したい。


5年ぶりのC・G改定

週明けの日経紙・総合経済面では「資金配分開示の企業最多」と題し、成長投資や株主還元に回す資金配分を開示した企業は昨年度に476社と前年度比で6割増加し過去最多となった旨の記事が出ていた。今月上旬の当欄で「~新たな中期経営計画の発表に合わせ現預金の活用方法を打ち出す企業がどの程度出てくるのか注目~」と書いていたが、同頁では既にこれらを発表した主な企業が出ていた。

この辺に絡んでは中長期的な企業価値向上に向けて企業が取り組むための指針としてコーポレートガバナンス・コードがあるが、この5年ぶりの改定に向け金融庁と東証は今月に改定案を出しており、今回は特に現預金を含めた経営資源の配分による投資の促進など企業が抱える現預金を有効活用できているかどうか取締役会に検証を求める項目が盛り込まれ一段とその意識が問われる改定になっている。

冒頭の配分計画を発表した企業群の中にはマツキヨココカラ&カンパニーの名前も出ていたが、同社は中小ドラッグストア狙いのM&Aに再び動きだした旨が同紙のビジネス面にも出ており、他にも今月はサントリーHDが第一三共から一般用医薬品事業を買収するとの発表、また家電量販店のノジマも日立製作所の家電事業を買収するとの発表もあり、斯様に成長投資の増加、それにこうしたM&Aの動きが活発化してくるか。

こうした投資による成長期待からファンド等でもこれに絡むモノも見られ、内株式で現預金を多く持つ企業でなおかつ株価が割安な銘柄に集中投資する「fundnoteダルトンNAVセレクトファンド」が明日に設定される。いずれにせよ改定案ではより踏み込んだ内容になることで株主還元など短期志向になりがちな行動もけん制されようが、取締役会の判断の質もますます問われることになって来ようか。


実感なき6万円超え

1週間前の当欄で「6万円は一旦お預けとなった」と書いていた日経平均だが、先週のザラバ超えに続き週明けの本日は終値で初めて6万円の大台を超えてきた。とはいえ「NT倍率」は過去見たことがない16倍台で連日推移し、体感でも連日にわたりダラダラと陰線を引いている優等生的な大型株を尻目に買いの矛先が一部半導体・AI関連株に集中し物色の偏りは否めない。

ともあれ1か月前の年度末の51000円そこそこから実感が無いまま急ピッチな上げを演じているが、大台更新ごとのスピードが毎回早くなってきているのだけは実感する。コロナ禍が明けようかという21年の3万円超えから一昨年の4万円超えまでは約3年ほど要したが、そこから昨年の5万円超えまでがこの約半分ほどの1年7か月、そして今回の6万円超えまではそこから半年ほどで達成と史上最速となっている。

いずれにせよAI投資の回収懸念から一旦終焉を迎えた昨年秋の光景が嘘のような再燃具合だが、主力の上昇も相俟ってバリエーションの方も既に日経平均PERで20倍に乗ってきた。昨今の原油価格高騰を加味しても価格転嫁などで2桁増益は可能との一部試算などが成長ストーリーを維持しているのが背景になっているが、これが米国株をもアウトパフォームする原動力になっている。

とはいえ今月に内閣府が公表した3月の消費者態度指数はトランプ政権の相互関税発表後の昨年5月以来の低水準となっており、3月の景気ウォッチャー調査も中東情勢の緊迫化を背景に景況感は現状、先行きともに大幅悪化している。斯様に消費者心理が冷え込む中で日経平均だけ粛々と史上最高値更新している“乖離感”に違和感を覚える向きが少なくないのは当然だが、この乖離感とNT倍率が低下する局面が訪れるのか否か今後も注視しておきたい。


FOMOが作る強気

さて、イランがホルムズ海峡の開放を表明したことで週末の米株式相場は大幅上昇しダウ工業株30種平均は米国がイランを攻撃する直前の水準を回復し、ナスダックに至っては13連騰で最高値を付けている。週末のシカゴ日経平均先物も一時6万円の大台超えを演じていたが、米、イラン共にこの報道を額面通り受け取れない続報もあり週明けの東証は反発こそしたものの6万円は一旦お預けとなった。

まあそれでもMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスも最高値を付けてきており世界的な株価の回復が鮮明だ。取り巻く環境は双方の食い違う報道合戦もあり実際のところ何も変わってはいないどころか悪化している感さえあるが、マーケットはFOMO(FearOfMissingOut)の動きもありもうほぼイラン情勢の解決を先取りしたような格好になっている。

好感材料として確かに諸々の報道で原油価格も大幅下落となっているが、それでもこちらは攻撃前水準の60ドル台まで降りてきていない。現在の米EIA見通しでは今年の原油平均価格は前年から3割程度の上昇を見込んでいるが、2月の当欄でも書いたように今年10~15%増益がコンセンサスとなっているTOPIXのEPSにどの程度この辺が影響するのかどうかが焦点だろうか。

この辺はそれなりにバッファーがあるためにこの原油高が足枷とはなってもある程度の増益は確保出来るとの一部指摘があるが、この辺はフタを開けてみるまでわからないだろう。それにしても今回は今までの“TACO相場”とは違うという警戒論にも耳を貸さずに“TACO投資”に賭けた向きはまたも正解だったということになるが、FOMOが蔓延するTACO相場は何時まで続くのやら正常化の道はまだ遠いか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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