消える選択残る選択

さて、先週は日経平均が調整色を強める中でも2日連続ストップ高の後も続騰していたのが東証プライム上場のアルビスであったが、これは周知のようにスーパー大手のライフコーポレーションがTOBを実施すると発表しその買い付け価格の3780円にサヤ寄せしたもの。当のアルビス側は賛同意見を表明しており、このTOB成立後に上場廃止となる見込みだ。

このスーパー業界では春先にスタンダード市場上場のオリンピックもドンキが買収し上場廃止の道を辿ったが、TOBといえば先月もハウス食品工業が子会社の壱番屋の売却検討の報があり、組み込みソフト開発のイーソルのMBOも報じられておりいずれも株式の非公開化を検討する。斯様に非公開化の選択が増加しているが、ちょうど1週間前の日経紙一面でも東証への上場を廃止する企業が3年連続で過去最多を更新する旨を報じている。

非公開化に向かうケースでは上記のようなパターンもあれば、市場改革により上場維持基準を満たせなくなったパターンもある。昨年末には要請期間内に条件クリアする方策として所謂ロールアップなどの動きや、ファンドが絡んでファイナンスを駆使した時価総額拡大計画の動きなども予測されると書いていたが、ふるいにかける経過措置もいよいよ終了し条件のクリアが難しい10社が来月に上場廃止となる予定だ。

しかしこんなグロース市場やスタンダード市場でなくとも、東証一部からプライム市場に長らく君臨してきたところの「大正製薬」や「久光製薬」など誰もが知る“定番企業”まで非公開化を選択するのを見るに上場を前提としない新たな形が垣間見える。今後もこうした“前向きな退出”が中心になってくることが予測されるだけに、引き続きポスト別に注視しておきたい。


TOPIX見直し第2段階

さて、TOPIX(東証株価指数)の初回定期入れ替えの算定基準日が今週過ぎた。TOPIXといえば市場区分再編前は東証一部全銘柄であったが、それが市場区分再編後に第一弾の見直しが行われ、この度の第2弾ともなる見直しではプライム市場・スタンダード市場・グロース市場の全ての市場から選別されその構成銘柄は現状より更に絞られることになる。

この辺に関しては一昨日の日経紙投資面でも触れていたが、ハイテク系の大型株の上昇とも相まって年間売買代金回転率や浮動株時価総額などでふるいにかけられ構成銘柄数は1000の大台を下回った可能性が高い旨が書かれていた。教科書通りなら新規採用銘柄にはインデックスファンドのマネー流入がポジティブに影響し、除外銘柄にはこの逆でマネー流出からネガティブな影響が想定される。

実際に今週のマーケットでは新規採用が見込まれている銘柄群の中から上場来高値を更新してきている銘柄が見られたが、一方で今回のドラスチックな見直しで約700銘柄が除外の憂き目に遭う予定となる。そういった意味では総指数の質が変わる大きな改革になるとも思われるが、「敗者復活」ではないが来年のこの時期にも再評価があることで“逆風”のなか時価総額を睨んだ戦いを今後目の当たりにすることになるか。


輸入ETF襲来?

さて世界の株式市場が落ち着きを取り戻している旨の日経紙の記事を見たが、背景には投機色の強いレバ型ETF取引の後退があるという。この手の選好物色に沸いた第一幕を経て慎重姿勢も強まったものと思われるが、ついこの間は複数の米運用会社がSECにキオクシアHDの連動レバ型ETFの上場承認を申請した旨の報もあった。

この個別株のETFに関しては上記の第一幕で先にお隣の韓国が上記のキオクシアHDよろしく同じ半導体関連のSKハイニックスやサムスン電子に連動する個別ETFが解禁されているが、なにせこの2銘柄だけでKOSPI(韓国総合株指数)構成比の約半分を占めていただけに、市場のボラティリティーが過度に増幅し当局が証拠金引き上げなどの規制強化に乗り出さざるを得ない状況に追い込まれた経緯がある。

そんなETFだが日本ではやはりというかこの手のETFはまだ解禁されてはいない。ましてやこの韓国の事例を鑑みればなおさらNOが突き付けられそうだが、一方で米ではETFの新規設定が過去最多であった昨年を上回るペースで相次いでおり、主要指数連動が既に大手アセット中心に飽和状態になってきている事もありこれらレバ型ETFが米国設定の約4分の1を占めるという。

上記の通り日本では解禁していないETFだが、アセット側が金融庁に届けを出せば外国投信扱いで提供出来る可能性はある。そういえばこれら個別ETFとは違う商品ながらかつては個別株オプションのようなカバードワラントが取引されていた時期もあったなと思い出すが、単一銘柄で枝葉を広げた商品が無くなってしまった現在、“逆輸入”の個別株型には一定の需要があると思われるだけに今後の展開には注視しておきたい。


個人株主誘致合戦

先週末の日経紙投資面では、3月期決算企業を対象に有価証券報告書に記載された単元株主数の「個人その他」を個人株主とみなして26年3月末時点の数と1年前からの変化を調べた結果が出ていた。かつてトヨタ自動車が株式分割を実施した後に株主数が急増した時の当時の記事を思い出すが、昨年の首位となったのは若年層を取り込み3割強の増加となったソフトバンクであった。

この首位のソフトバンクは24年に株式の10分割を実施しているが、2位のNTTも25分割と大幅分割を実施しており、3位の日本製鉄も昨年秋に株式の5分割を実施するなどこのランクインした一覧を見ると分割実施企業が多くみられる。これ以降も4位にランクインした株主数が2倍になった伊藤忠商事も年明けに株式の5分割をやっており、25年に株式の7分割を実施した9位のIHIも株主数が3倍になった模様だ。

分割と併せて各社優待も見直す向きも多い。上記3位の日本製鉄は分割と併せてこれまで株主から要望の多かった“工場見学会招待”の枠を拡大するなど見直しを進めている。8位にランクインしたサンリオも集計後ながら今年は株式の5分割を実施しているが、株主優待の長期保有制度を導入しており、若年層にはややハードルが高い株数ながら株主限定の“アクリルスタンド”や“株主限定のぬいぐるみな”どの提供を用意している。

以前に当欄では“ファン株主”を書いたことがあるが、こうしてみると分割しかり優待しかり総じて個人へのメッセージが熱い。一部外資系証券では株主優待導入企業の株価リターンがTOPIXを上回る旨のリポートも出ているが、斯様に外人勢も注目し始めるなかで株主優待導入企業の比率は7年ぶりに最高になっており今後も各社の“ファン株主”獲得の施策には注目しておきたい。


キティも保有増

本日の日経紙総合面では「海外投信、日本買い急増」と題し投信情報会社モーニングスター・ジャパン協力調査で、グローバル株式を運用対象とする世界の投資信託のうちアクティブ型の動向では、2026年1~6月の保有純増額が289億ドル(約4兆5000億円)と半期で過去最大規模になった旨の記事があった。

個別では個人でも物色人気が盛り上がったAI・半導体関連株で保有の増加が目立ったが、このAI・半導体関連株への物色偏重でダラダラと売られていた中でもしっかり積み増されているものがこちらでも明らかにされている。例えばサンリオ、好業績に分割発表でストップ高の後の続伸で高値から半値にまで落ち込んだ後のV字戻りが期待されたが、三日天下で急騰前水準をも割り込んだ。

ちょうどこの時期にはIP関連のETFも設定された時期でもあり、強固なIPを持ち好業績なうえにキャッシュリッチまで三拍子揃った同社は魅力的な存在であったものの、それ以上に意味不明なまま年初来安値を更新する様が気持ち悪く映ったものであったが、やはりというかそういった不気味なところでしっかりと腰が据わった買いが入っていたのがわかる。

同頁で載っていた保有株増加銘柄の中にはこのサンリオ以外でもそうした軌跡を辿った銘柄が散見されるが、こうした海外長期マネーの矛先はこの手の伸びしろのある銘柄を常に虎視眈々と狙っている。そういった意味でも今後振るいに遭う局面においては場味に惑わされない胆力も必要になってくるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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