5年ぶりのC・G改定

週明けの日経紙・総合経済面では「資金配分開示の企業最多」と題し、成長投資や株主還元に回す資金配分を開示した企業は昨年度に476社と前年度比で6割増加し過去最多となった旨の記事が出ていた。今月上旬の当欄で「~新たな中期経営計画の発表に合わせ現預金の活用方法を打ち出す企業がどの程度出てくるのか注目~」と書いていたが、同頁では既にこれらを発表した主な企業が出ていた。

この辺に絡んでは中長期的な企業価値向上に向けて企業が取り組むための指針としてコーポレートガバナンス・コードがあるが、この5年ぶりの改定に向け金融庁と東証は今月に改定案を出しており、今回は特に現預金を含めた経営資源の配分による投資の促進など企業が抱える現預金を有効活用できているかどうか取締役会に検証を求める項目が盛り込まれ一段とその意識が問われる改定になっている。

冒頭の配分計画を発表した企業群の中にはマツキヨココカラ&カンパニーの名前も出ていたが、同社は中小ドラッグストア狙いのM&Aに再び動きだした旨が同紙のビジネス面にも出ており、他にも今月はサントリーHDが第一三共から一般用医薬品事業を買収するとの発表、また家電量販店のノジマも日立製作所の家電事業を買収するとの発表もあり、斯様に成長投資の増加、それにこうしたM&Aの動きが活発化してくるか。

こうした投資による成長期待からファンド等でもこれに絡むモノも見られ、内株式で現預金を多く持つ企業でなおかつ株価が割安な銘柄に集中投資する「fundnoteダルトンNAVセレクトファンド」が明日に設定される。いずれにせよ改定案ではより踏み込んだ内容になることで株主還元など短期志向になりがちな行動もけん制されようが、取締役会の判断の質もますます問われることになって来ようか。


実感なき6万円超え

1週間前の当欄で「6万円は一旦お預けとなった」と書いていた日経平均だが、先週のザラバ超えに続き週明けの本日は終値で初めて6万円の大台を超えてきた。とはいえ「NT倍率」は過去見たことがない16倍台で連日推移し、体感でも連日にわたりダラダラと陰線を引いている優等生的な大型株を尻目に買いの矛先が一部半導体・AI関連株に集中し物色の偏りは否めない。

ともあれ1か月前の年度末の51000円そこそこから実感が無いまま急ピッチな上げを演じているが、大台更新ごとのスピードが毎回早くなってきているのだけは実感する。コロナ禍が明けようかという21年の3万円超えから一昨年の4万円超えまでは約3年ほど要したが、そこから昨年の5万円超えまでがこの約半分ほどの1年7か月、そして今回の6万円超えまではそこから半年ほどで達成と史上最速となっている。

いずれにせよAI投資の回収懸念から一旦終焉を迎えた昨年秋の光景が嘘のような再燃具合だが、主力の上昇も相俟ってバリエーションの方も既に日経平均PERで20倍に乗ってきた。昨今の原油価格高騰を加味しても価格転嫁などで2桁増益は可能との一部試算などが成長ストーリーを維持しているのが背景になっているが、これが米国株をもアウトパフォームする原動力になっている。

とはいえ今月に内閣府が公表した3月の消費者態度指数はトランプ政権の相互関税発表後の昨年5月以来の低水準となっており、3月の景気ウォッチャー調査も中東情勢の緊迫化を背景に景況感は現状、先行きともに大幅悪化している。斯様に消費者心理が冷え込む中で日経平均だけ粛々と史上最高値更新している“乖離感”に違和感を覚える向きが少なくないのは当然だが、この乖離感とNT倍率が低下する局面が訪れるのか否か今後も注視しておきたい。


FOMOが作る強気

さて、イランがホルムズ海峡の開放を表明したことで週末の米株式相場は大幅上昇しダウ工業株30種平均は米国がイランを攻撃する直前の水準を回復し、ナスダックに至っては13連騰で最高値を付けている。週末のシカゴ日経平均先物も一時6万円の大台超えを演じていたが、米、イラン共にこの報道を額面通り受け取れない続報もあり週明けの東証は反発こそしたものの6万円は一旦お預けとなった。

まあそれでもMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスも最高値を付けてきており世界的な株価の回復が鮮明だ。取り巻く環境は双方の食い違う報道合戦もあり実際のところ何も変わってはいないどころか悪化している感さえあるが、マーケットはFOMO(FearOfMissingOut)の動きもありもうほぼイラン情勢の解決を先取りしたような格好になっている。

好感材料として確かに諸々の報道で原油価格も大幅下落となっているが、それでもこちらは攻撃前水準の60ドル台まで降りてきていない。現在の米EIA見通しでは今年の原油平均価格は前年から3割程度の上昇を見込んでいるが、2月の当欄でも書いたように今年10~15%増益がコンセンサスとなっているTOPIXのEPSにどの程度この辺が影響するのかどうかが焦点だろうか。

この辺はそれなりにバッファーがあるためにこの原油高が足枷とはなってもある程度の増益は確保出来るとの一部指摘があるが、この辺はフタを開けてみるまでわからないだろう。それにしても今回は今までの“TACO相場”とは違うという警戒論にも耳を貸さずに“TACO投資”に賭けた向きはまたも正解だったということになるが、FOMOが蔓延するTACO相場は何時まで続くのやら正常化の道はまだ遠いか。


ドンキが買ったお値打ち?品

先週の全市場の週間値上がり率ランキングのトップに躍り出たのは東証スタンダード市場の「オリンピック」の75.93%であったが、これは言わずもがなドン・キホーテ運営のPPIH(パンパシフィック・インターナショナルホールデイングス)が同社の買収を発表したことによるもの。かねてよりこのオリンピックが狙われている噂は燻っていたが、結局PPIHが同社を手中に収めることになる。

今月に入ってから某月刊誌のリークでフライング的に同社に買いが殺到したかっこうだったが、商いもマバラな急騰前の値段でPBRは約0.5倍程度、PPIHによる取得額は約250億円と報じられているところからすると単純に現店舗数から弾いて1店舗あたり2億円台で手に入ることになる。店舗の立地と地価、資材価格など諸々考慮すれば金額としてはかなり“おいしい”案件であろうかというもの。

イメージ的には繁華街に強いドンキに対してオリンピックは住宅地という感じであったが、ドンキといえばこれまでかつて東証一部に上場していた長崎屋や、同じく東証一部に上場していたユニーを買収してきた経緯がある。共に経営不振であったスーパーでそれぞれ狙う部分があっての買収劇だったが、今回の買収ではドンキが手薄であった住宅立地を破格の条件でカバーすることになるか。

これまで大型再編で目立った動きがあった業界ではホームセンターや近年で目立ってきたのはドラッグストア業界であったが、この買収も人口が減りつつあるなか小売業の企業間格差が如実に現れた一例か。この業界では昨年にもトライアルHDが旧セゾングループの西友を買収しているが、引き続き業界の勢力図がどう変わってゆくのか今後も注目しておきたい。


金の卵、旧東芝メモリ

昨日の日経紙投資面では「東芝株主銘柄に物色」と題し、東芝が擁する「キオクシア株式」の急騰によりかつて東芝に出資した企業に投資家が物色の矛先を向けている旨の記事があった。この頁ではロームはじめ4社が載っていたが、なるほどこのうちロームは昨日に急反発して年初来高値を更新、また日本特殊陶業も本日はザラバで上場来高値を更新してきている。

またこの物色要因になっているところのキオクシア株も破竹の勢いだ。昨日は米市場でサンディスクが上昇したのを背景に大幅続伸してこちらも年初来高値を更新してきている。この株、今年の大発会が11350円であったから4か月目に入ったところではや株価は3倍に化けている。しかし思い返せば一昨年に上場した際の初値は公開価格をも下回るたったの1440円であったから“テンバガー”どころの騒ぎではないだろう。

それは兎も角もこうなると当の東芝が再上場した時の胸算用で思惑が出てくるのも自然な流れだろう。同社の再上場は今のところ最短で2028年と想定されている模様だが、こうしたケースで間接的に“お宝”を擁するという視点で見れば出資先からの恩恵にあずかっている企業も少なくなく、東芝再上場の暁には再度この手の企業に物色の矛先が向かう可能性もあり今から種を蒔いておくのも面白そうだ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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