静かに上場来高値

さて、週明けにはSBIによる金融資産のトークン化戦略を取り上げたがSBIといえばもう一つ、先月末には傘下のSBI新生銀行がかつての長銀時代の公的資金を完済したことが明らかにされ地銀業界の再編がいつ再始動するのか注目されていたところに、東証スタンダード市場の東北銀行に地銀としては約3年ぶりに出資する事が明らかになり、「第4のメガバンク構想」が再始動する旨が報じられている。

上記のようにトークン化戦略を打ち出すなど同社はデジタル金融の強味があるので、これは地銀にとっても新たな視野が開けることになる。これまで取り上げてきたように同グループではBaaS事業などの強みを活かし百貨店や大手家電メーカー等とコラボしてネオバンクサービスを展開してきたが、その辺の発展途上な伸びしろの部分にも今後は期待が出来るか。

そうした動きも背景に当の東北銀行はこの報道日まで3日続伸し年初来高値を更新してきているが、再来年に第四北越FGと経営統合で合意している群馬銀行も週明けにはザラバで1,593円まで上昇し1990年に付けたこれまでの上場来高値を実に35年ぶりに更新してきた。(まだ第二地銀に関しては楽観視できない部分もあるが、これまで最後の万年割安株といわれてきた地銀株は再編思惑で今後も眠りから覚める向きも出てくるか。


トークン化戦略

さて、先週末にSBIホールディングスが金融資産をブロックチェーン上でデジタル資産の「トークン」として売買する新たな取引市場を作る旨が報じられている。シンガポール企業と共同開発して、これにより株式や債券から仮想通貨などあらゆる資産を一元的に取り扱い、SBIグループの6700万件の顧客基盤などに向けこれら現物資産を暗号資産として24時間、365日売買出来る取引所を提供するという。

ブロックチェーン技術は既にリーマンショックの頃に開発されているが、これまでの規制も整備されてきており米金融は先行している。こうしたことを背景に大手JPモルガンがドル預金トークンの試験運用を発表しており、オンライン証券大手のロビンフッドは欧州で株式トークンのサービスを開始している他、暗号資産取扱い大手コインベースもトークン化した株式の提供に向けSECに認可を申請している。

上記のロビンフッドの株価は既に年初から倍以上となっているが、このトークン化戦略が囃され今月に入ってからは更に一段高し上場来高値を更新してきている。いずれ上記のコインベースとも競合する事になろうが、今年の時点でトークン化される資産は6000億ドルといわれるが、ここから年間で5割のペースで増加し2033年には19兆ドルと30倍以上になるとの一部指摘もある。

SBIも米ロビンフッドのように多彩な新しいサービスを次々と打ち出してくれるかどうかだが、ロビンフッドは既に未上場株までラインナップしているのが凄い。本当は斯様な飛躍したサービスが個人受けするのだが、日本では規制面等でここまでの提供は難しいか。とはいえ国際間決済も瞬時に完了し国境や時間にとらわれない取引が叶うなど期待が出来るだけに今後の展開には注目しておきたい。


赤字を買う

本日の株式市場は3日ぶりに反落となったが、先週の新規上場組では公開価格375円に対して約2倍の初値でロケットスタートとなった東証グロース市場のアクセルスペースも週明けのストップ高の地合いを継いで前場に上場後高値を更新した後に反落となっていた。既に5営業日で株価は3倍近くに化けているが、資産運用大手のブラックロックも同社への投資意向を示していることもあり投資家の成長期待が大きい案件となっている。

とはいえ宇宙事業は先のアイスペースの2度にわたる月面着陸失敗も記憶に新しいように技術的な難易度から失敗リスクが付き纏い、同じグロース市場に上場する同社の株価はこのアクセルスペースの上場日には皮肉にも年初来安値を更新し5月高値からは約3分の1水準に下落している。ただそういったなかでもアイスペースは宇宙開発強化のために新たな企業と協業の覚書を締結するなど次のミッションに向けた動きが進んでいる。

宇宙事業の経済規模は80兆円を超えているともいわれているが、日本の宇宙ビジネス市場は2020年時点で約1.2兆円とまだ伸びしろが大きい。とりわけ日本では公的投資が市場の約9割を占めているという試算もあるだけに、公的ではない民間ありきの持続可能な進行がどれだけ拡大するか、今でこそまだ宇宙事業各社は赤字を買ってゆく構図だが今後の展開に期待したい。


建設業界にも再編波

さて、先週末にはまた大型再編の報がゼネコン界であった。売上高ランキングで業界4位に位置する大成建設が、TOBなどを通じて東洋建設の全株式を取得するなどで総額約1600億円を投じて買収を図るとのこと。これが実現した暁には先にインフロニアHDによる三井住友建設の買収額を上回り建設企業同士のM&Aとしては過去最大となり、売上高ランキングでは2位の大林組に次ぐ位置になるか。

建設業界では今年5月にもインフロニアHDが三井住友建設を買収すると表明しているが、このインフロニアHDもかつてこの東洋建設を1株770円でTOBすると試みた経緯がある。これが安過ぎると1株1000円でここへ割って入って来たのが任天堂創業家の資産運用会社YFOであったが、取締役候補のうち過半数をYFOが占めるまで攻めたものの紆余曲折の末志半ばでYFOはTOB提案を取り下げる結末となっていた。

とはいえ今回の再編劇を導いた立役者こそこのYFOともいえ、この構図で思い出したのがかつて石油業界で出光興産と昭和シェルの経営統合の際に泥沼化していた出光経営陣と創業家側の間に入り対立緩和に一役買った村上ファンドの村上氏か。石油業界で同氏は他にも自らが大株主であったコスモエネルギーHDを岩谷産業にバトンタッチし脱炭素に打って出る体制を作り自らのイグジットも十分な利を得ている。

今回の買収劇も1株1750円ということで既にそれに近い現在の東洋建設株価としては派手な鞘寄せこそ起こるべくも無いが、冒頭の通り1株770円でのTOBが出た当時からすれば現在の株価は言わずもがなでYFOのイグジットとしては申し分ない水準だろう。いずれにせよこの買収劇により工事領域で存在したすみ分けもその壁が取り払われることになったが、昨今では建設従事者の不足がいわれるなか他の大手ゼネコンにも動きが出てくるかどうかこの辺が今後注目だ。


FOMO相場

連休明け本日の日経平均は、米と各国の関税協議が進展し米関税政策を巡る不透明感の更なる後退や米早期利下げ観測を背景に5日大幅続伸となり、大引けは前週末比897.69円高の42718.17円とこれで昨年の7月11日に付けた42224.02円を抜いて約1年1か月ぶりに過去最高値を更新してきた。先にTOPIXが史上最高値を更新していたが、日経平均もこれに遅れ史上最高値更新が叶った格好。

個別ではNAV(時価純資産)比で大幅ディスカウントが指摘されていたソフトバンクGが続急騰、IPのサンリオもストップ高とこれら値嵩の寄与も高いが、踏みが原動力になっている部分も否めないか。昨年の過去最大の下げ幅を記録した後の軌道パターンや関税発動時期などからここ数か月目先の下げに賭けた向きも多かっただろうが、信用買い残も整理が進んでおり低信用倍率銘柄では担がれているものも少なくない。

まさにお盆に入る直前での最高値更新劇となったが、早速これを受け大手証券勢の鼻息は荒く揃って今年の高値予想を上方修正してきているあたり一旦は利を入れたくなる衝動にも駆られるものだ。昨年は米CPIが市場予想を下振れしたのを機に過去最大の下落を呼んだが、さて目先のCPIは如何に。その辺は兎も角もいずれにせよ彼方此方インフレの波をひしひしと感じる今日この頃である。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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