沼るボラティリティー

本日の日経紙投資面には「株価の乱高下、新常態に」と題し、AI・半導体関連株にマネーが集中しボラティリティーが高まったことで日経平均の取引時間中の値幅が1000円を超える日が相次ぎこれが“新常態”となっている旨の記事があった。日中値幅が1000円以上になった日数では今年は昨日迄で41日と最多を記録、月間変動率も昨年10月以来、半年ぶりの高水準という。

上記の通りこれらを創り出しているのが一部のAI・半導体関連株で、筆頭格はやはりキオクシアHD株だろうか。本日も上場来高値を更新した後は反落となっているが、この値段だけに値幅も悪魔的で昨日は寄り付きで最低単元買っただけでも引けで約15万円の値洗い益が、反対に今日の寄り付きで最低単元買っていたら大引けの値洗いで約35万円が飛んだ計算になる。

こうした動きは若年層をも呼び込み本日の日経紙の別の頁ではバイトでためたお金でキオクシア株を買った高校生の話も出ていたが、これを見ていると分割ラッシュと話題性で沸いたかつてのライブドア株を小遣いをためて買ったという小中学生の映像を思い出す。その後同社は上場廃止の憂き目に遭ったわけだが、勿論キオクシアの方はしっかり裏付けもあり全く別物とはいえマル信枠で目一杯張っている向きなど見るにチャレンジャーだなと感心する。

まあ余計なお世話だが、今のAI・半導体株はかつてのまだ上昇半ばにあったビットコインの如くなのかどうか?期待値から株価が業績に見合わないケースは多いが、今のこれらは逆で業績に株価が追い付いていないとみられている。なのでバリュエーションからまだまだイケるという理論だが、宴の行方をいましばらく見させてもらおう。


過去最高純益見込みでも年初来安値

長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが29年半ぶりの高さまで上昇しているなかで株式市場では不動産系が軒並み弱含み、今週はTOPIXの不動産業や東証REIT指数が揃って年初来安値を更新してきている。これらセクターには有利子負債の観点から売りの矛先が向いてしまうが、加えて建設費の高騰や中東情勢緊迫化で建設資材供給への影響も重なり新築マンションの引き渡しにも影響が出ている模様だ。

建設費高騰といえば先週は帝国ホテルが建設費やエネルギー価格高騰のあおりを受けて立て替えを予定している本館についてその時期を未定とすることを発表している。また西武ホールディングスも同じく先週に再開発のために今年中に営業を終えるとしていたグランドプリンスホテル新高輪の営業を建設費高騰のために計画を精査するとのことで来年4月以降も継続すると明らかにしている。

他、都内では各所での再開発が建設費高騰によって頓挫してしまったパターンも少なくないが、各社純利益が過去最高になるとの見通しのなかで先週は三井不動産、本日は住友不動産が年初来安値を更新している。REITも投資口価格の下落で分配金利回りが高水準になっており、いずれも補正予算財源やら中東情勢など不透明な環境の影響による業績への懐疑心の現れだろうがこの安値拾いが奏功するのか否か見極めも難しい局面だ。


自社株買いラッシュ

前回の当欄では分割ラッシュとして昨年度の株式分割の発表件数が前年度比で36%増加、今年も多くの企業が分割に踏み切っている旨を書いていたが、この分割よろしく自社株買いもまた盛んだ。先週は週明けから20銘柄に迫る発表があり、翌12日はKDDIほか30銘柄以上、13日は三井住友FGほか40銘柄以上、14日はニッスイほか50銘柄以上、週末は三菱UFJほか地銀勢多数で30銘柄以上が自社株買いを発表している。

ちなみに昨年設定された自社株買いの取得枠は全体で22兆3250億円と前年度比で18%増えてその増加は5年連続となった旨を先週日経紙が報じているが、依然として東証が企業に要請している資本コストや株価を意識した経営がこれらの拡大を後押ししているか。加えて近年では手元資金も潤沢になってきており、自社株買い規模も対時価総額比でかなり高いところを出してきている企業も出てきている。

この辺に関しては東証要請に加え今年は5年ぶりのコーポレートガバナンスコードの改定を控えているが、先に書いたように改定案では今回は特に現預金を含めた経営資源の配分による投資の促進など企業が抱える現預金を有効活用できているかどうか取締役会に検証を求める項目が盛り込まれ一段とその意識が問われる部分が意識されている部分も少なくないだろうか。

企業がこれまで内部留保を積み上げてきた背景には日常の資金繰り対応に加え災害や地政学リスクなど危機への備え等という部分が大きかったが、足元では中東情勢の緊迫も先が読みづらい状況が続く。これに絡んでナフサ不足の影響も日々表面化してきているが、今後この拡大しつつある自社株買いの伸びにもこうした部分が影響を及ぼしてくるかどうかにも注意しておきたいところだ。


分割ラッシュ

今週も日経平均が史上最高値を更新するなか、株式分割の発表も相次いでいる。先週の日本ハムや福田組に続いて今週は株価大化け中の古河電気工業も株式分割を発表、これを好感し一昨日はストップ高まで買い上げられ一気に大台を変えていたが、株価急騰中の電線大手では住友電気工業もまた株式分割を発表している。また昨日には三井住友FGも1株を2株に株式分割を行うと発表している。

斯様に分割熱が喧しいが、この辺に絡んでは先週の日経紙総合経済面でも「株投資、下がるハードル」と題し、昨年の株式分割の発表件数が前年度比で36%増加し2025年度末の上場企業平均の最低投資額は21万円と20年前の半分以下になった旨の記事があった。先に書いたように日経平均は年を追うごとに大台塗り替えが加速し、ここ3年ではや2倍になった割に最低投資額が同じように上昇してこないのは企業の株式分割が活発化している証左だろう。

ただ投資金額が従前より数分の一になるなど大幅に下がっただけに値嵩時代に買えなかったホルダーの中には下落耐性があまり無い向きも一定数居る事で、そういった時の振れ幅が大きくなるケースも出てこようか。それでも新NISAの創設もあったほか企業側としても、持ち合い解消の受け皿としての個人株主の取り込みを重要視しておりこうした動きはまだまだ道半ばだろうか。

しかし今から4年くらい前の当欄で米アップルなどの主力株は数万円で投資出来ると書いた事を思い出すが、これだけ東証側の詳細な要請など後押しが奏功しているわりにいまだ単元株制度を堅持している光景も時に奇異にさえ映る。企業側も上記のように挙って対応しているが、この辺の課題も株主提案の要件の議決権数などの見直しと併せて今後も折に触れて議論されるべきであろうか。


下剋上の10兆円クラブ

本日の日経紙総合面には「時価総額10兆円クラブ27社に」と題し、日経平均が史上最高値を更新するなか個別企業の時価総額も膨らみ、その時価総額が10兆円以上の企業数が2025年末から4社増加し今週のあたま時点で27社になった旨の記事があった。同頁にも出ていたが10年前にはこれがわずか3社であったから躍進といえるが、銘柄間でもなかなかの下剋上模様である。

この辺でいえば当欄では一昨年の年初に日立製作所に伊藤忠商事や任天堂が10兆円クラブ入りを果たした旨を書いてきたが、この3銘柄だけでもそれ以降は各社共に大きく差がつき日立製作所はそこから時価総額を2倍以上にした一方、任天堂は本日終値では10兆円クラブから陥落している。そういった中でも株価の大化けと共に上位に食い込んできたのはやはり半導体・AI関連か。

ここまで日経平均の上場来高値を演出してきたのはいわずもがなこのセクターだっただけに当然といえば当然だが、10年前の上位企業と併せ見るに日本企業の産業構造の転換も垣間見える。前回もコングロマリットディスカウント企業でも構造改革で変貌を遂げる一歩と書いていたが、半導体・AI関連など“旬”の企業と併せコングロマリットプレミアム企業として今後もどの程度伸びてくるのか注目したい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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