レバレッジもセルボラ系も

本日の日経平均はAI開発のアンソロピックがIPOに向けた目論見書を開示したのをきっかけに投資家心理の改善から値嵩のAI・半導体関連株が買われ1078.72円高と4営業日ぶりに急反発となった。そういったなかにあってすっかりひところの勢いを失ってしまっているのが主力級だったキオクシアHD株で、他のAI・半導体株が5%前後値を飛ばすなかでわずか0.44%高に終わっている。

同株はAI・半導体関連の中でも予てより信用買い残の重さが指摘されてきたが、全体が急反発する好地合いのなかにおいてもやれやれ売りで上値を抑えられている。そういえばお隣韓国でもAI・半導体関連株の急騰局面では値動きが2倍などになるレバレッジ型ETFから、最近では当面は大きな株高を見込みにくいとした向きがレバレッジ型からカバードコール系のETFにシフトしている旨の記事を先週の日経紙で見た。

カバードコールETFは相場膠着局面で有効な商品となるが、オプションの売りを組み合わせておりデリバティブに疎い向きでも手軽に取り組めアジア諸国ではこの手の規制緩和が進んでいる。日本のETF市場もここ3年増加し続け昨年の純資産残高も100兆円を超えてきているが、幅広いアセットクラスに小額から投資出来るのが魅力なETFもまだコンサバな部分が感じられるだけに日本もより一層の規制緩和と幅広維ラインナップが望まれるところ。


ガリバー同士の統合

さて、先週にはイーロンマスク氏率いる宇宙事業のスペースXと、米EV(電気自動車)のテスラとで経営統合を協議しているという報があった。マスク氏自身もスペースXの決算説明会にて統合のための特別委員会を両社に設置したことを明らかにしているが、仮にこれが実現した場合は“ガリバー”同士のM&Aでほぼ時価総額ではマイクロソフトと肩を並べる規模となりアマゾンを抜いて世界5位に位置することになる。

スペースXといえば先週は7~9月期売上高が前年同期比2.6倍に増加し最終損益が黒字転換したとの発表があったばかりが、もともとこのスペースXがIPOする前からこの両者の統合話は一部アナリストなどから出ていた。テスラの蓄電池システム等の供給でスペースXの事業拡大がテスラにも恩恵をもたらすわけでテスラ側にも統合効果が大きいが、このガリバー同士の統合には議決権の問題やら持ち分低下の問題などハードルは低くない。

この辺はマスク氏が株主をどう納得させてゆくかにも注視したいが、商業打ち上げビジネスなどでほぼ独占状態のスペースXの価値はその期間や人によってどう捉えるか賛否両論だ。一部で2030年の企業価値が2兆5000億ドル(約400兆円)になるともいわれるまでの道のりの実現速度を、これまた今後イーロンマスク氏がどうマーケットに訴求してゆくかこの辺も見ておきたい。

スターシップなど商業的な打ち上げを行い一段の宇宙開発へと続けば米が主導する形で宇宙の“ルール”が築かれ、覇権争いにおいても先行することになるか。いずれにせよこれが実現することになれば、AIと宇宙という国家戦略上でも極めて重要な二つの成長分野をカバーするガリバー級のプラットフォームが誕生することになるだけに今後のなりゆきには要注目である。


ストックオプション考

本日の日経紙・学びのツボでは「働く意欲と報酬を左右」と題し、スタートアップなどの一部で優秀な人材を確保するためのツールの一つとしてのストックオプション解説の記事があった。ストックオプションは言わずもがな予め決められた(権利行使)価格で自社の株式を購入できる株式購入権の一種だが、近年ではテスラやスペースX率いるイーロン・マスク氏の巨額ストックオプションが話題になったりした。

同頁ではこのストックオプションでもいくつかの種類がある旨が書かれていたがこれらに伴う税金の取り扱いにも言及していた。しばしば外資系での勤務経験がある役員クラスがこのストックオプションを行使して所得を得た際にその扱いを巡って国税当局とバチバチやり合っている事件を目にするが、通常の累進課税扱いから金融課税扱いまでさまざまで発行側もその辺の多様化が進む。

そういえば今日の株式市場では東証プライム市場のネクセラファーマが急反発し年初来高値を更新していたが、これは業績連動型ストックオプションの導入を発表したことが好感されたもの。昨年東証に上場した企業では実に約9割がストックオプションを導入している旨もこの頁に書いてあったが、就職や転職組に限らず投資家目線でこうした部分に着目して各企業を見るのも一考か。


持ち合い解消包囲網

先週末の日経紙一面には「持ち合い株売却 8.8兆円」と題し、日経紙が3月期決算の上場企業約2300社の有価証券報告書集計において、政策保有株の売却額が8兆8900億円と過去2番目の高水準であった旨の記事があった。予てよりコーポレートガバナンス報告書等で東証プライム市場上場企業の約7割が持ち合い株を削減する方針を示していたが、アクティビスト等の圧力も背景にはあろうか。

当欄ではこれまでトヨタグループはじめとしてアシックス、大手損保なども政策保有株ゼロを打ち出してきた旨を書いていたが、今回の纏めで業種別に売却額が多かったのが保険と銀行で互いの政策保有株圧縮が表れているか。企業別で売却額が大きかったのも東京マリンでその資金を買収原資に充てるといい、上記アシックスも資金活用が奏功しかつての赤字から今や売上高1兆円超が目前に迫る。

先にTOPIX見直し第2弾を書いたが今回は年間売買代金回転率と共に浮動株時価総額でもふるいにかけられ、政策保有株はこれにカウントされないので自ずとこういった部分においても解消促進効果はあるか。まさに各所から包囲網といった感じだが、かつてはこの持ち合いも適正化水準まで10年以上かかるともいわれていたものがこれらで各段に進むと思われるだけに今後もその推移を見守りたい。


金利収益の旨味

本日の日経紙グローバル市場面には「信用買い個人、金利高の影」と題し、直近で東証から公表された投資家の信用取引の買い残高の約6.4兆円などが信用取引のコスト上昇などで重荷になる可能性が出てきた旨の記事があった。複数の大手証券では日銀の利上げで短期市場からの資金調達コストが膨らんでおり、これに伴い信用買いの買い方金利の引き上げに動いている模様だ。

同紙では上記の買い残の約6.4兆円をもとに足元の買い方金利の水準を年間約3%と仮定しての計算では、個人投資家全体の金利負担が約1900億円にのぼるという。もちろんこのマル信の性質上ダラダラと期日まで引っ張るパターンは誰もがエントリー当初は想定していないだろうが、先に書いた信用評価損益率のプラス浮上などに惑わされ気が付けば塩漬けの罠にはまっている向きも少なくないか。

さて張る側は泣き笑いの明暗があっても、こうした対で証券会社は恩恵を被る。先の大手ネット証券の2026年4~6月期の合計純利益は前年同期比で2.3倍に膨らんだが、背景には各社共に信用取引の金融収支が貢献し収益全体に占める割合も大きく伸びてきている。日銀利上げのペース以上に貢献している間は良いが、今後の利上げに何処まで付き合えるのかこの辺にも注視しておきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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