牛歩の新陳代謝 

さて、今週始めの日経紙では「投資家の皆さま、ご注意ください」、「2025年3月 上場維持基準による経過措置が終了します。」として、2025年3月以降の基準日において基準未達の企業は原則1年間の改善期間内に基準を達成出来なければ上場廃止となります。上場廃止後は東証を介した株式の売買が出来なくなりますのでご留意ください。との一文が入った5段広告が目に付いた。

すっかり時が経過していたのを忘れていたが、これを見てあらためて経過措置がそういえばあったなと思い出すものだ。日経紙によればここまでなんとか市場に嚙り付いてきた経過措置の対象企業はプライム市場では55社、スタンダード市場では140社、そしてグロース市場では51社と全体で250社近く残っている模様。3月末決算企業ではこれら改善期間のあと監理銘柄、そして整理銘柄を経て半年後の2026年10月1日に上場廃止となる。

当初は何処までダラダラと延長するのかはなはだ不透明だったが、いよいよ終わりが見えてきた事で重い腰を上げ優待等で大盤振る舞いする向きも出て来た。日米の株価指数の組み入れ銘柄のうち30年前から上場している企業と30年前以降に新規上場した企業の比率を見ると、ナスダック等では30年前から上場している企業とそれ以降に上場した企業はほぼ半々だが、これがTOPIXでは前者が70%超、後者が約30%となっており業績や株価が低迷したまま市場に残り続ける企業が前者の比率を上げているという見方も出来る。

上記の優待事情として23年以降では上場基準に経過措置対象であった企業による優待の新設比率は全体平均よりも高い傾向にあるとか。そういったことで今後も上記の経過措置対象企業の悪足掻き?で優待の新設など高水準が続く可能性もあろうが、昨今の傾向から中にはMBOなどで自ら市場退出を選ぶ向きも出て来よう。いずれにせよ牛歩ながら新陳代謝の動きが少しでも促進されることに期待したいもの。


脱コングロマリット

さて当欄では東京メトロやキオクシアの上場など大型上場を取り上げてきたが、先週はこれらに続く大型モノのJX金属が東証プライム市場に上場している。ゆうちょ銀行の売り出しと重なるなかにあって公開価格は仮条件の上限で決まり市場からの資金吸収額が18年に上場したソフトバンク以来の大きさと注目されるなか、初値はその820円の公開価格に対して2.8%高となりその後も続伸してかつての親会社の株価を抜き好調なスタートを切っている。

JX金属といえば周知のようにこれまでENEOSホールディングスの100%子会社だったが、同社は祖業である銅の精錬事業から今では半導体材料企業として生まれ変わる方向へ舵を切っておりこれまでの金属と親会社の石油の両輪ではシナジー効果が無かったワケで、今回の上場は所謂コングロマリットディスカウントを解消し成長の機会をより確実にする意味でもいい独立事例ともいえるか。

この上場で親会社のENEOSホールディングスの連結対象からは外れ親子関係は解消する形となるが、ENEOSとしてもこれで3600億円超の売却資金が入るわけで既に同業のコスモ石も来月から本格生産するSAFやバイオ・合成燃料など次なる成長投資に充てることも可能になり、JX金属も石油から離れてこちらもまた成長事業投資で企業価値を高めてゆけるウィンウィンの構図が描ける。

折しも国内では半導体需要が広がるなか、本来持っていた強味を活かしてかつて世界を牽引した“日の丸半導体”の復活で再度日本が存在感を示すことを目指す動きも活発化してきている。同セクターの大規模上場の好調スタートはカンフル剤となり後続企業にとっても追い風となるだろうが、今後もこの手のコングロマリット解消からスピンオフの動きが増えてくることも予想されるか。


読売333指数始動

本日から読売新聞社が提供する株価指数「読売333」の算出が始まった。これは日本の株式市場から主要銘柄として選んだ333銘柄で構成される新しい株価指数で、初日の終値は35,507.74円であった。この指数だがその算出方法が最大の特長で、この読売333は「等ウェート型」を採用し各銘柄の値動きの比率を足し合わせたものを全銘柄の333で割る算出方法となり値動きの平均値を示すもの。

これにより大企業や特定企業の動向に左右されにくい点や、時価総額が小さくても成長性の高い銘柄の値動きを捉え易く中小型の伸びも取り込める点が特徴で、実際に東証プライム市場のみならずスタンダード市場やグロース市場の銘柄も含まれ地方企業や新興企業が含まれている事にも注目だ。こういった等ウェートを採用する株価指数は日本では初めてであると思うが、海外では既にS&P500イコール・ウェイト型指数などがある。

ちょうど直近では米市場全体を牽引してきた所謂“マグニフィセントセブン”はエヌビディア株の下落やテスラ株の往って来いなどが重なったこともあり高値からの下落率が先週には20%を超え弱気相場入りしている。時価総額加重平均型では上記のような主力の特定銘柄が与える影響が高くなるが、イコール・ウェイト型ならこうしたことを回避出来る。

この指数の始動で早速26日(水)には「eMAXIS Slim 国内株式(読売333)」が設定される予定で、これはNISAの成長投資枠の対象ファンドにもなっており信託報酬率も低めの設定になっている。目下のところ人気の矛先は付和雷同的にオルカンやS&P500一辺倒と喧伝されているが、斯様な新商品の登場も含め新たな指数の始動で日本企業への投資を見直すきっかけにもなる事も期待したい。


優待熱再び

今月初めの当欄で株主還元の流れを取り上げた際にトヨタ自動車が初めて株主優待制度を導入した旨も書いていたが、しばらく優待廃止の流れに傾いていたマーケットも昨年は優待新設企業数が131社にのぼり、5年ぶりに優待廃止企業数の85社を上回った旨が先週の日経紙に出ていた。東証による市場改革に加え、新NISAの導入で個人株主を取り込む思惑も背景にしてこの導入企業数も7年ぶりの多さとなっている。

株価の方も市場で突飛高する銘柄は優待拡充などのニュースが出た銘柄が最近は特に目に付く。直近では昨日にストップ高まで駆け上がったグロース市場のバリューゴルフは株主優待制度の拡充を発表しており、先週は株主優待の再導入を公表したプライム市場の学究社も急伸し上場来高値をも更新してきている。そういえば昨年は人気タルト店のチャージギフトを優待で導入し急騰した企業もあったのを思い出す。

個人投資家の重視項目では配当に次いで優待も大きな割合を占める結果が出ており、「株主優待利回り」に着目する向きも新NISA導入後は大きく増加してきている。私個人も様々な企業の優待を享受しているが、配当をはるかに上回る“美味しい企業”は意外に多いと実感している。また企業側としても配当に比べてコストがそれほどかからず株価の下支え効果も考慮すればコスパの良い施策ということがいえるか。

廃止企業も一定数あるのにみられる通りで株主間の平等性を厳密には確保できないという構図もあるものの、近年の政策保有株解消が進むなかで安定株主としての個人の確保もまた重要性を帯びてきている。3月期企業の権利確定も迫ってきているが、上記の新NISA導入後の個人投資家と企業側の思惑とがうまくマッチしているこの“高コスパ”の施策は今後また活発化してくるのは想像に難くないか。


国策に売り無し

さて、先週の日経紙投資面ではトランプ政権誕生後の株価騰落率が出ていたが、首位のディー・エヌ・エーや2位のバンダイナムコHDは共に新作ゲームが好調、バンダイナムコHDは先週には上場来高値を更新する高騰を見せている。上場来高値更新といえば他にもベストテンでは5位のコナミGや7位のサンリオ、そして8位の任天堂これらどれも揃って先月に上場来高値を更新してきており総じてこれらIP株の強さが際立っている。

ディールと称した関税政策の“脅し”を株式市場は嫌気しているが、そういった不確実性の悪地合いのなかでもこうした影響を受けにくい特にこの手のIPモノにマネーが流入しているのが見て取れる。こうした地合いの下では従来は薬品とか食品などディフェンシブが回避先として買われたものだが、このランキングを見ると下落率ベストテンにはこの手の薬品株も目立つ。

考えてみればこれらIP株はそもそもインフレ耐性が強くファンビジネスは節約志向とはほぼ無縁、ゲームやアニメーションなどコンテンツの本質的な価値は数字などで理論的に説明が出来ず定量化のようなことが困難なので価格転嫁も他に比べて容易というメリットも持ち合わせる点が強みだ。

政府の骨太の方針の中ではコンテンツ産業を支持する新たなクールジャパン戦略を組み込んでいるが、この辺に絡んでは昨年後半に経団連がコンテンツ関連事業への政府予算の強化とコンテンツ省の設置を要請するなど国策としてサポートされつつある。「国策に売り無し」の相場格言を思い出すが、今後これらも新たなディフェンシブ銘柄として市場を牽引してゆく可能性に期待したいところ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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