7ページ目   雑記

埋もれた傑作

本日の日経紙の「特集」では、大阪中之島美術館で開催されている日本美術の中でも埋もれた傑作に光を当てた「日本美術の鉱脈展 未来の国宝を探せ!」から幾つかの作品が挙げられていたが、伊藤若冲や円山応挙の作品と共に工芸品部門での宮川香山の「褐釉蟹貼付台付鉢」や「氷窟鴛鴦花瓶」など眞葛焼を代表する作品が出ており思わず目が留まった。

この宮川香山も若冲と共に昔から私のお気に入りの一つであり、今から10年近く前だったか日本橋で「超絶技巧・世界を驚かせた焼き物」なるタイトルでこの宮川香山展が開催された時には何度も足を運んだものだった。この展では上記の「褐釉蟹貼付台付鉢」も展示されていたほか、個人蔵のものでなかなか普段見ることの出来ない貴重な品もあったのを思い出す。

宮川香山の作品に興味を持つのは、私の大好きなアール・ヌーボー期のエミール・ガレやドーム兄弟の有名な作品で見られるアプリカッション技法を彷彿させるものだからに他ならない。西洋勢のガラスに対し日本勢は陶磁器で同じ造形物を創り出したという感じだが、冒頭の通りまだあまり知られていないというのも軽い驚きだ。今と違い若冲展もひと昔前はゆったりと観られたものだが、いずれ香山も同じような感じになるのかどうか興味深いところでもある。


大手一角の撤退

本日の日経紙一面には「ボージョレ販売撤退」と題しキリンホールディングス傘下のメルシャンが、フランス産ワインの新酒であるボージョレ・ヌーボーの販売から撤退する旨の記事があった。ブームだったころに比べて近年消費が減少しているところへ、円安や輸送コストの高騰が直撃して採算が合わなくなったのが理由というが、大手では既にアサヒビールが昨年に撤退している。

ボージョレ・ヌーボーと言えば長年秋の風物詩として君臨してきたものだが、ワインも近年ではEPA発行等を経て価格や種類の多様化もあってこうした“新酒”だけを売りにしたものに対して相対的に魅力が薄れてきている感は否めない。ちなみにこのボージョレ輸入量のピークは04年であったが、昨年のそれはこのピークから7分の1にまで減少しているのが現状だ。

思えばロシアによるウクライナ侵攻の影響で空輸ルートが制限され、その輸送コスト高騰の影響から一部値段が大きく上がったあたりの客離れが大きかったような気もする。日本は日付の関係もあって世界のどの国よりも早くこれが飲めるという事で、ハロウィーンからクリスマスまでの空白期を埋める商機の位置付けでこの地の利を生かしたイベントも盛んだったがこれももう今は昔になりつつあるか。


新たな基幹産業

さて、先週からコージーコーナーはアサヒ飲料の「カルピス」とコラボしたシュークリームを、またマクドナルドは不二家とコラボし「レモンスカッシュ」のシェイクやパイなど新商品3種の販売を始めている。「カルピス」は発売から既に100年以上が経過し、不二家「レモンスカッシュ」も発売から今年でちょうど50周年といずれも数世代にわたる食品業界のロングセラーコンテンツといえるものだ。

カルピスの106年は別格だが、不二家レモンスカッシュの50年前後クラスのブランド化している食品以外のロングセラーコンテンツを見てみると、サンリオの「ハローキティ」が同じく50年、バンダイナムコの「ガンダム」が45年、任天堂の「マリオ」は43年、また東映アニメの「ドラゴンボール」の40年などマネタライズが継続しているIPコンテンツが多数出てくる。

ところで上記を擁する企業の株価もトランプ関税の影響を受けずパフォーマンスのよさが目立つ。日経平均が年初来でいまだマイナスのところIP関連の時価総額上位10社のそれはプラス20%以上と日経平均を大きくアウトパフォームしており、主要エンタメ9社の時価総額も先月末で57.2兆円となり、トヨタ自動車などの日本の基幹産業ともいわれる自動車主要9社の56.8兆円をも上回り遂に逆転している。

政府の骨太の方針の中ではコンテンツ産業を支持する新たなクールジャパン戦略を組み込んでいるが、日本のコンテンツの海外での市場規模は23年に約5兆8千億円とこの10年で3倍ほど急増、政府は33年までにこの海外市場規模を20兆円に高める目標を掲げている。上記の東映アニメの決算説明資料でも現在の日本のアニメ市場の伸びしろの大きさを謳っているが、今後は官民挙げて稼げるビジネスモデルの確立が課題になりそうだ。


人件費割合がまたも最高に

月替わりで今年の下半期がスタートとなったが、今月も相変わらず食料品の値上げが続く。恒例の帝国データバンクによる主な食品メーカーにおける今月の飲食料品の値上げは2105品目と前年同期比の約5倍に急増、これで1月から7か月連続で前年同期を上回るなど値上げの勢いは去年より強く、引き続き原材料費の高騰に加えて光熱費や物流費などが背景にあり、特に人件費は集計開始以降で最高を更新している。

個別では「調味料」が最も多かったが、ミツカンは柑橘果汁や大豆など原材料高騰の影響で鍋つゆや納豆を値上げ、しゃぶしゃぶの御供のポン酢に関しては実に35年ぶりの値上げとなる。他、ヱスビー食品はカレールウの値上げ、味の素AGFもコーヒー豆の高騰でインスタントコーヒーの一部商品を投げするが、このコーヒーといえば大手コンビニチェーンにも値上げの波が波及している。

そういったところでは既にファミリーマートが5月に「ファミマカフェ」の全15品目を値上げしているが、これに続いてローソンも「マチカフェ」で昨日から一部商品の13品目を平均で10%ほど値上げしている。またセブンイレブンも同様の理由で7日から淹れたてコーヒーの「セブンカフェ」全品を値上げする予定となっている。

他にタマゴも高騰が続く。昨日にJA全農が発表した鶏卵の1キロ当たり平均卸売価格は340円と、あのエッグショックと呼ばれた一昨年の最高値350円を指呼の間に捉えている。もはや「物価の優等生」も死語といえるが、斯様に物価上昇圧力がかかるなかトランプ氏の関税政策がなかなか読めず日銀も追加利上げについては今のところ動くに動けない状態が続くものの今後どう舵を取ってゆくのかこの辺も注目される。


二季化

さて、2005年のクールビズの導入から20年が経過したが2005年の開始当初は6~9月だった期間は2011年に5~10月に、2021年以降は指定が無くなるなど気候変動に合せてその期間も変化している。その気候だが気象庁は先月の平均気温が平年より2.34度高く、統計を開始した1898年以降で最も高かった2020年の1.43度を上回って歴代1位の高温であったと発表している。

7月に入ったが、ここから9月にかけても高温傾向が予測され年間真夏日の日数100日時代の到来も囁かれており、「暑さ対策」にかける費用もインテージ調べでは今年は前年比9%ほどの増加という。気温が暑さを増し35度までは消費が増加するものの、これを超えると外出控えなどから減少傾向になる「35度の法則」も有名だが、さて今年はどの程度消費に影響が出るであろうか。

斯様な気候の影響を特に受け易いアパレル業界などは長期化した夏の売れ筋が変化し、秋も短くなり冬も遅くなってきている事で季節衣料がこれまでに増して振るわなくなっているという。各社の戦略では各々で夏を(初夏・盛夏)と(猛暑)に分けて定義したり、1年を二季として定義し長い夏の中での商品構成を細分化して見直す方向という。長期化した夏を背景にライフスタイルにも各所で変化の兆候が表れつつある。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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