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高粘着性の圧力

GWも終わり今日からまた通常モードだが、今月もまた値上げの波が続く。恒例の帝国データバンクによる主な食品メーカーにおける飲食料品の値上げ動向だが、今月は478品目となり単月の値上げ品目数では1月以降5か月連続で前年同月を上回り、この5ヵ月連続前年超えは記録的な値上げラッシュとなった2023年の6月以来、約2年ぶりの事となる。

分野別では調味料の192品目がトップ。足元では「カレーライス指数」が11か月連続で高値更新してきているが、ハウス食品はカレールウやレトルト製品を今月に8~15%値上げする。これまで同指数の上昇要因は具材やライスに因るもので、ルーの変動は無かったが今後はこの辺も上昇要因となってくるか。次いで加工食品の137品目が続き、コーヒー豆の高騰からUCCもコーヒー飲料など41品目を15~30%値上げするが、今年は早くもこれで2度目である。

2025年における飲食料品値上げの勢いは前年に比べ強い状態が続いているが、値上げ要因をここ数年で比較して見るに物流費と人件費の伸びがやはり目立つところで、これらが上がった分が価格に転嫁されるという動きが今年は特に強まっている。インフレに合せて賃金が上昇している向きはまだよいが、そうでない向きは今後もなかなか厳しい状況を強いられるわけでその辺を睨み価格競争力を維持すべく大手小売り各社の戦略も注目される。


東証改革のカタリスト

さて、今週の株式市場でひと際目立っていたのは週明けから値を飛ばしていた豊田織機か。週明けのストップ高を交え連日急騰を演じたが、周知のように同社は非公開化の検討に入ったとの報道がありプレミアムを乗せたそのTOB価格へサヤ寄せした格好か。同社はトヨタグループの本家ともいえるが、一昨年だったかアイシンが政策保有株ゼロを目指す旨を打ち出したあたりから潮流の変化が見られそれに続く動きが顕著になってきた。

トヨタグループはその複雑な株式持ち合いと親子関係で知られてきたが、週明けは同グループでは愛知製鋼も急反発し年初来高値を更新、また親子上場解消思惑が他銘柄にも波及し住友電気工業の上場子会社の住友電設株が続急伸し年初来高値を更新、他にも関西電力の持ち分法適用会社のきんでんも急反発し一気に年初来高値を更新してきているなど思惑が絡むところが反応し軒並み値を飛ばしている。

何といってもTOBは豊田織機にみられる通りそのプレミアムを乗せた旨味が大きいだけに、その辺に着目したトレードや金融商品等も近年は見られるようになってきた。2023年には「政策保有解消推進ETF」なるアクティブETFが登場し、2024年にはファイブスター投信投資顧問も親子上場の解消でTOBされる可能性のあるものを狙った「資本効率向上ファンド・TOBハンター」の運用を2月からスタートさせている。

そういった背景の一つにはやはり東証の存在が大きく、親子上場の在り方への関心が高まる一方で現状の取り組みや開示内容を巡って投資家目線とのギャップが生じているとの指摘があるのを鑑み「親子上場等に関する投資家の目線」を今年2月に取りまとめている。斯様に年々その要請も踏み込んだものになってきているが、それら一連の改革は日本企業の特異な商習慣?というかその構造を近年大きく揺るがしてきているのは間違いなく、今後もカタリストとして投資家の関心を惹きつけようか。


何故いま福岡うどん?

さて所用で錦糸町へ向かう際に両国を通ったのだが、東京1号店としてオープンした福岡の「資さんうどん」の階段には夕食ピークの時間はとうに過ぎてはいたものの行列が出来ていた。2月のオープンからはや2か月経過してなおその人気はとどまるところを知らずといったところだが、福岡のうどんといえば先週はその福岡で創業74年の老舗「因幡うどん」も福岡県外初となる店舗を原宿にオープンしている。

彼らが提供している甘めの出汁に柔らかめのうどんの“ごぼ天うどん”は福岡のソウルフードというが、個人的には仕事で何度か福岡に行ったもののラーメンに走ってしまい残念ながらその味はいまだ知らない。それは兎も角、そういえば今月はもう一つ、実業家の堀江貴文氏が創業にかかわった会社もやはり福岡のうどんチェーン「うちだ屋」を買収するなど今月は福岡のうどんが話題だ。

冒頭の「資さんうどん」はすかいらーくHDの傘下、そして上記の「因幡うどん」の方は力の源HDの傘下となっているが、ここは博多ラーメンの「一風堂」も擁している。共に東証プライム市場の上場企業だが、こういったところは食材仕入れのスケールメリットやこれまでに培ったチェーン展開のノウハウなどでシナジー効果が発揮出来る強味もあり、先々は海外展開も視野に入れているのだろうか。

しかしながら既にトリドールHDの「丸亀製麵」や、吉野家HDの「はなまるうどん」が幅広く東京に進出しているなか、何故今まで進出してこなかったのだろうとも思ってしまう。近年のインバウンドの動向などを見てのものなのか否か、嗅覚の鋭いホリエモンまで手を出すあたり何らかの勝算があるのだろうが、いずれにせよその地方に行かない限り食べられなかったメニューが何処でも食べられるようになるのは我々にとっても朗報といえるか。


値嵩株も射程圏

本日の日経紙一面では「株最低投資額10万円に」と題し、東京証券取引所が若年層も少額から日本株を購入できる環境を整え、国民資産の「貯蓄から投資へ」のシフトを後押しするべく、株式投資に必要な最低投資金額を取引環境整備についての議論で個人投資家が求める水準としての10万円程度に引き下げるよう全上場企業に要請する旨の記事があった。

現行で東証が望ましいとしている最低投資金額は50万円未満だが、2022年にこの単位引き下げを要請して以降各社共に分割の動きが年々急増し昨年は211社にのぼり、当初要請から既に400社以上が株式分割を決議するなどの動きがあった。とはいえ同紙にも出ていたがユニクロを展開するファーストリテイリングなど一昨年だったか1株→3株に分割こそしたものの、それでも最低単元購入には本日段階で460万以上が必要となる。

同社を含め値嵩モノでは他にも筆頭格のキーエンスやディスコなども最低単元で新NISAの年間枠を軽く超えてしまうのが現状で、最低単元買い付け金額が冒頭の10万円を超えてしまう企業は東証全上場企業では6割、成長投資枠で物色し易いプライム市場では8割がこれを上回る。そうなると制度面ではNISA年間投資枠の引き上げか売買単位の変更もしくは分割による最低投資金額の引き下げが俎上に上る。

このうち現状では単元株制度そのものには手を付ける方向になく、冒頭の若年層が少額から日本株を購入できる環境という面を踏まえれば年間投資枠引き上げではなく最低投資金額引き下げが残るという事か。これが叶えば一気にこれまでの5分の1になる計算だが、上記のファーストリテイリングを例に取れば更に46分割以上が必要になる計算で、一昨年のNTTの25分割を超える事例が幾つも出てくることになるか。

東証の要請は解るものの各社が大幅分割に二の足を踏んでいる一つには小口株主の急増による株主総会関連資料その他諸々の事務コストに絡む問題もあるが、この辺は以前から株主総会に絡んで言われている課題であるところのデジタル化など含め再考の余地がある。これまで株式市場では日本の特異性が際立つ部分が多かったものの、東証の本腰を入れた改革で一つ一つが国際標準に近づいてきているだけに今後の要請にも引き続き注目しておきたい。


コンクラーベ

周知のように週明けにローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇が亡くなったとローマ教皇庁が発表している。教皇の在任中は貧富の格差解消から気候変動対応まで呼びかけるなど地球規模の課題解決に向けて積極的な発信を行っていた。日本にも2019年にローマ教皇としては38年ぶりに来日し被爆地の広島や長崎でスピーチし核兵器の廃絶を強く訴えていたが、復活祭のミサの翌日に天に召されたあたりまるで選ばれたかにも思えるものだ。

ところでここからは服喪期間を経て教皇が空位になってから15日後以降に、多くの観光客も訪れるシスティーナ礼拝堂の密室で次の教皇を決める「コンクラーベ」が開かれることになる。世界中に居る枢機卿の中で投票権を持つ者が参加し、投票者は外部との通信が遮断され電話なども持ち込みが禁止されるが、裏側ではいろいろと根回しや権謀術数まであるとまことしやかに囁かれている。

コンクラーベといえば奇しくもその裏側を描いた映画「教皇選挙」が先月にはアカデミー賞の脚色賞を受賞し話題となっているが、ほかに映画という絡みでは記憶にあるのは一寸前になるが2009年の「天使と悪魔」か。ここではコンクラーベのプロセスなどかなり丁寧にわかり易いタッチで描かれており、前作の「ダ・ヴィンチ・コード」と共になかなか楽しめたが、いずれにせよこの礼拝堂から決定の知らせとなる白い煙が上がるのはいつか見守りたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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