親子上場36年ぶり低水準

さて2週間ほど前の日経紙投資面では「親子上場解消第2章へ」と題し、来週から決算発表が本格化するがこの時期には“親子上場”の解消の動きもまた年間で最も活発になる時期との旨の記事があったが、先週は29日に住友商事が東証プライム上場のSCSKを完全子会社化すると発表、翌30日には住友電気工業が同じく東証プライム上場の住友理工の完全子会社化を発表している。

親子上場の現状としては先月末で168社となっているが、ピークだったリーマンショック前の2006年度からは6割減少して実に36年ぶりの低水準となっている模様だ。上記の住友系以外でも当欄で5月に取り上げた三菱食品やNTTデータG以降、先月末で上場廃止になったアヲハタはキューピーが完全子会社化し、翌月には日本製鉄が黒崎播磨の完全子会社化を発表するなど今年3月末から9月末にかけては11社減少と加速している。

上記対象銘柄はいずれも子会社化報道から急騰しているが、日経紙ではこうしたTOB期待の思惑買いには過熱感があるとして投資家の一部では持ち分法適用会社の子会社化や売却の動きを探る動きがあるという。ここでは英系ヘッジファンドのオールド・ピーク・グループが保有する椿山荘運営の藤田観光や、先月に出光興産から完全子会社化を目指すとされた富士石油が挙げられていたがこれらいずれも株価は大きくアウトパフォームしている。

他にも関西電力の持ち分法適用会社のきんでんも今年は大きく株価を切り上げているが、冒頭の住友電工は住友理工の完全子会社化と同時に子会社の住友電設の大和ハウス工業への売却を発表している。コングロマリットディスカウント解消組の株価はその削減数が多いほど株価のアウトパフォームが鮮明なこともあり、今後もこうした向きは持ち分法適用会社含めその関係が再度問われる事になるか。


保護からイノベーションに?

本日の日経紙金融経済面では「株式トークン、日本でも」と題し、デジタル資産のインフラ開発を手掛ける3メガバンクが出資したプログマが24時間1円単位で上場企業の株式を取引できるシステムを業界横断で構築し来年中の運用開始を目指す旨の記事があった。これが叶うと最大のインパクトはやはり取引時間制約の緩和だろうか。仮想通貨よろしく24時間取引で決済も同時に実行できることで資金効率も格段に上がる。

もう一つの利点として単元株扱いと違ってこちらは1円単位で売買できるデジタル証券、これまでも当欄で単元株問題を取り上げてきたがこれも選択肢が大きく広がることになる。とはいえ株式トークンとして流通させるには企業側の同意が必要となるなどの高いハードルがあり、現在一元管理を担っている所謂「保振」との共存をどうやってゆくのかこの辺もまだはっきり見えない。

ところで「株式トークン」といえば、米では以前に当欄でも取り上げたオンライン証券大手の「ロビンフッド」が先行しており欧州で既に提供が開始されている。未公開株までラインナップしいろいろ物議も醸し出しているようだが、この辺にイノベーションを優先する欧米と投資家保護が最優先の日本との差が色濃く表れているか。欧米とでは障壁の相違から課題も多いだろうが、この実現が叶えば景色も可也変わってくるだけに今後の進展を見守りたい。


値上げ一服の霜月

帝国データバンクが発表する毎月の飲食料品の値上げ状況だが、半年ぶりに飲食料品値上げのピークになった先月から今月の値上げは合計で143品目と一転して年内最小となる見通しとなっている。分野別ではチョコレート製品など含む菓子が最多となっていたが、先月まで10か月連続で前年を上回っていた品目数が今月は前年から58.4%減少し11か月ぶりに前年同月を下回ることとなった。

値上げ要因の方は原材料高が96.2%と最も多く、それに続くのが物流費の78.7%となっていたが、円安の影響が前年から低下した一方でこの物流費の方は増加している。この物流費だが、人件費とは違って政策による燃料価格の値下げなどによっては軽減の道が見えてくる。運送会社の経費で大きな割合を占めているのが燃料の軽油等だが、現政権は年内にガソリンの暫定税率を廃止、軽油に関しても来年の4月に廃止の方向となっている。

軽油高騰対策の補助金扱いがどうなるかにもよるが、この価格が下がるとなれば自ずと物流コストが抑えられてくることでひいては価格上昇圧力の緩和にもつながってくるか。とはいえこうした部分は期待できるものの、人件費など上がると下がり難い粘着質なものも同時進行しているだけにどの程度の肌感覚で落ち着きがみられるのかこの辺は未知数なだけに今後のもその辺の動向には注意しておきたい。   


AI株席巻

本日の日経平均は小幅続伸ながら連日で史上最高値を更新している。高値更新もさることながら売買代金も活況で、本日の東証プライム市場のそれは10兆300億円と市場再編前の1部時代も含めて過去最大を記録している。この辺は言わずもがなAI関連の値嵩株の寄与が大きいと思うが、それにしても今週もマーケットはAI一色と言っても過言ではないほどの一極集中相場である。

この売買代金だが本日のトップは連日で年初来高値を更新しているアドバンテスト株で8488億円、昨日の同株は比例配分でストップ高のまま引けていたがこの株の急騰がほぼ昨日の日経平均への寄与となっている。思えば昨年に日経平均が34年ぶりにバブル期の高値を更新したのもエヌビディアに刺激された半導体関連勢が約4割も寄与した部分が大きく、この構図は以降今もなお続いているということになるか。

米国でも主要指数が史上最高値を絶賛更新中だが、上記のエヌビディアは昨日のNY市場で時価総額が遂に世界初の5兆ドル超となっている。大手テックの中で負け組とも揶揄されたアップルも今週はその時価総額が4兆ドルを突破しているが、エヌビディアがこの4兆ドルに到達したのがつい7月のことで、そこからわずか3か月で1兆ドルも増加していることになるわけだ。

こうしたテック系の狂乱?相場を目にするにどうしてもかつての2000年前後の“ITバブル相場”を思い出してしまうのだが、同セクターの高めといわれるバリエーションで見てもまだITバブル期のそれにはまだ及ばず利益の裏付けも付いてくるとすればこうした短絡的視点では見誤るということか。とはいうもののこのバリエーションに何処まで付き合うかその見極めはそれぞれ分かれようか。


関税政策で二番天井?

本日の日経紙グローバル市場面には「コーヒー豆相場 収穫順調も高値」と題して、主要なコーヒー豆生産国の収穫は順調なものの、米国の関税政策によるコーヒー豆の流通にゆがみが生じていることで需給の逼迫が意識されアラビカ種を中心に再度上昇基調にある旨の記事があった。同商品のICE(米インターコンチネンタル取引所)先物相場は今年2月につけた最高値に迫る勢いとなっている。

このコーヒー豆もカカオ豆と共に近年の高騰の影響で国内でもネスレ、UCC上島珈琲、味の素AGF等の大手が度重なる値上げを敢行、これはチョコレートも同じだがコーヒーの方が肌感覚ではまだ値上げがマイルドな感じがする。もっとも収穫が順調ということであれば、関税自体の引き下げなど環境変化で収穫が戻ってきたオリーブオイル同様に相場が下落に向かう可能性もあるか。

相場下落といえば上記のカカオ豆も年初には二番天井を付けにゆくかっこうで再度の急騰を見せていたが、こちらも今年度の収穫量が前年度を上回る観測や所謂“レーショニング”もあり指標のロンドン先物相場は年初の高値からはや半値水準にまで急落している。とはいうものの世界の在庫自体は低水準であり、コーヒー豆とて所謂“コーヒーベルト”土地の半減観測も燻っていることなど再燃素地が残っているだけに今後も相場動向には注視しておきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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