指数に見る日本の位置

本日から日本マクドナルドは、原材料費や人件費などの高騰が長期化していることなどを背景におよそ6割の商品で値上げを実施している。ザッと挙げると標準価格の店舗の場合、みんな大好きビッグマックが480円から500円に、続いてチーズバーガーが220円から240円に、そしてマックフライポテトのMが330円から350円などなどだが、この値上げは昨年の3月以来およそ1年ぶりとなる。

ところでこのビッグマックといえば異なる国や地域の間でコスト差の少ないこの価格を比較する事で各通貨の実質的な価値や各国・地域の総合的な経済力の目安で多用される「ビッグマック指数」が有名だが、今年の日本のそれは48位。円の価値も凋落していることで昨年からさらに順位を下げ、もはやランキング対象国の下から数えた方が早いがいずれにせよ随分と落ちぶれたものだ。

ちなみに今回の値上げでビッグマックが500円の大台に乗ったとしても、ランキングで日本のすぐ上に位置するウクライナにもまだ及ばない。こんな状況だからインバウンドが大挙して日本に押し寄せ円が二桁台だった時の日本人の海外買い物ツアーを今度は日本人以外が満喫し、この海外マネーが数多の価格水準を大きく引き上げているのも納得だが、この指数の順位が今後浮上する日がはたして来るや否や複雑な思いは続く。


じわりと影響“悪魔の金属”

先週末の日経紙グローバル面では「中国の銀ファンド混乱」と題し、中国深圳市場に上場する国投瑞銀基金が運用する銀ファンド「国投白銀LOF」の基準価格が銀価格暴落劇のさなか突如としてSHFE(上海期貨交易所)からCOMEX(ニューヨーク商品取引所)に切替わったのもつかの間、早くも翌日にはその基準価格の参照先を再度SHFEに戻すという措置が物議を醸し出している旨の記事があった。

東証に上場している貴金属系のETFも時に乖離が生じるケースがあるが、このLOFという商品の構造そのものが我々のイメージするETF等とは似て異なるために斯様なケースも起こり得るわけだがなんともスリル?のある商品だ。こんなケースもあり“悪魔の金属”という銀の異名もよりしっくりくるというものだが、こうした金融商品以外でも価格乱高下は生活の身近な部分にも影響を与え始めている。

今月アタマに当欄で五輪メダルに言及した際にこの銀価格高騰で歯科医院の保険対象治療の「銀歯」が利益を圧迫している旨に少し触れたが、その配合がパラジウムの約2割に対して銀の比率は“銀歯”という名の通りで約5割の構成比となっていることで、同様の問題がパラジウムの急騰でいわれていた5年ほど前から今回はさらに利益が圧迫されているのは想像に難くないか。

逆に患者側からすれば急騰前価格の3割負担でお得?治療が出来るという構図だが、この銀歯も以前は買い取りを扱わなかった業者も最近では積極的に高額買い取りをアピールしている。また他にも行事写真で学校等と契約している業者は値上げを検討し、銀製の管楽器を販売する業者の一部は時価販売に変更するなど、投資家以外の向きにも影響がじわじわと出てきているだけに今後の相場動向にも引き続き注意しておきたい。


依存脱却へ一歩

一昨日の日経紙朝刊には双日が来年半ばにもオーストラリア産の希少性の高いレアアースの輸入を現状の2品目から最大6品目に増やす旨の記事が一面を飾っていたが、このレアアースといえば先週はCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)グループがレアアースの先物取引を検討している旨をロイター通信が報じている。現在は現物取引のみだが、これが導入されれば世界初のこととなる。

関連企業などこれが開始されれば事業計画など練り易くなるというものだが、マーケットでは地政学リスクの高まりも背景に資源の獲得競争激化で米の主力レアアース関連株組み入れのETFの一つは昨年末からの上昇率が7割を超えた。関連株といえば上記の双日株も昨日は日経平均が4日続落となるなか冒頭の報道を好感して急伸、大台の7000円を突破し上場来高値を更新してきている。

昨年から「台湾有事」を巡る日中対立で中国はレアアースの一部輸出規制をちらつかせるなど絶賛嫌がらせ中だが、中国からの依存脱却に向けて国産レアアース開発の為に南鳥島に出向した探査船は今月に入って最初の泥の引き揚げに成功するという吉報が入っている。民間企業も上記双日以外では大手自動車各社なども回収技術の確率を急いでおり、官民挙げて脱中国依存の動きが加速しつつある。

直近では対米投資計画の第一弾案件で人工ダイヤモンド製造も候補に挙がっているが、これも中国が圧倒的シェアを誇っている事で第二のレアアースとなる可能性も警戒されている。この報で関連株の旭ダイヤモンド工業も昨日は冒頭の双日と共に年初来高値を更新してきているが、経済安全保障の観点からもこれら供給源の多様化が非常に重要となってくる事で今後もその進捗動向を関連株と共に注目しておきたい。


今や昔の物価優等生

農水省の食品価格動向調査では先週アタマの卵1パックの平均価格は前月比で2円高の308円となり、平年より26%高く昨年12月に記録した過去最高値に並んでいる。一昨年の大規模な鳥インフルエンザの影響から回復しきらないままに、昨年からから今年にかけても鳥インフルエンザの感染が相次いでいる現状からマーケットへの流通量が減少しているのに加え生産コストも上昇しているのが背景。

昨年末もそうだったがここ数年のクリスマスシーズンにはタマゴ需要が高まり価格押し上げの要因にもなると喧伝され、クリスマスが終れば今度はおせち需要から価格の押し上げ要因にもなるとされこれらが過ぎた年明け以降は一服するというのがコンセンサスでもあったが、新米が出回れば落ち着くとされたコメが一向に値下がりしなかったのと同様にこちらも高止まりが続いている。

この辺の背景には長引く円安による飼料価格等の生産コストの高騰もあるだろうが、かつて「物価の優等生」と謳われた時代もあったがすっかり今や昔の話だ。今年の鳥インフルエンザの状況次第で供給回復が覚束なければ価格高止まりが続く可能性もあるが、イースターシーズンの頃にはこの主役の値段に落ち着きの兆しが見えてくるのか否かこの辺にも注視しておこう。


問われるガバナンス

昨日の日経紙夕刊にはAIを活用した法務業務の効率化を手掛けるリーガルオンテクノロジーズが、大和アセットマネジメントと共同でAIを活用してインサイダー情報を検知するシステムの開発を始めた旨の記事があったが、そういえば本日は証券取引等監視委員会がみずほ証券社員らの関係先をインサイダー取引容疑で強制調査した旨の記事が日経朝刊の一面を飾っていた。

インサイダー取引といえば忘れた頃にポツンポツンと挙げられるイメージだったが、今年はつい先月も三田証券の元幹部がインサイダー取引容疑で逮捕された事件があったばかり。三田の件は投資銀行本部長職時代にニデックによる牧野フライス製作所に対するTOB情報を元に公表前の株式を買い付けたものだったが、上記のみずほ証券社員も同じく投資銀行部門に所属していたという。

上記2件に限らずここ数年はその辺の一般人が運悪く見つかってしまう“川下”のケースよりも“川上”の金融業界の摘発が多く、さらに遡れば三井住友銀行の証券代行部門から胴元?の東京証券取引所に更にその市場を監督する金融庁からもTOB情報を利用したインサイダー取引で有罪判決が出るなど異例ともいえる事件が近年では起きている。

TOB案件では上場企業が破綻して株価が下がるのと同じくらいの確率でその株価は上昇するのでこの誘惑に負ける輩が出てくるわけだが、昨年も書いたように一昔前のインサイダー取引では企業破綻や苦し紛れの巨額増資に絡む“売りインサイダー”が主流だったが、今は資本効率に絡むM&AのTOBでの“買いインサイダー”が目立つ。そう考えると犯罪からも近年の市場改革の進展が垣間見えるというまこと皮肉な事例ともいえるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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