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楽天銀行上場

先週末に楽天銀行が東証プライム市場に新規上場となった。同日の日経紙にも上場を謳う全面広告があったが、注目の初値は前場に公開価格の1400円を約33%上回る1856円で初値形成しその後も堅調に推移し1930円で引けた。同行のIPOは今年最大の案件とも言われたが、本日も一時2000円の大台超えでセカンダリーでも一寸した回転が効いた堅調相場が続いている。

ところでこの案件、東証から先月に上場承認を受けた当初には想定仮条件の上限が1960円であったが、今月上旬には株式市場の市場環境を踏まえて仮条件を想定より約3割安い1300~1400円に引き下げその後公開価格が1株1400円に決まった経緯がある。これで楽天Gの売却額は当初想定の最大額より約300億円減ったことになる。

今回の値決めには背景に米銀の破綻や欧州銀の経営危機などの金融不安があったワケだが、今月はみずほ証券が公正取引委員会よりIPOの公開価格設定プロセスにおいて企業側が主張した価格を下回る想定発行価格や仮条件を設定し受け入れるよう要請するなど、独禁法違反につながる恐れのある行為があったと注意をしたとの発表が為されている。

予てより個人寄りの売買主体の相違や、ロードショーの形骸化など構造的な問題で初値平均は欧米の1.1~1.2倍と比べるに日本では約1.5倍と乖離しているのは否めないところ。こうした点を重く見て公取も今回初の注意に動いたとみられるが、今後もプロ投資家の呼び込みなど含め公開に臨む企業が適切に資金を調達出来る環境整備が課題となろうか。


割安?日本

さて、先週は米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が来日し、日本株への追加投資をする意向を明らかにした件が話題になっていた。バフェット氏の来日はこれで2回目となるが、19年から発行している円建て社債を今回も1644億円の発行を表明したことで日本株への一段の投資拡大も期待され、既に投資が知られているところの商社株中心に物色の矛先が向かうところとなった。

確かにバフェット氏の目から見れば世界の主要株価指数の中でも実績ROEは10%にも満たず、実績PBRも1倍そこそこ、世界株との益回りの乖離をみても割安感漂う日本株は魅力的に映ったのだろう。年利1%そこそこで発行出来るであろう円建て債で為替リスク無くこれを上回る魅力的な配当を享受出来るワケだからなるほどという感もある。

とはいえこの円建て債の調達には発行済み社債の借り換え(償還)に充てる金額も含まれるということで実際に日本株に充てる金額は1000億円一寸になる計算だが、それでも冒頭の通り株式市場では5大商社株が前回の憶えもあって一斉高に、中でも伊藤忠商事は昨年の上場来高値を約5か月ぶりに更新し、丸紅も先月に付けた上場来高値を更新してきた。

それもそのはず、前回に商社へ投資表明した際に殺到した提灯買いは三菱商事など既に大化けしており大ヒットとなった。今回もこれらへの保有比率を揃って高めたとの報でこれに対する提灯買いから先週は商社ポストが沸いたが、前回の商社株への投資表明報道の時から大幅に値位置が上がった今回もここで提灯を付けた二匹目の泥鰌狙いの向きがはたして報われるか否か見ものである。


ウルフパック戦術

一昨日の日経紙法税務面には「不意打ち買収に規制の隙」と題し、複数の投資家がひそかに協調して企業の株式を買い集め、時期をみて一気に経営権奪取を図るいわゆるウルフパック戦術なる動きが日本でも注目されている旨の記事があった。これと似た名のレストランが思わず頭に浮かんでしまうが、現在の大量保有報告制度などの制度の緩さが背景にあるとの指摘があるようだ。

買収防衛策として新株予約券の無償割当が盛り込まれこれが発動されるケースがあるが、このウルフパック戦術を使えば上記発動のケースでも一般株主を装って新株予約権を行使して株式が交付され、この経営権奪取を試みるグループ全体としては議決権の希釈化リスクを回避する事が可能になる構図だ。

会社側もこうした工作を暴くべく躍起になって証拠を押さえる作業に奔走するワケだが、日経紙に事例としてナガホリと共に挙げられていた東証スタンダードに上場するプラスチック成型の三ツ星のケースでは、新株予約権無償割当の対象外となる非適格者が広範に及んでいた事などが問題視され会社側の買収防衛策は裁判所から差し止めされた経緯がある。

斯様に株主間の協調行為を第三者が立証するのは難しさを極めるだけに、金商法の改正を視野に入れ大量保有報告制度含めたルールの見直しなども喫緊の課題となってくるが、これまでに狙われた企業などをみるに低PBRの中堅上場企業がターゲットにされているケースが多く企業側もこれらの指標向上を図るべく経営意識を変えるのに努めるべきだろう。


ヤレヤレの本気度

さて、先週は東証プライム上場の東京都競馬が突如としてストップ高を演じる場面があったが、この背景には直近の大量保有報告書で香港投資ファンドのオアシス・マネジメントが8%超の株式を保有していることが明らかになった事がある。オアシス・マネジメントといえば直近ではフジテックの取締役解任劇を巡っての大バトルがなかなか見応えのあるものだったのを思い出す。

斯様な実績のあるアクティビストの登場だけに株価の方も期待値先行で反応したとも思えるが、いわゆる物言う株主が保有している企業群の意欲的な中期経営計画発表がここ相次いでいる旨が先の日経紙にも出ていた。いずれの企業も総還元性向において具体的な数字を挙げてきており、株価の方もそれに準じて少なからず上昇を辿っている。

冒頭の東京都競馬のPBRは昨日時点の東証プライム全平均のそれを超えてはいるが、上記のアクティビストが保有している銘柄群のPBRはいずれも1倍を割り込んでいるものが殆ど。先の株主総会でも多くの企業で増配や自社株買いの還元要求提案が目立った模様だが、東証のPBR是正要請とも相俟って世界基準との乖離を埋めるべく今後も要求が強まるのは想像に難くなく各企業の本気度もまた試されそうだ。


4月IPOスタート

本日より4月のIPOがスタートしたが、その第一号となったのが本日東証グロース市場に新規上場となったキャッシュレス決済サービスのトランザクション・メディア・ネットワークス。注目の初値は公開価格930円を49.2%上回る1388円と好調なスタートとなったが、公開株式が多い割に下馬評を覆す意外?な初値が付いたといえよう。

このTMNはそこそこな吸収金額であったものの直近公開モノは小粒だったこともありなかなかの化け具合となっており、先週末に東証グロースに上場したAI活用DX事業のFusicは初日は買い気配で値が付かず、週明けに寄った初値は公開価格2000円の実に約3.3倍となる6530円のロケットスタート。あと利食いでダレて引けるも本日は改めて買い直され一時ストップ高を示現した。

これに限らず3月上場組のIPOは破竹の勢いが目立ち、ソフトウェア検証の日本ナレッジや同日IPOのスマホ向けアプリ開発のアイビスは共に初日は買い気配で値付かず、その初値は公開価格に対し前者は約2.5倍、後者は約2.9倍に化け。また同じく23日IPOのハルメクホールディングスはスンナリと寄ったもののあと連日ストップ高を演じるなどどれもすこぶる回転の良さであった。

ということで今月は冒頭のトランザクション・メディア・ネットワークスはじめ10社がIPOの予定だが、12日に上場予定のispaceは月面開発事業と宇宙関連ベンチャーとしては初のIPO、またその後には今年最大の案件ともなる楽天銀行もIPOを控えている。更にその後にはひふみ投信のレオス・キャピタルワークスとどれも話題な案件が控えているだけに引き続き新興市場からは目が離せない展開になりそうだ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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