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ROE拡大傾向

本日の日経平均は金融政策を巡る不透明感が和らいだ事などで1000円を超える急反発を演じていたが、今月の上旬だったか日経紙には「本紙面では、東証から公表された開示企業一覧表の内容をはじめ関連トピックについて、今後も継続的にアップデートとともに掲載する。」と謳い、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応に関する開示企業一覧」を掲載した全面広告が載っていた。

この資本コストに絡んでは先週の日経紙金融経済面では第一生命HDがTOBをかけたベネフィット・ワンを軸にしROE改善を目指す旨の記事があり、同日の投資情報面にも藤田観光が構造改革によりROEが急回復している旨の記事があったが、斯様に資本効率の改善に向けた動きにより個々の企業でもROEの拡大が漸く見え始めている。

ちなみにこのROE、昨年の3月末時点では8.1%であったものが23年9月末時点では8.7%へ、そして24年2月末時点では8.9%と順次拡大傾向にあり、2024年3月期では9.7%と2008年の金融危機後で2番目の高水準となる見通しにある。とはいえ日米のROEを比較してみると数字としてはここ4年程のあいだ米が15%以上を維持しているなか日本は10%に満たない水準が続く。

ちなみにこのROE10%水準、コロナ禍で落ち込みをみせた20年のそれは日本が5%未満にまで落ち込んだがその時でも米は10%以上をキープ、これはここ10年でも日本がまだ到達しない水準である。上記の通りROE拡大傾向でPBRも漸く最下位から脱出出来たものの、これとて過去10年のレンジ内推移にとどまる。今後も成長投資や株主還元の拡大が課題となろうが、強固だった持ち合い株などこれまでにない解消の動きも出てきているだけに悲願のROE10%以上の水準達成に今後期待したいところだ。


半導体モノ依存構造

ちょうど一週間前に史上初めて40000円の大台を突破した日経平均であったが、本日は一転して急反落し、下げ幅は今年最大で2021年6月以来約2年9か月ぶりの大きさとなった。日銀審議委員発言からの円高等も影響しているが、主因は先週末の米エヌビディア株が昨年5月末以来の大幅な下げを演じたのが、そのまま半導体関連株に影響したところが大きいか。

先月末に当欄では、日経平均の年初からの約6000円近くの上昇のうち半導体関連の主力3銘柄で約4割寄与していると書いていた通りで、これら高寄与度の銘柄がコケれば皆コケるという構図だろう。その大元である米エヌビディアだが、先週末の日経紙では「エヌビディア株はバブルか」と題し、株価こそ今年9割高と急騰しているもののそれに併せ利益見通しも切り上がっている事で割高感が極度に高まっているワケではない旨が書かれていた。

それもその筈でエヌビディア株の予想PERは36倍、ハイテク株の多くで構成されるナスダック総合指数のPERが30倍前後であるからこれと殆ど差は無く、来期の更なる成長見通しを考慮するにむしろ割安感さえある。一方で上昇をリードしてきた日本の半導体関連株かどうか?本日の終値で見てみると東京エレクトロンが50.79倍、アドバンテストが75.54倍、日経平均のPERが約16倍であるからエヌビディア株とは景色が異なる感は否めない。

ちょうどかつてのITバブルがピークだったころマイクロソフトのPERが約60倍であったから、アドバンテストなどこれを既に上回っている。ではこれらバブルなのかというとそれは崩壊した後しか確認のしようがないが、いずれにせよ日本株の安定した上昇が継続されるにはやはり内需株が幅広くキャッチアップしてゆく事が必要なだけに、この辺の動向には今後も注目しておきたいところ。


漸く最終局面

先週1日付けの日経紙総合面には「持ち合い解消 最終局面」と題し、先月末に損害保険大手4社が延べ5900社あまりの政策保有株、金額ベースにして約6.5兆分を全て売却すると表明した旨が出ていた。企業向け保険料の事前調整問題を受け、予てより金融庁が損保各社に対して政策保有株の見直しを要求していた件に対するもの。

当欄では、この政策保有株に関して2015年にコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)が導入される前に今後は持ち合い株の最後のあぶり出しが促進される可能性が高くなるかと書いていたが、ここ数年で急速に壁が崩れてきた気がする。特にグループの持ち合い構造が強固な事で知られたトヨタグループが、昨年秋にアイシンが政策保有株ゼロを目指す旨を打ち出したのはこれを象徴する。

これらの好感度は解り易く株価に反映され、この記事が出た1日にはMS&ADが年初来高値を更新し、週明けの本日にはSOMPOHDが年初来高値を更新してきている。また昨年登場したアクティブETFでも「政策保有解消推進ETF」なる商品が登場し、上記のトヨタグループをはじめ東京海上日動火災保険など冒頭の損害保険大手もこれに組み入れられているが、これも先月に年初来高値を更新してきている。

この強固な壁が崩れ始めたのも東証や政府が本腰を入れたところによるものが大きいが、もともと持ち合いなるものは安定株主作りやら取引の継続等の目的から構築されたもの。総会屋が跋扈していた時代から時は過ぎ、今や持ち合い株は高度経済成長期時代の過去の産物になりつつあるだけにこれらが順次姿を消してゆくのはその要因はどうあれ自然な流れだろうか。


半導体デジャヴ

今週アマタに書いた通りで日経平均ははれて34年ぶりに1989年に付けた史上最高値を更新、曲がりなりにも記録は記録なだけに当欄でも「祝」とは書いたものの、この史上最高値更新はエヌビディア一銘柄の功績と言っても過言ではないだろう。なにしろ年初から日経平均は先週まで約5800円上昇したものの、225構成銘柄のうちエヌビディアに刺激された東京エレクトロンなど半導体の主要関連株寄与度はたった3銘柄で実に2000円以上、これで約4割寄与している計算になる。

となると仮にこのエヌビディアの好決算が無かったら日経平均はいまだ史上最高値更新は叶っていないかもであったが、半導体に沸いているのは株式市場だけではなく今月に開所したTSMC熊本工場周辺もまたバブル化してきている。既に昨年秋に基準地価が約2割も急上昇した旨が報じられているが、地元民の中には固定資産税が2割以上も上がったと困惑しているものの、思わぬ借地料が転がり込み野良仕事の軽トラがベンツのSクラスに化けた話まで報じられている。

他、関連業者の稼ぎが倍になったなどそれこそ1989年のバブル当時の光景の再来ともいえるが、当時を知る者には土地バブルに沸いた当時の株式市場のテーマであった「ウォーターフロント相場」を彷彿させる。最近では蔵前エリアが東京のブルックリンなどと若年層に囃されているが、当時は隅田川がハドソン川、豊洲エリアはマンハッタンと囃されNYのウォーターフロント再開発に見立てられて東京湾岸の土地持ち企業がさんざん物色されて囃されたものだった。

その後見事にこのウォーターフロント相場は崩壊したワケだが、勿論この幻影を囃した土地バブルと今の実態を伴った半導体ブームを同一視には出来ない。バブル当時と時価総額ベスト10が様変わりしたが日経平均の中身も時代の趨勢を表す。昨年末から先週まで世界の株式時価総額は170兆円以上増加しているが、そのうちの50%を超える約90兆円が半導体関連だ。生成AIが社会や経済を大きく変えようとしているが、その根幹にある半導体は少なくとも幻影でないのは言うまでもない。


エグジット手段の変化

本日は東証グロース市場に不動産テックのココリブと、立ち飲み形態飲食店の光フードサービスが上場している。ココリブは買い気配でスタートし後場に公開価格の約2.2倍の3990円で初値を付け、一方の光フードサービスも買い気配でスタートした後も気配値上限まで値を切り上げたまま初値は明日以降に持ち越されるロケットスタートとなった。

ところで彼らはエグジットでIPOを選択したパターンだが、ちょうど一週間前の日経紙には「MA&で投資回収最多」と題し、スタートアップのエグジット手段として2023年は他社によるM&Aを選ぶ動きが前年比で5%増加して過去5年で最多となった旨の記事があった。もう一つの手段であるIPOと比較するに約5倍の水準という。

日本におけるエグジット手段でM&AとIPOの比率はベンチャー白書によると、2020年度でM&Aが24%、IPOが76%なのに対し、米は同M&Aが90%、IPOが10%となっており対照的だったものだが、米欧の金利上昇による市況低迷など環境の変化も背景となっているか。IPOはこれまで資金調達額等で小粒上場が批判対象になるケースが度々あったが、大企業等もM&Aに及び腰になっているという素地もあった。環境の変化が後押しして今後もこの比率が変わってゆく動きが継続されるのか否か注視しておきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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