7ページ目   株式

背中を押す物言う株主

本日の日経紙ビジネス面では「メガ・ドラッグへ前進」と題し、当欄でも何度か取り上げた「ツルハHD」とイオン子会社の「ウエルシアHD」の経営統合案が、昨日のツルハHDの定時株主総会で可決された旨の記事があった。これでこれまで業界売り上げのトップスリーが1兆円規模の横並びだったところへ一気に2兆円規模のガリバー級が登場する構図が一歩前進した格好になる。

思えば一昨年のツルハHDの株主総会では1991年3月期以降、実に36期連続増配を実施している優等生である「花王」に対して物申しているあの香港のオアシスマネジメントが、同社に対して社外取締役の選任等を求める株主提案を出して全て否決された経緯がある。そのオアシスからイオンが1000億円規模でツルハHD株を取得したところから経営統合協議が始まった。

とはいえこの時の取得価格を巡り今度はツルハHDに25年余りにわたってホルダーとなっている英系のオービス・インベストメンツが統合案に反対を表明している。まだまだ物言う株主の提案否決は目立つものの、彼らの一連の活動が再編劇等で重い腰を上げさせる圧力として作用しているのは否めない。昨年は世界のアクティビストの提案や要求が過去最多を記録したというが、今年も株主総会での各々の動向から目が離せない。


3日連続ストップ高!

当欄で15日に「オルタナティブ資産のオルタナティブ」と題して書いていた東証スタンダード市場の「メタプラネット」株に、同じくスタンダード市場の「リミックスポイント」株が先週に破竹の勢いを演じた。取り上げた当日のメタプラネットは前日比15円安、リミックスポイントは前日比22円安だったが、その翌日から反発、大幅続伸となり両者共に3日後の20日から22日まで実に3日連続でストップ高の離れ業を演じることとなった。

これらビットコインなどのオルタナティブ資産関連は今後のビットコイン価格に懸かってくるだろうとしたが、ビットコインの約4か月ぶり最高値更新でこれらにも火が付いた格好になったか。これらと似たパターンではコメ価格の急騰に合せて株価が先月の安値から1か月もかからず軽く2倍以上に大化けした東証スタンダード市場の「木徳神糧」なども小泉新農相発言でコメが値下がりに転じる可能性が意識され先週は急反落となっていた。

冒頭のメタプラネットはさすがに3日間も連続でストップ高を演じたとあって週末はザラバで一時ストップ安に、リミックスポイントの方もストップ安と急反落して引けることとなったが、トランプ氏の関税政策の景気への影響や財政懸念等を背景とした金利の上昇など、マクロ環境の先行き不透明感が残るなかこの手の個別物色が特に目立つ展開となった1週間であった。

上記のこれら関連株など当の原資産以上の値上がりとなっており読みが当たった向きはたまらないだろうが、投機色が濃くなってきている場味にはいささか不気味さも禁じ得ない。ビットコインにしてもそもそもの素地に米金利の上昇がありこれを受け先週は国内でも長期金利の上昇が顕著であったわけで、今後もこれらの動向と併せてマーケット全般から目が離せないか。


吸い上がる浮動株

さて、今週アタマに取り上げたメガバンク勢も決算に合せて自社株買いを発表していたが、過日の日経紙では「株数減少時代に日本突入」と題し、資本効率改善手段としての大規模な自社株買いを背景に昨年は上場企業の株式発行額から自社株買い額を引いた値がマイナス12兆円となるなど日本の株式市場で株数が本格的に減る時代に突入している旨の記事があった。

この自社株買いだが、ちなみに先の関税ショックで急落した4月初旬から今月7日までの設定枠は4兆3000億円と前年同期の3倍になっている。これまで過去最大といわれた昨年の自社株買い実績は18.7兆円であったが、今年は新年度から今月第2週までのわずか1か月ちょっとのところで既に約5.2兆円に上るといわれておりこの段階でもう28%近くを達成していることになる。

ところで東証が本日発表した5月第3週の投資部門別売買動向によれば、海外投資家は日本株を6232億円買い越しておりこの買い越しはこれで7週間連続となっている。こうした海外勢の買い越しの背景には、米関税政策等で外部環境が逆風のなかでも活発な企業の自社株買いなど想定以上の株主還元策を出している事などがポジティブ視され日本株にマネーを引き寄せている要因の一つとの指摘もある。

足元ではモラトリアムの90日間が折り返しを迎えるなか経済再生担当大臣が日米関税交渉に向け明日には3回目の訪米が予定されているとかだが、この日米関税交渉の行方がどう決着するのか見えないなか、冒頭の通り決算発表と併せて自社株買いを発表する公表する企業は少なくない事で、海外勢含め投資家がこうした株主還元姿勢を拠り所にするという動きはしばらく続きそうだ。


異形のポイズンピル

昨日は親子上場解消を巡ってその対象銘柄がTOB価格にサヤ寄せする動きで盛り上がっている旨を書いたが、TOBといえばもう一つ昨年から「牧野フライス」に対し“同意なき買収”で両者が火花を散らしてきたニデックが、牧野フライス側による買収対抗策が壁となり高裁への即時抗告やTOB期間延長もしないまま早々に先日この同意なきTOBを撤回している。

そういったことで先週は株価の方も明暗がハッキリと分かれ、NTTデータや三菱食品がストップ高まじえて急騰するのとは対照的に日を同じくして牧野フライスの方は買収プレミアムが一気に剥げた形となり前日比で2000円以上も暴落する憂き目に遭った。終わってみればこの“同意なき買収”は牧野フライスのホルダーに恰好の売場を提供しただけという顛末となり、同意なき買収の成功体験を持つニデックにしてみれば想定外の結果だったに違いない。

ところでこの買収劇、投資ファンド含むホワイトナイトが出現するとも一時報じられていたが、今後は牧野フライス側の身の振り方?にも関心が向かうこととなるか。今回の顛末を踏まえてファンド側の行動に変化が出てくるのかどうかその辺も気になるが、先の暴落でPBRは再度の1倍割れ、仮に単独路線を取ることになるにしろより資本市場との向き合い方が重要になってきている昨今、経営陣も株主に対して緊張感を持った企業価値向上の責務が問われる。


解消加速

今月に入ってすぐ当欄では親子上場解消に絡んで「豊田織機」の非公開化報道、並びに株価動向に触れていたが、先週の株式市場で目立っていたのは「NTTデータグループ」株と「三菱食品」株のストップ高含めた急騰劇か。共に親会社による両社の完全子会社化の報道を受けてものだったが、今月は上記の豊田織機に続き矢継ぎ早に親子上場解消を伴った再編劇が具現化しこれら加速してきた感がある。

正式社名の「日本電信電話」から民営化以来40年ぶりに「NTT」へと社名を変更した親会社のNTTだが、同社は既にNTTドコモを国内企業として最大規模といわれたTOBで完全子会社化しており、今回のNTTデータの完全子会社化は一連のNTT再編の流れの最終章ともいえるか。また三菱商事も業界では三井物産が先に食品卸など5社を統合しているが、それに続く再編劇となる。

二番煎なのか豊田織機の時にも反応した銘柄群でも、住友電気工業の上場子会社である「住友電設」など好決算なども手伝いNTTドコモや三菱食品と時を同じくして先週は急騰を演じ上場来高値を更新してきている。今年は解消絡みでは1月の「富士通ゼネラル」に2月の「イオンモール」、先月上場廃止となった「山陽特殊製鋼」等の例もあるだけに、上記以外の他の思惑含みの銘柄等も水面下で次の宝探しの動きが活発化してきており今後も“解消モノ”はテーマとして目の離せないものとなってくるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

カテゴリー

アーカイブ

2025

11

1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30