344ページ目   雑記

紙一重

さて、欧州金融市場ではスペインやイタリアなど南欧の主要国の財政懸念が再燃してきている。これら先に米S&Pはイタリアの長期債務格付けを「ネガティブ」に引下げ、スペインは与党の地方選敗北などで地方政府の財政内容に対する見直しが進んだ場合、飛ばし債務の表面化から粉飾が次々発覚するのではという懸念が再燃している

ところで粉飾といえば、こんな国家規模とスケールが違うものの最近国内ではかつて「名証セントレックス」に上場していた富士バイオメディックスの粉飾が問題になっている。ココは上場してわずか3年で市場から退場するハメになったスピード破綻であったのが、既に上場当時からアレンジャー連中の存在はあったものだ。

このアレンジャーなる言葉は直近のこの事件で彼方此方が使うようになったが、当欄では数年前から度々アレンジャーには触れていた。多くは証券系で僅かに商取のドロップアウト組も居るが犯罪色に変わりないものの、その実は高度な金融や法律知識に長け人脈もけっこう派手な面子をセッティング出来る兵も多い。はっきり言ってこの手はその辺の証券会社の役員クラスよりも切れる輩だが、何処でどうボタンを掛け違えたのかと我に返る向きも居るものの悲しいかなアングラ系の需要と青写真にマッチングしてしまう向きは意外に多い。


曖昧加減とスケープゴート

さて、かつては山本モナさんと不倫騒ぎで有名になった原発担当相は今更ながら東電原発のメルトダウン確認で事実認定甘かったなどと認めていたが、この東電といえば先週末に政府が枠組みを決めた賠償スキームでは、新機構が東電に資金支援を行うことで破綻させないかわりに賠償総額の上限は設定せずに賠償は東電が負う事になった。

途中段階とはいえ一連の動きには大きすぎる公益企業の扱いの難しさが垣間見られる。今のところ株主責任は免れた格好だが、4/21付けの当欄では、「日本社会の構造は官民揃って責任の所在が曖昧になりがち」と書いた事がある。モラルハザードや詳細はまた後述したいがこのままゆくとそれこそ責任所在が曖昧なままなし崩し的な税金投入の穴埋めが膨らむ恐れがある。

また政府介入といえば直近でも中部電力があった。浜岡を止める話は全国の原発で30年以内に震度6強以上の地震が起きる確率が浜岡原発で84%と突出しているからとの事だが、福島第一原発は日経紙などにも載っていたが0.0%にもかかわらず今回の大惨事となったワケで、こう考えるとなにやらスケープゴートのようにも思える。事実、浜岡は原発依存度が比較的低く止め易いワケで、誰が絵を描いたのやらパフォーマンスに利用されただけか。

しかし法的な根拠が曖昧なままで政治が介入するのなら、電力だけでなく放送・通信など規制業種全般もいろいろな側面で再考する必要が出て来るし、もう一つ今後気になるのは外国人投資家のスタンス。こうも市場ルールを逸脱した発言が度々繰り返すのを彼らがどう解釈するかだが、周知の通り売買での大きなウエートを占めるだけにこの辺は注意しておかねばならないだろう。


分散と役割

さて、本来の予定であれば今週の月曜日からは東証が現物株の前場の取引終了時間を30分遅らせ、昼休み時間を午前11時30分から午後零時30分の1時間に短縮するはずであったのだが、周知の通り東日本大地震後の厳しい電力事情を受けて節電に協力という格好でこれが延期になっている。

他にもサマータイムを導入、ポロシャツなどの節電ビズ、マーケットセンターの電光表示板消灯、各種イベントの中止も併せて実施、証券取引所といえば西では大証も7月からの一部業務を大阪市の本社に移管することを柱とした節電策を発表している。

ところで先週5/3付けの日経紙では全国の都道府県知事に実施した東日本大震災に関する緊急アンケートで、首都機能の分散・移転が「必要だ」と答えた知事が27人と過半数に達し、東京一極集中に懸念を強めている旨が載っていた。この辺に関しては先に東京都知事も「首都機能のうち証券市場の中心は大阪に移すなど、大きな発想力で取り組むべきだ」と訴えている。

東京といえば国際金融都市を事あるごとに謳い永田町でもそうした議論が盛んに行われていたものだが、今となっては誰も口にしなくなるくらいジワジワとした凋落ぶりは各方面でも周知の通り。はたして国内でも今回をいい機会と捉えて経済系は西へと仕切り直しなどという気運になるのか否か、東西の役割分担などテーマが大きく直ぐには先が見えてこないものの今後もこの辺の論議には注目したい。


Egg Hunt

さて、本日の主要なマーケット関係は欧米がイースター休暇で閑散ムードであった。例年の事ながらエイプリールフールが終ると次はこのイースターで、街の欧州系スイーツ処や大使館が隣接する地域のマーケットなどには思い思いのイースターエッグが早くから並ぶ。

そうそう大使館といえば今回の震災で逸早く日本脱出を奨励していた原発大国フランスだが、個々ではカルチャーの啓蒙は続けられピエール・エルメなど今月中旬には原美術館の庭園で「エッグ・ハント」を開催している。そういえばこの時期TDRも「エッグ・ハント」をやっていたような記憶があったなと。

で、深夜はといえばお子様タイムのエッグハントとは一転雰囲気が厳かになって御茶ノ水のニコライ堂の「復活大祭」になるが、今年はあいにくの雨に見舞われあたかも震災の悲しさを物語っているようでもあった。目下のところ震災復興に向けて総力を挙げているところではあるが、そういった思いもあって今年の「復活祭」はかつてないほど誰もが重く感じたことだろう。


「FLYJIN」なる現象

さて、先の日曜付け日経紙中外時評には「鏡に映ったニッポン」と題して原発事故以降に外国人の東京脱出や帰国ラッシュが急増した模様等が書かれていた。確かに震災後入管や空港に外国人が殺到している様はさながら日本が完全に見捨てられている様以外の何物でもないような光景にも映ったが、一連の官民ディスクロをみればそんな行動も已む無しか。

一般はともかく、先に書いたように外資のビジネス関係は今回のような危機的事態下で企業トップがとっとと海外脱出して日本不在にしてしまうような向き(まあ、日本もその危機の根源となった東電のトップは体調が悪いとかでとっとと病院へ逃げてしまったが・・)と、残って陣頭指揮を執っている向きがけっこうハッキリ分かれたが、消費者はけっこうこういったところを見ているものである。

ロクなプレスも無しにいきなり店を閉めてしまう暴挙?に出たブランド系など一部ファンにはがっかりした向きも少なくない筈だが、一方で一応発表した向きもその理由が各社辻褄の合わない苦肉の言い訳が窺えてある意味面白いような残念なような複雑な気持ちになるものである。

しかし日本人でさえあれこれ裏読みしなければならないディスクロでは、異国の地で更に読み解きが難しい外国人には無理も無いか。日経紙文中に外国人ジャーナリストの話があり、「外国語に論理的に訳しようのない言い回しが多用されているが、もし悪意があればこうした曖昧な特徴を使って誰も責任をとらずに幾らで好きなことが言える。」との旨が書かれていたがまさに的確な表現。これほどの先進国にあって、その実体は官民揃って責任の所在が曖昧になりがちな日本社会の構造は海外から見ると相変わらず奇異に映っているものだ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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