6ページ目   外国為替

順次トリガーに

本日の東京外国為替市場の円相場は対ドル・ユーロ共に円高が進みまた80円大台の攻防となっている。GW中も米経済の思惑や、コモディティー下落もあって円カバーの動きから海外市場では円が一時79円台まで買われ、G7が円売りの協調介入に踏み切った3/18以来、1ヶ月半ぶりの円高水準があった。

そんなワケで介入思惑など再度話題に上り始めたが、デリバティブ系もまた然り。中小企業が抱えている為替デリバティブの損益状況は金融庁の調査結果によれば、2004年度から10年9月までの期間中に、差し引きで約1,400億円の損失が発生した模様と先に報じられている。

中小に限らず大手も然りで6月に「サンエー・インターナショナル」との経営統合を控える「東京スタイル」は先に11年2月期の連結最終損益予想を黒字から一転赤字に修正、というのもこの円高で為替連動型のデリバティブの評価損が36億円発生、これを営業外で計上することになる為とか。

同社の経営統合本部の話によれば、04年以降1ドル100円より円高が進むことはないだろうと考えて投資した模様だが「相場に翻弄された」と。今後は本業に集中する為にデリバティブからは撤退するというが、フラット為替然りデュアル・カレンシー債然り台が変わる度にまた幾つか明るみに出てくるものも多数だろうか。


Moral hazard

さて年末からにわかに出ていた問題であったが、本日の日経紙には急激な円高・ドル安で多額の損失が発生している為替デリバティブを保有する中小企業が約19,000社に上ることが、金融庁が銀行に実施した聞き取り調査で明らかになった旨が載っていた。

この商品、パワー・リバース・デュアル・カレンシー債とフラット為替といわれているが、前者には金融機関の期日前解約権がついており、これは地方自治体や財団まで幅広く販売された。フラット為替は所謂為替先物予約で主に輸入企業等に販売されたが、抱き合わせで売った部分やら横並びの思惑もあったのだろうが想像以上に多くの企業が契約していた。

年末にも一度触れたがこうした影響で破綻するパターンも続出しており、昨年は26件と一昨年の7件から急増、この動きを受けて直近ではメガバンク等は本業は健全だが損失が大きい企業対象に資金繰りを支える為の新規融資を実行する対応策を検討する流れになっている。

現況鑑みるにこうした措置も避けられないなと思う反面、気になったのは当該企業からは世論を味方に融資だけでなく損失負担を求める声が出ているという点。今でこそ契約企業からみれば想定外?の円高になったのだろうが、フラット為替など当初に享受した為替差益を棚に上げて損失分は補填してくれとは虫のいい話だ。

相場の損失に「特例」と称して行政が介入してどうこうしたらこれはもうモラルハザードの世界。この分野は今迄散々日本固有の事情で物議を醸し出してきたが、自己責任のあり方が問われる昨今ラインの引き方には十分注意すべきであろう。


通貨安競争のジレンマ

毎週のことながら今週こそ円が史上最高値更新といわれている外為市場だが、為替といえば厳戒態勢の中で行われているAPEC(アジア太平洋経済協力会議)財務相会合では、先週末各国が輸出競争力を高めるために自国通貨を安くする所謂「通貨安競争」を回避することで合意、先のG20財務相・中央銀行総裁会議の合意内容の再確認となった。

この通貨安競争から所謂カネ余りの状態になり、10/20付で書いたようにそうしたマネーはインフレ資産や新興国などへ次々と流入しているワケだが、そのターゲットとなっている新興国の中でも先に粗糖高で沸くブラジルは海外からの債券投資に掛かる金融取引税の税率を4%から6%に引き上げると発表している。

既に一度引き上げ措置をしているので今回は再引き上げということになるが、気になるのはやはり好調だった投信関係だろうか。このブラジル関連投信の純資産残高は現在2兆円近くにものぼり前年同月の約3倍にも膨らんでいる。

この分のコスト転嫁を何処に持ってくるかだが、各社対応の差はあれ結局は投資家負担というところへ落ち着く。外貨資産運用においてのカントリーリスクが顕在化した例の一つだが、新興国モノでは投資家への情報伝達など一部乏しいだけに一般は常にこの辺に注意をはらう必要があろう。


6年半ぶりの為替介入

菅首相と小沢幹事長の一騎打ちが注目された民主代表戦であったが、結局下馬評?通りに菅氏が小沢氏を破ったものの、その獲得票は菅氏721ポイントに対し小沢氏491ポイントと党員・サポーター効果でその差は200ポイント以上となった。

結局は首相続投が決まった事で今後としては内閣構造や党役員人事に注目が集まるが、気になるのはマーケット。昨日は前日米株式が10,500ドル回復と堅調地合な上に、直近ではバーゼル銀行監督委員会による新たな銀行自己資本規制比率「バーゼル3」の合意内容が緩かったとの安心感も出て上げに反応し易い地合であったものの、国内はこの続投判明で円高が進み株価は重い蓋をされた格好。

ところが一転翌日には突如として前場から政府・日銀は介入を実施し円は主軸通貨に対し急落、株価は急上昇となっている。続投決定直後からこれ見よがしに為替は82円台まで急騰するなどの嘲笑いに切れてとうとう受けて立った喧嘩という具合だが、単独介入だけに今後はそのテクが問われる。大したこと無いと思われていた奴が暴れると最初はサプライズだが、やはり戦い方が下手と分れば反撃は更にキツくなる。

現状、主軸通貨など欧米諸国は自国の通貨安で輸出を促し、日米金利差の構図もあってその円高構造は変りがない。為替敏感株などの日足を見てみると、どれもこれも打ち上げ花火のような軌跡を描いているが、この実に6年半ぶりの為替介入でそのラインを今回引いてしまった事で単発モノになってしまうのかどうか、真価が問われるのはこれからだろうか。


規制第一弾

さて、今月からは周知の通りFX(外国為替証拠金取引)について上限が50倍とする改正内閣府令が施行されている。この件については過去当欄で何度か触れてきたが、一年後からは更に上限を25倍に引下げることになっている。

この規制で円高が更に加速する云々からビジネスモデル崩壊で業界淘汰論までその影響が前々から論議されているが、前者に関してはもともと高倍率はスキャルパーが圧倒的ということや別なファクターも山積みで全ての要因がそうと適わないだろうか。ただこれらユーザーは少数派とはいえ個々の取引量は高いのでそうした部分では当然の影響は個別ではあろう。

他、所謂規制逃れで海外モノへの誘導等も、なにやら最近はメルマガ等の媒介で口座開設推奨を仄めかす向きも増えてきたが破綻時の諸々のリスクも考慮すべきか。また別な抜け道関連としては法人口座という手も一部で取り沙汰されているが、今更な上にそもそも異質なものを一括りにスライドさせて捉える考えもどうかと思う。

さて、そんなわけで今後の市場参入者と併せ全般リクイディティーも変化してくるかどうかだが、この手の問題はお上がその構造を利用した特定系への規制目的という思惑がある上に、様々な取引形態における所謂「信用余力」の部分を人夫々がどう捉えるかで各々見方が相違してくるという部分から、一括して論ずるのは如何にも難しい問題であると思う。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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