13ページ目

最高益更新後の収益モデル

周知のように三井住友FG参加の三井住友カードの「Olive」とソフトバンク系のスマホ決済「PayPay」とが連携しデジタル金融サービスで手を組むことが先週に報じられている。現在のOlive利用者は500万人以上、そしてコード決済でナンバーワンのPayPayの利用者は約6900万人ということだが、ポイント経済圏の覇権争いが激しさを増すなかこの連携で日本最大級のポイント連合が誕生することとなる。

さてメガバンク勢のこうした動きでは他にも今月は既にウェルスナビを完全子会社化している三菱UFJFGがインターネット専業の新しい銀行を来年中に設立する方針も報じられているほか、昨年末にはみずほFGが巨大なポイント経済圏を構築している楽天グループとリテールビジネスを再構築する旨も報じられており、若年層を含めた多くの個人顧客を囲い込むうえで各社共にこれら連携が加速している感がある。

ところでこれら3メガバンクといえば先週には決算も出揃っているが、金利のある世界の復活を追い風として冒頭の三井住友FGはグループとしては初めて最終利益が1兆円を超え、上記の三菱UFJFGは前年比で25%増、またみずほFGも前年比30.4%増とこの3社合計では4兆円に肉薄する規模となりいずれも過去最高を更新してきている。

改めて金利の重要性が再確認されるというものだが、この要の金利引き上げも米の関税政策などによる景気の不透明化で後ろにずれることも予想される。金利に頼らない収益源を視野に入れることを考えるに、今回のような提携は収益モデル転換の選択肢の一つとして挙がろうか。そういった意味で今後ほかの金融機関や決済サービス等でも顧客を囲い込むために新たな提携を模索する動きが活発化してくる可能性もあり注目か。


オルタナティブ資産のオルタナティブ

今月は代表的な暗号資産であるビットコインがニューハンプシャー州やアリゾナ州などが挙って同通貨への投資や準備金使用の州法を成立させた事などを背景に2月上旬以来、約3か月ぶりに10万ドル台を回復してきている。このビットコインといえば今週の日経紙夕刊では「資産価値への好影響に期待」と題し、ビットコインを保有し株価や企業価値を上げようとする上場企業が日本でも次々と登場している旨の記事があった。

ここで挙げられていた上場企業はネクソンやenish、等のゲーム会社はじめ電力小売りのリミックスポイント等であったが、メタプラネットなど五反田でビジネスホテル(先々はビットコインホテルに生まれ変わるとか・・)を運営している企業とは思えないほどのビットコインホルダーである。株価も分割前の一昨年だったか、わずかに10円台という低迷時期からビットコイン高騰を囃しミーム株の如く数十倍に急騰した経緯がある。

斯様にビットコインの大量保有が事業戦略の一環となっている企業の代表格は言わずもがな米ナスダック100指数にも採用されているマイクロストラテジー社で、今年もCB発行による資金調達で買い増しを図り現在では約477億ドルのビットコインを保有している。暗号資産関連では他に暗号資産取引所のコインベースもナスダックに上場しているが、もう一つ、日本の交換業者としては初めてマネックスグループ傘下のコインチェックの持ち株会社も昨年末にナスダック市場に上場を果たしている。

これらの株価はビットコインとの連動性の高さから投資家の多くに代替投資先にもされているが、ビットコインETFも解禁され投資の選択肢も多彩な米に比べこの辺の解禁が遅々として進まぬ日本こそ代替投資先としてこれら関連企業が魅力に映る投資家も少なくないか。ともあれこれらの行方は今後のビットコイン価格に懸かって来るだろうが、政治的な不確実性が高まっているなかで枝葉の拡大は不可逆的なものともいえるか。


地銀業界も再編加速?

本日は金融庁が地方銀行等の地域金融機関に公的資金を注入する制度の大幅な期間延長を検討していることが報じられている。現行制度は来年の3月末に申請期限を迎えるわけだが、これまで5年程度の延長期限を繰り返してきたが今回は米の関税強化や人口減による経済減速懸念を背景にして延長幅が10年を超える可能性も指摘されている。

そんな地銀を取り巻く環境だが、地銀といえば今年はこの業界も再編に拍車がかかってきた。年明けの1月は青森銀行とみちのく銀行が合併して青森みちのく銀行に、また同じく1月に愛知銀行と中京銀行が合併してあいち銀行に、3月には千葉銀行が千葉興業銀行の株式を取得、再来年には荘内銀行と北都銀行が合併してフィデア銀行となる予定のほか、この年の4月には群馬銀行と第四北越FGも経営統合を目指す事で合意している。

これら以外でも包括業務提携や連携協定を結んだり、大手証券と金融商品の仲介業務などで包括業務提携を結んだりする地銀も少なくない。こういった背景にはこれまでのマイナス金利の世界では経費率など如何にコストを削減するかが焦点だったが、金利のある世界に突入し預金の重要さが復活するために規模の拡大など再度攻めの時代に突入したことがあるか。こちらもまた不可逆的な流れで次は何処の地銀が動くのか今後も注視しておく必要があるか。


異形のポイズンピル

昨日は親子上場解消を巡ってその対象銘柄がTOB価格にサヤ寄せする動きで盛り上がっている旨を書いたが、TOBといえばもう一つ昨年から「牧野フライス」に対し“同意なき買収”で両者が火花を散らしてきたニデックが、牧野フライス側による買収対抗策が壁となり高裁への即時抗告やTOB期間延長もしないまま早々に先日この同意なきTOBを撤回している。

そういったことで先週は株価の方も明暗がハッキリと分かれ、NTTデータや三菱食品がストップ高まじえて急騰するのとは対照的に日を同じくして牧野フライスの方は買収プレミアムが一気に剥げた形となり前日比で2000円以上も暴落する憂き目に遭った。終わってみればこの“同意なき買収”は牧野フライスのホルダーに恰好の売場を提供しただけという顛末となり、同意なき買収の成功体験を持つニデックにしてみれば想定外の結果だったに違いない。

ところでこの買収劇、投資ファンド含むホワイトナイトが出現するとも一時報じられていたが、今後は牧野フライス側の身の振り方?にも関心が向かうこととなるか。今回の顛末を踏まえてファンド側の行動に変化が出てくるのかどうかその辺も気になるが、先の暴落でPBRは再度の1倍割れ、仮に単独路線を取ることになるにしろより資本市場との向き合い方が重要になってきている昨今、経営陣も株主に対して緊張感を持った企業価値向上の責務が問われる。


解消加速

今月に入ってすぐ当欄では親子上場解消に絡んで「豊田織機」の非公開化報道、並びに株価動向に触れていたが、先週の株式市場で目立っていたのは「NTTデータグループ」株と「三菱食品」株のストップ高含めた急騰劇か。共に親会社による両社の完全子会社化の報道を受けてものだったが、今月は上記の豊田織機に続き矢継ぎ早に親子上場解消を伴った再編劇が具現化しこれら加速してきた感がある。

正式社名の「日本電信電話」から民営化以来40年ぶりに「NTT」へと社名を変更した親会社のNTTだが、同社は既にNTTドコモを国内企業として最大規模といわれたTOBで完全子会社化しており、今回のNTTデータの完全子会社化は一連のNTT再編の流れの最終章ともいえるか。また三菱商事も業界では三井物産が先に食品卸など5社を統合しているが、それに続く再編劇となる。

二番煎なのか豊田織機の時にも反応した銘柄群でも、住友電気工業の上場子会社である「住友電設」など好決算なども手伝いNTTドコモや三菱食品と時を同じくして先週は急騰を演じ上場来高値を更新してきている。今年は解消絡みでは1月の「富士通ゼネラル」に2月の「イオンモール」、先月上場廃止となった「山陽特殊製鋼」等の例もあるだけに、上記以外の他の思惑含みの銘柄等も水面下で次の宝探しの動きが活発化してきており今後も“解消モノ”はテーマとして目の離せないものとなってくるか。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

カテゴリー

アーカイブ

2025

9

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30