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相次ぐ外形外し

本日の日経紙投資情報面には「HIS、税負担減へ切り札」と題し、先月末に長崎のテーマパーク、ハウステンボスを香港の投資ファンドに売却したエイチ・アイ・エスが、決算期末直前に臨時株主総会を開いて約250億円近くあった資本金を一気に1億円まで圧縮する減資を決めハウステンボス売却で得られる利益をフル活用しようとの思惑がある旨が書かれていた。

同じ旅行業界ではこのエイチ・アイ・エスに先駆けてJTBが昨年に約23億円の資本金を1億円に、日本旅行も40億円の資本金を1億円に、今年に入ってからはKNT-CTホールディングスが約80億円の資本金を1億円に、国内航空3位のスカイマークも90億円の資本金を1億円に減資している。これらいずれも減資後は税制上の中小企業となる事による外形標準課税の支払い回避が狙いだろうか。

ただ中には減資後に資本増強を行い、その後に資本金が増えた分を資本準備金に振り替え再び資本金を1億円にするなどフルに二重取り?の特典活用を敢行する兵も。自治体側としても税収の変動は好ましくない筈でこの辺を総務省はどう思うかだが、いずれにせよふるさと納税なども然りで公平性から見た税の原則が問われる場面も出て来ようか。


景気浮揚力の変化

さて、円安止まらずというところで外為市場では一時1ドル142円台と1998年8月以来、約24年ぶりの円安水準を記録した。日米の真逆のオペを背景にここ1ヵ月一寸でも約9円の急落を見せているが、今年の円の下落率は先週段階で約18%とかれこれ25円も円安が進み下落率の大きさは1979年の19%以来、43年ぶりのことで73年の変動相場制移行の後では2番目を記録する。

日本はエネルギーや食料を輸入に頼っており、この140円台の円安が続いた場合の今年度の家計負担は政府の物価高対策のよる軽減効果を含めたとしても前年より8万円近く増加するとの試算も明らかになっているが、余談ながら英国はハンバーガーセットが3000円を超え、来月からは標準世帯の光熱費が現在から実に8割も上がり年57万円になるというから我々はまだまだマシな方かと錯覚しそうになる。

しかし日本はエネルギー自給率が1割と主要国での低さは否めないところで、上記の現状等を見るに先の「サハリン2」の継続が承認されたとしてもロシアの一存で供給が左右される構図には危機感を覚える。ともあれこの24年ぶりの円安現象に生産や調達において国内回帰の動きも出て来たが、今後各企業も円安とどう向き合うかが問われることになるか。


長月の値上げ

猛暑も漸く治まりつつある長月入りだが、原材料や包装資材の価格高騰に加え物流コストが上昇している事を背景に生活に身近な商品値上げのラッシュは止まらない。今月も食品では日清製粉ウェルナとニップンが冷凍食品の価格を値上げ、雪印メグミルクとJオイルミルズはマーガリン類を、飲料ではサントリーが輸入ワインを、霧島酒造は焼酎、ネスレ日本とUCC上島珈琲はコーヒー製品等を値上げする。

また食品以外では電気料金も2社でまた値上がりとなり、東電ではかれこれ13ヵ月連続で値上げが続くことになる。またガス代も3社が値上げし、予てより言われていた自動車のタイヤも主要メーカーで値上げが始まり、ブリジストンが4月に続き今月出荷分から今年2度目の値上げを発表し、住友ゴム工業もダンロップ製品を値上げする。

こうした中、1日付の新聞折り込みには低価格で人気の業務スーパーが冷凍食品類など200品目以上を値下げする「総力祭」のチラシが入っていたが、他のPBとも併せ個別の企業努力も窺える。帝国データバンクによれば今月だけで2000品目以上が値上げ見通しで1品あたりの平均値上げ率も15%を上回っているというが、ピークを迎えると言われる来月で一旦の一服を見せるか否かが注目される。


恒久化への道

金融庁が昨日2022事務年度の金融行政方針を発表しているが、これまで報じられているようにNISA(少額投資非課税制度)の設計改革など投資から貯蓄への道筋作りがポイントとなる。周知の通り現行では一般NISAが2028年末までの期限付きで年間120万円までの投資が最長で5年間非課税となり、つみたてNISAは2042年末までの期限付きで年間40万円までの投資が最長で20年間非課税になる。

斯様にNISAは株式や投資信託等の配当や売却益にかかる税金を一定期間免除される制度だが、余談ながらかつて立憲民主党の某議員がNISAに対してまで課税を匂わすトンチンカンな失言があったのを思い出した。ともあれこのNISA、そもそも創設の際にモデルとなったのは英で国民に定着したISAだが、既に英国ISAの非課税期間は無期限に恒久化されている。

また先に当欄で単元株を取り上げた際に「~NISAの啓蒙こそ喧しいものの積み立てより上限が高い一般モノでも120万円の枠と、最低単元買うのに約870万近くが必要になるファーストリテイリング級の銘柄は足元にも及ばない計算になる~」と書いたが、こうした極端な値嵩モノは兎も角も現行枠では如何にも心許ない上限額なのは否定出来ないところだろう。

上記に鑑みNISAの期限撤廃と上限引き上げを来年度の税制改正要望に盛り込む方針で年末にかけて具体的な額を詰める。何れにせよこれで1000兆円規模の個人貯蓄を投資へと後押ししたい考えだが、今週アタマの日経紙に金融庁が全世代を対象とした金融教育の必要性を提言する旨の記事があった通り広くリテラシーを身に付けるための金融教育も併せて必要なのは言うまでもないか。


それぞれの思い出

さて、本日をもってお台場のランドマークとして長く人気を集めたパレットタウン大観覧車が営業を終了した。この大観覧車がオープンしたのは1999年、当時は此処が世界一の高さを誇りそのロマンチックなロケーションから1周約16分のなかで時にカップルたちのプロポーズも見守り続けてきたであろう大観覧車、開業当時は5時間待ちの日もあったが終了間近のここ数日も待ち時間が1時間超えの行列が出来ていた。

行列といえば閉店人気から連日の行列で順番待ちシステムまで導入して営業をしていた国内最後のアンナミラーズ高輪店もこの日、とうとう約40年の歴史に幕を下ろすこととなった。また銀座では日本で初めて高級ブランドを集積させた店舗の名鉄グループのメルサ銀座二丁目店もこの日閉店し、その51年の歴史に幕を下ろしている。

何れも再開発計画に伴うもの、国交省による整備事業に伴う移転要請、新型コロナウイルスの影響の長期化や施設の賃貸借契約終了に伴うものなどその理由はさまざまだが、あの良き日を過ごして来たそれぞれの名所が無くなってしまうと思うと寂しい限り。今は昭和レトロがZ世代などに新鮮に映るというが、共に時代を過ごして来た世代には感慨も一入だ。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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