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割安感で復権?

本日の日経紙グロース市場面では「金より割安、資産性注目」と題し、これまで産業用途としての需要鈍化から相場が低迷していた貴金属のプラチナが金(ゴールド)と比べて割安感が強いことなどを背景に、資産としての側面が注目されるなどで相場水準を切り上げている旨の記事があった。地金など大手の田中貴金属工業店頭では個人への地金販売量が7倍にも膨らんでいるという。

このプラチナとゴールド、その産出量の違いなどからかつてはプラチナの上鞘が常識的であったがその鞘も逆転してはや約10年、もう一昔前といった水準である。それまでは途中途中で金が上鞘に浮上する場面では“珍現象”などと各所で取り上げられ、先物でもリーマンショックなど挟んでこうした場面では「ストラドル取引」などを仕掛ける向きがあったが、鞘滑りで時間切れと軒並み思惑外れとなった光景など既に懐かしい。

今から4年ほど前にもPGM系が挙って上昇し長い眠りから覚めたと話題になったことがあったが、金のほうもまた複合的リスクを囃し環境問題で囃されたPGM系との鞘は劇的に変わることは無かった。今回はどうかというところだが、貴金属といえば先に銀も同じような金に対する割安感から13年ぶりの高値を付けている。これまた産業用需要回復期待がかかっているが、“割安感”で何処までその比価を縮小出来るのか今回も其々注視しておこう。


赤字を買う

本日の株式市場は3日ぶりに反落となったが、先週の新規上場組では公開価格375円に対して約2倍の初値でロケットスタートとなった東証グロース市場のアクセルスペースも週明けのストップ高の地合いを継いで前場に上場後高値を更新した後に反落となっていた。既に5営業日で株価は3倍近くに化けているが、資産運用大手のブラックロックも同社への投資意向を示していることもあり投資家の成長期待が大きい案件となっている。

とはいえ宇宙事業は先のアイスペースの2度にわたる月面着陸失敗も記憶に新しいように技術的な難易度から失敗リスクが付き纏い、同じグロース市場に上場する同社の株価はこのアクセルスペースの上場日には皮肉にも年初来安値を更新し5月高値からは約3分の1水準に下落している。ただそういったなかでもアイスペースは宇宙開発強化のために新たな企業と協業の覚書を締結するなど次のミッションに向けた動きが進んでいる。

宇宙事業の経済規模は80兆円を超えているともいわれているが、日本の宇宙ビジネス市場は2020年時点で約1.2兆円とまだ伸びしろが大きい。とりわけ日本では公的投資が市場の約9割を占めているという試算もあるだけに、公的ではない民間ありきの持続可能な進行がどれだけ拡大するか、今でこそまだ宇宙事業各社は赤字を買ってゆく構図だが今後の展開に期待したい。


ステーブルコイン解禁

さて先月は米でステーブルコインの普及を目指すところの「GENIUS法」が成立した旨を書いていたが、日本でも金融庁が今秋にも法定通貨に価値が連動する円建てステーブルコインの発行を国内で初めて認める旨を本日の日経紙が1面で報じている。名称は「JPYC」となり、1JPYC=1円に価値が保たれるように預金や国債といった流動性の高い資産を価値の裏付けとして保有し、

ステーブルコインで先行しているドル建てモノはテザーが発行するUSDTとサークルインターネットGが発行するUSDCが2強となっているが、将来性を買ってこうした暗号資産関連株はトランプ大統領当選後に大化けしてきており、上記のサークルインターネットG株価の6倍超をはじめ、ロビンフッド・マーケッツの株価は4倍超、コインベースのそれも2倍超とどれもその恩恵が期待され物色対象にされている。

関連株の方はそれとして現在は上記のドル建て中心にその市場規模は2500億ドルに拡大中、大手外銀の一部ではこの市場が2030年までに最大で4兆ドル近くと足元の10倍以上の規模になるとの予測がある。上記のコインベースはECサイト運営者向けに同コイン対応の決済サービスを立ち上げておりカード系の独占市場に風穴を開ける格好になる。

このJPYCも今後3年間で1兆円分の発行を目標とするようだが、斯様にステーブルコインは決済手段として伝統的な金融システムに取って代わる可能性をも秘めている他、送金や資産運用サービスへの活用など今後決済業者以外でも銀行から小売りまで各々で動きが出てくるかどうかこの辺にも注目しておきたいところだ。


建設業界にも再編波

さて、先週末にはまた大型再編の報がゼネコン界であった。売上高ランキングで業界4位に位置する大成建設が、TOBなどを通じて東洋建設の全株式を取得するなどで総額約1600億円を投じて買収を図るとのこと。これが実現した暁には先にインフロニアHDによる三井住友建設の買収額を上回り建設企業同士のM&Aとしては過去最大となり、売上高ランキングでは2位の大林組に次ぐ位置になるか。

建設業界では今年5月にもインフロニアHDが三井住友建設を買収すると表明しているが、このインフロニアHDもかつてこの東洋建設を1株770円でTOBすると試みた経緯がある。これが安過ぎると1株1000円でここへ割って入って来たのが任天堂創業家の資産運用会社YFOであったが、取締役候補のうち過半数をYFOが占めるまで攻めたものの紆余曲折の末志半ばでYFOはTOB提案を取り下げる結末となっていた。

とはいえ今回の再編劇を導いた立役者こそこのYFOともいえ、この構図で思い出したのがかつて石油業界で出光興産と昭和シェルの経営統合の際に泥沼化していた出光経営陣と創業家側の間に入り対立緩和に一役買った村上ファンドの村上氏か。石油業界で同氏は他にも自らが大株主であったコスモエネルギーHDを岩谷産業にバトンタッチし脱炭素に打って出る体制を作り自らのイグジットも十分な利を得ている。

今回の買収劇も1株1750円ということで既にそれに近い現在の東洋建設株価としては派手な鞘寄せこそ起こるべくも無いが、冒頭の通り1株770円でのTOBが出た当時からすれば現在の株価は言わずもがなでYFOのイグジットとしては申し分ない水準だろう。いずれにせよこの買収劇により工事領域で存在したすみ分けもその壁が取り払われることになったが、昨今では建設従事者の不足がいわれるなか他の大手ゼネコンにも動きが出てくるかどうかこの辺が今後注目だ。


アンハッピー?セット

本日の日経紙ビジネス面にも「ハッピーセット転売問題」と題し記事が載っていたが、毎度この企画をやるたびに物議を醸しだしているマクドナルドの子ども向けメニュー「ハッピーセット」。今回9日からスタートした人気トレーディングカードゲーム・ポケモンカードが2枚付くハッピーセットもやはりというか炎上騒ぎとなっている。

今年でいえば2月の「星のカービィ」、5月の「ちいかわ」の時も転売ヤーの暗躍でこの企画は早期終了となりフリマサイトでは大量の品が法外な値段でズラリと並んだ経緯があったが、それらの対策を踏まえ共同対策を謳っていたはずの今回も全くと言っていいほど効果なしで、店や道端のいたる所にカードだけ抜きとられ誰も食べてくれないハンバーガーの放置や廃棄が多数見受けられる毎度おなじみの事態を引き起こしている。

同社はこれを受け早速公式サイトで謝罪し再発防止策を謡っているが、2月と5月の騒動を経て個数や年齢などいくらでも調整が出来たはずだが、3度目もこんな有り様なだけにやはり性善説頼りの策も限界だろう。いくらマックが社会貢献を謳っていても、この企画をやるたびに転売やフードロスが話題になっているさまはそのブランドイメージにもネガティブに作用する。

そういえばフリマサイトに並ぶマクドナルド関連モノといえば最近では偽造された株主優待券の流通もまた問題になっている。転売ヤーや偽造集団が元凶なのは間違いないところでもあるが、上記にも書いた通り企業のブランディング維持という側面からもマックやフリマサイト運営会社はじめ各所は早急に実効性のある対策が求められるというもの。


FOMO相場

連休明け本日の日経平均は、米と各国の関税協議が進展し米関税政策を巡る不透明感の更なる後退や米早期利下げ観測を背景に5日大幅続伸となり、大引けは前週末比897.69円高の42718.17円とこれで昨年の7月11日に付けた42224.02円を抜いて約1年1か月ぶりに過去最高値を更新してきた。先にTOPIXが史上最高値を更新していたが、日経平均もこれに遅れ史上最高値更新が叶った格好。

個別ではNAV(時価純資産)比で大幅ディスカウントが指摘されていたソフトバンクGが続急騰、IPのサンリオもストップ高とこれら値嵩の寄与も高いが、踏みが原動力になっている部分も否めないか。昨年の過去最大の下げ幅を記録した後の軌道パターンや関税発動時期などからここ数か月目先の下げに賭けた向きも多かっただろうが、信用買い残も整理が進んでおり低信用倍率銘柄では担がれているものも少なくない。

まさにお盆に入る直前での最高値更新劇となったが、早速これを受け大手証券勢の鼻息は荒く揃って今年の高値予想を上方修正してきているあたり一旦は利を入れたくなる衝動にも駆られるものだ。昨年は米CPIが市場予想を下振れしたのを機に過去最大の下落を呼んだが、さて目先のCPIは如何に。その辺は兎も角もいずれにせよ彼方此方インフレの波をひしひしと感じる今日この頃である。


エルメス一強

先週末の日経紙ビジネス面には「勝ち組はエルメス・プラダ」と題し、ラグジュアリー業界の2025年1~6月期決算では仏エルメス・インターナショナルが増収増益となった一方で仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンと仏ケリングなどは減収減益と明暗が分かれた旨の記事があった。消費者が財布のひもを締める逆境下で高級ブランドとしての“底力”の差が出たとの見方があるという。

これを如実に表すかのように今年の春先にはエルメス・インターナショナルの時価総額はLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンを抜き去り、今や日本企業の時価総額トップに君臨するトヨタ自動車のそれをも抜いてきている。エルメスといえば“バーキン”がもう代名詞のような存在となっているが、先に行われたサザビーズのオークションではこのバーキン第一号がハンドバッグとして過去最高額の800万ユーロで落札されたのが記憶に新しいところ。

エルメスのブランディングで直ぐに頭に思い浮かぶのはやはり伊フェラーリだろうか。共に需要に対してある一定割合の少なさで生産調整しており、バーキンクラスになるとオファーがかかるのも購入履歴等の積み上げ如何にかかってくるというのが暗黙の了解となっているとか。厳格に管理された販売手法とその希少性により、これまたフェラーリの各種モデルと共にリセールバリューもラグジュアリー界では常にトップクラスを誇る。

当欄では今から14年前の2011年にも自動車業界が減産体制を強いられていた件を書いた際にフェラーリとBMWで明暗が分かれたのを取り上げていたが、そこでは「~要は或る程度手が届く領域のある部分はそれだけ分布も多いので不況の影響はやはり避けられないと~」と書いていたが、冒頭のエルメスとルイヴィトンはまさにこの構図だろう。一部大手外銀では高級ブランド業界の低迷が26年後半まで続くとの予測が出ているが、優勝劣敗が更に鮮明になってくるかどうか注目される。


産業化への道筋

本日の日経紙総合面には、住友ファーマがパーキンソン病を対象としたiPS細胞由来の医薬品候補について厚労省に製造販売承認を申請した旨の記事があった。iPS細胞といえば皮膚や血液の細胞に特定の遺伝子を導入して培養する事であらゆる組織や臓器の細胞に分化出来るようにした細胞だが、2007年には京都大の山中教授がヒトからの作成に成功し臓器や組織の機能を再生できると今後に期待が高まっていたもの。

これを囃して昨日の東証プライム市場に上場している住友ファーマの株価は年初来高値を更新していたが、4月の関税ショックの時に付けた安値からはや約2.8倍近くに化けている。iPS系では他に東証グロース市場に慶応大学発ベンチャー企業でiPS細胞を用いた心筋再生用心筋球のHeartseedも上場しているが、こちらもまた4月の安値から6月の年初来高値まで同じく約2.8倍に高騰しており期待の高さがうかがえる。

しかしiPS細胞といえばつい先日も内閣府の生命倫理専門調査会がヒトのiPS細胞から受精卵を作成する研究を認める事で大筋合意した旨が報じられていたが、現在のところこの分野では日本が世界を主導している。冒頭の山中教授がノーベル賞を受賞した翌月には当時の安倍首相が巨額の研究費を約束した経緯があったが、世界中でこの手の技術開発が激化してきているなかここから産業化まで日本が主導出来るかどうか国の後方支援も今後要になってくるか。


金融課税扱いの是非

さて、金融審議会の作業部会では先週から暗号資産に関する法制度を見直すための議論が始まっている。仮想通貨が主に投資目的で取引されているのを受け、金融商品取引法に位置付けて利用者保護を図るが、インサイダー取引の規制の新設などが論点になるという。今年末に向けて議論を取りまとめて、来年の通常国会での金商法など関連法の改正を目指す意向だ。

米連邦議会では仮想通貨関連法案が成立し次なる法案整備にも期待が集まっているが、今や暗号資産全体の時価総額は直近1ヶ月で約7500億ドル増加し4兆ドルの大台を突破してきている。米企業では先行して仮想通貨備蓄の動きが出ていたが、最近では当欄でも取り上げた通り国内もグロース市場の上場企業一部にもそうした戦略的備蓄の動きが活発化してきている。

そうしたなか冒頭の議論開始の前日に、暗号資産の業界団体である日本暗号資産等取引業協会と日本暗号資産ビジネス協会が金融庁に対し税制改正要望書を提出している。個人投資家にとってはこれが一番関心のあるところだろうが、現在主要国ではスイスやドイツ(1年以上保有)、シンガポール等は非課税、米(1年以上保有)や英では約20%となっているなか、日本はいまだ雑所得扱いとなっているだけに申告分離課税に向けての進展があるか引き続き注目される。


基調的な物価上昇率の一部

さて8月入り。月初め恒例の値上げ状況だが、今月も値上げは続き帝国データバンクによる主な食品メーカーにおける今月の飲食料品の値上げは1010品目。単月の値上げ品目数としては3か月連続で1000品目以上の推移となり、1月からは8か月連続で前年同期を上回るなど依然として値上げの勢いは去年より強く連続増加期間としては記録的な値上げラッシュとなった2023年を上回り最長を更新する事となった。

個別では「調味料」の470品目が最多となり、次に「乳製品」の281品目となるが、明治や雪印メグミルクに森永乳業の大手三社によつ葉乳業は生乳価格見直しで牛乳やヨーグルト等を値上げする。この牛乳の他に朝食価格指数に影響を与えそうなモノでは7月に続いてコーヒー関連もネスレや外食ではタリーズ等で値上げ、またコメ価格高騰を背景に岩塚製菓では米菓10品の価格を改定し、サトウ食品も同様の理由で約11~20%の値上げをする。

斯様に依然として原材料費が値上げ要因となっているものも絶えないものの、冒頭に書いた値上げラッシュに沸いた2023年と比べるに人手不足に伴う人件費上昇などを背景にしたものも依然強い。こうした粘着性圧力を背景に価格上昇も一過性ではなく長期にわたり継続する可能性が高く、所謂日銀の言うところである“基調的な物価上昇率”の範疇にも既になってきているか。


ジャングリア沖縄開業

さて、先に飛鳥Ⅲの就航を取り上げたがリゾート関係ではこれに続いて今月はもう一つ、「ジャングリア沖縄」も先週に満を持して開業している。世界自然遺産に登録されている本島北部のやんばるを舞台に22のアトラクションに3つのレストラン、4つのショップなど都会では体験できない自然のなかでダイナソーサファリやスカイフェニックスなど本物の興奮や解放感が味わえるという。

これを手掛けたマーケティング企業「刀」のトップはこの場所にした理由として海というイメージが定着している沖縄は森林もある“二刀流”に着目したという。なるほどイメージでは先ず“海”が思い浮かぶが、ジャングルも負けず劣らずの魅力を有している点では「バリ島」とも似ているか。また今後のインバウンド増加を見込みパークやスパ等のチケットも国内の主要テーマパークとしては初の“二重価格”を採用している。

このジャングリア沖縄が狙っているターゲットゾーンは、沖縄から飛行機で4時間以内に広がるアジア圏の約20億人という。認知度の低い開業当初は国内客が大半と見込まれるものの、開業1年目の経済波及効果は約6583億円との試算が出ている。実に沖縄の年間予算の7割にも匹敵する額となるが、沖縄経済の新たな起爆剤となるかどうか期待のかかるところ。

ところで上記の「刀」は昨年に「イマーシブフォート東京」を開業させ、立て続けに今回のジャングリア沖縄をオープンさせているが、テーマパークがすっかり廃れた中国などとは異なり今後も日本はテーマパークへの巨額投資が見込まれる。強力なIPを武器に東京ディズニーシーやUSJでは新エリアの開業が相次ぎ、今後は横浜にも東京ディズニーランドと同規模の敷地に最先端技術を活用した次世代型テーマパークが開業予定となっており今後も各所の投資が注目される。


隅田川花火大会2025

猛暑のなか先週末は無事に隅田川花火大会が開催された。東京では足立の花火退会が2年連続で中止の憂き目に遭ってしまったわけだがこちらは予定通りの開催となった。隅田川はフィナーレも勿論圧巻だがやはり全国の匠が競うコンテストは外せない。今年は新潟煙火工業の飛遊星モノの「蛍」が優勝したが、個人的には絵画を花火で表現したというユニークさで勝負した斉木煙火本店の「モネの庭」が印象的だった。

ところで近年では花火に使う各種火薬類の高騰に加え、安全確保に不可欠な警備員の人件費高騰などによる運営費コスト増を背景に所謂有料席の導入が急増している。今年の場合主要の約100大会のうち約8割にあたる大会で有料席の導入が見られ、これは過去最多のデータという。隅田川の屋形船もひと昔前から比較するにその料金も随分と高騰したなと感じるが、毎年ベストな場所を提供してくれる人脈の有難みが一層増すというものだ。

ところで花火大会といえばかつてこの隅田川花火大会と共に“東京三大花火大会”の一つであった「東京湾大華火祭」だが休止からはや10年、この花火大会が来年には11年ぶりに復活開催とも報じられている。なんでも中央区区制施行80周年記念事業として開催されるということだそうだが、開催に期待を込めて今から楽しみに待ちたい。