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爆益ETFの行方

本日の日経紙投資面には「日銀、ETF売却へ前進か」と題し、先週の日銀副総裁の公演で日銀が保有するETF(上場投資信託)の処分について触れていたことでこのETFの処分時期が近付いたとの思惑が書かれていた。これまではこの件に関して「時間をかけて検討する」との答えであったが、今回の講演ではこうした部分が無かった事でより一層思惑が募ったようだ。

7月に日銀絡みのETFについて書いた時にはその簿価で37兆円、3月末時点では時価にして70兆円と書いていたが、その時価もその後の株価上昇もあって先月末では初めて80兆円を超えている。上記の通りその簿価から見て含み益は40兆円以上と倍化しているわけだが、同紙では現在進めている重要な作業であるところの利上げが一段落した後に処分を始める観測が書かれている。

その扱いに関してはこれまでも野党の一部から子育て支援案を絡めたものや別機関への移管・分離案から個人への譲渡案など数多の案が出ているが、いずれにせよ先に日銀は金融システム安定策の一環として銀行から買い取ってきた2兆4000億円あまりの株式の2016年からの継続売却を完了させており、嫌でも次の一手に関心が向かうところ。


独自路線を評価

本日の日経紙投資面には東証プライム市場の西武ホールディングスが不動産を核とした成長戦略に期待が向けられ上場来高値を更新した旨が出ていたが、本日も日経平均が反落するなか同社株は続伸し連日で上場来高値を更新してきている。今年は虎の子の「東京ガーデンテラス紀尾井町」を米ファンドに売却しているが、株の方も上手い具合?に空売りを誘う格好になっているだけにこれも上げの原動力となっている格好か。

バブル世代には思い出深いあの“赤プリ”が鎮座していたところもすっかり様変わりして久しいが、再開発などでその価値を上げてイグジットするパターンでは此処は超ド級クラスの案件として話題になったものだ。鉄道業界も少子高齢化の煽りをうけ輸送人員減少などで先細りが懸念されるなか、私鉄大手各々の戦略が注目されるところだが同社の場合いち早く独自路線に舵を切った格好だ。

“西武”といえば上記とは関係ないが、ヨドバシが買収した西武百貨店の方も先に1700㎡のフロアに47ブランドを擁し国内最大の“美のテーマパーク”を誕生させている。面積は改装前の1.4倍、売上目標も同率で増やすべく美容部員も1.6倍に増やし客の買い物をサポートする。コスメ市場もコロナ禍でEC化が広がったが、5類移行でコト消費型のニーズが強くなっているだけにこちらも戦略が奏功するか見ておきたい。


NISA変容期

先週に金融庁は2026年度の税制改正や組織再編を含む機構・定員に関する要望案を自民党部会などで説明しているが、NISA拡充が柱となり対象年齢を18歳未満の子どもにも拡充したい方針であることが報じられている。NISAに関してはこれまでも投資額の上限が引き上げられるなどしてきたが、子育て支援の一環としてこの年齢制限の撤廃などを提言している。

この辺はこれまで年80万枠で19歳以下の子どもを持つ親向けにジュニアNISAなるものがあったが、これは一昨年に撤廃されている。少子高齢化に伴う資産形成ニーズの多様化もあり形を変えての復活なるかというところだが、NISA創設当初の縛りから比べるに本当に緩く?なってきた感がある。このまま拡充の枝葉でそれこそ特定や一般との損益通算までやってくれるとありがたいがさすがにそれは無理か。

しかし新NISAになりそれなりに参入層の幅も出て来たのかその買い付け銘柄も当初の高配当一辺倒から最近ではベスト5に当欄でも取り上げたビットコインに賭ける東証スタンダード市場のメタプラネット株もランクインしている。ビットコイン高騰に歩調を合わせて取った6月の高値からはや今週アタマには半値以下にまで下落しているが、過去には破綻し上場廃止になった銘柄まで買い付け上位に入っていたこともある。

ひと昔前のように株式市場では派手な仕手戦は無くなったものの、SNSの発達で斯様なミーム株に人気が集中する現象も出て来た近年ならではといえるが、同じくSNSを駆使しNISAをネタにした投資詐欺も横行している折、制度自体が形骸化しないでしっかりとした実効性を持たせるようにするためにはやはり基本を押さえた金融リテラシーは最低限不可欠といえるか。


静かに上場来高値

さて、週明けにはSBIによる金融資産のトークン化戦略を取り上げたがSBIといえばもう一つ、先月末には傘下のSBI新生銀行がかつての長銀時代の公的資金を完済したことが明らかにされ地銀業界の再編がいつ再始動するのか注目されていたところに、東証スタンダード市場の東北銀行に地銀としては約3年ぶりに出資する事が明らかになり、「第4のメガバンク構想」が再始動する旨が報じられている。

上記のようにトークン化戦略を打ち出すなど同社はデジタル金融の強味があるので、これは地銀にとっても新たな視野が開けることになる。これまで取り上げてきたように同グループではBaaS事業などの強みを活かし百貨店や大手家電メーカー等とコラボしてネオバンクサービスを展開してきたが、その辺の発展途上な伸びしろの部分にも今後は期待が出来るか。

そうした動きも背景に当の東北銀行はこの報道日まで3日続伸し年初来高値を更新してきているが、再来年に第四北越FGと経営統合で合意している群馬銀行も週明けにはザラバで1,593円まで上昇し1990年に付けたこれまでの上場来高値を実に35年ぶりに更新してきた。(まだ第二地銀に関しては楽観視できない部分もあるが、これまで最後の万年割安株といわれてきた地銀株は再編思惑で今後も眠りから覚める向きも出てくるか。


トークン化戦略

さて、先週末にSBIホールディングスが金融資産をブロックチェーン上でデジタル資産の「トークン」として売買する新たな取引市場を作る旨が報じられている。シンガポール企業と共同開発して、これにより株式や債券から仮想通貨などあらゆる資産を一元的に取り扱い、SBIグループの6700万件の顧客基盤などに向けこれら現物資産を暗号資産として24時間、365日売買出来る取引所を提供するという。

ブロックチェーン技術は既にリーマンショックの頃に開発されているが、これまでの規制も整備されてきており米金融は先行している。こうしたことを背景に大手JPモルガンがドル預金トークンの試験運用を発表しており、オンライン証券大手のロビンフッドは欧州で株式トークンのサービスを開始している他、暗号資産取扱い大手コインベースもトークン化した株式の提供に向けSECに認可を申請している。

上記のロビンフッドの株価は既に年初から倍以上となっているが、このトークン化戦略が囃され今月に入ってからは更に一段高し上場来高値を更新してきている。いずれ上記のコインベースとも競合する事になろうが、今年の時点でトークン化される資産は6000億ドルといわれるが、ここから年間で5割のペースで増加し2033年には19兆ドルと30倍以上になるとの一部指摘もある。

SBIも米ロビンフッドのように多彩な新しいサービスを次々と打ち出してくれるかどうかだが、ロビンフッドは既に未上場株までラインナップしているのが凄い。本当は斯様な飛躍したサービスが個人受けするのだが、日本では規制面等でここまでの提供は難しいか。とはいえ国際間決済も瞬時に完了し国境や時間にとらわれない取引が叶うなど期待が出来るだけに今後の展開には注目しておきたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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