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産業化への道筋

本日の日経紙総合面には、住友ファーマがパーキンソン病を対象としたiPS細胞由来の医薬品候補について厚労省に製造販売承認を申請した旨の記事があった。iPS細胞といえば皮膚や血液の細胞に特定の遺伝子を導入して培養する事であらゆる組織や臓器の細胞に分化出来るようにした細胞だが、2007年には京都大の山中教授がヒトからの作成に成功し臓器や組織の機能を再生できると今後に期待が高まっていたもの。

これを囃して昨日の東証プライム市場に上場している住友ファーマの株価は年初来高値を更新していたが、4月の関税ショックの時に付けた安値からはや約2.8倍近くに化けている。iPS系では他に東証グロース市場に慶応大学発ベンチャー企業でiPS細胞を用いた心筋再生用心筋球のHeartseedも上場しているが、こちらもまた4月の安値から6月の年初来高値まで同じく約2.8倍に高騰しており期待の高さがうかがえる。

しかしiPS細胞といえばつい先日も内閣府の生命倫理専門調査会がヒトのiPS細胞から受精卵を作成する研究を認める事で大筋合意した旨が報じられていたが、現在のところこの分野では日本が世界を主導している。冒頭の山中教授がノーベル賞を受賞した翌月には当時の安倍首相が巨額の研究費を約束した経緯があったが、世界中でこの手の技術開発が激化してきているなかここから産業化まで日本が主導出来るかどうか国の後方支援も今後要になってくるか。


金融課税扱いの是非

さて、金融審議会の作業部会では先週から暗号資産に関する法制度を見直すための議論が始まっている。仮想通貨が主に投資目的で取引されているのを受け、金融商品取引法に位置付けて利用者保護を図るが、インサイダー取引の規制の新設などが論点になるという。今年末に向けて議論を取りまとめて、来年の通常国会での金商法など関連法の改正を目指す意向だ。

米連邦議会では仮想通貨関連法案が成立し次なる法案整備にも期待が集まっているが、今や暗号資産全体の時価総額は直近1ヶ月で約7500億ドル増加し4兆ドルの大台を突破してきている。米企業では先行して仮想通貨備蓄の動きが出ていたが、最近では当欄でも取り上げた通り国内もグロース市場の上場企業一部にもそうした戦略的備蓄の動きが活発化してきている。

そうしたなか冒頭の議論開始の前日に、暗号資産の業界団体である日本暗号資産等取引業協会と日本暗号資産ビジネス協会が金融庁に対し税制改正要望書を提出している。個人投資家にとってはこれが一番関心のあるところだろうが、現在主要国ではスイスやドイツ(1年以上保有)、シンガポール等は非課税、米(1年以上保有)や英では約20%となっているなか、日本はいまだ雑所得扱いとなっているだけに申告分離課税に向けての進展があるか引き続き注目される。


基調的な物価上昇率の一部

さて8月入り。月初め恒例の値上げ状況だが、今月も値上げは続き帝国データバンクによる主な食品メーカーにおける今月の飲食料品の値上げは1010品目。単月の値上げ品目数としては3か月連続で1000品目以上の推移となり、1月からは8か月連続で前年同期を上回るなど依然として値上げの勢いは去年より強く連続増加期間としては記録的な値上げラッシュとなった2023年を上回り最長を更新する事となった。

個別では「調味料」の470品目が最多となり、次に「乳製品」の281品目となるが、明治や雪印メグミルクに森永乳業の大手三社によつ葉乳業は生乳価格見直しで牛乳やヨーグルト等を値上げする。この牛乳の他に朝食価格指数に影響を与えそうなモノでは7月に続いてコーヒー関連もネスレや外食ではタリーズ等で値上げ、またコメ価格高騰を背景に岩塚製菓では米菓10品の価格を改定し、サトウ食品も同様の理由で約11~20%の値上げをする。

斯様に依然として原材料費が値上げ要因となっているものも絶えないものの、冒頭に書いた値上げラッシュに沸いた2023年と比べるに人手不足に伴う人件費上昇などを背景にしたものも依然強い。こうした粘着性圧力を背景に価格上昇も一過性ではなく長期にわたり継続する可能性が高く、所謂日銀の言うところである“基調的な物価上昇率”の範疇にも既になってきているか。


ジャングリア沖縄開業

さて、先に飛鳥Ⅲの就航を取り上げたがリゾート関係ではこれに続いて今月はもう一つ、「ジャングリア沖縄」も先週に満を持して開業している。世界自然遺産に登録されている本島北部のやんばるを舞台に22のアトラクションに3つのレストラン、4つのショップなど都会では体験できない自然のなかでダイナソーサファリやスカイフェニックスなど本物の興奮や解放感が味わえるという。

これを手掛けたマーケティング企業「刀」のトップはこの場所にした理由として海というイメージが定着している沖縄は森林もある“二刀流”に着目したという。なるほどイメージでは先ず“海”が思い浮かぶが、ジャングルも負けず劣らずの魅力を有している点では「バリ島」とも似ているか。また今後のインバウンド増加を見込みパークやスパ等のチケットも国内の主要テーマパークとしては初の“二重価格”を採用している。

このジャングリア沖縄が狙っているターゲットゾーンは、沖縄から飛行機で4時間以内に広がるアジア圏の約20億人という。認知度の低い開業当初は国内客が大半と見込まれるものの、開業1年目の経済波及効果は約6583億円との試算が出ている。実に沖縄の年間予算の7割にも匹敵する額となるが、沖縄経済の新たな起爆剤となるかどうか期待のかかるところ。

ところで上記の「刀」は昨年に「イマーシブフォート東京」を開業させ、立て続けに今回のジャングリア沖縄をオープンさせているが、テーマパークがすっかり廃れた中国などとは異なり今後も日本はテーマパークへの巨額投資が見込まれる。強力なIPを武器に東京ディズニーシーやUSJでは新エリアの開業が相次ぎ、今後は横浜にも東京ディズニーランドと同規模の敷地に最先端技術を活用した次世代型テーマパークが開業予定となっており今後も各所の投資が注目される。


隅田川花火大会2025

猛暑のなか先週末は無事に隅田川花火大会が開催された。東京では足立の花火退会が2年連続で中止の憂き目に遭ってしまったわけだがこちらは予定通りの開催となった。隅田川はフィナーレも勿論圧巻だがやはり全国の匠が競うコンテストは外せない。今年は新潟煙火工業の飛遊星モノの「蛍」が優勝したが、個人的には絵画を花火で表現したというユニークさで勝負した斉木煙火本店の「モネの庭」が印象的だった。

ところで近年では花火に使う各種火薬類の高騰に加え、安全確保に不可欠な警備員の人件費高騰などによる運営費コスト増を背景に所謂有料席の導入が急増している。今年の場合主要の約100大会のうち約8割にあたる大会で有料席の導入が見られ、これは過去最多のデータという。隅田川の屋形船もひと昔前から比較するにその料金も随分と高騰したなと感じるが、毎年ベストな場所を提供してくれる人脈の有難みが一層増すというものだ。

ところで花火大会といえばかつてこの隅田川花火大会と共に“東京三大花火大会”の一つであった「東京湾大華火祭」だが休止からはや10年、この花火大会が来年には11年ぶりに復活開催とも報じられている。なんでも中央区区制施行80周年記念事業として開催されるということだそうだが、開催に期待を込めて今から楽しみに待ちたい。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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