11ページ目   雑記

年金の定期健診

先週は老後の生活資金となる「公的年金」の長期的な見通しを5年に1度資産する「財政検証」の結果が公表されている。法律では所得代替率が50%を下回らないようにすることが約束されているが、過去30年と同程度の経済状況が続いた場合で現役世代の平均収入の50%以上は維持出来るとしているものの、その給付は現在よい2割近く目減りする。

そういった事も視野に年金改革案では基礎年金の拠出機関の現行の40年から45年へと5年延長案もあったものの、ただでさえ若年層中心に将来の年金への不振が強いなかこれらの負担増への反発も強く現状では広く国民の理解を得られないと判断し厚労省は見送りを決定している。

そんななか直近ではGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の2023年度の運用実績で収益率が22.67%プラスの45兆4153億円の黒字となり、過去最高を更新した旨が報じられている。本日もTOPIXはザラバで史上最高値を更新しているが、これらに連動するインデックス運用ではこうした株価上昇は追い風で将来の年金支払いをより確実なものにする安心感も生まれるか。

とはいえ公的年金の給付水準は徐々に下がってゆくのが予想されることで老後の備えを少しでも増やす工夫も各々では必要になってくると思われるが、新NISAと並び自分で掛け金を出すiDeCo・イデコなど税制優遇を受けられるものも啓蒙効果で今では認知度も高まり、政府側もこれら利用促進のため更なる優遇措置を考えておりこれら活用を駆使するのも一考か。


飽くなき欲望

今週は何年かぶりで以前行った事のある眼科へ行ったのだが、かつて眼科一辺倒であったそのクリニックはボトックスやらレーザー等の美容医療部門が新設され建物も瀟洒なものに変貌していた。ところで美容医療といえば先週末の日経紙社会面では「美容医療トラブル急増」と題し、脱毛や整形といった美容医療を巡るトラブル健康被害の相談が急増している旨の記事があった。

前々からこの手のトラブルはあったが、国民生活センターによると2023年度の美容医療に関する消費者の相談件数は前年度比で1.6倍の6255件と、比較可能な09年以降で最多となり5年前の3倍にも上っているという。美容施術の後の所謂ダウンタイムにコロナ下の外出自粛期間が“渡りに船” ということもあったのかどうかコロナ禍からの増加が顕著になっている。

美容医療の旨味はなんといっても自由診療にある。患者=客?の単価が圧倒的に高額で、ほぼ保険同様の処置でもクリニック側の設定でガッツリと取れるだけに旨味も大きく、この辺が玉石混交を生み出す背景にもなっている。また医師がインフルエンサー化しているケースもあるなどマーケティング手法も自由度が高く、SNS時代の今は特にこうした美容医療のハードルが以前よりぐんと下がってきている。

そういった事で最近では小・中学生でも脱毛するケースが増加しており、某脱毛クリニックではここ5年で脱毛を希望する中学生が8.3倍に増加しているという。さらには3歳から脱毛出来る子ども向け脱毛サロンもあるというから驚きだ。ルッキズムの捉え方は人それぞれ自由だと思うものの、未成年の若年層までこれを助長させるかのような商業目的のマーケティングを見るにつけこの辺の在り方には釈然としないものを感じるものだ。


ダイナミックプライシング拡大

さて、今月からJR九州は九州新幹線で最も利用客が多い博多・熊本間の割引切符で需要に応じて値段が変わる「ダイナミックプライシング」の仕組みが導入されている。ネット限定の割引切符「九州ネット早得7」が対象だが、従来の料金が3段階に変動するものでこの制度の導入による混雑の緩和が狙いという。

この鉄道関連では当欄で2年ほど前に国土交通省がダイナミックプライシングの導入に向け、鉄道各社が運賃を変え易くするための法改正など制度設計に入る旨を書いたことがあったが、既に交通インフラでは高速バスから航空会社まで導入されているほか、ホテル、エンタメや先週に書いた東京ディズニーリゾートでも3年前からこれを導入し来場者の分散が図られている。

最近ではウーバーのCEOも日本のライドシェア問題でタクシー料金にもダイナミックプライシングを導入し利便性を向上すべきとの考えを示していたが、コロナ禍を経ての社会の変化と共に行動様式の変化も著しくなりこれまで以上に価格の在り方も変化しているのは間違いの無いところで、今後も各所への同システムの広がりが予想されるところ。


インバウンド&外資進出

昨日は国税庁から相続税などの基準となる2024年分の土地の価格である路線価が発表されていたが、全国平均で去年より2.3%上がり3年連続での上昇となった。最高路線価地点のうち全国トップの上昇率となったのは26年以降にシンガポール系のバンヤンツリーの開業が周辺で予定されている長野県の白馬村で32.1%、インバウンド等が背景となり同様の理由で東京都内では浅草が16.7%でトップとなっていた。

また上昇率全国2位となったのは熊本県の菊陽町で24.0%の上昇となった。これはもういわずもがな台湾の半導体メーカーTSMCの工場進出でそれに関連する産業の集積が背景となっているが、前述したようにこれによって関連下請け業者から周辺の飲食系まで売り上げが倍増し、中には思わぬ借地料が舞い込むなどさながらバブル化の様相を呈しているところも出て来ている。

そういえば昨年の今頃はこの路線価を基に計算しているマンション評価額に絡み国税庁が所謂タワマン節税にメスを入れ始めた旨を書いた覚えがあるが、それは兎も角も今年はインバウンドとTSMCが大きく影響した。TSMCの進出で台湾では熊本ブームからツアー客も増加しこれがまたインバウンド活況に一役買っている。ちなみに全国の最高価格は1㎡あたり4424万円の東京銀座の鳩居堂前、此処は不動の3 9年連続である。


コストプッシュ型再燃

さて月初め恒例の今月の値上げ状況だが、帝国データバンクによれば主要食品メーカー195社における家庭用を中心とした7月の飲食料値上げは411品目、前年同期比では7か月連続で大幅減となったものの、今年値上げが予想される品目数累計は3年連続で1万品目を超えた。

今月に全食品分野で最も多かったのは「酒類・飲料」の199品目、メルシャンはワイン全商品の4割に当たる約130品目の出荷価格を引き上げるが、ワイン離れが言われるなかの値上げ敢行で消費に更なる暗雲が漂う。ほか「菓子」などは不二家のルックほかあのチロルチョコが内容量を減らすなど先月に続きチョコレート製品の値上げが目立った。

チョコといえばカカオ豆も生産地の異常気象と物流コスト、嗜好品の需要増大、投機マネーの流入などを背景に高騰、今年3月にはカカオ豆の先物価格がNY市場で初となる1トン1万ドル超えを記録している。当時の銅価格1トン9000ドルを上回る事態となり話題になったのが記憶に新しいが、オリーブオイルよろしく今後の更なる値上げは避けられないだろうか。

総じて値上げ要因として原材料高は言わずもがなやはりというか円安による値上げも約3割を占めたが、この円相場も前回の値上げラッシュ時より更に現在は崩落している。一頃の円安是正による輸入コスト低減への期待感も吹き飛び今年1月のビッグマック指数もマイナス46.5と過去最低を更新、購買力が落ち買い負けし易くなっている日本の消費者への影響が懸念される。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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