6ページ目   雑記

攻めのバランス

さて定期的に起きる広告モノの炎上騒ぎだが、今月もひと騒動が起きた。スイスの時計メーカー、スウォッチでモデルが目尻を両手で引き上げている画像を使った広告がそれで、これに対し同社が謝罪し全世界で関連素材を取り下げたもの。同社は収益の約3割を中国(香港・マカオ)から得ているというが、最近の不況や米関税騒動も加わりその株価も16年ぶりの安値に沈んできているなかでの騒動勃発だ。

ところで中国絡みで問題になるのはイタリア勢が多い覚えがある。中国向けに流した広告で中国系モデルが箸でイタリア料理を食べる様が馬鹿にしていると炎上、たった数時間でECサイトから製品が引き上げられ上海での大規模ファッションショーも中止され巨大マーケットを失った「ドルチェ&ガッバーナ」など記憶に新しいが、その1年後には「ヴェルサーチ」がTシャツデザインを巡って炎上、アンバサダーを務めていた中国系女優がモデルの契約解除を申し出ている。

このヴェルサーチの炎上と同じようなパターンでは、一昨年には「ブルガリ」が海外のウェブサイトで台湾を中国からの独立国のように扱っていると炎上してしまった件もあったなと。今回の冒頭の騒動でも早速スウォッチ製品のボイコットを求める声が広がったというが、伝統的?に中国の消費者は自分達の文化を侮辱されたり国益を脅かされたりしたと感じた際には不買運動を実施する傾向が強い。

こうした騒動があるたびに政府と国民が一体化し連動している踏み絵のような市場という事を思い知らされるが、そういえば今月は米アパレルのアメリカン・イーグル・アウトフィッターズのジーンズ広告も炎上騒ぎを起こしている。どれもこれもひと昔前なら“Cool!”の賞賛で片付いていた一寸攻めた広告も今や直ぐに炎上、不買運動に発展する何かこう世知辛い世の中になったとも感じるがこれも時代なのだろう。


未知のマーケット

先週は米ニューヨークで日本アニメの祭典としては最大のイベントといわれる「アニメNYC」が開催され各地からの多くのアニメファンで会場がにぎわった。折しも来月から「鬼滅の刃」の新作が公開予定で既に大手チケット販売サイトでは前売り券の初日の売り上げがアニメ映画の最高記録を塗り替えるなどその期待が高まっているという。

斯様に世界的にアニメ市場が拡大するなか、コンテンツビジネスを軸に連携して成長に繋げたいとする動きは先にバンダイナムコHDの株式を取得表明したソニーGなど顕著だ。同社は今年1月にもKADOKAWAに約500億円を追加出資し筆頭株主になっているが、企業が保有するIPを配信基盤等を使って展開したりアニメの共同制作に力を入れるが、この株式取得で日本のコンテンツ大手による3社連合が誕生する。

またアニメ絡みではもう一つ、このアニメNYCが開催されていた時を同じくして横浜では首脳級国際会議の一つ「TICAD」(アフリカ開発会議)が開催されていたが、今回のTICADでは漫画・アニメの分野で日本企業が管理するIPをアフリカ企業がデジタル上で管理、全土に届けるなどの協業を目指す初めての覚書も交わされている。グローバルサウスマーケットは日本にとって伸びしろのあるマーケットだが、日本の基幹産業になってきたIPモノを内外共にどう展開してゆくのか今後も注目される。


ナイトタイムエコノミー

お盆が明けても厳しい猛暑が続いているわけだが、こうした猛暑下で出掛ける時間を変更するなど行動にも変化が見られアソビュー調べではこうした向きが全体の7割以上を占めていることが分かっている。“朝活”に加え“夜間消費”に活路を見出す向きもここ増加し、富士サファリパークでは今月いっぱい「ナイトサファリ」が開催され、アコーディアゴルフでは暗闇で快適にプレー出来るようライトアップされたコースで楽しめる「ナイトゴルフ」の営業が行われている。

サファリといえばもう一つ、上記のナイトサファリはリアルだが、高輪ゲートウェイシティではMRゴーグルを用い街中でもナイトサファリが体験出来る「TAKANAWA NIGHT SAFARI」が今週からスタートしている。東京都心では屈指のオフィス街である丸の内でも、過日丸ビルで“夜遊び”をコンセプトにしたパーティーなどの企画が設けられるなど丸の内の夜を活性化しようという試みも出てきている。

そういえば景気に赤信号が灯る中国ではこの“夜間消費”が景気回復の一手として注目を集めているようで、四川省などでは露店出店の緩和や遊覧船の区域拡大など従前より定番のパンダ消費等と併せ夜間消費の拠点づくりを政策に掲げているという。そんな中国事情は兎も角も、国内では夜の飲食店来店客などはコロナ前から4割近くも減少しているなど完全復活していないのは否めない。

こうした部分ではインバウンドなども使えそうだが、昨日に日本政府観光局が発表した先月の訪日客の推計値は10ヵ月連続で300万人を超えるなど増勢が続いている。日本政策投資銀行によれば観光客のナイトタイムエコノミーの国内市場規模は約8兆7000億円といい、まだまだ伸び代のあるナイトタイム消費に大手企業などもどうかかわって行けるかも鍵にもなってこよう。


アンハッピー?セット

本日の日経紙ビジネス面にも「ハッピーセット転売問題」と題し記事が載っていたが、毎度この企画をやるたびに物議を醸しだしているマクドナルドの子ども向けメニュー「ハッピーセット」。今回9日からスタートした人気トレーディングカードゲーム・ポケモンカードが2枚付くハッピーセットもやはりというか炎上騒ぎとなっている。

今年でいえば2月の「星のカービィ」、5月の「ちいかわ」の時も転売ヤーの暗躍でこの企画は早期終了となりフリマサイトでは大量の品が法外な値段でズラリと並んだ経緯があったが、それらの対策を踏まえ共同対策を謳っていたはずの今回も全くと言っていいほど効果なしで、店や道端のいたる所にカードだけ抜きとられ誰も食べてくれないハンバーガーの放置や廃棄が多数見受けられる毎度おなじみの事態を引き起こしている。

同社はこれを受け早速公式サイトで謝罪し再発防止策を謡っているが、2月と5月の騒動を経て個数や年齢などいくらでも調整が出来たはずだが、3度目もこんな有り様なだけにやはり性善説頼りの策も限界だろう。いくらマックが社会貢献を謳っていても、この企画をやるたびに転売やフードロスが話題になっているさまはそのブランドイメージにもネガティブに作用する。

そういえばフリマサイトに並ぶマクドナルド関連モノといえば最近では偽造された株主優待券の流通もまた問題になっている。転売ヤーや偽造集団が元凶なのは間違いないところでもあるが、上記にも書いた通り企業のブランディング維持という側面からもマックやフリマサイト運営会社はじめ各所は早急に実効性のある対策が求められるというもの。


エルメス一強

先週末の日経紙ビジネス面には「勝ち組はエルメス・プラダ」と題し、ラグジュアリー業界の2025年1~6月期決算では仏エルメス・インターナショナルが増収増益となった一方で仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンと仏ケリングなどは減収減益と明暗が分かれた旨の記事があった。消費者が財布のひもを締める逆境下で高級ブランドとしての“底力”の差が出たとの見方があるという。

これを如実に表すかのように今年の春先にはエルメス・インターナショナルの時価総額はLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンを抜き去り、今や日本企業の時価総額トップに君臨するトヨタ自動車のそれをも抜いてきている。エルメスといえば“バーキン”がもう代名詞のような存在となっているが、先に行われたサザビーズのオークションではこのバーキン第一号がハンドバッグとして過去最高額の800万ユーロで落札されたのが記憶に新しいところ。

エルメスのブランディングで直ぐに頭に思い浮かぶのはやはり伊フェラーリだろうか。共に需要に対してある一定割合の少なさで生産調整しており、バーキンクラスになるとオファーがかかるのも購入履歴等の積み上げ如何にかかってくるというのが暗黙の了解となっているとか。厳格に管理された販売手法とその希少性により、これまたフェラーリの各種モデルと共にリセールバリューもラグジュアリー界では常にトップクラスを誇る。

当欄では今から14年前の2011年にも自動車業界が減産体制を強いられていた件を書いた際にフェラーリとBMWで明暗が分かれたのを取り上げていたが、そこでは「~要は或る程度手が届く領域のある部分はそれだけ分布も多いので不況の影響はやはり避けられないと~」と書いていたが、冒頭のエルメスとルイヴィトンはまさにこの構図だろう。一部大手外銀では高級ブランド業界の低迷が26年後半まで続くとの予測が出ているが、優勝劣敗が更に鮮明になってくるかどうか注目される。


クラウディア

大学卒業後、大手取引員法人部から大手証券事業法人部まで渡り歩き、その後に投資助言関連会社も設立運営。複数の筋にもネットワークを持ち表も裏も間近に見てきた経験で、証券から商品その他までジャンルを問わない助言業務に携わり今に至る。

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